おちなし
いみなし
――魔法少女隊ブラスティア!
魔法少女隊ブラスティアは悪と戦う正義のヒロインである!
彼女達は都市防衛機構カネアール(株)の支援を秘密結社エレボッサーと日夜激闘を繰り広げているのだ!!
”ドカアアアアアアンッ!!”
”ワー!ワーワー!キャー!”
”グワーッ!イヤーッ!ギャーッ”
ビル街に爆音と悲鳴が響き渡る。
ここはH県S市、秘密結社エレボッサーが主に活動し、そのため魔法少女隊ブラスティアが主に活動する土地である!
ちなみに結構な大都市!T京、O坂、N屋に次ぐ規模を誇っているぞ!
「これで終わりよアクドイン!行くわよ、スラッシュ、クラッシュ!」
「ええ、ブラスト!魔法少女超必殺……!」
「トリニティぃぃぃぃぃ!!」
「「「フラァァーーーーッシュ!!!」」」
「お、おのれ魔法少女共!!お、覚えて……グワーーーーッ!!」
”ちゅどーん!!”
眩い閃光、耳を劈くような爆音。
空を飛翔して決めポーズを取った少女達から3色の光線が伸びて交わり甲殻類の様な様相をしたエレボッサーの幹部、
そして幹部が呼び出した巨大怪物を貫き爆散させ幹部を空の彼方に吹き飛ばしていく。
「よーし、今日も大勝利っ!勝利のポーズっ!キメっ!!」
キラーン、と光になった幹部に背を向けて少女たちがまたもポーズを取る。
こうして本日もまた悪の野望は潰えるのだった。
だがエレボッサーは大体週一で悪事を働くので来週も出勤である。
戦え、魔法少女隊ブラスティア!負けるな、魔法少女隊ブラスティア!世界の平和を守るために!!
…
……
………
「こ――――の馬鹿者共がっ!!!」
広い会議室を貫いて階層中に届き一周して帰ってきてもなお余りある程の怒号が響く。
都市防衛公団カネアールの社長、金有益生(かねあり ますお)の声である。
怒号を受けているのはつい数時間前までエレボッサーの幹部、怪人と戦っていた少女達――
魔法少女隊ブラスティアに所属する魔法少女達である。
不満げな態度を隠そうともしていない赤い髪をサイドポニーにした小柄な娘は魔法少女ブラスト。
本名は「大筒平 萌(おおづつひら もえ)」、花の高校二年生。
ギリギリ140cmに届くか届くまいかという小学生を思わせる小柄な身体に、それに見合った平坦な胸。
それでいて健康そうな肉付きとはつらつとした笑顔が市民の皆さんにも人気な魔法少女隊ブラスティアのリーダーである。
「何がバカなのさっ!今日も変態倒して街守ったでしょっ!?」
「倒し方が問題だと言っているのだこの馬鹿娘共がっ!道路を壊すわビルが折れるわ噴水は爆発するわっ!直すのにいくら掛かると思っとる!」
「社長、萌ちゃんも悪気があった訳では……」
「何を他人事みたいな顔をしとるか刃金坂!言っておくが貴様もだからな!」
「ええっ!?」
萌の隣で社長を諌める、長髪をストレートに伸ばした娘は魔法少女スラッシュ。
本名は「刃金坂 葵(はがねざか あおい)」、萌の同級生であり同じく高校二年生。
身長160cm,スラッとした長い手足に凛とした瞳、萌と比べれば服の上からみて確かにわかる膨らみ、
ふわっと学校指定のスカートと黒いタイツは眩いばかりの絶対領域を作り出していた。
「わ、私は今日何もしていませんよっ!?むしろ怪人の攻撃を逸したぐらいで……!」
「その逸した攻撃が!この街で一番たっかいビルに当たっとるんだ!!大企業だぞ!!クレームの電話が鳴り止まんわ!!」
「そ、そんなあ……!」
「…………ふぁ」
「そこォ!!何を欠伸なんぞしとるかァ!!貴様が一番酷いんだぞ!!!!!」
「……だる、ねむ」
「起きんか貴様ァ!! 石槌ィ!!!」
眠たげな様子で社長の言葉を聞き流しているのは魔法少女クラッシュ。
本名「石鎚翠(いしづち みどり)」、高校一年生、萌と葵と同じ高校に通い後輩にあたる少女である。
身長は150cm弱、肩まである長さのふわふわの癖っ毛を無造作に散らしているがその容姿は抜群だ。
透き通った少し垂れ目の瞳に、抜群のスタイル。
そこらのモデルやアイドルでは相手にならない素材の良さを持ち、年齢に見合わない豊満なバストを持っている。
両手で鷲掴みにしてもまだ余りそうなサイズだ。
「お前の吹っ飛ばした戦闘員――連中の構成員が車に当たるわ信号に当たるわ看板に当たるわ……被害件数が数え切れんのだぞ!!ええ!?」
「そんなん気にして戦えないですし……」
