俺は仕事を早めに切り上げ、小走りで自宅に向かっていた。雷を伴って一帯に降り注いでいた大雨は、いつの間にか止んでいたが、それでもまだ空は分厚い雲に覆われている。
地面には所々に自然の名残りである水溜りができており、踏まないように注意深くして避けながら、帰り路を急ぐ。
「……ふぅ」
そして、ようやく自宅マンションのエントランスまで辿り着いた。
湿気と不安からくるのか、身体中に嫌な汗をかいてしまっている。早く確認しないと、この緊張感は拭えそうにない。
「やっぱり、反応なし……か」
俺は呼吸を整えながら、手に持ったスマホの画面を見て、大きく息をはいた。
画面に表示されているのは、チェインと呼ばれるトークアプリの会話履歴。アプリ内で個人間のやりとりが可能であり、電話やメールよりも手軽で、使用料もタダという便利な代物だ。
その一番下には、数時間前に千雪へ送った、俺の私的なメッセージが表示されていた。しかし、それに対して既読を示すマークは付いていない。
いつもは、ものの数秒で反応があるだけに、今回に限ってまったく音沙汰なしというのは不気味だった。
千雪に無視されるような心当たりは一切無いし、むしろ最近は良好すぎる関係を築けていたと思う。だからこそ、余計に心配になってしまうのだ。
一応電話もかけてみたが、こちらも繋がることはなかった。そうなると、千雪の身に何かあったんじゃないかという疑念が、強くなってくる。
でも、数時間反応がないだけで、気にしすぎだろうか。子供の心配をする親じゃないんだから。
そんな事を考えながら、エレベーターに乗り込む。そのまま目的の階へと到着すると、足早に自分の部屋へと向かった。
玄関の鍵穴に鍵を差し込み、捻る。ガチャリという音と共にロックが解除され、俺はそのまま玄関に足を踏み入れた。
「ただいま」
静寂の中に、俺の声が虚しく響き渡る。数秒待っても返事はない。
それでもリビングには、すでに明かりがついていた。そして玄関先には、キッチリと揃えられている千雪の靴がある。
「なんだ、いるんじゃないか」
どうやら、家にいるのは間違いないらしい。チェインでも千雪から昼頃に、夕飯を作って待っているとの連絡があったからな。
しかし、いつもはすぐに出迎えてくれるはずの彼女が来ないということは、やはりなにか変だ。まさか倒れてたりしてないだろうな……。
「千雪……?」
俺は慌てて廊下を抜け、リビングを確認する。だが、そこに千雪の姿はない。
ローテーブルの上に裁縫道具が散らばっているのをみると、どうやらここで作業をしていたようだ。しかし、几帳面な千雪が片付けていないのだから、まだ途中なはず。じゃあ、千雪はどこに……。
「千雪ー!?」
邪魔なスーツの上着やネクタイを投げ捨て、声をあげながら捜索を続ける。
しかし、トイレや風呂場もものけの殻だ。残る場所は、寝室だけか。
もしかすると、体調が悪くて休んでいるだけかもしれない。そんな楽観的な考えを抱きつつ、寝室のドアノブに手をかける。そして、ゆっくりとドアを開いた。
「うっ……」
瞬間、部屋の中からむわっとする湿気が顔を撫でた。同時に、嗅ぎ慣れた生ぐさい匂いも鼻腔を刺激する。
「……あっ」
明かりがついていた室内を見回すと、ベッドの上に一糸まとわぬ姿の千雪が仰向けになっていた。枕元には、彼女が着ていたであろう衣服が畳まれた状態で置いてある。
しかし、全裸なのはいいとして、布団も掛けずに四肢を投げ出すように横たわっているのは、とても普通とは思えない様子だ。
そして、傍らに置かれている物を見て、俺は思わず息を吞んだ。全裸の千雪とそれ……この符号が意味するものは、一つしかないだろう。
「千雪……!」
確信に近い予感はあるが、その前にやらなければならないことがある。俺はベッドに駆け寄り、千雪を起こそうと声をかけた。
「ん……」
「千雪っ、千雪……っ!」
「うぅ……うん……?」
何度か呼びかけると、千雪はゆっくりと目を開いた。それから、ぼんやりと天井を見つめた後、続けて俺の顔を見つめる。
「……大丈夫か?」
「あれ……なんでぇ……?」
まだ意識がハッキリしていないのか、千雪の反応は鈍い。それでも無事であることに、ひとまず安堵する。
