「千雪、入っていいか?」
「……あ、はい! すぐ開けますから……!」
控え室でスマホをいじっていたら、ドアのノック音と共にプロデューサーさんの声が聞こえてきた。
私はすぐさま返事をすると、立ち上がってドアの方へ向かう。そして、鍵を外してドアを開けると、そこにはスーツを片腕に抱えた彼の姿があった。
「どうぞ……!」
「ああ」
プロデューサーさんは私の顔を見て微笑むと、部屋の中へと入ってくる。すれ違いざまに、スッキリとした香水の匂いが漂った。
それから、二人の時間を邪魔されないように、鍵をかけてから彼のそばに寄っていく私。
「準備はできてるみたいだな」
「ええ。メイクさんにも手伝ってもらいましたし、着替えもばっちりですよっ!」
そう言って私は、その場でくるりと回ってみせる。
今日の衣装は、水着の上に薄手のカーディガンを羽織ったものだ。フリルのついた可愛らしいデザインだけど、布地が少ない分、胸やお尻といった女性の恥部が強調されていて、ちょっと恥ずかしい。
でも、お仕事だから割り切らないと。それに、こういう大胆な衣装のほうが、男性にはウケがいいみたいだし。
「似合っているよ、千雪」
「ふふ、ありがとうございます……!」
プロデューサーさんも満足げな様子。彼の好みに合ってるなら、そこまで羞恥心を感じる必要もなかったかな。
……いけない。お仕事とプライベートは別だって、いつも自分に言い聞かせているのに。ダメだぞ、千雪。
「今日は日差しが強いみたいだから、少し負担が大きいかもしれないが……」
「そうなんです?」
「ああ。熱中症と日焼け対策を、怠らないようにしないとな」
心配そうな表情で、こちらを見つめてくるプロデューサーさん。
……ああ、やっぱり我慢できない。大好きな彼と二人きりなのに、アイドルでいられるわけがないじゃない。
私の、恋する女の顔が、表に出てきちゃうの。遠慮知らずの、卑しい雌の顔になってしまう。
「……でしたら、日焼け止めを塗っていただけませんか?」
「えっ、俺がか……? メイクさんとかに手伝ってもらったほうが……」
「私の身体は、もうあなたのものでもあるんですよ? だから、ね……?」
戸惑う彼に構わず、じりじりと距離を詰めていく私。
「いくら同性のスタッフさんでも、誰それ構わず肌を触られるのも、なんだか嫌なんです。プロデューサーさんも、自分以外の人が私に触るのに、耐えられるんです……?」
「うっ……」
そう言いながら、そっと彼の手を取る。そして、そのまま自分の胸に押し当てるようにして、ぎゅっと握った。
こんな大胆なことをするなんて、自分でもびっくりしているくらい。でも、それ以上に勝る感情が、私を突き動かすの。
「千雪……っ」
「ん〜?」
すると、彼は顔を真っ赤にしながら慌てて手を引っ込めようとした。けれど、私はそれを逃がさない。しっかりと握って、離れないようにしちゃうの。
ふふっ、可愛い反応だなぁ……。いつもは頼り甲斐があってカッコいいのに、こういうことには弱いんだから。もちろん、そういうところも大好きなんだけど。
「……わかったよ」
「ふふっ……! じゃあ、お願いしますね?」
少し間をおいて、彼は観念したようにうなずく。
それから私は、持参していた日焼け止めクリームをバッグから取り出すと、彼に手渡した。そして、ゆっくりとカーディガンを脱いでいく。
その様子を、固唾を呑んで見守るプロデューサーさん。やけどしちゃいそうなくらい熱い視線が、肌に突き刺さってくるのがわかる。
「ふふ……♡」
そして上下の水着も外して、生まれたままの姿になったところで、私は彼に微笑みかける。二人きりで、彼にしか見せない、私の本当の姿。
手で隠すなんて無粋な真似はしない。この姿を見せるのは、あなただけなんですよ? その事実を再認識させるかのように、私は自分の裸体を見せつける。
彼の大好きなおっぱいも、その先にある薄桃色の蕾も、はみ出さないよう整えたアンダーヘアも、恥ずかしいとこ全部。
もう何度も彼には晒してきたけど、それでもドキドキしちゃうなぁ。だって、好きな人の前だから、興奮しないわけないじゃない。
「まずは、背中から……」
「……ああ」
私は彼に背を向けて、両手を頭の後ろで組んだ。興奮したせいか、腋から汗がじんわりと滲み出てくる感覚がある。空調の効いた室内よりも熱い、私の熱。
