「——出張?」
「ああ。明後日から行かないといけなくなった」
ある日、自宅での夕食の最中、俺は対面に座っている千雪に仕事の旨を伝えた。すると、彼女は箸をぴたりと止めて寂しげな表情を見せる。
「……期間は、どのくらいなんです?」
「予定だと一週間くらいだ。その間、こっちでの業務は先輩に引き継いでもらったから、アルストロメリアの活動には支障をきたさないと思う」
「一週間も……」
千雪は俺の顔をじっと見つめて、何か言いたげに口を開いては閉じる動作を繰り返す。
おおかた、行かないで側にいてほしいとでも言いたいのだろう。千雪は思っていることが顔に出るから読み取りやすい。
だが、俺が行かなければ仕事に支障が出る以上、どうしようもないことだ。それを理解できないほど彼女は子供ではない。
だから、こうして不満そうな顔をして、気持ちだけでも伝えようとしてくるのだ。普段は大人であることに準じて体面を保ち、俺の前だとあざとく少女の一面を覗かせる。本当にいじらしい。
「しばらく寂しい思いをさせるけど、俺も同じ気持ちなのはわかってほしい」
「……ええ」
「それと……帰ってきたらさ、千雪に伝えたいことがあるんだ」
「えっ?」
そして、こうなるだろうということは織り込み済みだったので、俺もたいして焦りはしない。離れているその間、千雪の増幅するであろう不安を抑制する手段は、すでに考えてある。
「それって……」
「出張が終わったら、しばらく二人きりになれる。だから、待ってくれるな?」
詳細は言わずともわかるだろうと、あえて言葉を濁す。すると俺の意図を好意的なものとして察したのか、千雪は頬を赤らめながらコクリと頷く。
これでいい。これでひとまず、後顧の憂いは断てた。
一日構わなかっただけで、失神するほどの自慰行為に走る千雪のことだ。一週間も放置したら、どんな状況になるかわからないからな。
「はい……! この家で……私たちの部屋でお待ちしてます。その間、ずっと旦那さまのことだけを想いながら……♡」
「ははっ……」
重苦しい吐息と共にそう呟く千雪の表情は、まさに恋する乙女そのものだった。こんなにも一途な恋慕の情を向けられることに若干の罪悪感を覚えながらも、俺は彼女を愛おしく思う気持ちを止められない。
そうして、俺たちはしばらくの間会えない寂しさを埋めるように、濃密な時間を過ごしていったのだった。
それから後のこと。予定通り出張を終えた俺は、バスや電車を利用して何度か乗り継ぎながら帰路についていた。
現在、車内は満席とはいかないものの、そこそこ混み合っている。そんな中、俺はシートに腰掛けたままスマホを操作していた。
「消えてる……」
俺は隣に人がいるにもかかわらず、そんな独り言を呟いてしまうくらいには狼狽してしまった。なぜなら、俺を悩ませていた不安の種である例のアプリが、初めからその存在がなかったかのように綺麗さっぱり消え去っていたからだ。
幸い、隣の方は寝入っているようで、不審に思われることはなかったが。おれは改めて、スマホに意識を戻す。
一昨日までは逐一、催眠深度の按配を確認していたのだが、後日に仕上げとばかりに仕事が立て込んだため、今までチェックできずにいたのだ。
そういや、何事もなく期間が過ぎれば自動的に削除されるんだったか。つまり、俺はあの時から三十日を耐えきったわけだ。
互いの欲求を解消するために肉は散々と切ってしまったが、骨までは達していない。まだ修復の余地は残されているはず。
さて、となると次は、千雪の身体についての懸念が発生する。記憶はなくなると記載されていたものの、三十日の経験が一気に抜け落ちてしまえば、流石に本人は違和感を覚えるだろう。
なんとか都合よく辻褄を合わせてくれないかと安易な希望的観測をしてみるが、やはり心配が残る。とりあえず、帰ったらすぐにでも話し合いの場を設けよう。
そんなことを考えつつ電車に揺られていると、あっという間に自宅のある駅へと到着した。
直帰が許されているので、そこから歩いて数十分ほどでマンションに到着し、今はエレベーターに乗っている。
帰路の途中、千雪に連絡をしてみたが、返事はない。チェインの既読すらつかないところを見るに、スマホが手元にないのだろう。
この前のように数時間も返信がなければ心配するところだが、まだその域には至っていない。
なので、もう少し待ってみるかと考えつつ、目的の階にたどり着いた俺は、玄関のドアを開ける。
「あれ?」
室内に入ると、玄関口に置かれた女物の靴が目に入った。それは千雪のもので、これまでの関係性を鑑みると別段疑問を抱く必要もないのだが、まさか今の状況下で家にいるとは思っていなかったので、少々面食らう。
しかし彼女の中で、俺との蜜月はどのように処理されているのだろう。本当に記憶は無くなっているのか。その答えを直接問いただせるのなら、余計な手間が省けていい。
「千雪、いるのか……?」
そう思いながらリビングへ向かう。だがそこには千雪の姿はなく、ただ静寂が広がっているだけだった。となると、この前みたいに寝室にいるんだろうか。
「——こっちです」
不意にそんな声が、寝室から聞こえてきた。どうやら当たりのようだ。俺はそのまま声のした方へ向かい、ドアを開く。
そこには、スタンドの間接照明に照らされ、生まれたままの姿を晒している千雪がベッドに腰掛けていた。
「おかえりなさい……!」
俺の姿を認めると嬉しそうに立ち上がり、惜しげもなく乳肉を揺らしながら出迎えにやって来る様は、違和感を感じさせないほどに自然体だ。それは俺だけが知る、ここ一ヶ月の千雪だった。
