アイドルのプロデューサーに、休みはない。
いや、283プロに所属しているプロデューサー、と言い換えた方が正しいのか。他の事務所の事情は、知らないからだ。
もちろん俺も例外なく、そうだった。世間的には休日となっている日曜日でも、自宅にて事務作業に追われる。それが、俺の日常だ。
ブラックだのなんだのとよく言われるが、俺はそんなことを気にしたことがなかった。辛い仕事だとしても、俺が頑張ることで、担当のアイドルたちが輝けるなら、それでいいと思っていたからだ。
そして、やりがい搾取と揶揄されようが、千雪の笑顔を見られるなら、それでよかったのだ。好きな女性と共にいられるだけで、幸せなことだったから。だが、それはもう過去の話である。
時計の短針が頂点を過ぎても、俺は自宅のベッドから起き上がれないでいた。
理由は単純だ。疲労が溜まっているからである。いつもなら週七で働こうが問題ないのだが、今は違う。
こうなった原因は、千雪にある。
一昨日、そして昨日と、連日にわたり彼女に精を搾り取られていたせいで、体力は限界を迎えているのだ。腰回りに感じる鈍痛は、決して気のせいではなかった。
昨日に至っては、一回しか出していないものの、極限の状況下で寸止めを喰らったこともあり、精神的にも疲弊していた。性欲は存分に満たされたとはいえ、その代償として残ったものは、あまりにも大きい。
そんな状態で迎えた今日という一日。
本来であれば、仕事をこなすはずの日曜日。しかし、前述したとおり、俺は動けなかった。
「……まあ、明日、まとめてやればいいか。明日の俺に、任せよう」
ぼんやりとした頭で、天井を見上げる。どのみち体が動いても、仕事をする気にはなれないだろう。
先ほど、原因は千雪にあると言ったが、元凶は別にある。俺を悩ませている、人生史上最大の悩み事。
俺は、枕元に置いてあるスマホを取り、ホーム画面を開く。いくつかあるアプリ群の真ん中に、堂々と居座っているソレを見て、ため息をつく。
【催眠アプリ】
俺を悩ませる、諸悪の根源。それが、この謎のアプリだった。
コイツは、たとえ画面の端っこに移動させようが、次に画面を開いたときには、中央に鎮座している。まるで意思を宿しているかのように振る舞うのだから、たちが悪い。
しかも、厄介なことに、インストールされてから一ヶ月経たないと、削除ができない仕様になっている。
ただのウイルスであれば、駆除してしまえばいいだけだが、そう簡単にはいかない。
アプリの名のとおり、催眠の効果は本物で、スマホを壊したりして無理矢理削除しようとすると、催眠をかけてしまった千雪に、何が起こるかわからないのだ。
……まあ、元はと言えば、俺が千雪に催眠をかけなければ、こんなことにはならなかったわけだが。
とにかく、俺にとって、このアプリは、まさに悪魔のような存在なのだ。
「……んっ?」
そんなことを考えていると、スマホに着信が入る。誰だろうかと思いつつ表示を見ると、まさに件の人物の名前が、表示されていた。
通話ボタンを押し、電話に出る。すると、スピーカーの向こう側から、可愛らしい声が届いた。
『あ、おはようございます、プロデューサーさん』
「あ、ああ。おはよう、千雪……」
聞き慣れた、千雪の優しい声音。電話越しでも、天使のように清楚な姿が脳裏に浮かぶ。
だが、今となってはそれも、恐ろしく感じてしまう。彼女の笑顔の裏にある情欲を、知ってしまったからだ。
「千雪から、オフの日に電話なんて、珍しいな。何か用か?」
『はいっ。あの、プロデューサーさんは、今日のお仕事、お休み……なんでしょうか?』
「……ああ。そんなに立て込んでないから、今日は休みにしたけど」
『——ぱり。じゃあ、今からプロデューサーさんの家に、お伺いしてもいいですよね?』
「……はっ? えっ? 千雪が、俺の家にって、ええっ!?」
突然の提案に、俺は動揺してしまう。
まさか、千雪の方から家に来ると言い出すとは思わなかったのだ。そんなこと、思えるはずが、ないだろう。
『プロデューサーさん、お仕事で疲れてるでしょうから、私が癒してあげられたらって思ったんです。お食事を作ったり、他にも色々と、お手伝いしますから』