「帰ってきたんだよ。電話しても出ないから心配になって、定時であがらせてもらったんだ」
「……あぁ……あっ!?」
徐々に覚醒してきたようで、千雪はハッとした表情を浮かべたかと思うと、慌てて身を起こして、自身の恥部をサッと手で隠した。その顔は急激に色味を帯びて、耳まで真っ赤に染まっていく。
その仕草はとても可愛らしく、普段の彼女からは感じられない色気のようなものを感じてしまい、思わず胸が高鳴った。
二人きりのときは、挑発的で必要以上に迫ってくるのに、こうして恥じらう姿を見せられると、男心をくすぐるものがある。
「こ、これはですね……! えっと、そのぉ……」
「いや、大体の事情はわかったから、慌てなくてもいいよ」
そう言いながら、俺はベッドの端に腰掛けた。すると、ギシッと軋む音が部屋に響く。その音に反応してか、千雪の身体がビクリと震える。
今の千雪は、いつにも増して扇情的だ。照明の光を反射するくらい汗ばんだ肌に、ほんのりと上気した頬。そして罪悪感でも感じているか、不安げに揺れ動く潤んだ瞳。
それに涙や鼻水の乾いた跡が、美しい顔にアクセントを加えていて、何とも言えない色香をかもしだしている。
「でも、まさか千雪がなぁ……。俺が一人ですると怒るくせに、自分は隠れてしてたんだもんな?」
「……うぅん」
そんな千雪を見つめながら、わざとらしく言った。その言葉に、彼女は気まずそうに目を逸らす。
身体は大人びているにもかかわらず、まるで甜花みたく子供っぽい反応だな……なんて思いながら、俺は言葉を続けた。
「それに、こんなおもちゃまで使って、ベッドを汚して……。毎日してるのに、俺への当てつけのつもりか?」
「ち、違います! 旦那さまに不満なんて、そんな……! わ、私が……私が全部いけないんです……。ごめんなさいっ、ごめんなさい……!」
俺の言葉に、千雪は身を乗り出しながら必死に訴えかけてきた。その、いかにも泣きそうな表情に胸を打たれるものはあるが、同時に嗜虐心を刺激される。
だから本気で怒るつもりはないのに、なんだか少し意地悪をしてやりたくなるんだ。
それに、千雪の姿勢……。両手をついて、前屈みになっているのを正面から見たら、どうしても視線がそこに吸い寄せられてしまう。
二の腕に挟まれていつも以上に強調されている二つの果実が、重力に従ってUの字みたく垂れ下がっている様は、何とも煽情的で堪らない光景だった。
そしてその先端には、ピンッと立った突起が見てとれる。事を致してからどのくらい時間が経過してるのかは知らないが、未だに余韻が残るくらい激しい行為だったのだろう。
「……どうだか。俺よりおもちゃに夢中だったんだろ? 裁縫道具をそのままにして、夕飯を作ることも忘れるくらいに」
「やっ……それはっ……!」
返す言葉もないといった具合に、千雪は口をパクパクと開閉させた。
大人げないという自覚はあるものの、彼女のうろたえる姿が愛しくて、つい詰問を投げかけてしまうな。
しかし、俺を差し置いて、千雪は一人遊びに耽っていたのだと思うと、なんだか複雑な気分になる。別に浮気されたわけじゃないんだけど、なんとなく寂しいというか、なんというか。
……ああ、そうか。あのときの千雪も、今の俺と同じ気持ちだったのか。きっとそうだろう。それなら、遠慮する必要なんてないよな。
「……なんてな。大丈夫、怒ってないからさ」
「あっ……んんっ」
俺は、いったん千雪を落ち着かせるために、そばに寄って優しく抱き締めた。そして、頭をそっと撫でてやる。
その瞬間、千雪はビクンッと身体を大きく震わせたが、すぐに脱力し、身を委ねてきた。こうしてやると落ち着くのは、今までの経験でわかっている。
「最近忙しくて、ゆっくりしてやれなかったからな……。それで寂しくてやったんだよな?」
「ん……♡」
耳元で囁くように言うと、腕の中で千雪が小さく頷いた。そして、甘えるようにスリスリと頭を擦り付けてくる。
いつもは、お姉さん的な立ち振る舞いをしている千雪だが、二人きりになると途端に女の子らしく甘えてくることが多い。
特に、性行為をするときは顕著だ。それは日増しにエスカレートしているような気もするが、決して悪い気分ではなかった。
「千雪……」