「どうされたんです? そんな鳩さんが豆鉄砲を食ったような顔をされて……。ここで待ちますって言いましたよね?」
そう言いながら、手を後ろに組んでこちらを見上げる千雪。そんな彼女を見て、俺はようやく腑に落ちる。
この様子なら、記憶がなくなったという線はなさそうだなと。まだ、催眠は続いているのかもしれない。
「……ああ、そういう。あれから、今日で三十日経ったんですね、ふふっ……!」
「……えっ?」
なにやら一人で納得して微笑む千雪の言動に、はっきりと違和感を抱いた。それを俺が口に出すよりも早く、彼女は言葉を発する。
「どうでした? 催眠アプリ。この一ヶ月、たくさん色んなことをしましたよね、私たち。私はもっと過激にされてもよかったんですけど、……ふふっ!」
千雪は悪戯っぽくそう言った。その様子は、これまで体験してきたことを知っているかのような口ぶりで……。
そこで俺は、一つの可能性に行き当たる。彼女は最初から、催眠にかかっていなかった。催眠アプリの効力などまやかしでしかなかったのだと。だとしたら、今までの千雪の行動は——
「……まさか」
「はい、そのまさかです。でも、騙すつもりじゃありませんよ? 今までのは演技でもなくって、私の本心ですから。あなたに言ったことも、あなたとしたことも、ぜんぶ私自身が望んだことです」
俺の思考を先読みするように、千雪はそう断言する。じゃあ、淫乱ともいえる千雪の豹変っぷりは意図的にやったことで、それも全て俺のためだったというのだろうか。
確かに言われてみれば、彼女の行動には常に俺のためという気持ちが、随所に垣間見えていたが……。
「い、いや、だとしてもだなぁ……。なんで最初に言ってくれなかったんだ……」
「それは旦那さまが悪いです。愛してるっておっしゃったのに、なあなあで済まそうとしたから……。それに催眠なんかに頼らなくても、あなたの為ならなんでもできるって証明したかったんです。愛する人に求められたら、応えるのが当然だなぁ……って」
入ってくる情報が処理しきれなくて、なんだか目眩がしてきた。
つまり、俺が千雪を催眠で支配していたのではなく、千雪が俺を手のひらで転がしていたとでもいうのか。
「洗ってないおちんちんを、そのままおしゃぶりすることも、お尻の穴を捧げることも、おしっこを飲むこともアナルを舐めることも、旦那さまにならなんだってしますからっ……! これって私の愛が、催眠をも凌駕してることに他ならないですよね?」
負けず嫌いの千雪のことだ。催眠の力に頼らなければ、想いを受け入れてもらえないと思われたことに立腹したんだろう。
そんなインチキしなくても、私はこんなにもあなたを想っているんですよ……と、アピールするために都合よく状況を利用したのだ。
「——うっ」
「わ、大丈夫です……? お仕事の疲れもあるでしょうし、ベッドに座ってゆっくり愛し合いましょう。……ねっ?」
いたたまれなくなった俺がフラつくように後ずさると、すかさず千雪に手を取られ、そのままベッドに誘導される形で二人一緒に腰掛けたのだった。
しかしなんというか、あまりにも強烈な情報量のせいで頭が追い付いてこないが、これはとんでもない事態なのではないだろうか。
「でも見方を変えると、催眠にかかっているようなものかなぁ。旦那さまの言葉ひとつひとつが、私にとっては魔法の力みたく作用するんです。ただの、ひとりの女の子が、アイドルに。そして、みんなに愛されるアイドルから、ひとりを愛する妻になるの。永遠に解けない魔法——私のすべては、あなたの思うがままですから」
側には、いつもと変わらない優しい微笑みを浮かべている千雪がいるかと思えば、全裸で俺にしなだれかかってスリスリと身体を密着させてきている。
なので、こんな状況でも俺の分身は否応なく反応してしまうわけで、あれこれ考える余裕も与えてくれない。
「わぁ……♡ ふふっ、一週間ぶりですもんね? こんなに張り詰めて……」
「ぅくっ……!」
当然、千雪がそれを見逃すはずもなかった。彼女の細くしなやかな指先が、ズボン越しにテントを張っている部分を撫でるように動く。それだけでも、しばらく禁欲していた俺には十分すぎる刺激となる。
「私も、この日のために我慢していたんですよ? 旦那さまが想いを伝えてくださるって、ようやくおっしゃったから……」
千雪は俺の手を取り、自身の秘所へと導いていく。そこは既に濡れそぼっていて、指先にぬらっとした粘度の高い液体が絡みつき、その熱さがいかに興奮しているのかを物語っていた。
「んん……っ♡ だ、旦那さまと離れてから、ずっとお腹の奥が疼いちゃって……。触ってもいないのに、こんなにも溢れてくるんです……♡ 下着を何回取り替えたか、わからなくなるくらい……あっ♡」
そのまま自慰行為を始めた千雪は、だらしなく目尻を下げながら、俺の顔に甘い吐息を吹きかける。
これが彼女の、内に秘められた欲望なのだろう。偶像の下に隠された本当の顔。ただの女としての桑山千雪。
普段は清楚な雰囲気を漂わせる彼女が、ここまで淫らな姿を見せられるのは、ひとえに俺が相手だからだろう。俺を信用しきっているから、こうして全てをさらけ出せるんだ。決して自惚れではない。
「んんっ、もう指じゃ足りない……! 旦那さまが欲しい……。旦那さまのおちんちんで、私の中まで愛して欲しいんです……! ねっ、いいでしょう?」
しばらくされるがままになっていると、千雪は我慢ならなくなったのか、媚びるような上目遣いでおねだりしてくる。そんないじらしい姿を見てしまうと、俺の理性なんてものは、簡単に崩れ去ってしまうわけで——