「えっ、で、でも、どうしてそんな急に……」
『だって私たち、恋人になったじゃないですか。なら、一緒にいる時間を、増やすべきだと思うんですよ。みんなには内緒でも、休みの日くらいは、恋人らしいこと、したいですし……』
そう言って、千雪はくすくすと笑う。
確かに千雪とは、催眠抜きで両想いだとわかっていた。それでも俺は、今まで築いた関係を壊す勇気が出ず、踏み出せずにいる。
俺の担当しているアイドルは、千雪だけではないからだ。
甘奈と甜花。彼女たちを、裏切るような真似は、できない。283プロのみんなもそうだ。
そして何よりも、千雪を応援してくれているファンの人たちに、申し訳が立たない。俺たちの関係は、絶対にバレてはいけないのだ。
千雪も、それは承知しているはずだ。なのになぜ、彼女はこうして行動を起こしてくるのか。
たとえ勢いで、キスやフェラチオを済ませてしまったとはいえ、そこから先へ進んだわけではない。ならば、わざわざ休日に俺の家に来てまで、関係を進める必要などないだろう。
俺の疑問を察したように、千雪は言葉を紡ぐ。
『もちろん、寮のみんなには、バレないようにしますよ。変装も、ちゃんとしていきます。だから、いい……ですよね?』
そう言う千雪の声色は、どこか艶めかしいものだった。ぼかしているが、彼女が俺の家に来たがるということは、つまりそういうことだ。
断ってしまうと、千雪は欲求不満となり、催眠深度がどれほど上昇するか、わかるものではない。俺には最初から、断る選択肢はなかった。
「……わかったよ。俺の家の住所を、送るから」
『あ、大丈夫です。私、プロデューサーさんの家、知ってますから。それじゃあ、これから向かいますね、うふふっ』
「——うん?」
そう言い残して、千雪は通話を切った。ツー、ツーという無機質な音が響く中、俺は呆然とスマホを見つめることしかできない。
おかしい。なぜ千雪は、俺の家を知っていたのだろう。彼女には、教えていないはずなのだが。
もしかしたら、酒の席で、うっかり口を滑らせてしまったのかもしれない。それか、彼女と仲の良いはづきさんあたりが、教えたのだろうか。
まあ、そんなことは、どうでもいいか。
千雪が来る前に、部屋の掃除をしておかなければ。そう思い、俺は重い腰を上げて、ベッドから起き上がる。
一旦起きてしまえば、体は意外と動くものだ。俺は、てきぱきと部屋を片付けながら、千雪を迎える準備をする。
女性に見せてはマズいものだけは、しっかりと隠しておいた。エロ本とかオナホとか、そういう類のものである。
そうこうしている間に、時間は緩やかに過ぎていった。
「しっかし、増えたよなぁ」
俺の視線の先には、一人暮らしの男の部屋には似つかわしくない、可愛らしいぬいぐるみが置いてある。それは千雪から貰ったもので、彼女の手製だという。
こういった小物を作るのが趣味らしく、俺の家には、彼女の作ったぬいぐるみが、たくさん置かれているのだ。
俺のために作ってくれたのかと思うと、嬉しい気持ちもあるのだが、さすがに数が多すぎる気がする。こんなに貰っても困るし、最近は置き場がなくなってきていた。
でも、断ろうとすれば、千雪は悲しそうな顔をするので、結局は受け取ってしまう。千雪に悲しい思いをさせるくらいなら、多少のスペース不足くらいは、我慢しようと思っているのだ。
そんなことを考えていると、ピンポーンッとインターホンが鳴る。千雪が来たようだ。
俺の住むマンションは、オートロックではないので、既に玄関先にいることになる。
俺は足早に玄関に向かい、ドアを開ける。そこには、もちろん千雪が立っていた。
「ふふ、急いで来ちゃいました」
「……誰にもバレなかったか? とりあえず、入ってくれ」
「ええ。あと、どうですか、私の変装。これなら、大丈夫でしょう?」
千雪は得意げに胸を張る。
いつも通りの清楚な雰囲気を残しつつ、帽子に伊達眼鏡、マスクに地味めの服装といった出立ちだ。
しかし、その主張の強すぎる豊満なバストのせいで、変装が台無しになっている。誰しもが振り返るような肉体美を誇る千雪だが、彼女はそれを、変装で誤魔化せる程度のものだと思っているようだ。