途端に鼻につく、すえた匂い。でも、もう取り繕ったりなんかしない。彼には受け入れてもらえたし、ありのままの私を感じて欲しいんだもん。
「んっ……♡」
クリームで湿った大きな手のひらが、私の背中を撫でる。くすぐったいような気持ちいいような感覚に、思わず声が出てしまう。
そのまま円を描くようにして塗り広げられていき、肩甲骨辺りから徐々に下の方へと向かっていく。
「いつ見ても綺麗な肌だな。人前に出る仕事だから当然だろうけど、手入れとか大変じゃないか?」
「始めたての頃はそうでしたけど、今はもう慣れちゃいました。それに、こうしてあなたに触ってもらえるなら、もっと頑張ろうって思えるんです」
「俺に……か」
「ええ、あなただけに……」
恋する女性は美しくなるっていうけれど、それは本当のこと。だって、好きな人のために自分を磨くことが楽しくない女の子なんて、いないもの。
それに彼とえっちなことをするたび、どんどん変わっていく自分がわかるから。彼が喜んでくれる姿を見るたびに、もっともっと綺麗になりたいって思っちゃう。
その感情が溢れて、卑しく淫らな女の部分が顔を出してしまうの。今の、私みたいに。
プロデューサーさんは、そんな私の本性を知っても、変わらず愛してくれる。それだけで幸せだけど、もっともっと求められたい。
だから今日も私は、彼を誘惑してしまう。あなたが私をこんな風にしたんだよって、冗談めかした責任を押し付けながら。
本当は私だって恥ずかしい。いい歳した女性がはしたないって、心のどこかで思っている。でも、止められないの。それ以上にあなたと繋がりたいんだもの。だから、仕方ないよね……?
「んん……ッ♡」
彼の指が背筋の溝をなぞっていく感覚に、身体が震え上がる。ただ撫でられているだけなのに、どうしようもなく感じてしまう。その手つきはとても優しくて、まるで壊れ物を扱うかのような繊細さがあった。
……ダメ。そんなに丁寧にされたら、もっと乱暴に扱ってほしいと思ってしまう。私が痛がっても気にせずに、欲望のままに犯してほしいとさえ思ってしまう。
好きな人に苦痛を与えてでも自分のものにしたいと思えるほどの愛情。狂おしくなるほどの情熱。私が彼に抱いている感情は、そういうものだ。
普通じゃないってのは分かってる。でも、どうしようもないの。好きで好きでたまらないんだから。
こうなったのはたぶん、学生時代に恋をしなかったからだと、自分では思う。周りの子たちが、ありきたりな恋バナで盛り上がっているのを見て、聞いて……私には縁のない話だなって傍観していた。
運命的な出会いに夢見る少女。花より雑貨。それが桑山千雪という女の子だった。
そして、そのまま成人したものだから、いざ恋愛をするとなった時に、どうしたらいいのか分からなくなるの。
それに初めての恋は、あまりにも唐突で、運命的な出会いだったから。
『——アイドルになってみませんか?』
『どうしてもあなたに惹きつけられてしまって!』
『あなたの笑顔は、たくさんの人たちを元気づけられます!』
よくある勧誘の言い回し。でも、その言葉は、彼の言葉は、私の心を大きく揺さぶった。あまりにも真っ直ぐで、純粋で、それでいて力強い言葉だった。
今までの人生で、こんなにも誰かに必要とされたことなんてあった? ……ううん、きっとない。だからなのかな、この人についていけば、何かが変わるんじゃないかって、そう思ったの。
人を惹きつけるなにか。私を惹きつけるなにか。それが彼にはある。私から声をかけたのも、ただの親切心じゃなくて、運命の赤い糸に導かれたからかなぁ、きっと。……ううん、そうだよ。
『千雪はさ、何にだってなれるよ』
実際、私は変わった。283プロ——甘奈ちゃんや甜花ちゃん。社長やはづき、他のアイドルの子たち。私を応援してくれるファンの皆さん。
そして何より、プロデューサーさんがそばで支えてくれたから、私は今、ここにいる。
『千雪が望めば、それだけでいいんだ。……そのことを忘れないでほしい』
一言一句覚えてる、彼の言葉。嘘偽りのない、彼の言葉。
だから、私が望んだのは、彼が求める、たくさんの人を笑顔にするアイドルじゃなくて——
「終わったぞ」
「……えっ?」
「いや、日焼け止めを塗り終わったんだけど……」
いつの間にか、プロデューサーさんの手は止まっていた。どうやら考え事をしているうちに、終わってしまっていたらしい。