しばらくしてから、俺は千雪の肩に手を置き、身体を離した。それから、名残惜しそうな顔をする彼女の額に手をやって、張り付いた前髪をかき分けて整えたあと、そのまま頰へと滑らせていく。
汗ばんでしっとりとした肌の感触を楽しむようにして触ると、それだけで気持ちが昂ぶってくるのを感じた。千雪の肌は、どこもかしこも柔らかくて、触り心地が良い。
「触るぞ?」
「やんっ……♡」
その中でも一番柔らかい部分は、やはり胸。手に吸いつくようなもちっとした感触があり、何度触っても飽きさせない魅力がある。
わし摑みにすると、しずみ込んだ指の間に挟まれた肉が形を変えて、むにゅんとはみ出す様は非常に扇情的だ。こんなにも中身が詰まっていれば、さぞかし質の良い母乳が出ることだろう。
それに男根を挟んだときには、最高の乳圧を感じることができる。肌の質感も相まって、役割としては性器そのものと言っていいかもしれない。
赤子にする授乳など二の次で、精を搾り取るためにあるといっても過言ではないくらいだ。
「ふうぅ……っ♡ くふぅ……ッ♡」
片手では収まりきらない大きさのため、必然的に揉みしだく形になるのだが、千雪は痛がる素振りを毛ほども見せずに、口から悩ましい吐息を漏らす。
そして、ピンッと上向きに筋を伸ばした恥ずかしがり屋の乳首を指の腹で可愛がってやれば、その吐息は瞬く間に嬌声へと昇華される。
「気持ちいいか、千雪……」
「はい……! やっぱり旦那さまじゃないと、ダメみたいです……っ♡」
千雪はトロンとした目つきで答えると、俺の手に自身の手を重ねてきた。
どうやら寝起きの身体が刺激によってほてり、またスイッチが入ったようだ。だが、それでいい。
「そうか。じゃあ、俺とおもちゃ……どっちがいいんだ?」
「えっ……? そ、そんなの、旦那さまに決まってます……!」
「……そうだよな」
「ええ……! 当たり前じゃないですか、もう……」
俺の問いかけに対して即答する千雪だったが、その声色には明らかに不安の色が滲んでいた。内心は完全に否定できないあたり、やはり後ろめたい気持ちはあるのだろう。
「だったら、試しても構わないよな?」
「……なにを、です?」
「これをさ」
俺はニヤけそうになるのを堪えつつ、努めて冷静な口調で続けた。そして、ベッドの上に転がっている道具を手に取ると、それを見せつけるようにしながら言う。
その途端、千雪の表情が強張っていく。目をわずかに細め、口を一文字にむすぶ。これから何をされるのかを察したように。
「俺のほうがいいのなら、これを使っても簡単に乱れたりはしないだろ……?」
「あっ……!」
俺はそう言いつつ、千雪をベッドへ押し倒した。
それから足を開かせて、座ったまま間に入り込み、両足の付け根にある秘所へ手を伸ばす。側から見ると、正常位でしているような体勢だ。
「そんなっ、だめぇ……っ!」
「なんだ、全然乾いてないな。それに、すごい匂いだ……」
「うっ、うぅ……!」
指で割れ目を開くと、ぷっくりとした膣内から白く泡立った本気汁が溢れ出てきた。モノを挿れたら、こっちがふやけてしまいそうな蜜穴だ。
そのパクパクと糸を引きながら伸縮する様は、飢えた獣が貪欲に獲物を求めているようにも見える。
そして、むわっとした熱気と共に漂ってきた雌の臭気は、今までの比ではないくらいに濃いものだった。ここで漏らしたのかはわからないけど、鼻につくアンモニア臭も混じっている。
先ほど抱きしめたときも感じたが、千雪の体臭は、俺の情欲を掻き立てる媚薬のような効果があるのかもしれない。一般的に臭いと感じる腋臭ですら、少し嗅いだだけで勃起してしまうようになった。
千雪もそれをわかっているから、二人きりになるときは体臭をあえて消さないのだろう。おかげで、行為の最中は終始情欲をたぎらせることができる。
「色々あるみたいだけど、どのおもちゃでやったんだ?」
「その……それです……」
「ああ、これか」
俺は、手に持っていたピンク色の卵形をした物体を見つめる。
ローター……女性用アダルトグッズの中では、割とポピュラーなものだろう。振動の強さを調節できる上に、小型なので使い勝手が良く、挿れたり撫でたり押し当てたりと、様々なシチュエーションに対応できるようになっているからな。
「それで、どんなふうに使ったんだ?」
