【書籍化】エロチートを授かってタイムリープしたので、2度目の人生はクラス一の美少女を抱き潰す 作:月見ハク
春の夜風が、俺の前髪を揺らす。
とある湖のほとりにある、20階建ての高層ホテル。
その屋上に、俺はいる。
ただ屋上にいるのではない。
手すりを乗り越え、建物の縁に座っているのだ。
もちろん片膝を立て、もう片足は宙に投げ出している。
いや俺のポーズ、カッコ良すぎだろ…!
目をこらせば夜だというのに、眼下の街を歩くメス達の様子が見える。
スーパーな視力。
ホテルに入ってくる女性客の胸の谷間まで、バッチリだ。
「ふう、メスがゴミのようだ…」
『…根室、最低』
耳に付けたワイヤレスイヤホンから、鼓膜が勃起するような美声が響く。
「違うよ、エリカ以外の女がゴミって意味でねっ」
『……ならいいけど』
うん、今夜も最高に可愛い。
あの夏、エロチートが消え、代わりに「エリカによるエリカのための能力」を授けられてから、もう半年が経った。
俺は、彼女の偽善と酔狂の世直しに付き合わされている。
『根室、そろそろ始まるみたいだから、準備して』
「あいよ~」
イヤホンごしに、エリカのいるパーティー会場の喧騒が聞こえてきた。
『それじゃあ、第78回全国交流パーティーを開始しま~す! 男性参加者の皆さん、気に入った女の子の側に行ってくださーい』
陽気そうな男の声が響く。
この
すると、エリカの心配そうな声が聞こえてきた。
『あなたが、リンカちゃん?』
『…え!? えと、はい…あなたは?』
『私はエリカって言うんだ。リンカちゃん、これが乱交パーティーだって知ってた?』
『ら、乱交って…!? あ…あの、あたし、コウジくんに連れてこられて…オフ会だって聞いて』
『コウジくんて、あの主催者の人?』
『はい…そうです』
『言いなりなの?』
『……はい』
『そっか。じゃあ
『え…?』
どうやら今回の勝手に救出ターゲット、リンカちゃんを確保したらしい。
『根室、来て』
「ラジャー」
そのまま倒れ込むように、宙空に身を投げた。
一瞬おちんちんがゾワッとするような浮遊感があって、すぐに重力に引っ張られる。
意外に落下スピードって速い。あ、ちょっとこわい。
うん、このまま地面に落ちたら、すごい音するわ。
俺はホテルの壁に爪とつま先を引っ掛け、摩擦でスピードを殺し、結局ズザザザザッーとすごい音を立てながら地面に降り立った。
駆け足でホテルの中に入り、エレベーターに乗って2階を目指す。
「えっと確か、202号室だっけ…」
『根室、203号室だから』
あ、こっちのドアか。
「さて、と」
俺は、部屋のドアについている電子ロックを見つめる。
視線を左から右にスッと流すと、
ドアを開けてみる。
内鍵は……閉めていないようだ。不用心だなぁ。
スタスタと中に入る。
大部屋に、ざっと120人くらいの男女がいた。男女比は、意外にも半々くらいか。
たいして可愛くもないメス達に混じり、一際目を引く美少女・エリカがいた。
外国人とのクオーターで、彫りが深く整った顔立ち。
小柄で細身ながら、そこそこある胸。脱がすと分かる美乳。
芯の強さをあらわす、真っすぐ堂々とした眼差し。
ああ可愛い。
彼女の周りには、ヤレるとでも思ったのだろう、30人くらいのオス共が群がっていた。
つい、頭に血が上りそうになる。
すると、陽気そうな男が近づいてきた。
「あー君さ、誰?」
こいつがコウジくんか。
けっこうガタイがいいぞ。
事前資料だと、確かコイツは元傭兵なんだっけ。
しかも古武術やクラブマガにも精通した
「どうやって入ったのー。誰の紹介かな?」
にこやかだが、一切の隙がない。
声の感じ的に、なんかこう、ラノベとかで最初に入った冒険者ギルドで主人公に因縁つけてくる系の雑魚モブかと思ったのに。
…まあ、今の俺には関係ないんだけど。
俺はため息をこぼすと、
「ネ、ネムロマン、です……だ!」
言いながら顔が真っ赤になる。死ぬほど恥ずかしい。