「ちっとは気にせんか!!吹っ飛ばす方向を調整するなり!!ふっとばさんように戦うなり!!」
「気にしてやられてこいと……?」
「ぐぬっ……!!」
「そーよそーよ!こっちは真面目にやってるのに!横暴よオーボー!」
「萌ちゃん、翠ちゃん、社長だってそういうことを言いたいんじゃなくって……」
「葵ちゃんはオッサンの味方するのー!?」
「そ、そういうんじゃないけど……」
翠に言い返され金有が言葉に詰まる。
秘密結社エレボッサーは一見してお笑い集団に見えない事もないが、その実最新のテクノロジーを誇りテロ行為に及んでいる、
正しく凶悪な悪の組織といって差し支えない連中である。
そんな連中と戦う彼女達の存在は必要不可欠であり、彼女達なりに命的なものを賭けて戦っているのだ。
言われっぱなしでは言い返しもしたくなるというものだろう。
「大体さー!あーしろこーしろって言いはするけど結局オッサンは現地で戦ってないじゃん!こっちの苦労もしらないで!」
「そーだそーだー……」
「ぐぬぬっ……き、貴様ら言ってはならん事を……!儂等だって自分たちで出来るんならやっとるわい!」
「じゃーやればいいじゃん!!」
「できんからこうしとるんだろうがっ!!キーーッ!!!!」
「しゃ、社長!萌ちゃんも……」
「――まあまあ皆さん、落ち着いて」
喧々囂々、大声での言い合いが始まり険悪な空気に包まれつつあった会議室が水を打ったように静かになる。
社長――金有の隣に立つ男の声だった。
「社長も、彼女達を一方的に責めたい訳ではないでしょう?彼女達が居てこそこの街、ひいては僕たちの安全がある訳ですし」
「萌ちゃん達も――社長は君達が心配なんだよ、守られているのに被害だけを見てクレームを飛ばして来る人達は少数だけど確かに居るからね」
「君達の事が心配だからこそ、金有さんも口煩く言っている――とは思ってもらえないかな」
「金有さんも、思春期の女の子たちが相手なんですから。もう少し言い方を考えてあげては?」
「む、むう」
「音取さん……♪」
音取太臓(ねとり たいぞう)。
身長180cm、眉目秀麗を絵に書いたような色男、イケメン美男子、25才。
都市防衛機構カネアール(株)の一大スポンサーである音取財閥の社長である。
身に纏う雰囲気はさわやか一直線、十人がすれちがえば十人が振り返るだろう。
優しく細められた狐目は穏やかさを醸し出しており、人好きのする雰囲気を感じさせる。
彼のカリスマ、そして音取財閥の財力のお陰で都市防衛機構カネアール(株)及び魔法少女隊ブラスティアは戦う事が出来ているといっても過言ではない。
つまり、彼こそこの街の平和の影の立役者である。その立場、そして嫌味の無いその性格から金有からの信頼も厚い。
魔法少女たちからの信頼も彼に熱っぽい視線を向ける葵の姿を見れば一目瞭然である。
萌も金有と言い争うのを一先ずやめて、頬を膨らませている。翠は事が収まったと見ると欠伸をしてどこ吹く風だ。
「萌ちゃん、葵ちゃん、翠ちゃん、今回もお疲れ様、本当に毎回君達には助けられているよ」
「今回も君達が居なかったら被害はもっと大きくなっていただろう――本当にありがとう」
「そ、そんな、私達は皆さんの安全の為に頑張っただけで……ね、萌ちゃんっ翠ちゃんっ」
「……べっっつに、音取さんの為じゃないし」
「終わったんなら帰っていい……?」
「ふ、ふたりともっ!すみません音取さん……!」
「ハハハ、良いんだよ葵ちゃん。……それじゃあ金有さん、後は大人の会議と行きませんか?」
「華の女子高生を長い間拘束するのは可哀相だ、特に彼女達は普通の女の子たちより忙しいんですから」
「音取さんがそういうのであれば……ゴホン、良いか貴様等!次からは気をつけて戦うんだぞ!!体退室して良し!」
「「はーい」」
「はいっ!……もう、ふたりともっ!」
萌と翠が適当に答え、葵がそれに続いて返事を返した後に出ていく。
特殊な才能を持ち力を振るう事ができる魔法少女と言えど、その実態はただの女子高生でしかない。
女子高生という最強の生き物である以上彼女達にもまた休息と娯楽の時間は必要不可欠なのである。
「……」
「? 何かな、萌ちゃん」
「……別にっ!いこ、葵ちゃん翠ちゃんっ!」
「ハハハ、気をつけてね」
ばたんっ。
大きな音を響かせて扉が閉じられた。
音取がそれを見て「やれやれ」といったふうに肩を竦める一方で金有は苦々しげにこめかみを押さえていた。