「……まだです」
「ん?」
「まだ背中だけじゃないですか。こっちも塗ってほしいなぁ……なんて」
そう言って、私はくるりと振り向く。それから戸惑いを見せる彼の手をとり、自分の胸へ導いた。
「ここは、水着の日焼けあとが残ると大変ですから、念入りに塗ってくださいね……?」
指が沈み込んで、むりゅりと形を変える乳房を見た彼は、ごくりと唾を飲み込んだようだった。もう私の誘惑を拒む様子はなく、その瞳には情欲の色が見え隠れしているのがわかる。
「ふぅ……っ♡」
少し遠慮がちに触れる手の感触に、こもった吐息を漏らす私。手のひらから伝わる熱が心地よくて、ついつい甘えた声を出してしまう。そのまま優しく揉んでもらうと、胸の奥底からじんわりと温かいものが広がっていくような気がした。
やっぱり、旦那さまに触られると全然違うなぁ……♡ もっと強くしてもいいんですよ? それとも、もしかして焦らしてます? だったら酷いですよぉ……♡♡ もっと気持ちよくなりたいのにぃ……♡♡♡ ふふふっ……!
そんな風に心の中で劣情を呟きながら、私は彼を見つめる。するとその視線に気づいたのか、彼もこちらを見つめ返してきた。
お互いの息遣いを感じるくらいの至近距離で見つめ合うと、まだまだ照れちゃうなぁ。顔が熱いし、心臓の音がうるさいくらいに聞こえてくるし、息が荒くなってしまう。
「さ、先っぽのほうも、してください……!」
たまらずおねだりしてしまった私に、プロデューサーさんは微笑みながら頷いてくれた。そして、すっかり芽を出した桜色の突起物を、指先で摘んでくる。
「——ッ!」
その瞬間、ビリッとした快感に襲われて、私は身体を仰け反らせた。ただ、彼が触れただけで、こんなに反応してしまうの。
自分でも何度かいじったことはあるけれど、それとはまるで違う感覚。やっぱり相手が好きな人だと、全然違ってくる。
私が敏感な体質だからじゃなくて、彼と相性が良すぎるせいだと思う。他の人じゃ、こうはならないもん。絶対に。
「……イったのか、千雪」
「い、イッて……ないですよ……?」
嘘。軽く、甘イキしちゃった。でも、彼の前だと、精一杯の強がりを見せちゃう。
「そうか……? じゃあ、続けるぞ……」
私を気遣う態度を見せつつも、指の動きは止まらない。摘んだ先端をぐりっと押し潰してきたかと思えば、人差し指でカリカリッと引っ掻いてきたりするの。
そして激しさを見せたあとには、乳輪を円を描くようになぞって、優しくくすぐってくる。その甘美な緩急に私の身体は跳ね上がり、口からは蕩けた声が漏れ出てしまう。
「はっ……あっ♡ んっ、んんっ……!」
普段は隠れていて、刺激に飢えている陥没乳首。その弱い二つを容赦なく責められて、頭が真っ白になりそうになっちゃう。
だらしなく口を開けて、舌を出して、ワンちゃんみたいにハッ♡ ハッ……♡ と呼吸を乱しながら、快楽に溺れていく。
ダメなのに、こんないやらしい姿見せちゃダメなのに、彼になら見られてもいいもんって思っちゃう千雪がいるの。あなたにしか見せない姿なんだから、遠慮する必要なんてないんだって思ってしまうの。
「ふぅう……! くっ……ひィ……ッ♡」
そんな葛藤を繰り返しているうちに、ついにその時がやってきたみたい。与えられた快楽信号が、先端から乳房全体に広がっていって、それが頭のほうまで伝わっていくような感覚に襲われる。
……あ、くる。深くて、高い波が。
そう思うと同時に、頭の中でバチンッという音が響いた気がした。それを合図にして、一気に弾けるような感覚に襲われ、視界がパチパチと明滅する。
「イッ……グぅっ……ッ♡ んッ……♡ んん゛ーッ……♡♡」
奥歯を噛み締めて嬌声を押し殺しながらも、盛大に達してしまう。全身が痙攣して、意識が飛びそうになるほどの衝撃に襲われる。
「あはっ……! はっ……! あ……ああ、あっ……♡ ……ッ♡♡」
パクパクと開閉する口は、息を吐くだけで精一杯で、言葉を発することもできない。その白んで霞んでボヤけた視界の中で、彼の顔が近づいてくるのが見えた。
「千雪……」
「んん!? ……んっ、ふッ♡ んん〜ッ♡♡」
ちゅっ、と音を立てて唇が重なる。最初は軽く触れ合うだけのキスだったのに、徐々に深くなっていくにつれて舌を絡め合わせる濃厚なものへと変わっていった。
