※この作品はR-18です。

【書籍化】エロチートを授かってタイムリープしたので、2度目の人生はクラス一の美少女を抱き潰す   作:月見ハク

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19.クラス一の美少女と爆発する

 ミキの車の助手席で、流れていく風景を眺める。

 派手な振動と排気音。

 そういえば、2度目の人生でミキを虜にしてしばらくは、よくこの車で移動していたな。

 

 懐かしさに遠い目をしていると、ミキの声が容赦なく現実に引き戻す。

 

「とりあえず、会社のほうは何とかなりそうだよ」

 

 タメ語に戻っている。

 まだ数時間しか経っていないのに、ミキはもう気持ちに整理を付けたようだ。やっぱり優秀な女だ。病気を治して、右腕にして良かった。

 

「仮想通貨を円に換金したら、全部()()()ウォレットに移すから。事後処理とか…好きに使ってくれて構わないよ」

 

 多分1000億円以上にはなる。ネムが傾いても、ミキならこの資金を使って立て直せるだろう。

 少ないが、ミキの人生を奪った慰謝料だ。

 

「ふふ…ありがたくいただくね」

 

 俺とミキとの間に、多くの言葉はいらない。

 それくらい、言葉も肌も交わした。

 

「しかし、見つかったら俺、殺されるかもなー。世の中めちゃくちゃにしちゃった気がするし」

 

「まあ、恨まれることばっかりしてきたもんね」

 

 女にしてもそうだ。

 スキルが効いている状況で犯したあみやメイちゃんはともかく、ユイカなんて、最初はただの八つ当たり強姦だしな。

 

 ミキは、「でも…」と前置きして、言葉を続けた。

 

「わりと感謝してる人もいると思うけどな……私みたいに」

 

「そっか」

 

「まあ私ももう、アラタくんに男としての興味ないんだけどね!」

 

「そっか」

 

 まったく……何年一緒にいたと思ってんだ。

 その言葉が嘘だってことくらい、すぐ分かるわ。

 相変わらず、可愛いやつ。

 

 ただ、このミキの気持ちの落とし所は、俺にとってずいぶん都合のいいパターンなんだよな。 

 いくら事後対応が神でも、レイプした事実は変わらない。それだけでも、殺されるくらいの理由にはなる。スキルが消えるってのは、そういうことだ。

 まあ、その程度の覚悟なら、初めてミキを襲ったときに決めてある。

 

 ただ、今はまだ死ぬわけにはいかない。

 

「あと、どのくらいで着く?」

 

 問いかけると、ミキはカーナビの画面をちらりと見た。

 

「10分くらいかな」

 

 ミキの反対側の耳に插入されたイヤホンからは、今もひっきりなしに護衛班からの状況報告が上がってきている。

 

 さっきからミキは、俺とのんきに会話しながらも、凄まじいドライビングテクニックを披露していた。

 

 

 やがて車は、エリカと不審者の進行方向を先回りする形で、路地の角に停まる。

 

「アラタ君、本当にここでいいの?」

 

「うん、いいよ。イリーガルな手段を取るかもだから、護衛班も撤収させちゃって」

 

「分かった」

 

「ごめんな……ありがとね」

 

「ほい」

 

 そう言ったミキは、いつものようにヘラヘラしている。

 それ以上、言葉はいらなかった。

 

 

 さて、行きますか。

 

***

 

 俺は路地から出ると、何食わぬ顔でエリカに声を掛けた。

 

「やっほ~、ぐ、偶然だね。たま、たまたまコンビニの帰りでさ~」

 

 噛んでしまった。

 俺は偶然を装って事あるごとに現れるストーカーか!

 いや、ストーカーか。

 

「根室…!?」

 

 あれ、予想外って顔じゃないな。どっちかと言うと、ホッとしてる?

