【インモラルのんのんびより】新任教師の戸惑い 作:エルサイズ
「よし...こんなもんか」
ダイヤモンドホワイトのボディを吹き上げる。
今日はステーションワゴンでこのみを迎えに行くつもりだ。
この車が一番運転しやすいからな。
ラゲッジルームにキャリーケースを放り込んで、手荷物だけを持って運転席に座る。
銀色のスタートスイッチを押すとディーゼルらしいエンジン音が遠くに聞こえる。
リモコンスイッチでガレージのシャッターを開けると、晴天の空の恵みが降り注いできた。
「今から行けば...ちょっと早めに着くな。まあいいか」
オルガン式のペダルをグッと踏み込んでガレージを出る。目指すはこのみの待つ町。
青々とした空にはまだ東寄りの太陽。流れていく田園風景は忘れかけていた少年時代のあの空に重なって憧憬を抱かせた。
途中、川に架かる小さな橋の下に越谷姉妹と蛍ちゃんとれんげちゃんの姿を見た。
今日は天気が良いので川遊びだろうか。
向こうも気づいたようで手を振っている。俺も微笑んで手を振り返した。...つい先日にあの可憐な黒髪の少女の肢体を蹂躙しつくした事を思い返してしまった。
やがて国道に合流して町を目指す。
この辺りは信号が少なくて本当に走りやすい。
とくに目印もない道のりをしばらく走っていると、やがて町に到着する。
時刻は午前10時50分。少し早かったか。
スーパーに立ち寄り、緑茶を2本買う。
ドリンクホルダーに500mlペットボトルを置く。少し時計が見づらいが、まあいいか。
助手席の手荷物を後部座席に置き、畳んで置いていたひざ掛けを助手席に移動させた。
そして近くにあるこのみの高校まで車を走らせた。
―――――――――――――――――――――――
「ここだな。とりあえず駐車場に停めさせてもらうか」
休日出勤の先生方は珍しく少ないようで、駐車場はガラガラだった。
エンジンを切って車の外で待機する。グラウンドの方から運動部の元気な声が聞こえてくるが、吹奏楽部の練習の音は聞こえていない。もう終わっているのだろうか?
校舎の3階部分に目を向ける。窓から覗く音楽家たちの肖像画。...どうやらそこが音楽室のようだ。
駐車場から見える位置にあるので、演奏していたらよく聞こえることだろう。
何となく、そのまま音楽室を見上げていたら、何人かの生徒がこちらを見ていることに気がついた。...不審者だと思われているのだろうか?
まあ...こんな車だとそう思われても仕方ないか...オブシディアンブラックじゃないだけましだと思うんだけど。
とりあえず手でも振ってみるか?
「...?」
ふりふりと手を振ると女生徒たちは奥に行ってしまった。...少しショックだ。
すると次に顔を出した女生徒の顔を見ると、再び笑顔で手を振る。
...このみだった。
「...っ...」
彼女も小さく手を振り返してくれた。
奥からキャーキャーと黄色い声が聞こえていた。
数分後、顔を紅潮させたこのみが小走りでやってきた。
学校の通学カバンと別にボストンバッグを持っている。
「おかえり。このみ。荷物持つよ」
「ありがと...もう...こんな目立つところで待ってなくてもいいのに」
リモコンキーでリアハッチを開けて、ラゲッジにボストンバッグを入れる。
...確かにちょっと目立っていたかもしれない。
上を見るとさっきより大勢の女生徒が覗いていた。
よく見ると昇降口にも人影が見える。
「...目立っちゃってるな」
「だからそう言ってるじゃない...」
後部座席にこのみの通学カバンを置いて助手席のドアを開けた。
「さあどうぞ」
「...っ...ありがと」
顔を赤らめた彼女が可愛かったのでそのまま続けることにした。
そのまま運転席に乗り込んで発進させた。
...これだけ注目されていると月曜日には質問攻めに遭うことになるだろう。
「もう...すっごくからかわれたんだからね。しかもこんな目立つ車で...」
頬を膨らませるこのみの頭を撫でて答える。
「ごめんごめん。早くこのみに会いたかったんだよ」
他の車はもっと目立つからこれで来たんだけどね。
...うるさいスポーツカーと大径ホイールにローダウンさせたイカつい大型ミニバンだからな。
「うん...私も勇太に早く会いたかった...」
少し赤い頬のまま笑顔になるこのみ。
制服の短いスカートからのびる白い太ももがまぶしい。
「ほら、これ膝にかけて」
「...?」
ひざ掛けをこのみに手渡す。
彼女はよくわかっていない様子だ
「ほら...この車って車高低いからさ。外から見えるんだよ。その...このみの脚が」
「あっ...そ、そういうことね」
理解したようで、ひざ掛けを広げてその白い太ももを隠す。
俺からも見えなくなるのが残念だが、他の野郎に見せてやるくらいなら我慢する。
「今日は山の方の温泉旅館に行こうと思うけど、それで良かった?」
以前に行ったことがある旅館に連絡して、1部屋用意してもらった。
「あ、うん。温泉大好きだから嬉しいかも」
それならよかった。エンジンをかけてアクセルを踏み込む。そして、集落とは反対方面の温泉旅館に向けて車を走らせた。
―――――――――――――――――
走り出して直ぐ。そういえば昼食を済ませていないことを思いだした。