呼吸がままならなくて息が苦しい。でもそれ以上に気持ちがいい。定まらない思考のまま夢中で求め合い、唾液を交換しあう私たち。
「じゅる……ふっ、んぅ……♡」
彼の肺から酸素を奪うように唇を密着させて、息を吸い込む。そうすると、彼の匂いが鼻腔いっぱいに広がった気がして、頭の中が幸せでいっぱいになるの。
自然と彼の首に回した手に力がこもってしまって、より一層強く抱きしめてしまうけれど、彼は嫌がる素振りも見せずに受け入れてくれる。それどころか、お返しとばかりに腰に手を回して抱き寄せてくれるのだからたまらない。
「……まだ、するか?」
「うん、もっとしてぇ……♡ もっと触ってぇ……!」
絶頂の余韻に浸る私の頭には、もはや理性なんて欠片も残っていなかった。あるのは、ただ目の前の雄を求める雌としての本能だけ。アイドルでも大人でもない、裸ん坊の千雪。
もっともっと愛されたい。もっと求められたい。そんな欲望に支配された私は、砂糖よりも甘い媚びきった声で、大好きな彼にお願いするの。
「あぁ……はっ……♡」
そして彼の両手が、私のお尻を鷲掴みにしたかと思うと、ゆっくりと揉みしだいてくるのがわかった。私は彼に身をゆだねるようにもたれかかって、されるがままになる。
……あ、ドキドキって、彼の鼓動が早くなった気がする。興奮してくれてるんだって思うと嬉しくなっちゃうな。
だから私は、もっともっと大胆になって、自分から誘うような真似をしてしまう。私の鼓動も感じてほしくて、彼に胸を押し付けるようにして密着する。すると、さっきよりもずっと激しくなっていく。
でも、足りない。私のほうが重いの。プロデューサーさんが私を愛する気持ちより、私が彼を愛する気持ちのほうが大きいんだぁ。
だんだんと近くなってきているけど、まだ。天秤が釣り合うようになって、初めて私たちは一つになれる。私と一緒の速さで、堕ちていけるように。
「きゃぅ……!」
「……はは、もうびしょ濡れじゃないか」
お尻を撫で回していた彼の手が、急にアソコに触れたことで、変な声が出てしまった。そしてヌルヌルと割れ目に沿って上下する指先に翻弄されながら、私は喘ぎ声を漏らすことしかできない。
「少し乳首をいじっただけなのに……。相変わらずの、おもらし癖だな……?」
「やんっ、ずるいですぅ……♡」
耳元で辱めるようなことを言われてしまい、今さらながら羞恥心が込み上げてきてしまう。それでも身体は正直で、さらに蜜が溢れ出てくるのがわかるくらいだった。
「ここも、こんなに硬くして……仕事中なんだぞ……?」
「……ッ! そ、それぇ……ダメッ……♡ んん……ッ♡♡」
しばらく割れ目をなぞっていただけの指先が、不意にクリトリスに触れてきたものだから堪らない。中から漏れ出たお汁を塗りたくるように擦られると、それだけで腰が砕けてしまいそうになった。
でも、しっかりとプロデューサーさんに抱き止められた私の身体は、逃げることを許されない。ただただ与えられる快感に身を委ねるだけの存在に成ってしまう。
——愛する旦那さま専用の肉人形。はしたなく撒き散らした肉汁で、旦那さまの手を汚す愛玩具。
もっとして。もっといじめて。所有者に使われてこそ、雑貨の価値はあるんだから。千雪は、あなたの元でしか輝けない存在なんだから。
「おしおきだ」
「イッ……!? ひっ……きっ、ひぃ……ッ♡♡」
私の心中を察してくださったのか、彼はクリトリスの皮を剥いて、直に触れてきた。
十二分に芽吹いたソコは充血して、ぷっくりと膨れ上がっているはず。すりすりと指先の腹で撫でられるだけでも、鋭い電流のような快感が走るというのに、つままれたり押し潰されたりすれば、ひとたまりもない。
「ふッ……! んふッ! く、くふぅ……ッ♡」
すっかりスイッチが入った私の感覚は、クリトリスを撫でる彼の指紋を感じ取れるほどに研ぎ澄まされていた。そのせいで、些細な動きすら二乗三乗に増幅されて、強烈な快楽となって襲いかかってくるの。
「いっ……く……ッ! イくッ……イクぅ……! イってるッ……!? イッてるのッ! もうイッてる……ッ! からぁ……ッ♡♡」
「おいおい、シワになっちゃうだろ……?」
イくのが止まらない、抑えられない。数秒ごとに訪れる絶頂の波に、私は翻弄されるしかなかった。
ガクガクと身体を震わせて、涙を流して、よだれを垂らしながら喘ぐだけ。彼のシャツが汚れるのも構わず、必死にしがみつくことしかできず、ひたすらにされるがまま。