「い、言わないと……だめなんです?」
「ははっ、質問を質問で返すなよ。俺には言えないようなやり方なのか?」
「ううっ……。その、クリトリスに当てて……」
千雪は恥ずかしそうに口元を手で隠しながら、消え入りそうな声で答えた。その様子を見ただけで、彼女がどれほど夢中になっていたのかがよくわかる。
「なるほど。千雪は、ここが弱いもんな?」
「ひいッ……!?」
ぽつんと勃ち上がった敏感な突起を指で弾くと、千雪がビクッと身体を震わせる。
「自分で弱いところをイジめるなんて、そんなに欲求不満だったのか? 俺とやっても、物足りないって?」
「やあっ……! そんな、ことぉ……♡」
わざと意地の悪い言いかたをしながら、クリを指の腹ですりすりと撫で回すように愛撫する。千雪は、切なげに身をくねらせながらも、媚びるような甘い声を漏らしていた。
まあ、俺も一人でしたくなるときはあるから、気持ちはわからなくもない。でも、俺は千雪でないとイけないのに、千雪は俺じゃなくてもイけるっていうのは、不公平な気がする。
だから、これはちょっとした仕返しみたいなものだ。前にオナホで扱かれたときのように、千雪にも同じ辛さを味わってもらおう。
「これをこうして……俺に隠れてオナニーしてたんだよな?」
「……ッ!?」
ローターの電源を入れ、それを陰核に押し当てると、千雪の身体がビクンッと跳ねた。同時に、声にならない悲鳴を上げる彼女を見て、思わず笑みがこぼれてしまう。
「つ、強いんです……っ! それっ、強くなってるんです……ッ!」
「ん? ……ああ、確かに設定は“強”になってるな。でも、俺は最初からいじってないぞ」
「あっ……! そ、そんなぁ……♡ 今はっ、そこっ……! 敏感になって……い、いやあぁぁあ……ッ♡」
包皮の上からでも、刺激はしっかりと伝わっているようで、千雪は腰を浮かせながら身悶えている。ローターの駆動音に負けないくらい大きな喘ぎ声を上げていることからも、かなり感じているんだろう。
「まだイくなよ? 俺とするときよりも早くイったら、わかるよな?」
「ぐっ……!? ……っふー! ふうぅー……!」
言葉の意味を理解したのか、千雪は歯を食いしばり、必死に耐えようとしていた。両手はシーツをギュッと掴んでいて、太ももにも力が込められているのか、小刻みに震えているのが見える。
幾度も俺への愛を語る彼女のことだ、簡単にイってしまうと、今までの言葉がすべて嘘だったかのように思われかねないと、そう考えているんだろう。
「ふーッ! ふーッ……! ……っ……ぃッ♡♡ ……くっ、くふーッ! ふッ!」
そんな千雪の意思に反して、身体は正直な反応を示していた。膣口が雄を誘うようにヒクつき始め、愛液の分泌量も増えてきている。白く濁った本気汁が肌を伝って、尻穴まで垂れ落ちているのがいい証拠だ。
それに、千雪本人はバレていないつもりかもしれないが、今さっき軽く達したのを、俺は見逃さなかった。
「いま、イッたように見えたけど?」
「……イッて、ないですよぉ……? 私の、旦那さまへの愛がぁ……♡ ふっ……! おもちゃなんかに負け……っ♡ ……ッ♡ ま、負けるわげ……ッ♡ ない……もぉおんんん゛……ッ♡♡」
「ははっ、そうだよな! じゃあ、続けても大丈夫だな……!」
「んんッ!? ん゛〜ッ……!」
俺が指摘しても、千雪は頑なに否定をする。芯の強さは折り紙付きだし、そう簡単には屈服しないと思っていたから、この展開も想定内だった。
だからこそ、いじめ甲斐があるというものだ。この意地っ張りな女を堕としてやりたいという欲望が、むくむくと膨らんでいく。
表面上は穏やかな性格をしているだけに、こういういじらしい姿を見ると、余計に我慢できなくなる。
俺は悪くない。頑なに折れない千雪が悪いんだ。素直になってくれたら、やめる口実を得られるのに。ここまできたら、もうイくとこまで行ってやろう。
「……っ♡ ……はッ! くはーっ! はあっ……♡ はぁ……! はぁっ……♡」
「ところで、これは使ったのか?」
「はひっ……!? な、なんですかぁ……それぇ……?」
俺はローターを手放し、それからベッドの上に置かれている物のうち、一番目立たない物を手に取った。それを千雪の目の前に掲げて、反応を確かめる。
