三次創作 ~あの娘たちの幸せはこれから先へーー~ 作:幻想猫
この時の彼女は生前の出来事を回想してた為、すごく機嫌が悪いし言葉遣いも悪いです。
出来るだけ父親寄りの性格にしたつもり。
肌を刺すような強い風がわたしを襲う。常人ならばすぐに蹲ってその場で倒れるはず。
わたしは今、カルデアの外にいる。特に理由はない。ただ何となく、外に出て景色を見ていたかったんだ。
「…………」
わたしは一体何をしているんだ?こんな寒いだけで何もない氷の大地で意味も無く足で立っているだけ。
『人殺し!』
誰かがわたしを睨み付け憎悪を向ける。
『何でこんな事をしたんだ!?』
誰かがわたしを責め立て恨み言を吐く。
『君に罪は無い。だが我らの安寧の為に死んでくれ!!』
フザケルナ。わたしに罪が無いというのなら、何故そうやって曇りなき殺意を向けて命を狙うんだ。
『お前が生き残る事が人類滅亡の引き金となってしまうんだ。恨むなら好きなだけ恨むが良い』
どうして…誰もわたしを助けてくれないの……。
『お前には最後まで……人であって欲しかったんだ……』
わたしはアナタを信じてた。なのにアナタはわたしを…裏切った……。
そして、この世の全てを憎悪したわたしは自身の感情に、内なる衝動に従って『悪』を…………滅ぼした。
「……っ」
視界がぼやけて冷たいものが頬を伝い手で触れる。それはわたしの涙だった。
「……ははっ。どうしてわたしはここにいるんだろう……」
一部を除いて『悪』を滅ぼしたわたしが、人理を救う為に戦う組織と共にいる。何かの冗談でしょう?
『わたし…わたし……今でも人類が憎くて仕方がないの……!』
部屋の中で涙を流して俯きながら2人にそれを伝えた。
『本当の事を言ってくれてありがとう。もし我慢できなくなったら、いつでもアナタの力になるからわたしに言いなさい。』
イシュタルは真剣な顔でそういった。
『安心するのだわ。どんな事があっても私はアナタの味方よ。何があっても絶対に!』
わたしを抱きしめて頭を撫で、泣きながらエレシュキガルはそう話す。
嬉しかった。わたしの味方で、愛してくれる人がいる事が。
苦しかった。生前犯した罪の意識がわたしの心を押し潰す。
「……うぅっ!」
今までの全てに耐えきらなくなったわたしはその場で蹲ってすすり泣く。そんな状態が長く続いた。
泣き止んだ後も蹲っていたわたしの下に誰かが近づいていた。弱気な姿を見せたくなかったわたしは立ち上がって顔を合わせる。
「……マスター。わたしに何か用?」
こんな所で何をしているの?早くカルデアへ戻ろう、とマスターは話してくる。
「どこへいようとわたしの勝手でしょう?それに、もうちょっとだけここにいさせて」
わたしは素っ気無い態度でマスターにそう話すと、だったら自分もここにいると言い出した。
「はぁ……。好きにすれば」
マスターには何を言っても通じないし聞かない。それを分かっているわたしは愛想の無い声で言い放つ。
「…………」
話す事が特に無かったから無言の状態が数分続いたけど、唐突にマスターが、今日が何の日か知ってる?と聞いてくる。
「……知らない。教えてくれる」
わからなかったわたしは正直に知らないと答える。マスターは苦笑いをしながら今日がバレンタインデーである事をわたしに伝える。
「……つまり、大切な誰かに贈り物をする日って事?」
あぁ、だから周りの人達は廊下や厨房を行ったり来たりして騒いでいたのか。バレンタインである事を知らなかったわたしは、その様子を見て騒がしい位にしか思わなかった。
「マスター。何そわそわしてるの?」
目の前にいるマスターの様子がおかしかった。まさかとは思うけど……