彼女は腕を組みながら、グッと親指を立てた。なぜかドヤ顔だ。
…可愛い。
可愛いけど、後で絶対犯す。
「あーうん…君ちょっとこっち来て」
男が、すっごい速さで掴みかかってきた。
が、俺はすでにその位置にはいない。
瞬間移動レベルの横跳びで、男の手を避けたのだ。そして――。
必殺の――。
「ネ、ネムロパーンチ……」
「あぁ? なんだって? …んがッ」
人の恥に塩を塗り込んできた男に、俺は神速の手刀を食らわせた。
***
「エリカ、無事か!?」
駆け寄ると、彼女に群がっていた男達がサッと離れた。
俺は、全世界抱きたい女ランキングNo.1の肢体を、ぎゅうっと抱きしめる。思わず勃起してしまう。
「うん、ありがとう…ネムロマンっ!」
エリカの瞳は少年のように輝いていた。
俺の肉棒もがっくりと
「ネムロパンチ、かっこよかった」
「…ねえ俺それ、言わなきゃダメ?」
むっちゃダサいんだけど。
「言って」
まるで「好きって言って♡」みたいな感じで催促するエリカ。世界一好き。
そんな顔で懇願されたら、今後も言うしかないわなぁ……なんか一周回ってクールな気もしてきた。
「エリカを守るときだけ超人的な力を発揮する」。
そんな力をエリカに授けられた。
このビッチはそれを逆手に取り、自ら危ない現場に飛び込み、俺に助けさせるという愚行を繰り返している。
マジモンの馬鹿女だ。
「…ていうか根室、来るの遅かった。また屋上にいたでしょ?」
「いたけど」
「いちいち屋上に行く必要あるの? ここ2階なんだけど。1階のロビーで待機してればもっと早く来れたよね?」
極めてまっとうな指摘だ。
しかし、俺にも重大かつ重要な理由がある。
「いやなんか、かっこいいじゃん」
「……バカと根室は高い所が好き、てことだね」
エリカが、あきれたようなため息をついて、がっくりと下を向いてしまった。
いや、間に合っているんだからいいじゃん。
「まあピロートークは後でするとして、とりあえず証拠おさえよか」
「……うん、よろしく根室」
俺は、いまだ騒然としている会場内を光の速さで動き回り、全員の身分証を一瞬でスり、顔と一緒にカメラでパシャパシャ撮っていく。
120人分の撮影を2分くらいで終わらせて、エリカと、あとリンカちゃんと共に会場を後にした。
***
ホテルを出ると、真っ直ぐ白いワンボックスカーに向かう。
ドアを開けると、リンカちゃんの母親が座っている。
ハッと息をのんだリンカちゃんは、次の瞬間腕を伸ばし、母親と熱い
…かどうかは、知らない。
俺はその前に停車している、赤いスポーツカーの後部座席にさっさと乗り込んだからだ。
運転席から、金髪ショートの元ビジネスパートナー・宗谷ミキが顔を出す。
「や、お疲れさま」
「ミキさんも、事前資料ありがとね」
エロチートが消えてしばらくして、エリカと(その巻き添えを食う形で)俺は世直し活動を始めた。
そうしたら、どこで聞きつけたのか。
ミキが全面的に協力してくれるようになったのだ。
ドアがガチャリと開いて、エリカが隣に乗り込んできた。
「根室、リンカちゃんとお母さん、泣いて再会を喜んでたよ」
「あっそ」
家出して歌舞伎町でコウジくんと知り合って徐々に心理的に支配されるようになった挙げ句に乱交パーティーで性奉仕させられそうになった女の子の末路なんて、まるで興味がない。
「…ところで、今日もお迎えご苦労さまです。
エリカが不機嫌そうに、運転席を凝視する。
「いやいや、お安い御用だよ~」
ミキが、気にする様子もなくニコニコしている。
そのまま、一切気にする様子なく、車のエンジンをかけ、アクセル全開猛スピードで急発進させた。
あ、これアレだ。
男が入り込む余地のないバトルフィールドだ。
息止めてよう。
「私と根室だけでやれるのに。事前資料は…まあ助かってるけど、でも、なくてもできるし」
なおもエリカがミキに食って掛かる。
「まあいいじゃない。ネムにもメリットあるし、ここは持ちつ持たれつってことで」
そうなのだ。