それは、一見すると工具のドライバーやアイスピックのような見た目をしていた。芯の部分は先端に行くほど細くなっていて、柄の部分にはグリップが付いている。
ローターと同じく、振動で刺激を与えるタイプだが、こちらは棒状になっているのが特徴的だ。芯はシリコン製で柔らかく、強く突いたとしても痛みを感じることはないだろう。
「これはなぁ……こうするんだよっ……!」
「あッ!? んン゛ッ……♡♡」
電源を入れて、それの先端を陰核に押し当ててやると、千雪は一瞬驚いたように目を見開いたあと、慌てて両手で口を覆った。それでもなお、喉奥からくぐもった声が漏れ出てくる。
「……ッ♡♡ ーッ……♡♡♡」
「こら、足を閉じちゃ駄目じゃないか」
ローターより反応が明らかに大きいことからも、これが相当効いていることがわかる。
そして、与えられる快感から逃れようとしているのか、無意識のうちに足を閉じようとしていたので、すかさず押さえつけてやった。
M字開脚からまんぐり返しになって、より陰部が強調された格好になる。千雪も自分のアソコが見えるようになったことに気づいたのか、目線だけを恥ずかしげに逸らしていた。
「まだ始めたばかりなのに、こんなに暴れて……。本当はイってるんだろ?」
「ぐっ……んっ、んんーッ♡♡」
否定するように首を振りながら、必死になって声を押し殺そうとしている千雪。そんなことしたって隠せるわけないのに、本当に健気だな。
この道具はクリバイブと呼ばれるもので、形状からわかる通り、陰核責めに特化したものだ。
繊細な神経が集まっている敏感な部位を、狭く深く一点集中的に責められるのだから、その効果は推して知るべしといったところだろう。
現に、千雪はすでに何度か達している。休みなく与え続けられる快楽に耐えきれなくなった身体が、細かく痙攣を起こしているからな。
足を押さえつけている手のひらに、その振動を感じることができるくらいには、わかりやすい絶頂表現だった。
「イッ……んひぃいいぃぃぃ……ッ♡♡♡」
そして、ついに我慢の限界が訪れたのだろう。千雪は一際大きな声を上げたかと思うと、アゴをつんっと上にして仰け反り、決壊したダムの放水のように尿道から潮を吹き出しながら、全身をガクガクと震わせた。
「……はッ♡♡ おっ……ほぉッ……♡♡」
それは千雪自身の顔にまでかかっていたが、気にする余裕はなさそうだった。呼吸をするのに必死なようで、舌を突き出して飛沫を受け止めている。
「千雪、さすがにこれは……」
「はーっ! くはーっ……! ……ご、ごめんなさいっ! ぐッ……♡ イッ、イキました! イッちゃいましたっ……! でもっ……はッ♡ ぃ……ッ♡ むっ、無理なぁッ……♡ んですぅ……ッ!」
「……ふぅん」
さすがに心が折れたのか、涙と鼻水と唾と潮でぐずぐずになった顔をそのままに、謝罪の言葉を口にする千雪。
しかし、俺はバイブを持った手を動かすことなく、冷めた目で彼女を見下ろしていた。
「……な、なんでっ!? やめっ、やめてくっ……ださらなイッ……♡♡ ……んですかあぁあ……ッ♡♡」
「なんでって、イッたら止めるなんて、一言も言ってないぞ?」
「あッ……? そ、そんっ……なあぁ……ッ♡ イいィいぃ……ッ♡♡」
千雪が負けを認めたらやめるつもりではいたが、こんな安物のおもちゃでヨガりまくる姿を見ていると、無性に腹が立ってくる。だから、徹底的に辱めてやりたくなったのだ。
それに本心から嫌がっているのであれば、俺を突き飛ばしてでも拒絶するはず。イキ顔を隠そうともしてないから、なんだかんだで千雪もまんざらではなく、お仕置きを楽しんでいるのだろう。
「辛いんですっ……! 深くイッたばかりで、びっ、敏感だからぁっ! ああ゛っ……♡ も、もうッ……♡ ゆるひてぇ……っ♡ くだしゃいぃっ……♡♡」
俺の思いを察したのだろうか、嬌声をあげて媚びる姿がなんとも愛らしい。その言葉とは裏腹に、みずから膝裏を掴んで恥辱的な姿勢を保とうとしているのが、卑しくも健気に映る。
見てるだけで元気が貰えるような笑顔を振りまく千雪が、涙や鼻水を垂らして下品になった顔を男の前で晒してるなんて、誰が想像するだろうか?