天然なのか、あるいはわざとやっているのかは知らないが、これはあまりにも無防備過ぎる。
「は、はやく中に入れって……!」
「きゃっ、ひっぱらないでくださいよぅ……」
俺は千雪の手を引いて、急いで家の中に引き入れる。
危なかった。もし今の状態で、誰かに見られたら、バレていたかもしれない。千雪は、それだけの存在感を放っているのだ。
「プロデューサーさんって、意外と乱暴なところがありますよね。でも、そういうところも含めて、私は好きです。昨日だって、あんなに私を求めてくださって……」
千雪は頬を赤らめて、もじもじとしている。人の気も知らないで、彼女は何を言い出すのか。
そもそも平時なら、あんな真似はしないし、千雪が誘惑してきたから、一時的に理性が飛んでしまっただけだ。
「……とにかく、いらっしゃい。散らかってるけど、気にしないでくれよ?」
「はいっ、お邪魔しますね!」
俺は千雪をリビングへと案内すると、クッションの上に座らせた。そしてキッチンへ向かい、お茶の準備を始める。
「ふふっ、私の……。大事にしてくれてますね……」
変装を解いた千雪は、特に緊張した様子もなく、近くに置いてあったぬいぐるみを、腕に抱いてくつろいでいる。その姿はまるで、自分の部屋にいるかのようだった。
「安物で悪いけど」
「ありがとうございます。プロデューサーさんが淹れてくれるものなら、なんだって美味しいですよ」
そうお世辞を言って、千雪は俺の差し出した紅茶入りのマグカップを受け取った。
俺はローテーブルを挟んで、千雪と向かい合うようにして座る。
「あっ、隣……来てくれないんですね……」
「ん? ……ああ」
千雪が少し寂しそうな表情を見せるが、俺はそれを無視した。できる限り、肉体の接触は避けたいからだ。
すると突然、部屋にスマホのブザー音が鳴り響く。それは俺のスマホから発せられており、俺は慌ててスマホを手に取った。
画面には、件のアプリからの通知が表示されていて、そこにはこう書かれていた。
【確変ッ!! 催眠深度急上昇中!! 現在の催眠深度は60%を突破ァ!!!】
派手な点滅と共に、そんな文字が躍っていた。
俺は思わず目を疑った。まさかとは思うが、隣に座らなかっただけで、催眠深度が上昇したのだろうか。
そんなことがあり得るはずがない。そう思いながらも、俺は恐る恐る千雪の方を見た。
「どう、されました……?」
千雪の瞳には、ぼんやりとした光が宿っていて、俺のことをじっと見つめている。何かを求めているような視線だ。
「……やっぱり、そっちに行っていいか?」
「……っ! はいっ! ぜひ、きてください!」
隣に座ると、千雪は嬉しそうに微笑んだ。それから、おもむろに擦り寄ってきて、俺の肩に頭を預けてくる。
「こういうの、恋人らしくていいなぁって、思ってたんですよ。プロデューサーさんの側にいるだけで、とても安心できます……」
千雪は、そう言いながら、甘えるように体を密着させてきた。彼女の柔らかい部分が、腕に押し当てられる形となる。
「今まで、したことなかったのか?」
「……他の男性とですか? そんなの、あるわけないじゃないですか。私が、こうして触れ合いたいと思えるのは、貴方だけなんですから……」
千雪は拗ねる子供のように頬を膨らませると、俺の腕を抱いて、さらに体を押しつけてきた。
「い、いや、千雪くらい綺麗な女性なら、相手なんて、いくらでも見つかるだろう?」
言うまでもなく、千雪は美人だ。スタイルもいいし、頭も良い。性格だって穏やかで女性的なものだ。人当たりも柔らかで、欠点らしいところはない。
それなのに、男と付き合ったことがないというのは、やはり不自然だった。
「……変だと思われるかもですけど、私、昔から、運命の人と巡り会うことを、夢見ていたんです。確かに、学生時代から男性に告白されることもありました。けれど、そういう人たちって、どこか違和感があるというか……。上手く言えませんけど、私の理想とは離れてるなって、感じちゃうんです。だから、今まで恋愛とか、したことがなかったんですよ」
千雪は、自分の気持ちを確認するかのように、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
