【インモラルのんのんびより】新任教師の戸惑い 作:エルサイズ
すっかり日も落ちてしまった田舎道。
かすかにカラカラと聞こえるエンジン音はスピーカーから流れる優雅なクラシックにかき消されていた。
「勇太さんもクラシックお聞きになるんですね」
助手席に座る美少女もクラシックを嗜むらしい
「親父が好きだったんだよ。俺はあまり詳しくないんだけどね。なんとなく落ち着くから聴いてるよ」
「あ、私もそんなに詳しくないですよ。うちも父がクラシック好きで家にレコードがあるんです」
レコードとはまた好き物だな。しかし、レコードにはレコードにしかない良さがあるって聞いたことがある。
「レコードも独特の良さがあるっていうよね」
「はいっ。CDにはない柔らかな音とか言いますよね。今度聴きに来ます?」
「いいの?じゃあ今度お邪魔しようかな」
はい、と笑顔で返事をする彼女に見惚れてしまいそうだ。
そして...その豊かな胸元の深い谷間に流れるシートベルトに勝手に目線が行きそうになる。
「勇太さん」
蛍ちゃんの愛らしい声ではっと我に帰る。
「うん?」
「勇太さんってお休みの日は何してるんですか?」
休みの日か...こちらに来てからは特になにをしようとは考えてなかったが...
「そうだね...車でドライブとかよく行ってたよ。少し遠くのご飯屋さんに行ったり、景色がいいところに行ったり...夜に夜景が綺麗なところに行ったりしたかな」
前住んでいたところはどこに行ってもご飯がおいしくて温泉が近かったからドライブコースに困ることは少なかった。
「へぇ~素敵ですねっ!その...私も連れて行ってもらってもいいですか...?」
...この距離感はまずいかもしれない。
かつて、このみとの間に起きたことが脳裏をよぎる。...しかし、ここで突き放すのも信頼関係を損ねる可能性がある。
「いいよ。行くときには知らせるね」
とりあえず保留しておこう。...別にやましいことがあるわけではないのだから。
「はい到着、と」
しばらく走った後に我が家へ到着した。
「本当にお隣さんだったんですね...」
リモコンでシャッターを開けて車庫に入れる。
「疑ってたの?」
少しおどけてからかってみる。
「ち、違いますよ。その...嬉しかったんです」
「嬉しかった?」
少し頬を赤く染めている蛍ちゃん。
君みたいな美少女がそんな表情したらダメだよ...世の中の男をみんな虜にしてしまう。
「勇太さんみたいな素敵な人がお隣さんで嬉しかったんです...また、ドライブしましょうね...?」
上目遣いで見つめてくる蛍ちゃん。
思わず心拍数が上がってしまう。
「また...今度ね」
こう返事をするのが精いっぱいだった。
「じゃあ蛍ちゃんのお家に行こうか」
「...っ...はい!」
弾けるような笑顔にこちらも嬉しい気分になる。
一度家に入り、引っ越しの挨拶の為に購入していたモノを取って来た。
「定番だけど、お蕎麦を買ってきたんだ。ご家族で蕎麦がダメな人とかいる?」
「わぁ、ありがとうございます。大丈夫ですよ。みんなお蕎麦大好きです!」
良かった。蕎麦アレルギーの人は意外と多いから大丈夫か不安だった。
はす向かいの一条家へ向かう。蛍ちゃんは鍵を取り出して開錠した。
俺もそれなりの都会で育ったのでその行為に違和感はなかったのだが、この地域では鍵をかけないどころか、そもそも鍵がついていない家もあるくらいだ。なので、鍵をかけるのが習慣付いている家というのも珍しい。
「ただいま~ママ~パパ~ちょっと来て~」
彼女の口調が幼くなる。本来の彼女はこちらなのだろうか。
「はーい。蛍ちゃんおかえりなさい。」
「お帰り、蛍。おや?そちらの方は?」
奥からは綺麗なご婦人と優しそうなご主人がお迎えに来られた。
「初めまして。私、隣に越してきました田中勇太と申します。本来であれば自宅の建築前にご挨拶に来るのが筋でしたが大変遅くなってしまいまして申し訳ございません」
「ああ、あのお手紙いただいてた田中さんでしたか。いえいえわざわざご丁寧にどうもありがとうございます」
「わざわざお手紙までいただいて、ご都合の良いときでよろしかったのに~」
ご夫婦は見た目通り穏やかでいい人のようだ。
「実はね、この勇太さんって学校の新しい先生なんだよ!」
「えっ?そうなの?」
「それはすごい偶然だね~」
「はい。もともと別の地方で非常勤講師として勤務しておりましたが、この度祖父母が暮らすこの地で教鞭をとることになりました。長い付き合いになると思いますので今後ともよろしくお願い致します。あ、これご挨拶の品のお蕎麦です。皆様でお召し上がりください」
「これはこれはご丁寧にどうもありがとうございます」
「今日はバスに乗り遅れちゃって...だから勇太さんに送ってもらったんだよっ」
「まあ本当に?わざわざありがとうございました」
頭を下げられてしまった。
「あ、いえいえお気になさらないで下さい。お隣ですので」
「よろしければご飯食べていきませんか?せっかくですしいただいたお蕎麦もいただきましょう」
「いえいえそんなご馳走になるなんて...」
「遠慮なさらないで下さい。さ、どうぞどうぞ」
無下に断るのも失礼というものだろう。ここはご相伴にあずかることにしよう。
「では、いただきます。ありがとうございます。」
しかし...誰かの家庭の味というのはいつ以来だろうか。父は料理が苦手だったから俺が食事を作っていたので、誰かの手作り料理は本当に久々だ。
時刻は進んで、今は20時過ぎ。蛍ちゃんのお父さんが好きだというワインをいただいている。
「へぇ~勇太くんはお一人であのお家に住んでるんだね」
「はい。父から相続した遺産がそれなりの金額だったので思い切って建てました」
ははは、と苦笑いしてしまう。自分でも思い切った決断だったと思う。
正直、大きく作りすぎて一人では完全に持て余している。とはいえ、この辺りは大きな家ばかりなのでそこまで目立っていない。一条家も立派な邸宅だ。
「こんなにお若いのにご両親を亡くして苦労してるのね...勇太くん、いつでもウチにご飯食べにきていいからね」
本当にこのご夫婦は素敵だ。こんな見ず知らずの男にこんなに優しくしてくださるなんて...