 

 すると、パッと車のヘッドライトが光り、目がくらむ。

 薄っすらとした視界の中、エリカの背後から急発進してきたワゴン車が、エリカに横付けするのが見えた。男が出てきて、エリカに手錠を付けたかと思うと、あっという間に車に押し込む。

 

 俺はすでに走り出していた。

 

 目の前でワゴン車のドアが閉まり、男がアクセルを踏み込む。

 ドアの取っ手を掴むも、すぐに振り落とされて道に転がる。

 エリカを拉致したワゴン車は、路地を曲がり、見えなくなった。

 

 俺は体勢を立て直しながら、追いかける。

 

 この辺りはエリカの家の近くだ。

 つまり、路地の一つ一つに至るまで、俺の脳内にインプット済ということだ。

 

 体が軋むほどの全力疾走で、ワゴン車の進行方向を先回りする。

 民家の生け垣を飛び越えると、ちょうどワゴン車が向かってくるところだった。

 

「てめえこのやろおおおおお」

 

 俺は民家の庭に置いてあった自転車を持ち上げると、ワゴン車に向かってぶん投げた。

 アドレナリンが出ているせいか、すっごい軽い。子どもがおもちゃをぶん投げたかのように、自転車は一直線に飛び、ワゴン車のフロントガラスにぶち当たった。

 

 急ブレーキの音と、ガシャンッという凄まじい衝突音が響き、ワゴン車は停止した。

 

 走り寄ると、男はハンドルに頭をもたげ、気絶していた。

 俺は運転席の窓ガラスを掌底でぶち破ると、手を差し込んでドアロックを外す。

 急いで後部座席のドアを開けると、エリカを横抱きに持ち上げ、救い出した。

 

「エリカ、大丈夫!? ケガしてない?」

 

「大丈夫。私は無事だよ」

 

 よかったああああああ。

 あ、手錠外してあげないと。

 

 ふと運転席を見ると、男の姿がない。

 視線を動かすと、男が路地を逃げ去っていくところだった。

 

「あんの野郎ぉ…」

 

 猛スピードで追いかけると、男が路地を曲がろうとする。

 

 ゴギャッ。

 

 鈍くて不快な音がして、男が、仰向けに倒れ込んだ。

 近づくと、道に赤黒いものが広がっている。

 

 それを見下ろすように、バールのような物を持った姫島ハルが、静かに立っていた。

 バールのような物からは、ポタポタと赤いものが滴っている。

 

「ハル…」

 

 お前、何でここに?

 

 なんて問答をしている場合ではない。

 俺は男のポケットから手錠の鍵を探し出すと、一目散に来た道を戻った。

 

「あ、アラタ、ちょっ…」

 

***

 

 俺はエリカの手錠を外すと、救急車とパトカーを呼んだ。

 

 俺とエリカは、たまたま交通事故に居合わせたカップルということにしておいた。カップルだ。

 目撃者は俺たち以外にはいない。

 男が意識を取り戻すまでは、交通事故ということで処理されるだろう。

 

 男は、ちょっと前に電車で俺が馬乗りでボコった、あの電車男だった。

 

 逆恨みするなら俺だろうに、エリカを攫うあたり、馬鹿の思考は読めない。

 

 

 病院の診察室の扉が開き、エリカが出てきた。

 

「エリカ! どう? 綺麗な柔肌に傷とかアザとかシミとかできてない?」

 

 俺はエリカの全身を舐め回すように視姦する。相変わらず吸い付きたくなるようなカラダだ。

 

「根室、顔がヤラしい。……傷もアザもないよ」

 

「そっか! 良かったぁ…」

 

「それで、どうして姫島さんがいるのかな?」

 

 チッ、さっきから完全無視してたのに、心優しいエリカは、俺の隣にいる姫島ハルをスルーできなかったようだ。

 まあ、こんなに自分を睨みつけてくる女がいりゃ、当然か。

 つーかコイツ、何エリカにガン飛ばしてんだよ。犯すぞ。

 

「…アラタ、エリカちゃんに聞いてみなよ。僕のことどう思いますかって」

 

 だから何言ってんだコイツ。

 スキルから解放されたエリカが、俺をどう思うかって?

 

 聞きたくねーよ!

 ここはとりあえず、黙る!

 

「エリカちゃんも、もうスキルの虜じゃなくなったんだからさ。もうアラタに関わらなくていいんだよ?」

 

 だからなんでコイツは、相槌もないのにセリフを進められんのかな。一人で話し続けるのって、現実だと喋る方はけっこう辛いんだぞ。

 

「やっぱり姫島さんも、タイムトラベルした人なんだね」

 

 ()()()()()()な。

 でもさすがエリカ、頭もキレて可愛い。

 

 おおかた姫島ハルは、「神」から「スキルを消すスキル」でも与えられたタイムリーパーなんだろ。

 そんで今から、動機が明かされるパートに移ると。

 

「…エリカちゃんも、そうなんだ」

 