「でも、プロデューサーさんは、貴方は違いました。私をスカウトしてくれた時の、真剣な眼差し。真っ直ぐに私のことを見てくれて、私の笑顔を褒めてくれて、そして、私を導いてくれた。純粋に、私をプロデュースしたいと思ってくれた。私にとって、貴方こそが、運命の人だったんです」
千雪は俺を見上げて、熱っぽい視線を送ってくる。その瞳には、俺の姿だけが映っていた。
「たくさんの人を笑顔にしたいと、最初は思っていたはずなのに、いつの間にか、私は貴方だけを想って、貴方のことしか考えられなくなっていました。貴方のためだけに歌って、踊って、貴方だけを笑顔にしたいんです。貴方だけの、アイドルになりたい……」
千雪はそう言って、潤んだ瞳を向けてくる。俺は思わず、息を呑んでしまった。
彼女は本気なのだ。本気で、俺を愛しているのだ。その感情は、今まで表に出てこなかっただけで、ずっと胸の中に燻っていたのかもしれない。
そして、ついに溢れ出してしまった。いや、俺が出させてしまったと言うべきだろうか。
きっかけは、あの催眠アプリかもしれない。だが、俺が強い自制心を保てていれば、あるいはこんなことには、ならなかったのではないだろうか。
「——ん」
俺の責任だ。千雪だって、みんなを裏切りたくなかったから、必死に自分の欲望を、抑えていたに違いない。それを、俺が自分の欲求に負けて、暴いたんだ。
「——さん?」
ならば、俺が責任を取らなければならない。アプリを信用すればの話だが、催眠が解けさえすれば、催眠中の記憶は消えることになっている。
「——さんっ!」
あと、28日。その間、俺は千雪の純潔を、絶対に穢してはならない。童貞と違って、人生で一度きりしか味わえない、大切なものだから。
たとえ千雪の欲求を満たすために、口や手を使おうが、それ以上のことはしては駄目なんだ。俺は、改めてそう——
「プロデューサーさんっ!」
「うおっ!?」
ふと我に返ると、目の前に千雪の顔があった。不機嫌そうな表情を浮かべていて、こちらを睨んでいる。
「私の話、ちゃんと聞いていましたか?」
「ああ、もちろん……」
「……ほんとうですかぁ?」
少し怒ったような口調で言われる。どうやら、さっきから話しかけられていたようだが、まったく気がつかなかった。
「いや、どうも疲れが溜まっていてな。それで、ボーッとしていたというか……。すまん、悪かったよ」
「あっ……そうでした。私ったら、プロデューサーさんを癒すために来たのに、自分のことばかり喋っちゃって……ごめんなさい」
千雪は申し訳なさそうに目を伏せた。そういえば通話中に、そんな話をしていたような気もする。
「ええっと、男性を癒すのに、一番効果的なのは、これですよね」
千雪はその場で立ち上がり、それから唐突に服を脱ぎ始めた。
半袖のブラウスのボタンを外し、スカートを下ろすと、下着姿になった。真っ白な肌と、淡い水色のブラジャー、ショーツが見える。
「……えっ、ちょっ」
「んっ、あと少しだけ、待っていてくださいね……」
俺の困惑を他所に、千雪はそのまま下着まで脱ごうとする。
慌てて止めようとするが、それよりも早く、彼女は裸になってしまった。恥ずかしそうに頬を染めているが、それでも隠そうとしない。
初めて見る、千雪の白く柔らかな肢体が、露になる。類い稀な大きさの乳房も、細くくびれた腰も、すらりと伸びた脚も、安産型の尻も、全てが芸術品のようだった。
しかし、それ以上に目を引くのは、乳房の中心にある桜色をした乳輪だ。そこには、本来あるべきはずの突起が、なかった。
陥没しているのだ。いわゆる、恥ずかしがり屋さんの、陥没乳首である。
以前、千雪の胸に触れた時は服越しで、しかも丹念にもみしだいてから乳首に移行したので、まったく気付かなかった。
「やっぱり、気になりますよね。変でしょうか、私の胸……」
「……いや、全然。むしろ、俺の好みだよ。俺のモノだって、包茎で隠れてるんだから、気に病まないでくれ」
どうやら千雪は、陥没乳首にコンプレックスがあるらしい。