いや、誰にも想像できないだろうな。なにせ、俺にしか見せたことがないんだから。
「ここは特に効くだろ?」
「いひィ……♡ ひいィィッ♡♡ またイグっ! イぎまずっ! イグッ♡ イ゛ッ……ぐぅぅうう゛ぅっ……! ……っはあぁアッ♡ あ゛ーっ!? ああ゛〜ッ……♡♡♡」
バイブの先端を包皮の内側にねじ込み、そこに埋まっている陰核の根元をこねくり回してやると、千雪は恥じらいもなく絶叫しながら果てた。
そこは普段、外気に晒す機会もないだろうから、感じる快感はひとしおなはずだ。敏感になりすぎて触れるだけでも辛いのは、千雪の反応が物語っている。
それでも俺はやめることなく、よりねちっこく陰核に刺激を与え続けた。
「イ゛ッだのにっ……! イギだぐないのに゛ぃ……! やだぁ……ッ♡ もうぶるぶるやぁなのお゛おぉ……♡♡ やあっ……♡ ああ゛……ッ♡♡ ま、またっ……イグッ……! ……ンッ〜♡♡♡」
女性は快感を、男の十倍感じやすいと言われている。そして、男の射精とは違って絶頂の回数に制限がない分、一度イクと連鎖してしまうことが多いようだ。
今の千雪は、壊れてしまうんじゃないかと思うほど激しく身体を揺すり、乳肉を前後左右に暴れさせながら、連続クリアクメを迎えていた。清純派アイドルにしては似つかわしくない巨尻もぶるぶると波うたせて、声が枯れることも厭わず淫らに叫び続けている。
外見から受ける印象とは裏腹に、快楽には貪欲なようで、その仕草や表情からは理性を感じられない。盛りのついた雌犬のように舌を伸ばし、体液を振りまきながら乱れ狂う様は、まさしく本能をさらけ出した獣だった。
どうやら俺のプロデュースによって、彼女の秘められた才能が開花したらしい。快楽をのせた高らかな嬌声。観客を魅了する卑猥な踊り。そして卑しさを如実に表す惚けた表情。
それらにあわせてベッドのスプリングも軋み、ギシギシと鈍いBGMを奏でていた。まさしく俺のためだけにゲリラ的に行われた、アイドル千雪のワンマンライブ。
今まで男と付き合ったことがないくらい貞操観念の高い千雪が、俺の前だと自分から股を開くのだから、その征服感たるや男冥利に尽きるというものだ。
それにまだ処女にもかかわらず、雄を焚き付けるすべを心得ている千雪。このまま男の味を教え込んでアイドルの道を進ませれば、界隈のトップに君臨する未来もあるかもしれない。
だが、その可能性は俺が握り潰す。なぜなら、千雪がそう望んでいるからだ。
彼女の幸せに繋がるのであれば、俺は全力でサポートする。今までもそうだったし、これからも変わらない。
「遠慮なくイッていいぞ……! 何回でも気持ちよくさせてやるからな……!」
「んんーッ……♡♡ ふんんンーッ……!」
ついに言葉を発する余裕もなくなったのか、千雪は踏ん張るような低い声しか漏らさなくなった。それはバイブの駆動音も相まって、自身の異常を知らせる警告音に思えなくもない。
でも女性の身体は、出産の痛みに耐えられるくらい頑丈にできてるはずだから、心配は無用だろう。壊れたとしても、それはそれで——
「——っ♡ ……はっ♡♡ あ……っ♡ はっ……!」
「おっと……」
その後もしばらく責め続けていたが、バイブの充電が切れたところで、俺は手を止める。改めて千雪の姿を見ると、壮絶という言葉がぴったり当てはまるほどに乱れきっていた。
散らばった髪の毛先が、額や頬にいくつも張り付いており、目元は涙を流しすぎて赤く腫れ上がっている。口元もだらしなく半開きになって、その端から涎が垂れ流されていた。
重力に従って平たく形を変えた媚肉の雌頭も『私も撫でて』と言わんばかりにいじらしく主張していて、いじりがいがありそうな塩梅だ。
クリトリスに至っては、絶え間なく与え続けた刺激によって真っ赤に充血しており、ひと回りほどぷっくり膨らんでいる。
そして、濡れそぼった桜色の秘裂からは、白濁とした本気汁が泡を伴って並々と溢れ出し、尿道から飛び出した潮は身体全体に飛び散っているため、びしょ濡れという表現すら生温い。まるで、嵐の中に身を晒した事後といった有り様だった。
「はっ……! はーっ!」