乱交パーティー参加者の顔写真を押さえたりしてミキに渡すと、どうやらそれが、ネムの経営を有利に進めてくれるらしい。
富裕層や権力者は、お盛んってことなのだろう。
ネムの話になったので、俺は話の展開を逸らせようと、時事ネタをぶっこむ。
「そういえば仮想通貨、暴落してますね。ネムの保有する資産はどうな感じですか?」
「うーん、含み損はどんどん膨らんでるかな~」
すると、まだ牙をしまわない様子のエリカが、「ふっ」と笑った。
「所詮は
ああ、「仮りそめ」の部分がミキへの当てつけなのか。
女ってこういう時、妙に口が回って恐いわ。
「そうだね~
ミキが軽いカウンターであしらう。
「それは、なんかイヤ…」
エリカは簡単に落ち込んでしまった。
芸能界やビジネスの世界で揉まれに揉まれまくったミキに、口喧嘩で勝てるわけないのに…。
その様子バックミラー越しに眺めていたミキが、ふふっと優しく微笑んだ。
「だいじょーぶ。5年後にELコインは基軸通貨の一つになってるはずだから。そのための仕込みも進めてるし。良かったね、エリカちゃん」
すると、よせばいいのに、またまたエリカが噛みついた。
「そうだね。5年後……私と根室の間に2人目ができてる頃だね」
お前はビッチか。
エリカとセックスするとき、一応避妊はしてる。
当然、1人目だってまだだ。
でもたまに、エリカは種付けをせがんでくる。
「エリカ、俺たちまだ高校生なんだし、その…せめてエリカが卒業してからのほうがよくない? まあ別に俺は、いつできてもいいんだけどさ、でもさ、親としての準備とか、大人としての自覚とかさ…」
「いや私たち、実年齢で言ったら50歳超えてるからね」
何を今さらヒヨってんだか…とでも言いたげな顔で、エリカがため息をつく。
いや年とか関係なくさ、こういう話ってなんかモニョモニョしちゃうもんじゃん。男ってさ!
ふと視線を感じてバックミラーを見ると、ミキが初めて戸惑ったような表情を浮かべていた。
「ええっと…アラタ君、どういうことかな?」
ミキの笑顔に困惑が混ざっている。
それを見たエリカが、ハッとして俺を見た。
「ねぇ、もしかしてミキさんには、タイムトラベルのこと言ってないの?」
「…あ、そっちは言ってなかった」
「神」からエロチートを授けられたことは明かしてたけど。
タイムリープについては、そういや言い忘れてた。
いやだって、エロチートの支配下に置いていたから、いちいち説明しなくても勝手に納得してくれてたんだもん。
***
車が走る。
なぜかエリカもミキも無言だ。
一応、20年後の未来からやってきたこと、エリカもタイムリーパーであることを簡単に説明した。
説明、したのだが。
なんでこんなに気まずい空気が流れているのか。
ミキにタイムリープのことを話してなかったのって、そんなに重罪なの!?
しばらくすると、ミキが前方を直視したまま話しかけてきた。
「私は…未来でどうなってた?」
「ああ、えーと、投資とか化粧品ブランドのプロデュースで成功して、30歳手前で総資産50億円の美人セレブとしてニュースで紹介されてましたよ」
「そっか。だからアラタ君は…」
「え?」
「ほい、着いたよ、アラタ君のアパート」
気づけば、見慣れたボロアパートの前に停車していた。
雲隠れ中の俺のセーフハウスだ。
「あ、ああ…どうも、ありがとう」
「じゃね!」
ニパっと笑って、ミキはサイドウィンドウを閉じる。
そのまま、猛スピードで走り去っていった。
バックライトの光跡を見送る。
「……」
「根室って、致命的な部分で鈍かったりするよね」
当然のように一緒に車を降りたエリカが、ダメ出しをしてきた。
「なあ、ミキはどうして――」
「根室、私今日、泊まるから」
よっしゃああああああっ!!!
久々にエリカとセックスや!!!!
「エリカとセックスだ!」
「馬鹿。………するけど」
あああああ可愛いいいいいい!!!!!
俺は、あの日、病院で。
エリカに「もう私以外見ないで」と言われた。
だから、俺はエリカしか見ていない。