「……わかった。待たせてしまったぶん、今日はたっぷり愛し合おう」
「あ、ああっ……♡」
その言葉を聞いた瞬間、千雪の表情がパァッと明るくなったように見えたのは気のせいではないだろう。
それから俺は、彼女の熱くねっとりとした視線を浴びながら、服を脱ぎ捨てていく。そして、最後に膝立ちの姿勢でパンツに手をかけ、一気にずり下ろして脱いでみせた。
「わっ……♡」
ぶるんっという擬音が聞こえてきそうなほど勢いよく眼前に飛び出したそれを見て、千雪は思わず息を呑んだようだった。
俺のコンプレックスである、包皮に覆われた汚臭を放つ雄の象徴。今まで付き合った女性に、蔑まれた目を向けられた俺の分身。
しかし、千雪は嫌な顔をするどころか、むしろ恍惚とした表情で凝視してくる。口を半開きにして、今にも喰らいついてきそうな勢いだった。
千雪だけだろう、こんなにも俺を愛しく思ってくれるのは。外面の良いプロデューサーとしての俺ではなく、一人の男としての俺を受け入れてくれるのは。
「汗とおしっこの熟成された、とっても濃い匂いです……♡ ふふっ、先っぽからもよだれが出ちゃってますよ〜?」
そう言いながら、千雪は俺の亀頭を指先でちょんちょんとつつく。そして付着した先走り汁を、愛おしそうに舐め取ってしまう。
「んん〜♡ おいしっ……♡ 先に味見しちゃいましたけど、中はどうなっているんでしょう……? えい……っ!」
すかさず千雪の手が伸びてきて、竿の部分をぎゅっと握ってくる。そのまま、慣れた手つきで下に引っ張るようにして降ろされていき、あっという間に亀頭を露出させられてしまった。
その瞬間、むわぁっと強烈な臭いが広がる。一週間ぶんの汚れがこびり付き、先走り汁にまみれて湿気を帯びたそれは、もはや性器というより凶器と呼ぶにふさわしい代物になっていた。
「——ッ♡ ……っく、ひぃ……っ♡」
離れている俺でさえ鼻が曲がりそうな悪臭だというのに、それを直接嗅いでしまった千雪が無事なはずがなかった。
彼女は声にならない悲鳴を上げると、ビクンッと身体を痙攣させる。しかし、顔はうっとりと蕩けたままで、背けようともしない。
「こ、これはぁ……! んんっ……♡ すんすんっ……はぁ〜……♡ しばらく見ない間に、私をダメにしちゃうおちんぽちゃんになりましたねぇ……! ずっと嗅いでたいなぁ……! すぅ〜♡ ……はあぁ〜♡♡」
そんな変態じみたことを恥じらいもなく言いながら、彼女は鼻をひくつかせて何度も深呼吸をする。その度に鼻息がかかってくすぐったいが、それすらも快感へと変わってしまう。
「はぁ〜……♡ 匂いだけでイきそう……っ! 私のために、こんなにチンカス溜めてくださって……♡ でもぉ、他の人に見られたらぁ……幻滅されちゃいますね……?」
その言い草だと、恥垢の溜まり具合によって、女性との付き合いを妨げていたのか。確かに汚いままでは、誰も相手にしないだろう。
したたかな大人の一面を垣間みたものの、千雪が美味そうに俺の汚物をしゃぶる変態であることに変わりはない。
「すぐにでも食べちゃいたいくらいですけど、今日は特別な日なので……」
ひととおり匂いを味わって満足したのか、千雪は名残惜しそうな表情をしながら顔を離す。それからベッドに仰向けに寝転がると、見せつけるように腰を浮かして、M字開脚の姿勢をとった。
「ここに、千雪のはしたないおまんこに、旦那さまのおちんちんを食べさせてください……っ! 旦那さまの色に染め上げて、永遠に忘れられないようにしてほしいんです……!」
おそらくAVを見て得た性知識なのだろう、男の情欲を煽るような台詞を口にし、みずから秘所を指で広げてみせる千雪。
そこはとめどなく溢れる愛液によって濡れそぼっており、薄桃色の粘膜が物欲しげにひくついている様子が見て取れる。
それに、もう限界が近いようで、千雪の顔は紅潮しきって呼吸も荒くなっており、発情期の雌犬もかくやといった様相だった。
そんな彼女の姿に、俺もまた抑えきれない衝動に駆られてしまう。早く挿れたい、目の前の雌を孕ませたいという欲望が溢れ出てくる。
「もう、私たちを隔てるものはありませんよ? お互いに愛し合っている、二人の男女。それ以外、なにもありません」
そうだ。千雪は俺を男として求めていて、俺は千雪を女として求めている。催眠という魔法はまやかしにすぎず、俺の理性を縛る楔にはなりえない。
もう、彼女を愛しているという感情に、身を任せてしまってもいいのではないか。アイドルとプロデューサーの垣根も何もかも忘れて、ただ快楽に溺れてしまえば——
「千雪……!」
俺は無意識のうちに千雪の名を呼んでいた。その声は自分でも驚くほど大きく、それでいて切羽詰まったものだった。
身体も本能に突き動かされるままに動き出し、千雪に覆い被さるように倒れ込む。そして腰を持ち上げて、いきり立った肉棒の先端を蜜穴の入り口に押し当てた。
それだけで、まるで吸い付くかのように膣口は収縮を繰り返し、鈴口にちゅっちゅっと歓迎のキスをしてくる。
「ふふっ……! やっと、奪ってくれるんですね……? 私の、はじめてを……♡ ずいぶん遠回りしちゃいましたけど、ずぅっと信じてましたから……!」
すると、千雪は俺の背中に腕を回し、両足も使ってがっちりホールドしてきた。そのまま引き寄せてしまえば、自然と挿入することになるわけで。
しかし、それ以上は進まず、腰を器用に使いながら亀頭の先っちょだけをくぽくぽと浅く抜き差しして、俺を焦らすような動きをしてみせる。