そう判断した俺は、全面的に肯定することでフォローに努めた。ついでに自虐を織り交ぜることで、親近感を抱かせる。プロデューサーとしてのスキルが、日常で活きた瞬間であった。
「プロデューサーさんと、同じ……。ふふっ、プロデューサーさんとは、体の相性も、いいのかもしれませんね」
千雪は嬉しそうに呟きながら、ゆっくりと近づいてくる。
「男性は、女性の裸を見ると、癒されるらしいですね。だから、私の体を見て、いっぱい元気になって欲しいです……」
どこでそんな知識を得たのか知らないが、千雪は俺を誘惑するように微笑む。
俺の股間は、既にガチガチになっていた。千雪の扇情的な姿を見て、興奮しないわけがない。そのまま、無意識に、千雪の胸に手を伸ばした。
だが、触れる直前で、我にかえる。先ほど意思を固めたというのに、俺は一体何を考えているんだ。
「どうぞ、触ってください……。貴方の手で、私の胸を揉んで、たくさん気持ちよくなってください……」
俺が迷っていると、千雪は優しく俺の手を握った。そして、そのまま自らの胸に持っていく。
「んっ……」
手のひらに、柔らかい感触が広がった。直接触れるのは初めてだが、想像していたよりもずっと大きい。
手を動かすと、千雪が小さく声を上げる。それがたまらなく愛おしく思えて、俺は夢中で彼女の乳房を弄った。彼女の反応を鑑みて、埋まっている乳首の位置を探る。
「……あっ、そこぉ……!」
そして、ついに見つけた。人差し指と親指で摘まみ上げると、コリコリとした感覚が伝わってくる。千雪が甘い吐息を漏らしながら、身を捩らせた。
「はあ……んっ、いいっ、ですぅ……」
周辺を指でくすぐるように刺激すると、少しずつ膨らんでいくのが分かる。千雪は乳首が敏感なようで、その度に可愛らしく喘いだ。
やがて、陥没していた乳首は、愛撫を続けていくうちに姿を現した。固く尖ったそれを、くりくりとこねくり回して攻めあげる。
「んんっ、くっ、あ……ああっ!」
すると、千雪の背筋が、大きく反り返る。
どうやら、絶頂を迎えたようだ。乳首への愛撫だけで、達してしまったらしい。
「はあ、はあっ、はあ……」
千雪は肩で呼吸をしながら、蕩けた瞳でこちらを見つめていた。彼女が落ち着くまで待っていると、俺も段々と冷静になってきた。
「わ、悪い。少し、調子に乗り過ぎたみたいだ」
「……あっ、いえ。とても……気持ち良かったので、大丈夫……です。でも、私だけ気持ちよくなるのは、駄目なので……今度はちゃんと、プロデューサーさんを癒してあげないと……」
そう言うなり、千雪は俺の体を軽く押して、ローテーブルに座らせる。端に置いたマグカップが、カチャっと音を立てた。
そのまま俺の前に跪き、上目遣いに見上げてくる。
「な、なにを……」
「ふふ。プロデューサーさんは、私の胸が好きなんですよね? なので、胸を使ったご奉仕をしますね」
千雪は目尻を緩ませながら微笑む。
俺はもう、本能に抗えなくなっていた。欲望のままに、千雪の胸に視線を向ける。
それに気づいたのか、彼女は両手で、自分の乳房を持ち上げた。張りのあるそれは、ふるりと揺れる。
水着姿は見てきたものの、生で見るのは、もちろん初めてで、思わず喉が鳴ってしまう。下半身に血流が集まりすぎて、俺の肉棒は痛いくらいに主張しており、外へ解放されるのを、今か今かと待ち望んでいるようだった。
「汚してしまうかもしれませんので、お召し物を全部、脱いで頂けますか?」
俺は、千雪の言う通りにして、立ち上がって服を脱ぎ始める。
どのみち、拒否権などないのだ。断って欲求を溜めさせてしまうと、昨日のように人前でも襲いかかってくるかもしれない。ならば、自室で二人きりの時ぐらいは、好きにさせてやろうと思ったのだ。
本番行為さえしなければ、問題ないだろう。上がってしまった催眠深度も、なんとかしないといけないし、ちょうど良い機会だと、そう言い訳をして。
「わぁ……。プロデューサーさんのお体、とてもたくましいです……」
全裸になった俺を見て、千雪は目を輝かせながら言った。
学生時代、スポーツに打ち込んでいたこともあり、今でこそ衰えたものの、それなりに筋肉はついている。自慢ではないが腹筋だって割れている。
