メアリ・クラリッサ・クリスティちゃんでシコるな。
「はッ――はッ――――はッ――っ」
1905年、倫敦。
宝石のような輝きを宿した左右違う色の瞳を霞ませ。
金糸の様な美しいアッシュブロンドの髪を揺らし。
日も沈み宵も更けた街を一人の女――少女が走る。
「はッ、はッ――あッ……!?」
角を曲がって小路へ。
何かから逃げるようにどんどんと先へ。
僅かな外灯と建物内からの灯りが照らす路地の奥へ。
「――っ、あ……!」
だが、その歩みが唐突に止まる。
「(行き止まりっ……道を間違えた……!?)」
小路の奥はゴミ捨て場の袋小路。
少女にとっては慣れた道の筈だったが、逃げ回っている焦りと暗い夜道が土地勘を狂わせていた。
「鬼ごっこは終わりかいぃ、お嬢ちゃんよぉ」
「あ……!」
そんな少女の背に男の声が投げかけられる。
そこらへんを探せばざらにいるような小汚い男だった、
手には刃渡りの長い包丁を持っている。見るからにまともではない。
夕暮れ、学院からの帰路の事だった。
ふと気になる本があったことを思い出して本屋に寄り。
つい夢中になって幾許かの時を過ごしてしまい。
気付けば街にはとっぷりと夜の帳が降りて。
――本屋を出て帰路を辿り直せば不穏な気配を感じて。
ふと振り返れば刃物を片手にした不審な男が佇んでいて。
早足で逃げれば、後ろから男が追いかけて来て。
駆け出せば追い立てるように男も走り出して。
努めて冷静に、逃げ続け必死で駆けた先で一つ道を間違え、追い込まれてしまった。
それが少女――メアリ・クラリッサ・クリスティの現状である。
逃げる事は難しい。
そう判断したメアリは小さく深呼吸して、刃物を手ににたにたと笑う男に真っ向から向き合う。
「お金なら無いわ、鞄には本と、教科書ぐらいしか入ってません」
「財布は……持っているけれど、本当に少ししか。けど、それでいいならお渡しします」
メアリが取った行動は、無理な逃走でも非力な自分での抵抗でもなく、対話だった。
女王陛下の威光の下、ある程度の治安が維持された倫敦とはいえどこういったことは全く無い訳ではない。
よもや自分の身に降りかかるとは思ってこそいなかったが、男とて――いや、誰であれ、
必要に駆られてそうすることはあっても不必要に誰かを傷付けたりすることはないだろう。
そう考えた結果の、無抵抗。降伏だ。
金銭や物品で自分の命を守れるのであればそれに越したことはない。
「あなたの事を誰かに話したりもしないわ、……命を助けてくれれば、それで」
男に臆すること無くそう言って、メアリは小さく後ろに下がる。
とん、と背中が壁に当たって一人小さく息を呑んだ。
「へ、へへへ」
そんなメアリに男が躙り寄る。
「っ、お金は――」
「金なんていいんだよお、嬢ちゃん」
「……っ」
躙り寄る男の下卑た視線が服の上からメアリの身体を舐め回す。
ぞわりとしたものを感じて、メアリは体を隠すように腕で自分の身体を抱いた。
「わかってんだろお、何が目的かぐらいよお」
「く、……近づか、ないで」
じり、じり。
男が一歩ずつ近付く。
ここに至れば、メアリも男の狙いが何なのか、自分がどういう目で見られているのかは理解する。
こうなってしまうと降伏は意味をなさない。
――だからといって自分の体をはいそうですか、と男の好きにさせるつもりもない。
答えは一つだった。
「っ!」
「おおぁ……!?」
メアリは鞄を抱きかかえながら一気に駆け出す。
そのまま男の横を擦り抜けて、路地の出口へと――
「へへ、捕まえたぁ」
「っ、あぐぅっ……!」
抜け出そうとして、男に腕を掴まれる。
足が速い方、運動が出来る方とはいっても男と女だ、その差は比べるまでもない。
「ああっ」
腕を捻り上げられ、メアリの小さな体が地面に押し倒される。
「へへへへ、キレイな髪だあ、肌だあ」
「ううっ、……やっ、離してっ!」
「離す訳ねぇだろうよお、こんな綺麗な女よをぉ」
「うあっ……ッ」
べろり。
男の汚れて黄ばんだ舌が良く手入れされた玉の頬を舐める。
ひどい匂いにメアリが顔を顰めれば、それを喜ぶように男が嘲笑った。
「可愛がってやっかんなぁ、お嬢ちゃん、へへへ」
「……ッ」
メアリに覆い被さった男の手が、服の隙間から滑り込むように侵入して肌を這い回る。
ざらざらとした手の感覚にメアリは身震いして耐える。
「逃げられっと思うなよぉ、今日だけで終わんねぇからなあ」
「ねぐらに連れ帰って、へへ、俺の女にしてやる」
「く、ぅ……や、め、てっ!」
メアリが必死に男の体を突き飛ばそうとする。
しかし悲しいかな、非力な細腕ではそれは叶わない。