 ああ、姫島ハルは俺だけかと思ってたのか。

 

「エリカちゃんの言う通り、あたしは…」

 

 あ、ヤバい。コイツ話長いんだよな。一旦止めよう。

 

「はいストップ〜! とりあえずここ、病院の中だから。外に出て話そうな」

 

「え、ちょっ、アラタ…」

 

 俺はスタスタと廊下を歩き出す。エリカも姫島ハルも、俺に付いてきた。

 どうせロクな動機じゃないんだ。ならば聞くだけ面倒というもの。隙を見てエスケープしよう。

 

***

 

 病院の外へ出る。

 薄っすら明るい。そうだ、今日は満月だった。

 俺はエリカを見つめる。

 

「エリカ」

 

「なに?」

 

「月が綺麗ですね」

 

「…ありがと」

 

 ここまでのやり取りの感じ、スキルの効果が切れても、俺を即拒否するつもりはなさそうだ。

 ただ、俺からスキルが無くなったら、エリカに残るのは何だろう。セックスパートナーとしても、エリカの騎士としても役立たずになった俺か?

 それはエリカの嫌いな、「嘘吐きのヤリチン」なだけの男だ。

 

「ねぇ、何でエリカちゃんはアラタとそんなふうに話せるの? もう、好きでも何でもないでしょ?」

 

 コイツ…ずかずかと聞きたくないこと聞きやがって。犯したろか。

 まあコイツでは勃たないんだが。

 

「…姫島さんには、関係ないでしょ」

 

「もう吹っ切れようよ。アラタに興味があるのは、好きなのは、私だけ。私、アラタが好きだから。素のアラタが好きなの」

 

 何回好き好き言うんだよ。好意もしつこいと嫌われるぞ。

 俺のようにな!

 

 そんな姫島ハルを華麗にスルーしたエリカが、俺をじっと見つめていた。

 

「根室は、ハルちゃんと寝たの?」

 

「そんなの関係ないじゃない!」

 

 すかさず姫島ハルが叫ぶ。

 しかし、エリカは動じない。

 

「私は、根室に聞いてる」

 

 エリカの曇りなき(まなこ)の前には、俺は全てをさらけ出すのみ。

 

「いや、なんか勃たなくて…」

 

 インポテンツになったかもでして。

 

「アラタ大丈夫だよ。新しい一歩を踏み出せば、ちゃんと勃つよ。もう吹っ切れよう? エリカちゃんのことは忘れてさ」

 

 それは、無理――。

 

「それは、無理だよ」

 

 あれ、俺喋ってないんだけど。

 俺の心の声がエリカの口から飛び出したぞ?

 

「根室が、私を忘れたりするのは、無理なの」

 

「はぁ!? 何言っちゃってんの? どんだけ自意識過剰なの? 仮に忘れられないとして、何なわけ? あんたもうアラタに興味ないでしょ? さっさと振って解放してやんなよ!」

 

 恐いです。女同士の喧嘩、恐い。

 もっと冷静に話し合いましょうよ。

 

「だから、無理なの。根室は、私のだから」

 

「はああぁ!? なんなのこの女! おかしい、こんなの聞いてない、どうなってんの!」

 

 俺にも何がなんだか。

 あと、コイツさっきからうるさいな。入院患者さん達が起きちゃうだろーが。

 

「ひっ…」

 

 ん?

 どうした姫島ハル。

 急に黙りこんで、目を見開いて、エリカを凝視したりして。

 

「アラタ、魔王が、いる…」

 

 俺は、その姫島ハルの妄言を否定できなかった。

 エリカは、笑っていた。

 無邪気な少年のように。下賎な者を見る女王様のように。

 

 満月に照らされたエリカの笑顔は、無垢で、恐ろしくて、美しかった。

 空気が、変わった。

 

 エリカが、優雅に一歩踏み出す。

 

「姫島さん、あなたは、誰?」

 

 姫島ハルは、一歩後退りながら答える。

 

「あたし…は、権田トウリ…」

 

「そう」

 

 頷くエリカ。

 

 うん。誰?

 

 いやまてよ、確か。

 

 ――『電車内でタバコ注意され暴れた男、高校生に取り押さえられる』

 

 あのネットニュースに載ってた電車男の名前、権田トウリ(30)だ!

 

 つまり、電車男=権田トウリ=姫島ハル=電車男ってことか?