アイドルプロデューサーは、意外と体力勝負な仕事だから、度々トレーニングをして、維持しているのだ。
「失礼、しますね……」
再びローテーブルに座った俺の足の間に、千雪がちょこんと正座をしてきた。
そして、俺の股間に顔を埋めるようにして屈んだ。柔らかそうな唇から吐息が漏れ、臨戦態勢の肉棒を撫でる。
「もうこんなに……。私で、興奮してくれたんですね……。嬉しいです……。では、始めましょうか……」
千雪は、俺の肉棒に頬擦りをした。
そのまま舌を伸ばして、裏筋を舐め上げる。ぞくっとした快感が走り、腰の奥がきゅんと疼いた。
「まずは、下準備が大事なんですよね……。濡らしてからじゃないと、男性も女性も痛みを感じてしまいますから……」
千雪は妖艶に笑いながら、唾液をたっぷりと乗せた舌で、亀頭をくるりと一周させた。
それから右手を、竿の頂点へと滑らせる。そのまま、焦らすように、ゆっくりと皮を剥いていく。敏感な部分が外気に晒されて、肉棒がビクッと震える。
そして、完全に露出された亀頭は、我慢汁が滲み出ており、照明の光を受けて、ぬらぬらと輝いている。
「わあっ! 昨日よりも、濃厚な匂いですね……!」
千雪は嬉々として言って、大きく息を吸い込んだ。鼻腔を広げながら、うっとりとした表情を浮かべる。
俺は、そう言われて気づいた。昨晩、帰宅した後に、シャワーは浴びたものの、皮の中まで洗うことはしていなかった。つまり、一日分の垢や汗などが、そこには溜まっているということだ。
その臭いを嗅がれているという羞恥心と、彼女の淫らな雰囲気に当てられて、また一段と性欲が高まっていく。
「悪い……。ちゃんと、洗えてなかった……。汚いから、やめにしても——」
「そんなっ、汚くなんかないです! 私たちアイドルのために、一生懸命働いてくれている証拠ですから!」
千雪はそう言うなり、肉棒にしゃぶりついてきた。
熱い口内に迎え入れられ、舌で包まれる。ざらついた表面の感覚と、粘膜の柔らかい刺激に、一瞬で脳髄が溶かされそうになる。
「んっ……じゅる……。れろ、ちゅぷっ。……んぐっ、ごっ……!」」
千雪は、そのまま顔を前後に動かし始めた。時折、喉奥に先端が当たるほど深く飲み込んでは、苦しそうにえずいて、涙目になりながら引き抜いていく。奥まで堪能しているその姿は、まるで好物を味わっている子供のようだった。
そういえば最初、千雪は俺のチンカスを美味しそうに食べていたのを思い出す。あの時は、気をつかってくれていると思っていたのだが、まさか本当に好きなのだろうか。
千雪の本性は、実はとんでもない変態女だったりするのかもしれない。そんなことを考えながら眺めていると、不意に彼女と目が合った。
「……んふふ」
千雪は一瞬動きを止めたが、すぐに再開する。今度は、より激しく責め立ててきた。
カリ首の段差を、尖らせた舌先でチロチロとくすぐられる。そうやって、弱点を的確に攻め立てられるたびに、俺は情けない声を上げて体を震わせた。
やがて、限界が訪れる。せり上がってくる射精感に抗えなくなり、俺は大きく仰け反った。
「ん〜? んん……ちゅっ……」
だが、あと少しで達するというところで、彼女は口を離してしまった。行き場を失った精液が逆流してきて、ぐるぐると暴れまわる。
「がっ……! な、なんでぇ……またぁ……!」
イキかけたところを寸止めされて、俺の目尻には自然と涙が浮かんできた。
一昨日、昨日と一回ずつ寸止めを喰らい、またしてもお預けを食らう。さすがに辛いものがあった。
「えっ、下準備のつもりだったので……」
千雪は、きょとんとした顔で言う。どうやら、まだ前戯の段階でしかなかったらしい。それにしては、かなり激しい口淫だったが。
「でも、これで十分濡れましたよね。じゃあ、失礼して……。んしょっ……」
しかし、これで終わりではないようだ。
千雪は再び俺の肉棒に身を寄せてくると、胸元に抱え込むようにして、乳肉で包み込んできた。そのまま、ぐにゅっと形を変えて、圧迫してくる。
柔らかな感触が、肉棒全体を優しく撫で回した。その心地よさに、思わず腰が砕けそうになる。
「ふふ。パイズリって、言うんですよね、これ……。大きい胸でされるほど、気持ち良くなるとか……」