「む、むりぃ……っ! とまっ……てぇ……♡♡ とめ、てぇぇ……ッ!」
「ははっ。いつもしてもらってばかりだから、遠慮する必要ないぞ?」
そんなみっともない姿を晒しているのに、プロデューサーさんは決して手を休めようとはしなかった。反射的に漏れ出た懇願も、無慈悲にはねのけられる。それに私が絶頂を迎えるたびに、愛撫が激しくなる気さえしてくる。
きゅっきゅっ……♡ つんつん……♡
二本の指先で、硬く膨れ上がったクリトリスを容赦なく扱きあげられる。根元をキュッと摘まれて、先っぽを爪でカリカリと引っかかれると、身体が弓なりに反り返ってしまうくらいに感じちゃうの。
「イッ……! ック……っ♡♡ イくイクッ……っは♡ グッ……♡ イひぃッ……! ……っク、イグッ……! イグぅ……ッ♡♡♡」
そして、空いた片方の手で割れ目をなぞられてしまえば、もうどうしようもない。おまんこの浅いところを、トントンッ♡ とノックするように叩かれるだけで、簡単にイかされてしまうんだから。
「指一本でもキツいな……」
「はっ……! はあ゛ーッ! ふっ、うぅん……ッ♡ くひぃ……いぃ……♡ ……ッ!」
まだ男の人の……彼の味を知らない私のおまんこは、指をおちんちんだと勘違いして、奥に迎え入れようと必死になって絡みつくけれど、彼がその先に進むことはない。あくまで優しく触れるだけの刺激を、無情に与えるだけ。
奥に欲しい。彼が欲しい。とっても切なくて、涙が出るほどもどかしい快感。おまんこも涙のかわりに愛液を流して、それが太ももを伝って垂れ落ちていくのが分かる。
「……ここがいいのか、千雪」
「やっ……! そこぉ……ばっかりぃ……! ひィ……ッ♡ らめっ……なのにぃッ♡♡ おかひくっ、なっちゃうぅんん……ッ!」
とんとん……♡ すりすり……♡
私の反応を楽しむように、何度も何度も同じ場所を責め立てられる。そのたびに腰が大きく跳ね上がってしまって、まるでみずから快楽を求めてしまっているかのような格好になっちゃうの。
「はひぃい……ッ! いっ、いひぃ……♡ あっ! あ、あ゛ああ゛ーッ♡♡♡」
ちゅくちゅく……♡ きゅんきゅん……♡
絶え間なく送られる甘い痺れに、脳まで溶かされてしまいそう。だらしなく舌を突き出しながら、声にならない嬌声を上げ続ける私の姿は、とても滑稽に見えるはず。
でも、そんな姿を見られていると思うと、余計に興奮してきてしまうのだから不思議。きっとプロデューサーさんのことだから、私の痴態を見て興奮してくれているに違いないもん。そう思うと嬉しくて、ますます気持ち良くなっちゃうんだぁ。
「き、きもちっ、きもぢ、いぃいひぃ……っ♡ ひぐっ! ……ッ♡♡ い、いぐぅ……んッ♡♡ く、くぅうぅん……♡♡」
思わず口にしてしまったその言葉は、紛れもない本心だった。愛する人に触れられるのが、なによりの女の悦び。もっと求められたい、もっと気持ちよくなりたい、もっと可愛がってほしい。そんな想いばかりが募っていく。
「——イッ……!? き、きゅうぅぅんーッ!!」
「おっと……!」
アソコを弄ぶ彼の指先が、不意に私のイイところに触れた。お腹側の、少しザラついた部分。
自分でするときもたまに触ることはあるけれど、敏感すぎるあまり、怖くて強く刺激できないところ。
そこを、プロデューサーさんの指が、トン……っと叩くように触れた瞬間、目の前が真っ白になった気がした。今までとは比べ物にならないくらいの快楽に襲われて、悲鳴ともとれるような嬌声を上げてしまう。
「千雪、少し声を抑えて……」
「あ゛ッ……! ……ッ!? ……はっ、かはッ……! あっ……あ、あぁ……♡ あはぁ……♡♡」
わからない。気持ちいいとか、幸せだとか、そんな言葉では言い表せないほどの衝撃。お腹の奥から、じんわりと温かいものが広がっていく。
息が乱れて、頭がボーっとして、何も考えられなくなるほどの強い幸福感に包まれているにもかかわらず、身体の奥底から湧き上がってくる衝動が抑えられない。
「ふーッ! ふーッ……! ふぅん……ッ!」
声を抑えようと、彼のシャツに噛み付く。このままだと、おかしくなっちゃう。幸せだけど、危険なモノ。
防衛本能なのか、その熱を帯びた疼きは、液体となって外に出ていこうとする。
——ピュルル……! ピュ……ッ!