 いや色々おかしいだろ!

 

「その女の子の体は? 不思議な声が用意してくれたの?」

 

 エリカ、まったく動揺してないんだが。

 また一歩、姫島ハルに近づく。

 

 姫島ハルは、諦めの表情を浮かべ、地面にへたり込んでしまった。

 

「生まれ変わる時に…神様が、新しく用意してくれた。権田トウリに戻るのは、嫌だったから。ちょうど生まれてすぐ死んだ赤ちゃんがいて、そこに乗り移った、みたいな…」

 

 そんなパターンもアリなのか、「神」よ。

 でもそうか。だから姫島ハルはさっき、電車男を待ち伏せできたんだ。自分自身があそこで、ああなることを知っていたから。

 

「ふうん。で? ()()()()()()()の目的は何?」

 

 うわ、エゲツな…。権田トウリには戻りたくないって言ったばかりなのに。

 

「ひっ……あの、アラタの、全てを奪うこと、です」

 

 笑顔で近づくエリカの気迫に、姫島ハルはもう決壊寸前だ!

 

「詳しく、聞かせてくれる?」

 

「はい、あの…電車でアラタに、殴られて、最初はその、悔しくて。でもアラタの形相が忘れられなくて…。それまで、あんな風に人に見られたことなくて…皆、無関心だったから…」

 

 え、それで俺、恋されたの? 男に!?

 まあ、そういう恋の形を否定はしないが、ずいぶん倒錯的な嗜好だなおい。

 

「あのアラタの行動が、全部エリカちゃんの為だったと思うと、なんか腹が立って…それで、あの、魔王…じゃなくてっ、エリカちゃん…さんを襲ったんですけど…」

 

 いや、エリカにビビり過ぎだろ。

 

 当のエリカは、軽く頷いて先を促す。

 

「み、見ての通り、返り討ちに遭いまして。まあやったのは私…未来の自分だったんですけど。3年くらい下半身不随になりまして…その間も、アラタのことを考えてまして、その時は恋とかじゃなかったと思うんですが…」

 

 あ、なんかホッとしてしまった。

 

「ある日、神様から20年前に戻すっていうお告げがありまして…でもあたし、気持ちが整理つかなくて、ぐちゃぐちゃなまま、気づいたら、こうなってまして…」

 

 うわ、やっぱ馬鹿だ。

 369日も猶予があったのに、明確な望みをイメージできなかったとか。

 

「で、生まれ変わって、唐突に分かったんです。あたしの能力は、アラタの不思議な力を消し去ることなんだって。そんで、アラタの理想の女の子になったんだって!」

 

「…へぇ、根室の理想って、こんな感じなんだ」

 

 エリカの笑顔が、ピシッと固まった気がした。

 姫島ハルも、「ヒッ…」と声もなく震えている。

 まさに、蛇に睨まれた蛙。「時かけ王子」の悪役令嬢と、それを手玉に取る魔王のようだ。

 そして、俺は今、ただの傍観者だ。

 

 エリカが無言で続きを促す。

 

「あ、あの、それで、あたし、理解したんです。あたしの望みは、アラタの心を奪うことなんだって。それからは、ずっとアラタを追いかけて、そしたら、本気で好きになってて…」

 

 結局、恋したんかい。

 なんか俺、一生分は姫島ハルに告られてる気がするな。

 

 でも、そんな姫島ハルに勃たなかった理由が分かったわ。

 エリカに2度も手を出すようなヤツに、俺が勃つわけがないんだよな。

 魂すらも嗅ぎ分けてしまう俺。

 一途にエリカを思い続けるからこそ、成せる業だ。

 

「で、でも、実際に会ったアラタは、エリカさんだけじゃなく、色んなコに手を出してて…あたしが告ってすぐに、図書準備室なんかで……だから、能力を消すのを実行に移そうって。そしたらもう、アラタはあたしのものになるって、思ったのにぃ…うぅ、ぐすっ」

 

「図書準備室…?」

 

 ゆらりと、エリカが振り向いて、俺を見る。

 俺の体は、流れるように土下座の体勢をとっていた。

 

「うえぇん、どうしてよぅ…神様は、望みを叶えてくれるんじゃなかったのぉ…?」

 

 泣きじゃくる姫島ハル。いつのまにか、それを見下ろす距離まで近づいていたエリカが、そっと姫島ハルの涙に拭った。

 