千雪は挑発的な笑みを浮かべて、囁きかけてきた。確かに、彼女の巨乳は規格外だ。爆乳と表現すべき大きさである。
たわわに実った二つの果実を、左右から押し潰すように挟み込んでいるため、竿の根元にまで圧力がかかる。それが、絶妙な力加減で締め付けられて、甘い快感を生み出しているのだ。
「ずりずり〜、むぎゅう〜。ふふ、なんだか楽しくなちゃいます……」
上機嫌な様子で、谷間の中で肉棒を擦るようにしながら、ゆっくりと上下運動を始める。
柔らかい乳房が亀頭を滑るたび、痺れるような快楽が襲ってきた。さらに、時折思い出したかのように強く押し付けられて、重い刺激を与えられてもいる。
そして、時折谷間の奥底へと沈んでいき、先端だけが露出させられることもあった。その度に、敏感になった部分が空気に晒されて、ひんやりとした感覚を覚えてしまう。
その瞬間だけは、少しだけ寂しさを感じるものの、すぐに温かくなって、じんわりとした熱さが広がっていく。まるで、彼女の体温と溶け合って、一つになっているかのようだった。
「ああ……。プロデューサーさんの、蕩けきったお顔……。可愛いです……」
千雪は、うっとりとして呟く。それから、こちらを見つめたまま、見せつけるように舌を出して、唾液を垂らしてきた。
トロッと糸を引きながら、透明な液体が亀頭に滴ってくる。それは乳房の内面にも落ちると、瞬く間に馴染んでいった。
ローション代わりのつもりなのだろう。ぬめりが増したことで滑りが良くなり、パイズリの動きも加速していく。
柔らかくとも、吸い付かれるような肌質のせいで、摩擦による痛みは全く感じない。純粋な快感のみが、伝わってきていた。
「こうすれば、どうなるのでしょうか……」
一旦動きを止めて、肉棒が完全に見えなくなるほど、深い谷の底まで飲み込まれる。沈み込んだ竿の根っこから先っぽまで、隙間なく千雪に密着して包まれている。千雪の胸に抱かれているのだと実感させられた。
いや、千雪の胎内にいるという方が、正しいかもしれない。それほどまでに、彼女の乳内は暖かかった。全身を包み込んでいた多幸感が、一気に高まっていく。
「……ばあ〜! ふふ、プロデューサーさんの、赤ちゃんおちんちんが、産まれましたよ〜。ママのおっぱいから、顔を覗かせてまちゅね〜。よしよーし……」
そうやって、たっぷりと時間をかけて乳内で愛されたあと、不意に亀頭だけが解放される。谷間から飛び出したそれは、彼女の唾液と我慢汁で、ヌルついた状態で晒されていた。
そこに千雪の手が伸びてきて、指先で優しく撫でられる。赤子をあやすような手つきだ。
そして、慈しみに満ちた表情で亀頭を見下ろされ、俺は恥ずかしさを覚えて目を逸らす。
「あれぇ、おかしいでちゅね〜? かわいい産声が、聞こえまちぇんね〜?」
千雪はそんなことを言いつつ、今度は人差し指と親指を使って、カリ首を挟んできた。そのまま左右に揺らされて、くすぐるような責めを受ける。
「赤ちゃんはぁ……産まれた時にはぁ……いっぱい産声を出さないとぉ……だめなんでちゅよぉ……?」
千雪の声音には、どこか嗜虐的な響きがあった。俺が悶える様子を見て、楽しんでいるのだろうか。
「しょうがない赤ちゃんでちゅね〜。そんなにママの中が恋しいなら、今からまた、帰っちゃいまちょうかぁ……?」
彼女は小首を傾げて微笑みかけると、ゆっくりと胸を寄せ上げ始めた。乳圧が高まり、谷間が狭まる。再び亀頭が呑み込まれていく感覚に、俺は思わず身震いをした。
「おかえりなちゃ〜い! プロデューサーちゃんは、千雪ママのおっぱいが大好きな、甘えん坊さんでちゅよね〜?」
千雪は、乳内に収めた肉棒を揉み込むように、手を動かした。乳房を手で支えて、ぎゅっと押し潰しているせいか、締め付けが凄まじい。
今度は、外気に晒されることなく、そのまま肉棒全体が千雪に包み込まれている。そして、乳内に溜まった温かい空気が、敏感な亀頭に染みるようにして広がっていき、じんわりとした快感が生み出されていた。
「でもぉ、いつまでもここにいたら、だめでちゅよ〜? それにぃ、我慢して溜め込むとぉ、良くないんでちゅよぉ……?」