「——ゆき……?」
「はひぃ……いぃ……っ♡ あっ……あはっ! くっ……はーっ♡ はーっ……♡ はあ゛ーッ……んんんっ……♡ ……ッ♡♡ ……はっ♡ ……♡♡」
身体の熱を冷ますように、断続的に吹き出す潮。まるでおもらしのように溢れ出るソレを止めることができないまま、私は腰をカクカクと浅ましく揺らし、快楽の波がひくまで絶頂を続けることしかできなかった。
「——桑山さん、そろそろ出番でーす!」
そのまま夢見心地でいた私の意識を現実に向けたのは、ドアの向こうから聞こえてきたスタッフさんの声だった。
「……あれ、桑山さーん?」
私が反応しなかったからか、もう一度呼びかけられる。
「千雪、返事は?」
「——ッ♡♡♡」
未だ甘い余韻にひたる意識の中、不意にキュッとクリトリスを摘まれたことで、反射的に背筋が伸びてしまった。そしてそれと同時に、視界がはっきりとしていく。
「……は、はぁ〜い! 大丈夫れぇ〜す……♡」
「では、予定の時刻までに現場までお願いしますねー」
呂律はまるで回ってなかったけれど、なんとか返事をすることができた。ドア越しだから、スタッフさんには不審に思われなかったみたい。
「……大丈夫か?」
「ええ。少し、腰が抜けちゃったらけれすからぁ……♡」
「撮影前なんだから、ほどほどにしないとな」
「……んっ!」
こんなになったのは、あなたのせいなんだぞ! そんな思いを込めて頬を膨らませてみるけど、プロデューサーさんは意に介さない様子で微笑んでくるだけだった。
なんだか悔しいなぁ。絶対にお返ししてあげちゃうんだから、もう。
「あとは、一人でいいので……」
「……わかった。先に入ってるから、遅れないようにな」
心配そうにする彼を見送り、控え室には私一人になる。
それから、ボディシートで軽く身体を拭いたあと、乱れた髪と化粧を整えようと、鏡の前に立つ。
「……もう折り返し……うん」
上気した頬に手を当ててみれば、自分でも驚くくらい熱い。さっきまでの行為を思い出してしまい、またドキドキしてしまう。
「んっ……」
興奮冷めやらぬ満開といった様子の乳首に触れると、甘い痺れが走った。でも、それだけ。プロデューサーさんに触られたときはあんなに気持ちよかったのに、自分の手だと物足りない。
それは私の身体が、彼のものになっていっている証し。彼でないと、私は満足できなくなっているんだって思うと、嬉しくてたまらない。
「そろそろ、スパートかけなくちゃ……ね」
私は自分のスマホを手に取り、とあるアプリを起動させる。
【催眠アプリ】
読んで字の如し。相手の精神に干渉して、対象を意のままに容易く操ることのできる、魔法のようなアプリ——
「……くふっ!」
まさか。そんな都合の良いもの、あるわけないじゃない。そう信じているのは、プロデューサーさんだけ。これを見せるだけで催眠をかけられるなんて、子供騙しもいいところ。
私はあの日、プロデューサーさんから催眠アプリを使われて、催眠状態になった——ふりをした。なんだか必死になって説明するものだから、そういう体でいてほしいのかなって思ったから。
いつか甘奈ちゃんたちとやった、反対ごっこの延長線みたいな感じかな。本音を素直に言えない気持ちは、痛いほどわかっているつもり。
それで、なにをするのかなぁって身構えていたら、いきなり『千雪を愛してる』なんて言うだもん。私びっくりしちゃった。
でも最近、私に対してよそよそしい態度だったのが、色々と葛藤していたからだってわかってホッとしたし、嬉しかったんだぁ。だから私も、その気持ちに精一杯応えなきゃって思って、彼の望み通りに振る舞おうとしたの。
『貴方を愛しています』
ずっと隠していた気持ちを、プロデューサーさんに便乗するかたちで伝えた。両想いなんだから、取り繕う必要なんてないもの。