あくまで俺に主導権を握らせようというつもりらしい。余裕がないのはお互い様だとおもっていたが、やはり千雪の方が一枚上手のようだ。なら、ここで退いては男が廃るってものだろう。
「挿れるぞ、千雪……!」
「はいっ……! どうぞ、そのまま中に……!」
千雪の誘惑に乗る形で、ゆっくりと腰を押し進めていく。分泌された互いの潤滑液のおかげで滑りが良くなっているためか、抵抗感はほとんど感じない。
「ふぅ、んん……っ♡」
それでも慎重に熱い肉壺の中へ先端を馴染ませていくと、途中で何かに阻まれるような感触があった。
処女膜だ。これを貫けば、いよいよ本当に取り返しがつかないことになる。夢見る少女は舞台を降りて、覚めない現実へと囚われる。
「まだ、気を使ってくださるんですね……? でも、私には遠慮しないでください。あなたは優しい人なので、これからもみんなに好かれ続けると思います。それを悪いとは言いません。ですから、二人きりのときくらいは、独り占めさせてほしいんです。私の前では、優しくない姿を見せてください……! あなたになら、何をされてもいいんです……っ! 私たちは、こんなにも愛し合っているんですから……ッ!」
そう言い終えると、千雪は優しく微笑んだ。その表情からは、これから自分の身に起こるであろう痛みへの恐怖など微塵も感じられない。
『私のこと、本当に好きなの?』
ふと、頭の中に声が響く。それは今まで付き合った女性に言われ続けた言葉だった。
性交の際も常に気を使う俺に、彼女たちは不満を募らせていたようだ。内なる情欲をひた隠しにすれば、当然行いも味気ないものになる。それが積もり積もって、ある日突然別れを切り出されたことも一度や二度ではない。
そんな経験も相まって、いつしか女性と深い関係を持つことに臆病になってしまったのかもしれない。だからこそ、こうして自分の本心を受け入れてくれる千雪が、たまらなく愛おしく思えるのだ。
「んっ……うぅ、んんん゛……ッ!?」
もう迷わない。俺は千雪を独り占めにするべく、勢いよく腰を突き出した。
瞬間、ぶちりと何かを貫く感触が先端に伝わり、それと同時に千雪の口からくぐもった悲鳴が漏れる。
そのまま奥に、指も入ったことのない未通の処女穴をこじ開けるように進んでいくと、根元まで収まったところで行き止まりにぶつかった。
俺の大きさと千雪の包容力は丁度釣り合ったようで、ぴったりと全体を余すことなく包み込まれているような感覚がある。
「……〜ッ! ……はっ、ぁっ……あはぁ……♡」
痛みを堪えるために止めていた息を一気に吐き出し、呼吸を整えようとする千雪。その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。
「大丈夫か、千雪……」
「は、はいぃ……♡ い、痛みはあまり……! それ以上に幸せすぎて、どうにかなっちゃいそうですけどぉ……っ♡」
心配になって声をかけると、千雪はうっとりとした表情で答えた。その様子を見る限り、嘘をついているようには思えない。
破瓜の痛みを上塗りするほど、繋がれたことに喜びを感じているのだろうか。流れた涙は幸せの味がするのかもしれない。
現に締め付けてくる膣内は、異物を排除するというよりも、むしろ迎え入れるようにうねっている。腰は動いていないにもかかわらず、竿全体が心地よい刺激に包まれているのだ。
「もう、動いてもいいですよ……っ? 私の初めてのおまんこを、旦那さまの形にしてください……! 本当のセックスを、教えて欲しいんです……!」
「あ、ああ……!」
その言葉に応えるように、ゆっくりと腰を引き、亀頭が抜けてしまうギリギリで止めて、また奥へ押し込むようにして挿入していく。
千雪の中はとても温かくて柔らかく、それでいてキツく締めつけてきていて、油断するとすぐに果ててしまいそうになる。肉襞のひとつひとつが粘膜を撫で摩り、狂おしいほどの快楽を与えてくれるのだから。
しかし実のところ、挿れた段階でもう射精欲は限界まで高まっており、落ち着くまで少し時間が欲しかったが、そんなことを言っていられる状況ではなかった。
なので、ゆっくり動かすことでなんとか快感に耐えつつ、少しずつペースを上げていくことにした。
「んっ♡ んっ……♡ 奥のほうも、浅いところも、おちんちんで擦られてぇ……! あぅう……ッ♡ アナルを先にいただかれちゃったからぁ、セックスの喜びもひとしおだなぁ……♡ やっぱり好きなものは、最後にっ……ですっ♡」
なにぶん、避妊具なしでのセックスは、これが初めてなのだ。生膣の感触というものは、想像していたよりも遥かに気持ちが良く、尻穴とも比べものにならなかった。千雪のが特別なのかもしれないが。
よって彼女をリードする余裕など生まれるはずもなく、ただただ本能のままに単調なピストンを繰り返すことしか考えられない。
「……えっ、どうされたんです? まだ……」
「ちょっ、ちょっと……休憩させてくれ……!」
そしてとうとう限界を迎えてしまった俺は、情けない声を上げながら腰の動きを止める。処女の千雪よりも先に達して暴発したとあっては、男としての面子が立たないからだ。
千雪が不思議そうに首を傾げる中、少しでも息を整えようと必死に深呼吸を繰り返す。
「ふふっ! 久しぶりのおまんこだからぁ、興奮しすぎちゃったんですかぁ……?」
「い、いや、それもあるけど……。実はコンドームなしでするのは、初めてなんだ。だから……」
「——くふっ! それは、いいことを聞いちゃったなぁ……!」