「多分ね、叶うかどうかは、望みの強さで決まるんだよ」

 

「あ、あたし、3年も、地獄みたいな入院生活で、ずっと、ずっと願ってたのに…!」

 

「3年…」

 

 エリカの顔から、スッと笑顔が消えた。

 

「たかが3年、祈ってたくらいで、私に敵うわけないよ。私は何年も何年も、起きてから寝るまでずっと、根室のこと、望んでたんだから。私の地獄を、舐めないで」

 

「へ? 何言って…だって、エリカさんは…」

 

 姫島ハルは、エリカの地獄のような17年を知らないんだ。混乱するのも無理はない。

 

「でも、トウリくんには感謝してるんだ」

 

「え?」

 

「多分、あなたも、私の願いの一部だから」

 

「ま、魔王…」

 

 だから魔王じゃ…ないとも言い切れない圧が、今のエリカにはあった。

 

 すっかり抜け殻のようになった姫島ハルは、ヨロヨロと立ち上がると、駐輪場に置いてあったバイクに跨り、去っていった。

 心無しか、バイクの排気音も元気が無い。

 

 さらばだ、姫島ハル。

 お前のルックスとポテンシャルなら、この先、いくらでも幸せになれるだろう。

 ここからが、本当のリスタートだ。達者でな。

 

 〜fin〜

 

***

 

「根室、ちょっとジュース飲みたいから、自販機寄ろうか」

 

 終わってなかった。

 俺はこれから、エリカに色々聞かなければならないのだ。

 主に俺のこと好きなのか? とか、俺と付き合う気があるのか? とか。

 

 エリカは、スタスタと暗い病院のロビーを横切り、階段を登る。

 

「あっ…」

 

 目の前のエリカが、ふらりと揺れた。

 危ないっ!

 

 俺は当然のごとく、エリカの背中を受け止める。

 

「大丈夫? 体調悪い?」

 

「ううん…ちょっと疲れちゃって」

 

「どうして?」

 

 スキルの活性化の効力がなくなったから?

 病気が再発したか!?

 心臓がキュッと縮む。

 

「夜通し根室探してたら、くたびれちゃった」

 

 お、俺のことを?

 心臓がトゥンクと高鳴る。

 

 

 ガコンッ。

 

 自動販売機から、オレンジジュースのペットボトルが出てくる。

 エリカはそれを取り出すと、キャップを外すことなく、手の中で遊ばせていた。

 

「飲まないの?」

 

「うん、口直しにとっとく」

 

「口直し?」

 

 「ふふ…」と笑うエリカは、これから悪戯を仕掛ける子どものようだった。

 

「ところでさ、トウリくんが言ってた魔王って…」

 

 チッ、あの野郎、こんな女神みたいな天使を魔王呼ばわりしやがって。

 

「確か、『時をかける第八王子は悪役令嬢に転生して武術を極めます ~あっさり魔王を倒したら女王になってくれと頼まれたがもう遅い! 私(俺)は拾ったエルフ娘とのんびり異世界スローライフを楽しむのでお引き取りを』に出てくる、魔王のことだよね?」

 

「え、なんでエリカがそれ知って…」

 

「知ってるよ。根室の愛読書でしょ。根室のことならいっぱい知ってる」

 

 呆気に取られる俺に、エリカはドッキリ成功とばかりにニヤリと笑った。

 自動販売機の明かりに照らされた笑顔が、俺の心を射抜く。

 

「ねえ、覚えてる? この病院」

 

 そう言って、エリカは暗い廊下を歩き出した。

 その背について行きながら、思い出す。

 

「エリカが、前の人生で入院してた病院、だ」

 

 突き当たりの病室にたどり着いたエリカは、躊躇うことなくドアを引く。

 

 中を覗くと、誰もいなかった。

 エリカが入院していた部屋。

 

 俺は、無人のベッドに近づく。ここでエリカは、浅倉に犯されて…。

 

 トントン、と肩を叩かれた。

 振り返ると、エリカが片手で俺の腕を掴み、もう片方の手を俺の頬に添えた。

 

 て、天地投げか!?

 

「…んちゅ」

 

 え? この唇はエリカの感触。

 キスされた。え?

 

 そして、あれ?