私が抱いていた感情とおんなじものを、彼も持っていた。それがわかったんだから、私たちは晴れて恋人同士になって、これからいーっぱいイイことしていくんだろうなって、そう思ったんだけど……。
『——今からは、普段どおりにしてくれないか』
『——だ、駄目だ! それは、それだけは……!』
どうやらプロデューサーさんにとっては、違ったみたい。てっきり喜んでもらえると思っていただけに、なんだか拍子抜けしちゃった。
そう。私の【好き】と彼の【好き】は、同じようで別のもの。大きさも、重さも、形状も、明るさも、色も、硬さも、伸縮性も、粘度も、味も、何もかもが違う。すれ違いが起こるのも、必然。
プロデューサーさんは、間違いなく私を愛してくれているんだろうけど、同時に罪悪感もあるんだと思う。担当アイドルに手を出してしまった、信用を裏切ってしまった、姑息な手段をとってしまった……そんなところ?
きっと彼は、自分が悪いと思っているんだろうなぁ。でも、これは私が望んだことでもあるんだもん。全部承知の上でやったことなの。一人で責任を感じることなんてないのに。
「ほんと……好きだなぁ、やっぱり。大好き……」
でも、逃げるのはダメ。自分だけスッキリして、三十日経てば何もかもなかったことにして終わりなんて、絶対に許さないんだから。
私は、ふたたびスマホに意識を向ける。いつの間にか私のスマホにインストールされていた、催眠アプリ。
これは、プロデューサーさんのと同じもの。もちろん催眠効果なんてない、それっぽい説明文と機能があるだけの、ただのジョークアプリ。
胡散臭いけど、物は使いようなの。おもちゃの使い道なんて、雑貨好きの私にはお手のものなんだから。
「ふふ、少しあげちゃおうかなっ。今日はたぁくさんっ、仲良ししてもらうんだから……!」
スマホの画面を指でスワイプして、アプリ内にある催眠深度のゲージを上げる。こうすると、プロデューサーさんのスマホにある催眠アプリのゲージも連動して表示される。
これは、私のスマホからしか弄れないみたい。彼のスマホでは、私の気分次第で上下する数値を眺めることしかできないの。
これでプロデューサーさんは、逃げられなくなる。私から目をそらすこともできなくなる。彼自身の欲望と、私の情欲に向き合わざるを得なくなる。
そして少しずつ誘導していって、私と同じになるように育んでいく。水と油は同じ液体でも、一つに混ざりあえないもん。
そのために使えるものは、なんでも使う。催眠アプリもそうだけど、筆頭は私の身体。一番信用できる女の得物。
理性の壁を壊すには、劣情が何よりも効果的。私のは、男性ウケする魅力があるって、自覚しているから。
だから、たくさん誘惑しちゃう。私のことを好きにさせたうえで、他の女に目がいかないようにするの。
この胸も、お尻も、手も、口も、足も、髪も、匂いも、おまんこも、アナルも、ぜぇんぶ使ってあげる。使わせてあげる。使ってもらう。彼のすべてを、私で満たしたいから。
「くふふっ……!」
私は……大人じゃない。でも、身体はもう立派な女。男を……あなたを求めて止まない、淫らで浅ましい雌の肉体。あなたの赤ちゃんを産めるのは私だけなんだぞって、全身に刷り込みたいの。
そして、彼にも同じことを言ってほしい。お前は俺の種でしか孕めないんだぞって。それくらい私に夢中になってほしい。私の身体に溺れてほしい。私なしでは生きられないくらいに、どうしようもなく依存してほしいの。
「……欲しくなっちゃうなぁ」
私は、ゴクりと生唾を飲み込む。彼のおちんちんの味と匂いを思い出すと、唾液が大量に湧き出てくる。
ひとたび情欲の火がついてしまうと、自分では鎮めることができない。むしろ燃え上がらせてしまう。あなたと一緒に、身を焦すまで愛し合いたい。
「はあ……」
今すぐにでも彼に口付けして、舌をちゅうちゅう吸って、生暖かい唾液をあげっこして、おっきした皮かむりおちんちんをじゅぽじゅぽしゃぶって、濃ゆいのをびゅるびゅる中に注いでほしくなっちゃう。