ありのままの事実を伝えると、なぜか千雪が嬉しそうに笑った。なんだか嫌な予感がするなと思っていると、彼女は俺の身体にまわしていた手足の力を強めて、耳元で囁きかけてくる。
「今までの彼女さんとは、生えっちしたことないんですね……? おちんちんとおまんこを、直接触れ合わせたこともない?」
「そう、なるな……」
「でしたらぁ……どうして私とは、ゴムなし生セックスをしてくださってるんですかぁ……? んん〜?」
そう言われれば、避妊具をつけようなどと一度も考えなかった気がする。ただ目の前の快楽を求めて突き動かされるままに行動した結果がこれなのだが、なぜだろう。
「千雪が好きだから……。千雪のすべてを、俺のものにしたいから……」
自分でもよく分からないまま、気がつけばこう答えていた。口に出すと、それが正解だと思えてくるから不思議だ。
いや、これは間違いなく本心だ。俺は千雪のすべてを手に入れたいと思っている。
「つまり、私の子宮にせーえきぴゅっぴゅして、受精させて孕ませて、赤ちゃん産ませて……。そうやって私の人生をものにしたいって、ことですよねぇ……ッ!?」
「ぐっ……!?」
突然千雪が激しく動き出し、搾り取るような動きで膣壁を締め上げる。下から腰を押し付けながら、円をかくようにグラインドさせてくるものだからたまらない。
その暴力的な快楽から逃れようとも、がっちりホールドされているせいで身動きが取れず、されるがままになってしまう。俺がマウントを取っている姿勢なのに、逆に犯されているような気分だった。
「まさかっ! んん……ッ♡ 旦那さまの、初めてをっ、いただけるなんてっ! イッ……♡ こんなのぉ……おッ♡ が、我慢できるわけっ、ないじゃないっ……!」
竿全体を蜜に塗れた肉襞に包まれ、亀頭を子宮口に押し付けられたまま小刻みに揺さぶられると、あまりの快感に意識が飛びそうになる。
「わかりますかぁ……? ふーっ♡ ふぅっ……♡ 私の子宮っ、初めてなのにぃ……! だ、旦那さまの赤ちゃんをっ、孕みたがってぇ……! はーっ……♡ んん゛……っ♡ こんなにっ、降りてきてるんですよぉ……? おちんちんの先っぽにぃ、当たってるのがっ、くひっ……♡ わ、わかりますよねっ……!? いっ……♡ 今まで散々っ、勘違いさせてきたからぁ……♡ 子宮が怒ってるんれすよ……ッ!? なのでぇ……責任っ、取ってください……! 旦那さまのでぇっ……♡ 私をママにしゅるまでっ、ぜぇったいにっ! 離しませんからぁ……ッ!」
嬌声を含んだ吐息混じりの言葉責めをされ、ますます興奮してしまう。
そして彼女の表現するとおり、子宮口が意思を持って子種を寄越せと言わんばかりに、ちゅぱちゅぱと鈴口に吸い付いてきている感覚がある。
それは啄むようなキスから、やがて密着したディープなものとなり、先走り汁すらも漏らさないとばかりに吸い上げてくる。
「くふふ……ッ♡ おまんこもぉ……濃厚なチンカスをもぐもぐしたくて、がっついちゃってます……! 味覚なんてないのに、そこから染み込んだ味がっ、頭の中に広がってきて……ッ♡ もう旦那さまなしじゃあ、生きていけませんッ……♡」
貪欲にうねりをあげる膣内の動きに翻弄され、俺はいよいよ限界を迎えようとしていた。
「あはッ! イきそう、なんですね……!? おちんちんの先っぽが、膨らんできてますっ……! 私もっ、イきますからぁ……ッ! 遠慮しないで、そのままっ……! 初めての中出しッ、私にください……ッ♡♡」
千雪の言葉に煽られるようにして、一気に精液が込み上げてくるのがわかる。もう目の前の雌に種付けすることしか考えられなくなり、一心不乱に腰を振りたくる。
そして、鈴口が痛いほどに熱をもったところで、俺は最奥に肉棒を突き入れ、降りすぎた子宮を押し戻すようにしながら、精を解き放った。
「イ゛ッ……!? ……ぎッ! っほぉおおおお゛ぉ……ッ♡♡」
ごりゅっ……! という鈍い感覚とともに、千雪の口から出るとは思えないような苦悶に満ちた声が響きわたり、背中に爪を立てられるのがわかった。
だが、そんな些細な痛みを気にする余裕もなく、俺は唇を噛み締め、ただひたすらに吐精を続ける。
大量の精子たちが我先にと競うようにして駆け上がり、かつてないほどの勢いをもって鈴口から子袋めがけて飛び出していく。子を成すという本来の目的をようやく果たせるのだから、無理もないことだろう。
「お、お腹の中っ……びゅーって出てるの、わかりましゅ……ッ♡ 熱いのがかかるたびに、頭が真っ白になってぇ……! あはぁ……っ♡ これが、おまんこでイクって、感覚なんですねぇ……♡」
どくん、どくんと脈打ちながら吐き出される欲望の塊。それを受け止めている最中も、千雪の膣壁は絶頂の余波を受けて俺の肉棒を絞り上げ、最後の一滴まで飲み干そうとしてくる。
「——っは! はあ……ッ! はあ……っ」
「……終わりましたか? ふふっ、なんだかお腹が重く感じちゃうなぁ……♡」
長い射精は終わりを迎え、俺はようやく息をつくことができた。しかし千雪は充分な余裕があるのか、ゆるゆると腰を動かして余韻に浸っている。
射精直後の倦怠感に襲われているからか、そのか弱い刺激でも煩わしく感じてしまう。たまらず俺は、彼女を引き剥がすようにして起き上がった。
「あっ……やんっ♡」
千雪の拘束も緩んでいたので、簡単に抜け出すことができた。役目を果たした肉棒もずるりと抜け落ちて、粘糸をひきながらこうべを垂れる。
「やだっ、奥から溢れてきちゃった……。もったいないなぁ……」