「ありがとうございます...なんだかこんなに素敵なご両親に育てられた蛍さんだからあんなに素敵なお子さんに育ったんですね。とても納得しました」
「そんな素敵だなんて...」
顔を赤くしている蛍ちゃんもかわいらしい。
ワイングラスを目の前に別の理由で顔を赤くしているご両親とそっくりだ。
顔立ちはお母さん似だけど目元はお父さん似だろうか?
ふと時刻を確認すると、そろそろいい頃合いだった。
「そろそろお暇しますね。遅くまですみません」
「いいのよ。また来てくださいね勇太くん」
奥様の温かい声に見送られて一条家を後にする。旦那さんは既に夢の世界だった。
はす向かいの我が家を開けると、真っ暗な玄関がお迎えしてくれた。
「わかってはいたけど、さっきとの温度差でクるものがあるな...」
少し泣きそうになる。
俺は明日の準備を済ませてシャワーを浴びた。
歯を磨いて寝るだけになった21時頃、寝る前に滋養強壮の効果のあるお茶でも淹れるかな。最近バタバタしてて疲れたし。
「えっと...確かここに...あったあった」
あれ?こんなパッケージだったかな...まあ滋養強壮って書いてあるしこれだろうな
妙な色のお茶を淹れていると玄関のチャイムが鳴った
「こんな時間に誰だろう...」
カメラ付きのインターホンの応答ボタンを押す
「はーい」
「あ、勇太さん、遅くにすみません。蛍です」
玄関には可愛らしいパジャマ姿の蛍ちゃんが立っていた。
夜はまだ冷える時期だ。きっと寒かっただろう
「すぐ開けるね」
急いで玄関に向かい、彼女を家に招き入れた。
「遅くにお邪魔してすみません。勇太さんの忘れ物をお届けにきました」
そういって彼女は俺の車のスマートキーを渡してきた。
エンブレムが入っているのですぐにわかったのだろう。
「うわー、忘れてたのか。ごめんね、わざわざありがとう」
「あ、気にしないでください。それに...もう少しお話したかったので」
えへへと笑う彼女に思わず心臓が高鳴ってしまう。
ただでさえ魅力的な彼女がこんなに無防備な笑顔を浮かべているのだ。仕方ないというものだろう。
「寒かったでしょ?ちょっと変わったお茶淹れてたんだけど、蛍ちゃんもどう?」
「わぁ...ありがとうございます。いただきます」
玄関でスリッパを脱いで家に上がる蛍ちゃん。...こんな時間に女の子を連れ込んでいるという事実に少しテンションがあがってしまった。
リビングのソファーにちょこんと腰掛ける蛍ちゃん。柔らかい生地のパジャマを大きく押し上げる胸元に思わず視線が誘導されそうになってしまった。
ティーカップをもう一つ取り出してお茶を注ぐ。お酒ではないから大丈夫だろう。
「さあどうぞ。熱いから気を付けてね」
「ありがとうございますっ」
カップに口をつける蛍ちゃん。...さて、俺も飲むことにしよう。
「うーん...香りは甘いけど味は少し苦味があるな...こんな味だったか...?」
「あ、私このお茶好きかもしれません。この香りが癖になりそうです」
確かにいい香りだ。なんだか体が熱くなってきて、自然と蛍ちゃんの豊満な身体に目線が釘付けになっていき...
「あれ...ゆうたさん...なんだかわたし...身体が熱くなって...」
いやおかしい。これはおかしいぞ
確かに蛍ちゃんは可愛いけれど手出ししようとは思っていなかった。...でも今はどうだ?3人掛けソファーで、少しスペースを空けて座っていたはずの蛍ちゃんがぴったりと密着しているではないか。それに、いつのまにやら腰を抱いてしまっている。
「はぁ...はぁ...ゆうたさん...♡」
パジャマをはだけさせて俺にしなだれかかる蛍ちゃん
俺はかろうじて残っている理性で茶葉のパッケージの裏書を見る。
『滋養強壮効果あり。しかし、少しでも思いあっている男女が一緒に飲むと強い催淫効果があるので注意すること』
なんだそれ...
確かに蛍ちゃんに対して好ましい感情は持っていたが...
ひょっとして...蛍ちゃんの方もそう思ってくれていたということか...?
だとしたら問題ないな...いや。だめだろう...なにがだめなんだろう。
...もう何も考えられない。ただただ、目の前の愛らしいメスのお腹を膨らませることしか考えられない。
俺が正常な思考を持っていられたのはパッケージを読んだあたりまでだった