「このみ、お昼ご飯食べた?」
「ううん。まだ食べてないよ。あ、でも勇太の分までサンドイッチ作ってきたからあとで食べようよ」
「おっ、手作りか。じゃあ途中に公園が有れば寄ろうか」
通学カバンがやけに膨らんでいたのはそれだったのか。
ちょうど、道中のダムに小さな公園がある。そこで良いだろう。
「ふふ...なんだか夢みたい」
「夢?」
「うん。勇太とまた会えたし、それに2人きりで旅行だなんて...」
嬉しそうな彼女を横目に見る。...俺もだよ。と素直に言うには俺は穢れ過ぎているのかもしれない。脳裏に浮かぶのは嬌声を上げる蛍の姿。
彼女と2人で来れたことは本当に嬉しい。しかし、彼女の意外と大きい胸、健康的な脚、引き締まったお腹を見て...これからこの身体をどうやって蹂躙してやろうかと邪な考えを持っている俺も同時に存在している。
「??」
信号待ちしている間、このみを見つめていたら彼女と目線が合ってしまった。...邪念を振り払って運転に集中しなければ。
「なんでもないよ。そろそろ見えてくるかな」
もうダムの周りを走っている。
山桜はまだ花を咲かせているようだ。
ソメイヨシノより鮮やかな花が過ぎつつある春の残り香を感じさせる。
「あそこみたいだね」
駐車場が見えてくる。
その近くには東屋が1つとベンチが複数個見つかった。
結構山奥まで来たこともあり、人影は殆ど無い。すっかり花びらは落ちてしまっているが、ダムを囲うソメイヨシノの周りには花見をしにくる人々が多く訪れていたのだろう。
ツーリングライダーのカップルが一組と年配のご夫婦が一組居るだけで閑散としている。
「もう少し登ってみるか」
この奥にも駐車場があるようだ。
「お、この辺りも良いな」
「そうだね~この辺りにしようか」
先ほどの休憩スペースより更に山も深いが、こちらも自然豊かで良い。
東屋は無いものの、ベンチとテーブルは置いてある。
車を停車して、ラゲッジからミニレジャーシートを2つ取り出した。
俺はレジャーシート、このみは通学カバンを抱えてテーブルを指さした。
「あのテーブルのところで良い?」
「良いよ。ちょっと待ってろ」
テーブルにレジャーシートを引いて、一方のベンチにもう1枚のシートを引く。
「はいどうぞ」
「ありがと♪」
ドリンクホルダーから持ってきたお茶をテーブルに並べる。
このみがカバンから取り出したのは、青色と薄い青色と赤色とライムグリーンの4つの蓋の色が違うのサンドイッチケースだった。
中にはラップに包まれたサンドイッチが2つずつ入っている。
「こっちの赤いのがトマトとレタスで、この青がジャムサンド。このライムグリーンがツナサンド、この薄い青はたまごサンドだよ」
どれも美味しそうだ。個人的にはライムグリーンが一番好きかもしれない。色も具材も。
「ではいただきましょう!」
「いただきます」
まずはトマトとレタスからいただこう。
「おっ、旨い!」
「ほんと?良かった~」
このみはツナサンドから食べている。
ニコニコ顔でご機嫌なようだ。
それにしても旨い。
「あ、勇太。ちょっとじっとしててね」
「?」
このみが顔を寄せてくる。
そして...
「マヨネーズついてるよ?」
そう言ってハンカチで俺の頬を拭いてきた。
...少し期待と緊張でドキドキしてしまったじゃないか。
俺は次に食べようとしていたツナサンドを手に取る
「このみ」
「うん?」
「あーん」
ツナサンドを手に持ってこのみの口の前に持っていく。
「えっ...!?あ、あーん」
素直に口を開くこのみ。
ツナの油で少しテカテカしている唇と真っ赤な舌が色っぽい。
...もう俺の策にはまっていることも知らずに。
「あー...んむっ!?んぅ...ちゅ...」
俺はツナサンドに代わって彼女の潤った唇を奪う。
「...ふぅ。ごちそうさま」
「あぅ...いきなりはズルいよ...」
こんなウブな反応が返ってくるので楽しい。
ノリノリで舌を絡ませ合うキスも好きだが、ウブなこのみは本当に愛おしい。...ちなみに、その後は警戒されてしまったのでもう一度唇を奪うことは叶わなかった。
「ごちそうさまでした。本当に美味しかったよ。ありがとう」
「お粗末さまでした。喜んでくれて良かったよ」
彼女の笑顔にこちらまで幸せな気分になる。
このみの笑顔を見つめていたら徐々に視線が絡み合っていく。
俺は彼女の細い腰に手を回して抱き寄せる。そして...2人の距離がゼロになった。
「ゆうた...んっ...ちゅ...」
このみの瑞々しい唇の感触が心地良い。
一生懸命と言った感じのキスをしているこのみに対して愛しさがどんどん膨らんでいく。
「ふ..ぁ...はぁ...はぁ...ふふっ...キスって...こんなに...」
「気持ちいい?」
「...うん...」
俺の肩に頭を預けながら目を瞑って頷く。
1つにまとめたチョコレートブラウンの髪を撫でる。
夏の足音が聞こえる森を抜けるそよ風が俺たちの頬をくすぐる。
先程までは少し汗ばむほどの陽気だったのだが、ここは山奥なので気温が低く、密着していても過ごしやすい。
「勇太...」
「うん?」
「...大好き...」
「ああ...俺も大好きだよ」
甘く囁かれる愛の言葉。俺の波立っていた性欲も静かな水面へと変わっていく気がした。