幻想少女の露出事情 作:よっぱらい
そんなに驚かなくてもいいでしょうに。
むしろ驚いたのはこっちですよ。裸の女性がいきなり飛び込んできて……立ったまま股ぐらをかき回しはじめるんですから。
まあ、私も人のことを言えるような格好ではありませんがね……おや。
漏らしてしまいましたか。
大胆なことをしているわりに、気の小さい……ん?
この臭い……。
人間かと思いましたが、かすかに狼の……君、もしかして人狼ですか。
なるほど。新月だからちょっと気付きませんでしたね。見た目は人間そのものだ。
ええ、私も見た目と違って、人間ではありません。奇遇……というべきなんでしょうかね。
あ、流石に暗がりにいると見えませんか。
っと……鎖がギリギリなので、ここまでで失礼。でも、なんとか星明りが当たるでしょう。
ええ、ご推察どおり。普段は山で警備員をしている者です。
それがなんで、裸でこんな廃屋に鎖でつながれているか、ですか。
ちょっと……いや、かなりの恥になるので、言いにくいのですが……。
でも、いまさら体面など気にしても仕方がないですね。まったく。
実は私、人間の男を食うのが趣味だったんですよ。
食欲ではなく、性欲の話です。
私の同族の男どもは、どうも粗暴な者が多くて……ことの最中に爪を立てたり、噛み付いてくるとかしょっちゅうでしてね。しかもあっちが満足したらそれっきり。女を悦ばせるなんて、考えちゃいない。
それで、色々と他種の妖怪の男にも手を出しましたが……どうもしっくりこなくて。
最終的に、人間が一番相性がいいことに気付いたんです。
それで、たまにこっそり山を降りて、男あさりをするようになって。
こうして耳も尻尾も隠して、人間の女のふりをして……人里やその近くで、男をひっかけてね。
ただ、ちょっと誤算というか。
それまで思ってもみなかった問題……不満、と言えば不満なんですが、私がそれを言うのはおかしいというか……失礼、何を言ってるんだかさっぱりでしょう。うまい言葉が見つからないもので……。
つまりですね。いわゆる甘い夜ってやつを過ごしたかったわけなんですよ、私は。
そして確かに最初は、割といい雰囲気で楽しめているんですが……。
興が乗ってくるといつのまにか、こう……私のほうから男にのしかかって、精を搾り取るみたいな感じになってしまうんです。
もう付き合いきれん、と相手が逃げ出してようやく、こんなはずでは、と我に返るありさまで。
……今まで忌避してきた同族の男どもの粗暴さというか、獣性がやっぱり私の中にもあるのでしょうね。
どれだけ気をつけて、淑やかに抱かれようとしてみても……結局いつもそれで。まあ、悪くはないんですが。いまひとつ満足もできないというか。一度寝た相手には次から逃げられますし。
どうしたものかと思っていたある日、この首輪を手に入れまして。
妖力を封じる、かなり強力な法具です。見た目はただの首輪ですけどね。
これを嵌めると、私でもほとんど力が出せなくなってしまうんですよ。
強引に男を組み伏せるなんてできない、それこそ人間なみの女になれば……自身の態度も変わって、望みの逢瀬を楽しめるのじゃないかと。
結果は期待どおり……ではありませんでしたね。
私自身はよかったんです。無意識に持っていた尊大さというか、人間より優位にいようとする意識がなくなって、しおらしいままでいられるようになったので。
ただ、男のほうの態度も変わってしまったんですよ。
こんな鎖つきの首輪を嵌めている女は、支配して嬲りたくなるものらしくて。
なので結局、もともと望んでいた甘い夜は手にはいらなかったんですが。
でも、おかげで気付かされましてね。
私が本当に望んでいたのは、実はそういう一夜だったのだと。
蔑まれ、なじられ、見下されながら、ねちねちと犯され、鳴かされるのが好きな女だったということをです。
同属の男が与えてくるものとは違います。あいつらはただ乱暴に自分勝手に犯すだけですから。
そうではなく、あくまでも精神的に私を屈服させて……そして肉体的にも屈服させ、そうして私を悦ばせ、相手も悦ぶ。そういう関係です。
素敵な世界の扉が開いた気がしましたね。
そして……それはもう一つの扉も開けてくれました。
そんな私が男を引っ掛けるときの……最もふさわしく惨めな誘い方を、ある人から教わりまして。その人も、言ってみれば私の同類なのですが……まあそれはともかく。
今の君と同じですよ。違う? ふふ、どうですかね。ともあれ、こうして破廉恥にも裸になって夜道を……時には日のあるうちから、ふらふら彷徨って。
慎みのかけらもない変態女に落ちた自分にひどく発情して、汁をしたたらせる股ぐらを、隠すでもなくいじくりまわし、通りかかった男に見せつけながら。
そして、そんな壊れた女を見ても逃げ出さない、よさげな殿方を見つけたら……首輪に繋がった鎖の端を差し出して、どうかこの哀れで淫らな女に、一夜の情をお恵みください……と。
そのままどこかへ連れ込まれ、あるいはすぐさまその場で……乳も尻も、口も女陰も……時には尻穴までも彼らの身にまかせて……ただの一匹の雌犬になって、鳴き明かすんです。
そんなめくるめく夜を、何度も過ごした……まではよかったんですけどね。
ちょっと調子に乗りすぎたというか……油断しすぎたというか。
こうして本気で監禁されることを想定していなかったもので。いや、冷静に考えれば当然そういう男にだっていずれ当たるだろうくらいのことは……ええ、言い繕うのはやめましょう。阿呆だったんですよ。色ボケにもほどがありました。
それで、しばらくこの廃屋に繋がれて、犯され続けてまして。確か今日で一週間になります。
食べ物は十分もらってますし、犯されてること自体も苦じゃないというか……まあ、結構楽しんでるんですけど。
流石にそろそろ山に戻らないと不味い頃合なので。
そんなわけで、ちょうど紛れ込んできた君に助けてもらおうかと思っていたのですが……。
いや、今これを外すのは無理ですよ。君も新月の夜は、ほとんど人間と変わらないでしょう。その程度の力でやれるなら自分でとっくにやってます。
なので、助けを呼んできてもらえれば、と。
と言っても、流石に新聞に載ったりするのは御免こうむりたいので……誰か口の堅い、こういう趣味に理解のある人か妖怪を……。
心当たりがありますか?
お願いします。お礼はしますよ。
急いでくださいね。
いや、なるべく早く助け出してくれ、という意味ではなく。
ほら、ごらんなさい。
提灯の灯りが……おや、今日は特に多いですね……5、6人はいるんじゃないですかね。
早く逃げたほうがいいですよ?
このままそんな格好でここにいたら、君も私と一緒に……ねぇ?
逃げないんですか?
腰が抜けた?
ふふ……本当に?
……まあ、君自身が言うならそうなんでしょうね。
じゃあ、仕方がないですね。
ああ……もう、すぐそこまで……今から飛び出しても、間に合いませんねぇ。
まあ、君は捕まっても、少し月が満ちてくれば逃げるのは容易でしょうけど。
あくまで人間のフリをしていれば、嵌められるのも普通の首輪でしょうから。
そのとき、ついでに私も助けてもらえますか?
お願いしますね。
それでは、ご一緒に……。
楽しみましょうか。