途中、千雪は何度か反応をなくして、視線を虚空にさまよわせていたが、あれは失神していたんだろうか。そのたびに陰核が潰れるくらいバイブを押し込んで、無理矢理起こしていたけど、いま思えばやりすぎたかもしれない。
でも、連絡がつかなくて急いで帰ったのに、当の本人は俺の心配をよそにして一人遊びに興じていたんだから、お仕置きとしては妥当だろう。
「はーっ、はぁーっ……はっ……」
バイブの振動音が鳴り止んで静寂に包まれた室内には、生々しい雌の芳香が漂い、千雪の荒い息遣いも官能的な雰囲気を助長している。
彼女は時折ビクッと身体を跳ねさせて、余韻に浸るように恍惚の表情を晒し、あからさまに満たされている様子だ。
しかし、まだ何か足りないような気がするのは、思い違いではないだろう。あれだけやったというのに、彼女の目は依然として爛々と輝いているように見えるからだ。
そして視線だけは、まっすぐ俺の視線と交わらせていた。一度捉えたら、相手を虜にしてしまう、情欲に満ちた目つき。それが、俺にだけに向けられて——
「千雪……!」
俺は内なる欲望に逆らうことなく、おもむろにスラックスのチャックを開けると、下着の中から怒張を取り出す。すると、それは下腹に触れようかとばかりに反り返って、誘い受けをする淫らな獲物を見下ろした。
それから、千雪の胸を跨いで馬乗りになり、皮を剥いてから亀頭を唇に押し付ける。無理矢理することもできるが、彼女が受け入れてくれるまで待つことにした。今は快楽よりも、愛情を感じたい気分だったから。
「ふーっ、ふーっ……ふふっ……♡」
千雪の視線は、いきり勃つモノに注がれ、艶かしい吐息が粘膜を包み込む。自分でも引いてしまうほど我慢汁に塗れたそれは、一日洗っていないのも相まって、凄まじい雄臭を放っていた。
「んっ……れぇ……♡」
それでも千雪は、奉仕するのが当然と言わんばかりに躊躇なく舌を突き出して、裏筋を舐め上げてきた。脱力しているからか、舌の動きはかなり緩慢だが、それが逆に心地よい刺激を与えてくれる。
「はっ……くぅ……!」
「れぇ〜……♡ はぁ……♡ んん〜♡」
ちろちろと細かく舌先が動き、亀頭の溝を這うたびに、背筋がゾクゾクするような感覚が走り抜けていく。意識は朦朧としているだろうに、千雪は的確に俺の弱いところを責めてくる。
お互いの身体を一長一短に知り尽くしているというのは、こんなにも幸せに感じるものなのか。俺は感嘆としながら、与えられる快楽に身を任せる。
「イッ……イクッ……!」
そして情けないことに、ものの十数秒で俺は果ててしまった。男根の脈動と共に粘っこい精液が断続的に噴き出して、彼女の顔面を白く染め上げる。
ずっと千雪の痴態を特等席で眺めていたし、絶頂するたびに濃くなる体臭を直に吸っていたから、すでに射精欲は限界ギリギリだったのだ。なにも早漏なわけではない。
「ああっ……はぁ……ッ!」
「……ん♡」
俺は射精の最中、投げ出された千雪の手を掴んで、肉棒へ添わせる。その上に俺の手を重ねたあと、尿道から残滓を絞るように力強く前後へ往復させた。
実質オナニーみたいなものだが、彼女の淑やかな手を借りて扱くと、自分でするより何倍も快感が増している。やはり千雪じゃないと俺はいけない、そう改めて認識させられた。
「ほら、中にも注いでやるよ……!」
そして半開きの口の中に、奥底に溜まっていた濃汁を滴らせて、千雪の内側も俺で染めあげる。鼻の穴付近にも僅かばかりに擦り込み、呼吸をも雄臭で支配していく。
自分の所有物には、しっかり名前を書いておかないと駄目からな。お前は俺のモノなんだってわからせて、この女は俺のモノなんだってわかるように。
だから、白く濁った文字で、彼女の身体に愛を刻む。何をやっても消えないように深く、濃く……。
「ん〜……んっ♡」
入念にぶっかけられても、千雪は嫌な顔ひとつ見せず、口元に付着した雄汁を舌で掬い取ると、愛おしそうに口内へと含み、くちゅくちゅと味わうように咀嚼する。それから、ごくりと喉を鳴らして飲み干した。
「ふふっ……♡」
「……ははっ」
何度も絶頂を続けた後より、俺の匂いに包まれた今のほうが何倍も幸せそうな顔をする彼女を見て、思わず笑みが溢れてくる。
やはり千雪は、笑っているときが一番可愛い。顔面がありとあらゆる体液に塗れていても、それは変わらなかった。