みずから割れ目をくぱぁっと広げ、千雪は恍惚とした表情でそう呟く。
栓を失ったことで、秘裂から朱の混じった白濁液が溢れ出す光景は、とても淫靡なものだった。そして俺のものにも同じように残滓が付着しており、千雪の処女を奪ってしまったことを如実に物語っていた。
「こんなにたくさん注いでくださって……♡ おちんぽちゃんを、労ってあげないといけませんね……?」
征服感と罪悪感の狭間に立たされていた俺だったが、不意に股間に伝わってきた刺激に驚き、現実に引き戻される。
視線を落とすと、千雪が四つん這いになって、愛おしそうに俺のモノを頬で撫でさすっていた。あれだけ出血を伴う情事だったというのに、彼女は疲れを見せるどころか、むしろ元気になっているようだった。
「い、いや、もう——」
「一週間ぶりなのに、これで満足されるわけありませんよね……? 私も全然足りないんです……。もっともっと、旦那さまを感じたいです……!」
そう言って、今度は竿に舌を這わせ始めた。まるで棒アイスを舐め上げるかのような仕草に、萎えかけていたものが反応し始める。
俺はそんな中、未だ拭えない倦怠感によって身動きがとれず、ただなすがままになるしかなかった。
「ん〜? なんだか変な味がします。私の血と愛液が混じった感じの。ちゅっ……。それにぃ、チンカスもおまんこが食べちゃって、ほとんど残ってないですね……。れうぅ」
心底残念そうに眉を八の字にしながらも、竿に残った粘液を丹念に舐め取っていく千雪。
改めて自分のものを確認すると、亀頭の周辺にこびりついていた恥垢は、あらかたなくなっていた。
千雪のいう通り、ぴったりと吸着していた肉襞が、汚れをこそぎ落としてしまったのだろう。彼女の新品ヴィンテージおまんこは、一瞬にしてチンカスまみれの中古汚まんこになってしまった。
そうなっては、もう俺が責任をもって使い続けるしかない。誰かの名前が刻印された中古品など、他者にとって価値のないものなんだから。
「ふふっ! おちんちん、元気になりましたね……? まだ出し足りないって、言ってるみたい♡」
丹念な舌使いによって肉棒が硬度を取り戻してきたところで、千雪は仕上げとばかりに亀頭にキスを落として膝立ちになる。それから俺の肩に手をかけて、ゆっくりと押し倒してきた。
「ち、千雪……」
「旦那さまはお疲れでしょうし、私に任せてください。お仕事から帰ってきた夫を癒すのは、妻である私の務めですので……♡」
ごっこ遊びでもしているような口ぶりだが、千雪の目は本気だ。これが催眠を上回る力、愛執というものなのだろうか。
俺が命じなくても、心境を察して自分から動いてくれる。何もかも都合よく解釈して、勝手に自己完結してくれる。
催眠アプリの力ではなく、俺が伝えた愛情こそが、彼女をここまで変貌させてしまった。俺のためだけに存在する、理想の雌妻へと。
「くっ……うぅん……ッ! わ、私のおまんこ、もう旦那さまの形を覚えたみたいです……♡ こんなにすんなり、入るなんてぇ……! 繋がっただけなのに、ちょっとイッちゃいましたぁ……♡ ふふっ……!」
上になったまま、そそり立った肉棒を受け入れて、ぺたんと女の子座りのような体勢をとる千雪。いとも容易く根本まで飲み込まれてしまったため、一気に快楽の波が押し寄せてくる。
それは千雪も同じで、挿入しただけで軽く達してしまったらしい。股間の辺りに温かい水気を感じられることからもわかるように、粗相をしているようだ。
「あっ、これは潮ですからね……! おしっこじゃありませんからね……ッ!?」
「ははっ……。千雪のなら、どっちでも構わないよ……」
「もうっ、恥ずかしいですぅ……♡ そう言うなら、いっぱいマーキングしちゃうんだから! えい……っ♡」
羞恥で顔を真っ赤にしながらも腰を動かし始めるあたり、本当に底無しだなと思う。俺が焦らしに焦らしてしまったせいもあるが、今日は一段と積極的だ。
「はっ……♡ はぁっ……♡ き、気持ちいい……っですかぁ……?」
「ああ……最高だよ……! 上手すぎるくらいに……」
「ふふっ……! アナルセックスと、同じ要領ですから……ッ♡ んんっ……♡ いいリハーサルにっ、なってたみたいでっ、一石二鳥ですねぇ……っ! あッ……♡」
俺の胸板に手をつき、緩やかな上下運動を繰り返す千雪。彼女の言うとおり、幾度も行ってきたアブノーマルなセックスのおかげで、本番の動きに淀みがない。
俺の弱いところを知り尽くしていることもあって、的確に快楽を与えてくる。腰の角度を調節して亀頭の裏筋を肉襞で擦ったり、膣奥にあるコリコリとした部分に当ててきたりと、とにかく器用だ。
それでいて膣全体を使った締めつけ具合は、二回目なのもあってか絶妙な加減になっており、常に射精を促すように蠢いている。
「旦那さまがっ、気持ちよくなるとっ、私も気持ちいいんです……っ! んっ……♡ まるで、神経が繋がっているみたいでっ……! イッ……♡ これっ、なんて言うんでしょう……? 以心伝心? 一心同体……? んっ、んぅぅっ……♡」
前々から思っていたが、千雪は性に対する適応力が非常に高い。天賦の才を持っているといっても過言ではない。
アイドルとしての能力は主にダンス、ボーカル、ビジュアルの三つに割り振られるが、彼女の場合は例外にエロスの値が尖っている。それでいて驚異的なのが、まだ頭打ちではないということ。
おそらくこの調子だと、青天井で成長していくはずだ。俺はついていけるだろうか、彼女の際限ないスピードに……という不安すら覚えるほどである。