 股間が熱い。フル勃起してる。

 

「大きくなったね」

 

 ニコッと笑ったエリカが、あろうことか(ひざまず)き、ベルトを外し、ジーパンとパンツを下ろし、そそり立ったチンコをパクっと咥えた…件!

 

「…んむっ…んれろぉ、ちゅろ…じゅぼ、じゅぼ、じゅぼ、じゅるるる…」

 

 俺の弱い所を熟知した上で、いたわるような、それでいて激しく求めるような、そんな極上のフェラだ。

 全神経が股間に集中し、全感覚でエリカの口内を感じる。

 体が震えて、立っていられなくなりそうだ。

 腰から尿道にかけて、何かがせり上がってくる感覚。力んで止めようとするが、無理だ。

 

「ううっ…エリカ…出るっ」

 

「ひぃよ、らひれ……じゅる、じゅろろろろっ」

 

 精巣の中身まで吸い上げるような強烈なバキュームに、俺は音のない悲鳴を上げながら射精した。

 思わずエリカの頭を掴み、ぐりぐりと股間に押さえつける。

 エリカの喉奥目がけ、何度も精を発射した。

 「んぐ」と苦しそうに呻きながらも、エリカは精液を飲み干す。

 

「…ぷはっ……うぇ、やっぱり不味いや」

 

 エリカは、オレンジジュースのキャップを外し、ごくごくと飲み始めた。

 

 俺は腰が砕けてしまい、ベッドに座ってしまう。

 

 やがて、エリカが服を脱ぎ始めた。

 エリカの艶めく肌が、形の良い膨らみが、美味しそうな秘所が、あらわになっていく。

 そのあまりに蠱惑的な姿に、またも肉棒が剛直する。

 

「目の前で私が脱ぐの、好きでしょ? 根室」

 

 はい、大好きです…。

 俺は、さっきから目から涙がこぼれていた。

 これは何の涙なのだろうか。

 

「私も、脱がせてあげる」

 

 エリカは俺のTシャツに手を掛けると、ゆっくり脱がした。足元のジーパンとパンツものけられ、俺たちは全裸で向かい合う。

 エリカに肩を優しく押され、俺はベッドの上に大の字になった。

 

 エリカが、俺の二の腕にキスの雨を降らす。

 唇が触れた所が、熱を帯びる。

 

「ちゅ…んちゅ…根室の腕、鍛えられてて、この手で触られるとね、いつもキュンとなるんだ」

 

 エリカが、俺の胸板を撫で、顔を埋めた。

 

「根室の胸も、好き。ここに包まれると、安心する」

 

 エリカが、俺の太ももや膝を揉んだ。

 

「私のところに、すぐ駆けつけてくれるこの足も…大好き」

 

 一度、俺の肉棒にキスをしたエリカは、耳元まで顔を寄せてきた。

 

「ねぇ、上書き、して?」

 

 俺の理性はすっ飛んだ。

 エリカが何年も地獄を見ていたベッドで、俺はエリカを犯す。抱いて、抱いて、抱き潰す。

 

 俺たちはぐるりと回転し、位置を交換した。

 そのまま、月明かりで妖しく輝く裸体に、覆いかぶさった。

 

「エリカ、浅倉におっぱい吸われた? …れろっ、んちゅ、ちゅるちゅる…」

 

「んあっ…あ、あんっ…うん…いっぱい、吸われた…あふんっ、んんっ」

 

 ならいっぱい吸ってやる。とびきり優しく。

 

 舌で乳房全体を舐め回し、柔らかさを確かめる。乳首を転がし、時おり吸い上げた。

 その度にエリカの背中が跳ね、愛しさが込み上げる。

 

「ここも、いじられた?」

 

 俺はエリカのマンコに手を伸ばし、膣口に指を入れる。

 

「ふぁ、んっ……いつも、指で、乱暴に…あっ、や、ああんっ」

 

 指だけか。なら俺はめいっぱいクンニで責めよう。

 チュクチュクと膣内をかき混ぜ、ジュルジュルとクリトリスを吸えば、エリカは面白いように鳴いた。

 

「しっ…エリカ、声抑えて。他の病室に聞こえちゃうよ」

 

「う、うん……んゆっ、んむぅ…むり、根室、だめ…きもちくて…ん、んんんっ♡」

 

 あーヤバい。もー無理。

 

「エリカ、挿れるね」

 

 コクコクと頭を振るエリカにキスをしながら、俺は腰を埋めた。

 