「すみませんな、音取さん……態度の悪い子供で」
「いえいえ、可愛いものじゃないですか」
「はあ、そういうものですかな……もう少し、街の平和を守る人間としての自覚を持って欲しいものですが」
「あの年頃の子はそれぐらいが丁度いいんですよ、それに――」
「――その方が、見ていて面白いですからねぇ……」
にぃ、と音取が笑う。
品のいい――だがどこか薄ら寒い笑みだった。
…
「んんんーーっ……!もうっ!話長いよね、金有のおっさんはっ!!」
都市防衛機構カネアール(株)ビル外、萌は窮屈な会議室とそこに居る二人の大人からの開放感を感じて
小さな胸を張って腕を伸ばし、ぐっと背筋を伸ばしていた。
「あはは……それはそうかもしれないけど、音取さんも言ってた通り心配してくれてるんだし……」
「その音取のおじさんもさー、なんか怪しいじゃん?イヤーな感じ」
「そんな事ないと思うけど……萌ちゃんは音取さん、苦手なの?」
「苦手っていうか……目付き?私達を見る目がなんかイヤなんだよねー」
「目……?」
葵が首を傾げれば萌は「そう、目」と返す。
人一倍他者からの視線や感情に敏感な萌だけが、音取の目の奥に潜む何かに気付いていた。
自分たちを見定めるような、こちらを推し量るような――他の人が見る目とは違うものだ。
この街の多くの人間が自分たちを見る目は似たようなものだ。
羨望、感謝、友愛――暖かな眼差しが殆どで、金有が言うクレームのような冷たい視線など向けられた事がない。
その金有だって、言動こそ厳しいが自分たちを見る視線には優しさや労りが感じられる。
しかし音取から、そういった感情を感じる事はできなかった。
こちらを見ている事は確かなのだが、その奥にある感情を読み取る事ができない。
それが敵意なのかどうかも、上手くわからない。
まるで機械にでも見られているようで、萌はどうしても音取のことが好きになれなかった。
「あー……でも……音取さんが苦手なの……ちょっとわかるかも」
「やっぱり?そうだよね!?」
「ええ、翠ちゃんもなの?」
うん、と翠が小さく頷く。いつも寝惚けた様な返ししかしない翠にしてはハッキリとした答えだった。
「なんていうかー……うさん、くさい?そんな感じ……あんなイケメン、いないでしょっていう……嘘くさい、みたいな」
「ええ……失礼だよ……」
「でも胡散臭いのは事実じゃんっ!なんでお金出してるかとかもわかんないし!」
「なんでって……この街を守るため、じゃないの?」
「別にリエキも出ないのに?絶対おかしいってっ!」
「それは……そうかもしれないけど、音取さんいい人だと思うけどな、かっこいいし……」
「……あお先輩はイケメン好き?」
「そ、そっそ、そんなんじゃないよっ!」
「顔がいいのもまた怪しいんだよねー……!」
「もう、萌ちゃんっ!」
きゃあきゃあ、わいわい。少し騒がしく彼女達は街へと歩いていく。
周囲を歩くカネアールの社員たちは、それを微笑ましく見守っているのであった。
――
――
――
―――――それを、カネアール(株)ビルの高層から見下ろしている者がいた。
彼女達の話題に上がっていた渦中の男、音取であった。
視線は魔法少女隊ブラスティアが姦しくしながら歩いていく姿に見つけられる。
……正義のヒロイン、街を守る少女たちの微笑ましい姿を見て音取は笑う。
だがそれは、カネアールの社員たちが浮かべる笑顔とは似ても似つかないものだった。
「……魔法少女隊ブラスティア――」
「街の平和の為、誰かの為、正義の為……」
「命を賭けて戦う無垢な少女達――か」
くるりと。音取は窓へと背を向ける、その容姿も相まって様になる動きだった。
パチン、と指を鳴らせば自動的にカーテンが閉まっていく、ブラスティア達を支援する音取財閥のハイテクノロジーの一つだ。
自らの顔を手で覆い――音取は小さく笑い始めた。
「フ……フフフ、フハハハ……!」
「――高校生という、希望と絶望、将来への期待と不安が入り混じる年齢――」
「その年頃であって特殊な環境下に置かれて尚、高潔さを失わない純粋無垢な心……!」
「同時に、女子高生特有の不安定さ、大人への反発心、危うさを併せ持っている……!」
「それが、彼女達……!ああ、なんて、なんて――」
音取は自らの顔から手を離し、恍惚とした顔で笑う。
酷薄な笑み――ともすれば彼の容姿を持ってしても邪悪と形容されておかしくない笑顔だった。