「もうっ……さっきからっ、おっぱいばかり見て……っ! 本当にっ、好きなんっ、ですねぇっ……♡」
そんなことを考えているうちに、無意識のうちに視線が吸い寄せられていたようだ。徐々に速度が増していく上下運動に合わせて揺れる、卑猥に垂れ下がった二つの膨らみ。
その重量感のある乳肉は、千雪の動きが激しくなるにつれ、たゆんたゆんと拍手をするように小気味よい音を鳴らす。そして滲み出る粘っこい汗が、糸を引きながら俺の身体に降り注いでくる。
普段は陥没しているはずの乳頭も、輝かしい舞台でその存在を大いに主張しており、雄の象徴よりも硬く猛々しく背伸びしていた。
「ふふっ……! いくらでもご覧になってください……♡ 私の、桑山千雪のワンマンライブッ……! あなただけに、届けますから……♡」
そう言って千雪は、両手を頭の後ろで組んでみせる。すると、汗の溜まった腋の下が丸見えになり、蒸れた熱気が周囲に立ち込めるのがわかる。
多汗な体質を持つ彼女が興奮していることも相まって、そこは雌フェロモンの発生源になっていた。
「おちんちんもっ、目線もっ、酸素ですら私の匂いで独り占め……っ! 身体が熱くなって、いつもより汗が溢れてきちゃう……!」
髪を振り乱しながら、俺の上で淫らに踊り狂う千雪。玉のような汗が浮かんだ額に前髪が張り付き、三つ編みにした特徴的なお下げも、さながら尻尾を振る犬みたいに揺れている。
「くふふっ……! こうしたほうがぁ、おまんこもよく見えてっ、いいでしょう……っ? ほらぁ……♡ あなた専用の、お嫁さんまんこですよ〜? じっくり見てくださいねぇ……♡」
千雪は俺の足に両手をつき、上体を後ろに反らしながら膝を立て、結合部を俺に見せびらかすようにしてM字に股を開く。
そこには、俺の肉棒をがっつりと根元まで咥え込んでいる秘所があった。ぬらぬらと光沢のある粘液を隙間から溢れさせ、ついさっきまで未通だったものとは到底思えないほど、淫靡な雰囲気を漂わせている。
「あぁ……旦那さまにっ、見られてるぅ……! 私の恥ずかしいとこ、全部ッ♡ それにぃ……この角度……っ! いいとこにッ、当たってぇ……っ♡ んひぃ……ッ♡♡」
おそらく千雪の弱点……Gスポットに当たっているのだろう。千雪は一際甲高い嬌声をあげると、天井を仰ぎながら身体を痙攣させた。
「はああ゛あぁ〜ッ……♡ あっ、あ゛ッ!? あ゛〜ッ♡♡ はっ、あはぁッ……♡ ……っ♡♡」
どうやら未曾有の境地に達したらしく、千雪は声にならない声を部屋中に響かせ、秘所から熱を持った液体を噴き出す。それは俺の顔まで放物線を描き、顔中をべたべたに汚していった。
「おもらひっ、きもちひぃ……! おまんこしぇっくしゅっ、しゅごしゅぎまひゅ……っ♡ だんなしゃまぁ……しゅきぃ……ッ♡♡ はーっ♡ あはぁ……♡ ふーっ♡ くふぅ……っ♡」
絶頂の余韻が抜けきらないまま喋ったせいで、ろれつが回っていない。だが、そんななか必死に愛情を伝えようとしてくれる姿は、可愛げのある少女のそれだった。
「——ご、ごめんなさいっ、お顔を汚してしまって……! 私ったら、お漏らし癖がついちゃってるから……」
やがて呼吸を整え終えた千雪は、流し目を向けて申し訳なさそうに謝ってきた。しかし誠意がこもっていないと感じるのは、暗に俺に責任があると言いたいのだろう。
「すぐに綺麗にしますので……! んっ……!」
千雪は反らしていた上体を起こし、その勢いのまま俺にしなだれかかってきた。
ずんっ……! と彼女の上半身が乗っかってくるため息苦しいが、それ以上に柔らかい感触が伝わってくるので、悪い気はしない。
「……いま、重いって、思いましたね?」
「……ははっ、まさか。駄洒落のつもりかな?」
眼前には、ジトッとした目で俺を見つめてくる千雪の顔がある。汗と涙、それに鼻水とよだれで乱れきった、俺にしか見せない淫らで下品な千雪の素顔だ。
しかし相変わらず勘がいいというか、なんというか。今なら高水準のシンクロ率を記録できそうなほど、千雪と心も繋がっているのかもしれない。
「もうっ。でもこれから先、もっと重くなるんですから、頑張って受け止めてくださらないと……ねっ、パパ……♡」
「うっ……!?」
そう言うなり、千雪は腰の動きを再開させる。媚肉のみっちり詰まった巨尻を、亀頭が抜ける寸前まで持ち上げ、そこから一気に腰を打ち付けるという一連の流れを繰り返す。
いわゆる杭打ち騎乗位と呼ばれる体位で、一往復がとてつもなく重たい。
パンッ、パンッ……! と肌同士がぶつかり合う音が、千雪の甘い嬌声に混じって部屋に響き渡り、その衝撃によってベッドが激しく軋むほどにスプリングを揺らしている。
「もうっ、できてるとっ、思いますけどっ……! はッ♡ ッ……♡ 私っ、双子の赤ちゃんっ……! 欲しいんです……ッ♡ んン……ッ♡ 甘奈ちゃんとっ、甜花ちゃんみたいなぁ……ッ♡ かわいい女の子のママにっ、なりたいっ、なぁ……! ……って♡♡」
その言葉を聞いた瞬間、俺は脳裏に想像してしまった。千雪そっくりの可憐な娘たちが、歳を重ねて色気の増した彼女と仲良く手を繋いで、両隣に並び歩いている光景を。
もちろんそれは、このさき起こり得る未来の願望でしかない。しかし、千雪の中では確定事項のようだ。だから彼女は今こうして、必死になって子種を搾り取ろうとしてきているんだろう。
「いっぱいえっちしたらっ、そのぶん可能性がっ、高まるんですよねっ……? 二人で協力してっ、がんばりましょうっ、ねっ! んんっ……♡」