 ズブブブブッ…ズブンッ。

 

 肉棒がエリカの柔肉をかき分けながら、一気に奥へ到達した。チンコを膣壁が包み込み、クニクニと愛撫してくる。

 俺は、ゆっくり腰を動かした。

 

 ズチュ…ズチュ…ズッチュ…ズチュッ…。

 

「んあっ…ん…きもちい♡ ねむろの…きもちいよ……あんっ…すき♡ ねむろ…すき、すきなの…」

 

 これは夢だろうか。

 いや夢でもいいや。

 

 さっきからもう、ずっと射精してるような快感が、ずっと。

 

「う…やばい、イく、出るっ」

 

 信じられないほどの快感が襲ってくる、予感がする。

 ダメだ、これは夢じゃない。

 今はスキルがない。任意避妊ができないぞ。

 

「いいよ、中に、だして…」

 

 その言葉に、俺の堤防が決壊した。

 洪水のような射精感に、全身が震える。

 

 ドビュルルルルルッ、ドビュルルルルッ、ドビュルルル、ドビュルル、ドビュルル…!

 

「はあっ、あっ、ああっ♡ んっ、んんんんんっ―――― ――」

 

 俺とエリカは、同時にイった。イき続けた。頭が狂ってしまうほどに、絶頂に襲われ続けた。

 

 

 荒い息遣いが、病室に充満する。

 

「…ねむろの、まだでてる…よ、ふふっ…♡」

 

 まだ出ているが。死ぬほど気持ちいいが。思考は少し落ち着いてきた。

 束の間の賢者タイムだ。

 つまり俺のターンだ!

 

 聞かなければ。

 特にさっきから、語尾にハートマークがいっぱい付いてる件!

 

「エリカ、一体どうゆう…ことなん?」

 

 「ふふっ」と笑うエリカが可愛くて、また腰を振りそうになるが、我慢だ。

 

「たぶん、根室の能力が消えたから、私の能力で上書き…されたんだと思う」

 

 エリカの……能力!?

 

 あれ、エリカはただ、「私に起こる全部から、助け出して欲しい」と望んだはずじゃ…。

 能力なんて、聞いてないぞ。

 

「ごめんね、根室。私、一つだけ根室に嘘ついた。私、もっとちゃんと、イメージしたんだ、望みを」

 

 エリカが俺に嘘!?

 それは許せないな。お尻ペンペンモミモミだ。

 

「どんなことを、望んだの?」

 

「私に起こる全部から、助け出してくれる、()()()みたいな人が欲しいって。私だけを見てくれる、守護霊様…」

 

 そこは王子様、とかだろおおおぉ。

 誰が守護霊やねん!

 

「でね、そんな守護霊様に、超人的な力を与えるのが、私の能力」

 

 えっへん、と得意げな顔をするエリカはクソ可愛いが。

 なるほど合点がいったぜ。

 どうりでさっきエリカを助ける時、走って車を先回りしちゃったり、人んちの生け垣飛び越えちゃったり、人んちの自転車を軽々投げちゃったりできたワケだわ。

 

「やっと、私の望みが叶った。変な能力が消えて、大好きな根室が、守護霊様になってくれた」

 

 そんな恋する乙女のような顔をされたら、俺も全てを許す他ないじゃない。

 

「多分トウリくんは、私の願いを叶えるために、用意された存在なんだと思う」

 

 全てはエリカ(魔王)の手の平の上だったってことか。

 姫島ハルも、俺も。

 正直、エリカの祈りのパワーを舐めてたわ。もはや井戸に棲む長髪姐さんばりの、呪いと言っていいかも。

 

 所詮、小さき者はどうあがいたって、大きな存在の前には無力なのだ。

 

 まあ、あがくつもりなんて、さらさら無いんだけど。

 

「だからね…根室…」

 

 顔を真っ赤に染めたエリカが、泣きそうな顔で見つめてくる。

 あ、ダメ…。そんな顔されたら俺、心臓止まりそう。

 

「一度しか、言わないから…聞いてね?」

 

 なんでそんな不安そうなの?

 大好きな俺に否定されたらどうしようとか、思ってんの?

 死ぬほど可愛いかよ。

 

「うん、聞くよ」

 

 何を言われても、俺は全存在を掛けて肯定する自信があるよ。

 

 

「…お願い、もう私以外、見ないで」

 

 理性が爆発した。

 




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