千雪は、ずりゅずりゅとリズミカルに乳房を動かし始めた。上下だけでなく、左右からも圧迫してくる。それによって、乳房の形が変わる様を、存分に見せつけられた。
「だからぁ……ママの合図でぇ……次に産まれる時はぁ……たぁくさんっ気持ち良くなって、ぴゅるるぅ〜って、出ちまちょうねぇ……」
千雪は、うっとりとした様子で言うと、さらに激しく乳房を揺すり始める。まるで肉棒を咀躙するかのように、容赦なく擦られ続けた。柔らかな肌質と、弾力のある乳肉によって、あらゆる方向から肉棒を締め付けられる。
肉棒の表面を滑るようにして動くたび、乳内の肉が絡みついてきた。乳壁の一つ一つが感じられるほどに、強く密着される。まさに全体を、無数の舌で舐め回されているかのような錯覚に陥った。
「じゃあ、いきまちゅよぉ……。さぁん〜、にぃいぃ〜、いぃいちっ……」
千雪は、掛け声に合わせて、上下に動かす幅を一気に増した。長いストロークで、何度も往復させられると、そのたびに柔らかい肉壁に亀頭をこねくりまわされ、陰嚢の奥から精液が込み上がってくる。
「…………ぜろぉ〜!」
最後の瞬間、千雪は竿の頂点まで持ち上げていた乳房を、一気に下までずり下ろした。
乳内で暖かくあやされていた愚息が、急に冷たい外気に晒された。それが刺激となって射精欲を促し、俺は腰を突き上げる。
「あむっ!」
射精の寸前、千雪はこちらを見つめながら大きく口を開き、亀頭を口に含んだ。それと同時に、びゅうっと勢いよく白濁液が吐き出されていく。
「んぅ……! んぐ……んん〜」
喉奥に向かって注がれている最中も、千雪は口を離さなかった。それどころか、もっと出せと言わんばかりに吸い付いてきて、尿道に残った残滓まで搾り取られる。
「ごくっ……」
ようやく全てを出し終えた頃、千雪は名残り惜しそうにしながらも、ゆっくりと口から肉棒を解放した。
「……ふふっ。上手に産声を、あげられまちたねぇ……。えらいでちゅよぉ……。よちよちっ、いい子いい子……」
俺が放心状態になっている間にも、彼女は労わるような手つきで、亀頭をさすってくる。射精直後で敏感になっていたせいか、それだけで身体がビクンと跳ねてしまった。
「プロデューサーちゃん、どうでちゅかぁ? おちんちん、すっきりできまちたかぁ……?」
千雪は、聖母のような微笑みを浮かべて、問いかけてくる。しかし、今の俺は、まともに答えることもできず、ただ荒くなった呼吸を整えようと必死だった。
「あらあらぁ、いっぱい泣いて、疲れたんでちゅねぇ〜。後片付けは、ママがやっておきまちゅから、ゆっくり休んでくだちゃいね〜?」
千雪は慈愛に満ちた表情で見守りつつ、優しく囁きかけてきた。
それから、部屋に置かれたティッシュペーパーを手に取り、溢れ出た体液を拭ってくれる。
「……はぁい。これで、すっかり綺麗になりまちたよぉ〜。……ん〜? もしかして、おねむなんでちゅかぁ?」
千雪は俺の目元を撫でると、そのまま頬に手を当てて顔を近づけてきた。
確かに俺は、射精直後に襲ってきた眠気に抗えず、意識が遠のいているところだ。蓄積した疲労も相まって、瞼を開けていられない。
「ふ、くふっ、ふっ……。じゃあ、ママと一緒に、ねんねちまちょうねぇ〜」
彼女の声色は、まるで催眠術のように脳髄へと染み渡った。そのまま、心地良い眠りに誘われていく。
「あらあらっ、ここでねんねしたら、だめでちゅよぉ〜。……えっと、確か、こっちが寝室でしたね」
千雪に導かれるまま、ベッドのある部屋まで移動していく。そして、彼女に抱きしめられたまま、倒れ込むようにして横になった。
「うふふっ、ママのおっぱいに頬擦りしちゃって、気持ち良さそうな寝顔でちゅねぇ……。ねんねするあいだ、ママがいい子いい子しててあげまちゅから、ゆっくり休むんでちゅよぉ……?」
千雪は、子供をあやすように、背中をポンポンと叩いてくれた。その優しいリズムと、甘い香りに包まれる安心感によって、急速に睡魔が訪れる。
「……くっ……ふっ、ふふ、くふふふっ……。おやすみなさいませ、旦那さま……」
堕ちる寸前、耳元で囁かれた言葉の意味を、考えることもできないまま、俺は深い眠りに沈んでいった。