その瞳にはうっすらと、恐ろしさを感じる光が宿っていた。
音取はバッ、と背を逸し天井を見上げて両手を広げる。
いくつもの丸形の蛍光灯がカーテンが閉じられて薄暗くなった部屋と、その中に一人立つ音取を照らしていた。
「なんて、美しいんだ……!!」
――照らし出されたその顔は恍惚としたものだった。
カッと開かれた目に宿った光は照明を反射してキラキラと光っている。
恐ろしいまでの、見るものが見れば恐怖すら覚えるような目がくらむほどの純粋な輝きである。
「ああ、しかし……ああ!!ああ!!」
「彼女達に戦いを強いているこの現状……なんて、なんッて事だ……!」
「兇悪な怪人達、策謀を張り巡らせる結社の幹部たち……ッ」
「彼等もまた苦しんでいる事を知らず、自分たちが正義であるとただ信じて戦う少女たちの姿は、ああ――ああ――……!!」
広げた両手で自身の身体をキツく抱きしめて音取は声高に言葉を続ける。
ビルを貫いて外にまで響き渡りそうな声量ではあったが、この部屋は完全防音なので何も問題はない。
苦しげに、苦々しげに、そして憎々しく忌々しげに、耐えられないとばかりに音取は言葉を続ける。
「――痛ましい……ッ!!代われるものならば代わってあげたい……ッ!!」
太陽よりも熱く、海よりも深い溜息が音取の喉から漏れた。
もうおわかりだろうか。
――音取太臓は容姿と、一見して感じる「寝取られ者で竿役とかやって女の子堕落させる女衒みてーなヤツ」や
「声帯が浅野要二っぽい」という雰囲気に似合わずこの街の誰よりも正義感が強く、熱く燃える男だった。
魔法少女隊ブラスティアの面々に向ける視線が彼女達に好まれないのは、一重に彼の心掛けによるものである。
正義のために戦う彼女達を不安にさせてはいけない――頼れる大人でいなくてはいけない――
この争いに隠された闇を知る事などなく、ただ誰かの為という優しさと勇気を持って邁進してほしい――
その思いとその為に徹底した振る舞いが視線の意図を読ませまいとしているのである。
「フ、フフ、フフフフ……萌ちゃん、葵ちゃん、翠ちゃん……安心してこれからも戦い続けておくれ……」
「――君達がこの街と皆を護る代わりに――僕が君達を護ってみせるさ……フ、フフフフ……!」
「ハーッハッハッハッハ……!!」
ビルの一室に音取の高笑いが響く。
その狂笑を聞くものは誰も居なかった。
――戦え魔法少女隊ブラスティア!進め魔法少女隊ブラスティア!
音取太臓はいつでも君達の平和を狙っているぞ!!!
~ 続かない ~
【おまけ】
大筒平 萌(おおづつひら もえ)
魔法少女隊ブラスティアのリーダー、魔法少女ブラスト。様々な銃器を召喚して戦う。
小学生と見紛う小柄体系とそれに見合った貧相な胸、可愛らしいサイドポニーが特徴の高校一年生。
家族と友達の為にほぼ週イチで秘密結社エレボッサーと戦っている。
恋人はいない、当然処女。好きなタイプはイケてるおじさん。
刃金坂 葵(はがねざか あおい)
萌と同じ高校に通う同級生で幼馴染で魔法少女スラッシュ。無数の刀剣を操って戦う。
女子にしては高身長かつ普乳と巨乳の間ぐらいのスラッとしたスレンダー体系の美少女。
正義感が強く学校では風紀委員もやっており、持ち前の正義感で悪を許さない。
恋人はいたことがないのでやはり処女。音取のようなイケメンが好き。
石鎚 翠(いしづち みどり)
二人と同じ高校に通う後輩であり、魔法少女クラッシュ。なんでも壊す巨大ハンマーを操る。
常に眠たげで、歩く事すら面倒に思うものぐさだが、雑メイクでもその辺のモデルやアイドルが相手にならない美少女。
正義感とかは無いが、普通のバイトをする数十倍のお給料が出るのでお仕事で魔法少女をしている。
中学時代に恋人が居た事があり、結構な頻度でとっかえひっかえしていた。エロいことは好き。
金有 益生(かねあり ますお)
都市防衛機構カネアール(株)の社長。
適正のある少女にのみ力を引き出すことができる兵器、ブラスティアの開発者でもある。
言葉こそ厳しいが少女たちを兵器として運用する現状に強い忌避感を抱き現状打破を願う好漢である。
すごいいい人。CVは邪風林。
音取 太臓(ねとり たいぞう)
イケメンが竿役のNTR系エロゲーに出てきそうな人。
醸し出す全てがそれっぽいが、別にそんなことはない。
CVは浅野要二。
盛大に何も無し
ヨシ!