「……疲れただろ? 夕飯は俺が作るから、そのまま休んでていいよ。あとで身体も洗ってやるからさ」
「んっ……♡」
俺は眠るように目を閉じた千雪にそう言い残し、出し終えてなりを潜めた愚息をしまってから、ベッドを離れる。
「——うん?」
すると、壁際の床に何が置かれていることに気づいた。不思議に思って近づいてみると、それは見覚えのある代物だった。
なんてことない、以前から寝室に飾っていた、千雪を模したぬいぐるみだ。しかし、なぜ床に落ちているのか。
「……地震なんて、なかったよな」
揺れて落ちたわけではないのだろう。そう疑問に感じながらも、汚れてないほうの手で拾い上げて、埃を払うようにシャツの袖で表面を撫でる。それから、元の位置に戻そうと、収納棚の上に視線を移したときだった。
「……おっ」
そこには、見慣れないぬいぐるみが加わっていた。甘奈と甜花の近くに、スーツ衣装の男のぬいぐるみが一体。
「これ、俺か……?」
『他に誰がいるの?』
二頭身にデフォルメされてるから見分けづらいけど、なんとなく面影がある気がする。まあ、わざわざここに置いてあるということは、そういうことなんだろう。
「ははっ、よくできてるな」
『それだけあなたのことを想っているの』
千雪の手製なのは、考えるまでもないか。俺は、俺を作ってくれたことに感謝しつつ、千雪ぬいぐるみを置こうとした……が——
「……うーん」
どこに置くべきか迷ってしまうな。元々は大崎姉妹の間に置いて挟むような形だったが、現在彼女たちがぴったりと寄り添っているのを見ると、千雪なりの考えがあって配置変えしたはずだし。
「……まあ、これでいいか」
『もう離さないから』
少し悩んでから、俺のぬいぐるみの左隣に置いた。千雪ぬいぐるみは形状が悪いのか、置き方によっては正面から見て微妙に右へ傾いてしまうのだ。
現に今も、俺にちょこんと身体を預けるようになっている。心なしか表情は幸せそうだ。
前は大崎姉妹に支えられていたから問題なかったが、位置を変えたことによってバランスを崩して、床に落ちてしまったんだろう。そう思うと、先ほどの疑問に合点がいく。
「ふたり占め……か」
『ええ。誰にも邪魔させないわ』
アルストロメリアから離れて、俺の隣に並んだ千雪。アイドルを辞めて、俺の隣に寄り添う千雪。ぬいぐるみの並びを見ていると、そんな想像をしてしまう。
詩的な比喩表現を好む彼女が、各々の分身であるぬいぐるみの並び順を変えたのは、おそらくそういう意図があったからだろう。
言葉で、身体で、仕草で伝えきれない想いを、こうして手作りの形にすることで伝えているんだ。
『かわいいでしょ? いじらしいくらいに』
「……わかってるさ、痛いくらいに」
千雪がおもちゃを使った自慰を敢行したのも、未だに踏ん切りがつかない俺が招いた結果だ。欲求を解消するために色々と趣向を凝らしているが、誤魔化すのにも限度がある。
千雪は逸る心を抑えて、俺に決断を委ねてくれた。そして、そんな気持ちに応えるべく、俺も行動で示さないといけない。彼女のプロデューサーとしてではなく、望み通り一人の男として。
催眠どうこうではない。うだうだと言い訳して、逃げ回って、誤魔化し続けてきた自分自身の問題だ。
俺は千雪を愛している。ただ好きじゃなくて、一人の女性として愛している。その想いを偽ってはいけない。このまま曖昧な関係を続けていてはいけないんだ。
千雪をモノにする。千雪を俺だけのモノにする。どんな形でもいいから、彼女を繋ぎ止めたい。愛した女性を、離したくない。
俺の弱さが、催眠アプリを使わせたんじゃない。元から千雪が欲しくてたまらないから、使ったんじゃないか。いんちきな代物を使ってでも、千雪を支配しようとして。
「……千雪も、同じ気持ちだもんな。だから、信じていいんだよな……」
『私を信じて。私が信じるあなたを信じて』
たとえ今までの行動が徒労になっても、俺のやることは変わらない。結局、辿りつく結末は一緒だから。これまで身体に刻んだ、刻まれた経験が、俺たちを導いてくれるはずだ。
俺は胸に抱いた決意を確かめるように呟くと、千雪を残して寝室を後にした。