「もしかして、わたしからの贈り物が欲しいって言いたいの?」
わたしがそれを指摘すると図星だったのか、マスターは顔を赤くしながら無言で頷いた。
「はぁ……。カルデアに戻るよマスター。夜までに作って来るから部屋で待ってて」
わたしの言葉を聞いたマスターはすごく嬉しそうな顔で楽しみに待ってるよ!と言ってきた。その様子を見たわたしは思わず笑みが溢れる。
「ん?アリーシャじゃない。どうしたの?」
厨房へ来ると、ブーディカがわたしに話をかけてきた。
「マスターから今日がバレンタインだって聞いたから、ここで何か作ろうと思ったの」
「何を作るつもりなの?」
わたしは目を瞑りながら作りたいものを思い浮かべる。
「……決まったよ。わたし、パンケーキが作りたい」
「パンケーキが良いの?必要な材料が多いし、あたしも手伝うよ?」
「ありがとう。わたしが生地を焼くから、ブーディカは果物とホイップクリームをお願い」
この霊基になってからは何かを純粋に楽しむ事が難しくなったけど、料理をする時だけはその気持ちになる事が出来た。
「完成したのは良いんだけどこれは……」
「うん…作り過ぎちゃったね……」
わたし達の前にはたくさんのパンケーキが出来上がっていた。作るのが楽しくて夢中になった結果だ。
「余った分は子供達にあげようと思ってるけど、キミは誰に渡すつもりなの?」
「マスターやイシュタル達にあげる」
彼らの事を頭に浮かべると心が温かくなる。
「あの……親2人にはあげないの?」
「絶対嫌」
あの2人についての事が出た途端に心が冷え切り速攻で拒否する。今更家族面されても全然嬉しくない。
「そっか……。マスター達、喜ぶと良いわね」
悲しそうな顔でブーディカは話す。その様子を敢えてスルーしてわたしは笑みを浮かべながら答える。
「絶対に喜ぶよ。本気で作ったんだから」
その後わたしはブーディカと一緒に調理器具の片付けを終えてからパンケーキを3人に渡しに行った。
(……後でエミヤとシトナイにアリーシャが作ったパンケーキを渡しとこう)
ブーディカは心の中でそう呟いた。
イシュタルとエレシュキガルの2人にパンケーキを渡した後、わたしはマスターの部屋へ向かいに行った。
「入るよマスター」
扉を叩いた後にそう言ってわたしは部屋へ入る。マスターは待ってたよ、と話す。
「約束通り、夜までに作って来たよ。はいこれ」
少し恥ずかしくなったのか、わたしは素っ気無い態度で顔を反らしながらパンケーキを渡した。
「それじゃあ、わたし帰るから!」
逃げる様にその場を去ろうとすると待って、とマスターがわたしを止める。
「……何?用事ならもう済んだでしょ?わたしと一緒にいてどうするつもりなの?」
棘のある言葉遣いでマスターを睨み付けるが、良かったら一緒に食べないか?と言われる。それを聞いたわたしは目を見開いた。
「……本気で言ってるの?」
わたしの言葉にマスターは笑顔で頷いた。
「ありがとう……マスター」
それから暫くの間、パンケーキを食べながらわたしはマスターと何気ない会話をした。
「聞いてマスター。この間イシュタルとエレシュキガルがわたしの事で喧嘩してたのよ?それを止めるの本当に大変だったんだから」
こうしてわたしのバレンタインは幕を閉じた。
キャラ紹介
アリーシャ:記憶を取り戻した事で真名を思い出した為みんなからアリーシャと呼ばれている。生前の事を回想してたせいで不機嫌だった。
ブーディカ:アリーシャの料理仲間。アリーシャの親子関係をどうにかしたいと思ってる。
エミヤ:アリーシャの父親。未登場。アリーシャとの親子関係は最悪。
シトナイ:アリーシャの母親。未登場。エミヤ程ではないが親子関係は悪い。