その先……おまんこもしてほしいけれど……でも、まだ。
「んっ……!」
この、もうちょっと欲しいってところで我慢すると、すごく気持ちいい。とても苦しいけど、イイの。
お腹の奥——食いしん坊で腹ぺこな卑しん坊が『はやく食べさせてぇ〜』って、お口をぱくぱくきゅんきゅんさせながらよだれを垂らすのが、外からでもわかっちゃうんだぁ。
「さっき拭いたのになぁ……もうっ」
好きなものは……本当に欲しいものは、最後までとっておく。それは今も変わらない。
『愛してる』
彼が言った一言のフレーズ。それだけで、迷っていた私の行き先は決まった。
アイドルへの道に手を取ってくださったプロデューサーさん。それから一緒に歩みを進めて、楽しいことも辛いことも共有してきた。時には意見の違いから些細な衝突することだってあったけど、それでも私たちは支え合ってきた。
だから、今度は私の番。アイドルからの分岐点。片側しか選べない道を、彼の手を取って迷わず真っ直ぐに進む。
たとえその先に待つものが幸福じゃなくて、破滅だとしても構わない。あなたとなら堕ちていける。陽のあたらない地の底でも、花を咲かすことができるから。
本当に【好き】なもののために、他の【好き】を諦める。これは雑貨みたいに、趣味として両立できるものじゃない。
事務所の信用の失墜。ファンの皆さんへの裏切り。何よりも……甘奈ちゃんたちへの不義理。どれもこれも、私にとっては重すぎる十字架。
でも、私は選んだの。大好きなプロデューサーさんと、それらを天秤にかけて私は……私は、彼を獲ることにした。その選択に後悔はない。迷いもない。私は、私の道を行くだけ。
私が一番好きなのは、プロデューサーさんだもん。その気持ちを偽るのは、自分自身を否定するようなもの。
だから私は、千雪であるために、大人であることを捨てる。アイドルの桑山千雪を、捨てる。
これから先は、プロデューサーさんのためだけに生きるの。彼の姓を名乗って、桑山千雪と決別するの。
そして、彼の赤ちゃんを孕んだとき、それから大人になればいいの。
「だから——」
だから、あなたの人生も、私にください。
私と同じ愛情を抱いてください。
あなたが大事にしている私以外を全部捨てて、ずっと私のものになっていてください。
誰にも渡したくないんです。
独り占めにしたいんです。
他の女と楽しそうに話している姿を見ていると、胸が締め付けられるように苦しくなるんです。
あなたを私だけのものにしたくて、気が狂いそうになるんです。
私はこんなにも愛しているのに、どうしてあなたはそんなにも冷静でいられるんですか。
もっと執着してください。
嫉妬して、怒って、独り占めしようとしてください。
グラビアの仕事をとってくるなんて、私を晒すのに抵抗がないんですか。
恋人が自分以外の男性にいやらしい目で見られるんですよ。
卑しい姿を写真に撮られて雑誌やインターネットに掲載されるんですよ。
もしかしたらオナニーのおかずにされちゃうかもしれないんですよ。
あなたの千雪が性的に消費されるんですよ。
辛くないんですか。悔しくないんですか。平気なんですか。やきもち焼かないんですか。それとも嬉しいんですか。
だったら——
「ふッ!」
パシッと乾いた音が部屋に響く。私は無意識のうちに、自分の頬を叩いていた。おかげで、思考がクリアになる。
「今は仕事中だぞ、千雪。私はアイドルの桑山千雪なんだから……」
そう、私はアイドルの桑山千雪。今やるべきことは、プロデューサーさんがとってきてくださったお仕事を、全力でこなすこと。私的なことを考えてる場合じゃない。
「やだ、急がなくちゃ……!」
スタッフさんを待たせたらいけない……ううん。なにより、プロデューサーさんが待っているんだから。
私は手早く化粧直しを済ませると、日焼け止めクリームを塗ってから衣装を着て、控え室をあとにした。