千雪は熱のこもった吐息をこぼしながら、俺の顔に舌を這わせてきた。そのまま、犬が飼い主に親愛の情を示すかのように頬と口周りを丹念に舐め回し、唾液まみれにしてくる。
「あむぅ……っ♡ ぅんっ♡」
「ぅあ……!?」
そして、あろうことか鼻にも食指を伸ばして、そこをパクリと咥え込んできたのだ。
さすがにこれには驚いてしまい、反射的に顔を背けようとするのだが、すぐさま両手で押さえ込まれてしまう。
「ちゅる……れろぉ……っ♡ じゅるる……ッ! んふっ、おいひぃ……っ♡♡」
肺の酸素をも根こそぎ奪うつもりなのか、深く息を吸い込んでは、鼻穴に舌先を突っ込んでくる始末だ。
「んっ、んん゛っ……♡ ふーっ! ふぅーッ♡ ふぅん……ッ♡」
そんな呼吸もままならない状態でも、打ちつけられる千雪の尻の感触だけは、しっかりと感じ取れていた。
たんっ! たんっ……! と、まるで餅つきのように力強く弾みをつけながら、俺の下半身に容赦なく刺激を与えてくる。
その度に、俺のモノはビクビクと脈打って、千雪の膣壁を押し返すように膨張する。それによって彼女の弱点を擦り上げることになり、また艶っぽい声が漏れ聞こえてくるのだ。
「——ぷはっ! ……ふふっ♡ おちんちんっ、膨らんできたぁ……♡ 今度はぁ、キスしながらっ、イきたいなぁ……! なんてっ♡ ねっ、いいでしょう……? んむっ……♡」
俺の限界が近いのを悟り、千雪は返事を待たずに唇を重ね合わせてきた。それと同時に、ラストスパートとばかりに激しく腰を振り始める。
ぬるぬるとした二人分の汗と分泌液が、その摩擦を手助けしているので、よどみない動きで快感を叩き込まれてしまう。
「れるっ……ぢゅるるぅっ! んふっ……♡ おくちもぉ……おまんこもぉ……きしゅでちゅにゃがってましゅ……! ちゅぅ……♡」
口の端から唾液が漏れ出ることも厭わず、貪るように舌を絡ませ合う。千雪の子宮口も、亀頭の先端と熱烈なディープキスをしており、上の口に負けじと子種を求めて吸い付いてきていた。
それが引き金となり、ついに射精感がこみ上げてくる。
それを察してか、千雪は両手を恋人繋ぎで握ってきたかと思うと、立てていた両足も俺の下半身に乗せて、全体重をかけてきた。その体勢で器用に巨尻を揺らし、肉襞を締めあげて着実に俺を追い込んでいく。
「ぐうッ……! イッ、イクッ……!」
「いきゅ……!? わっ、わらひもっ、いきまひゅ……っ! らひてぇっ……! らひてくらひゃいっ……! あにゃたのあかちゃッ、ほしぃんでしゅぅぅっっ……♡♡♡」
そして、いっそう重く尻肉を打ちつけられ、先端にコリっとした感触があった直後——肉棒が破裂したかと思うほどに大量の精子が噴き出した。
しこたま振った炭酸水の容器の蓋を、構わず開けたときのような勢い。それは、卵子を溺れさせてやろうといわんばかりに注がれて、千雪の胎内を満たしていく。
「い゛ッきゅううぅ……ッ♡♡♡ ……ーッ♡ ん゛ーッ……♡ んっ、んン゛〜……♡♡」
その間、千雪は唇を離すことなく、子宮口と同じように俺の口を咥え込んでいた。お返しのつもりか、唾液をたっぷりと流し込みつつ、舌同士を貪欲に絡めてくる。
俺もそれに応えるようにして腰を突き上げ、互いの体液を存分に注ぎ合った。
「——んはぁ……ッ! はあ゛……っ! はっ……」
やがて長い吐精が終わると、どちらからともなく口を離して、至近距離で見つめ合いながら呼吸を整える。
俺が吐いた息を千雪が吸って、千雪が吐いた息を俺が吸う。そうすると、互いの熱い愛情が循環していくような気がして、とても幸せな気分になった。
「好きな人と愛し合うって、こんなに素敵なことだったんですねぇ……♡ ふふっ……!」
千雪は恍惚とした表情でそう呟くと、もう一度軽くキスをしてくる。
「もっと早くに知っていたら……ううん、できなかったぶん、これからいっぱいしましょうね……?」
最後に『約束ですよ?』と耳元で囁き、膣圧をきゅっと締めてきた。
さながら指切りの代わりにでもしているかのようで、断ったら何を飲まされるかわからないなと、漠然とした感想を抱いてしまう。
「そういえば、明日は代休でお休みですよね? 私もオフなので、今日はずっとくっついていたいなぁ……。お互いの匂いが染み付いて、取れなくなっちゃうくらい、ぴったりと……。えいっ……!」
千雪はそう言いながら腕を伸ばし、端にやっていた掛け布団を引っ張ってきて、俺と自分自身の上に被せた。視界が闇に覆われ、二人分の熱気と体臭が籠り始める。
「私の国にようこそ〜! ……なんて、ふふっ! でも、このふたり占めの時間が、永遠に続いたらなぁ……って、そう思うんです。旦那さまも同じ、ですよね……?」
当たり前だ。俺はもう、千雪しか見ていないんだから。誰にも邪魔はさせない。
そう答えるように、彼女の背中へ腕を回し、強く抱きしめる。この重みも、柔らかさも、温かさも、全部俺だけのものだ。
「ああっ、嬉しい……! 私と一緒になってくれるって、信じてましたっ……! 私の運命の人……私だけの旦那さま……ッ! もう遠慮はなしっこですよッ!? 頭からつま先まで、全部、ぜぇーんぶ食べちゃいますから……ッ! くふふふッ……!」
その後、俺たちは心も身体も一つに混ざり溶けていくような感覚に溺れながら、眠りに落ちるまで互いの愛を確かめ合い続けた。
愛執に囚われた人間を、催眠などでは支配できない。たとえ真に催眠アプリというものが存在したとしても、千雪の心が俺から離れていくことはないだろう。
その確証を得られたのだから、あの紛い物にも感謝しなければならないかもな。