むしろ男の嗜虐心を煽るだけの結果になり、服の下で小さな膨らみに手を伸ばされる結果となった。
小振りだが、無くはない。
豊かとはとてもいえないが掌に収まるほどのそれが男の手で弄ばれる。
勿論快楽などない。
不快感と痛みだけだ。
「く、ぅ……っ!」
嫌悪感に悶えながら、必死で足をばたつかせる。
男の足にでも当たって体勢を崩して逃げることができれば。
あるいは面倒な女と思わせて諦めさせることができれば。
そう思いながら必死に抵抗を続けるも、男の手が離れる事はない。
むしろ必死の抵抗に、気を高ぶらせているようでもあった。
「あッ、痛ぅッ」
「へへ、安心しろよ、じきに良くなっからよぉ、あばれんな、あばれんなぁ」
ぎりっ、と男の指で胸の先端が摘み上げられる。
性的な快感など微塵もない。ただ鋭い痛みだけがあった。
「こ、――のっ!」
がん。
ばたつかせていた足が、男の脛に当たる。
鈍い痛みが男を襲ったのか、一瞬その手の動きが止まった。
「ぐぇっッ、……こ、こいつッ!」
「ッ、あ!」
ばしん。
今度の音はメアリの頬が強くはたかれる音だった。
「このッ、このッ、優しくしてりゃあつけあがりやがってェッ」
ぱしん、ばしん、ぱしんっ。
端正な顔が男の掌打で赤く腫れ上がっていく。
何度かのそれを繰り返した後、男は満足げにメアリを見下ろした。
「っ……」
そこにあるのはキッと男を強く睨みつける少女の顔だった。
痛みへの恐怖と怯えはあれど、決して心は折れていない。
言葉無く男を強く非難する意志の強い瞳。
見下ろす男のほうが、気圧されてしまうようでもあって、ぎりりと男は歯軋りをする。
「へっ、生意気な面しやがってぇ」
「い、いまにヒィヒィ言わせてやるッ、おらぁっ」
「! あ、いやっ……あ!」
ぐっ。び、りっ、びりぃっ。
メアリの胸元を覆う仕立ての良い衣服が、力任せに破かれる。
清楚さを感じさせる白い下着と、それに包まれたなだらかな胸が露わにされ寒さと羞恥に少女が顔を赤らめた。
「うへへへ、すべすべだぁ、シミ一つねぇ、いいなぁ」
露わになった肌に男が顔埋め、頬ずりをする。ざらざらとした感触がメアリの悪寒を煽った。
べろり。べろ、れろぉ~~……柔らかな肌の上を舌が這う。
「あ!」
嫌悪感に身を攀じれば、身体を抑えつけられ今度は下着を剥ぎ取られ寒さでぴんと立った桜色の突起が露わになる。
「なんだぁ、感じてんじゃねぇかぁ」
「寒いだけよっ、はな、してぇっ、あ、ああっ」
肌を這い回っていた舌が、今度は桜色の突起にしゃぶりつく。
ぞわぞわとした感覚が背を駆け抜け、メアリが小さく背を反らした。
男がその身体をぐっと抑えつけ、逃げ場を塞ぐ。
「ひ、ぃっ、やだ、きもち、わるいっ」
突起を咥えられ、舐られ、はては噛まれる感覚に身悶えしたメアリは必死に抵抗の声を上げる。
しかし完全に抑えつけられた身体は、どうにもこうにも動いてくれない。
「ああ、うるせえな、うるせえな、刺されてぇのかっ」
それでも男としてはいい加減抵抗されるのも鬱陶しくなってきたのか。
刃物をぎらりと光らせ、メアリの首筋に押し当てる。冷たい感覚に、メアリの身体が小さく震えて動きを止める。
ただ、その瞳に怯えこそ宿っても心が折れている様子は、無い。
「っ……」
「へへ、いつまでそんな目ができっか、なあっ」
「あ――や、あっ!」
ぐっ。ざ、びり、びりびり。
首筋から離された刃が残っていたメアリの服を千千に引き裂いていく。
黒いドレスは裂かれ、胸を覆うものと揃いの仕立てのショーツが露わに。
そしてドレスに隠されていた細く白い両脚も。
僅かな灯りに照らされたその肢体は、ひどく艶めかしい。
メアリ自身の容姿も相まって誰が見ても興奮と劣情に固唾を飲むだろう。
「ああ、いいなあ、いい、……へへ……」
「ぅ、うっ」
白い肌を男の手が這い回る。撫で回す。
未熟な性感を刺激される度、メアリが悪寒と苦悶の声を上げる。
それを快感の声と受け取った男の責め手は、激しさを増していく。
なだらかな胸を鷲掴みにし、白く清らかな玉の肌に舌を這わせる。
唾液の跡がこびりつき、すえたにおいが少女の石鹸の匂いを冒していく。
たまらない屈辱だった。
ただ暴力を振るわれたり、金銭を奪われたりする方がマシだったろう。
必死の抵抗も虚しく男の好き放題にされている。
それがメアリにとって耐え難かった。
勉学に励み、書物を愛してこそいるがメアリとて年頃だ。
そういった事に夢を見ない訳ではない。
いつかは物語に出てくるような相手と、と考えた事だってある。
だが今の現実は、薄汚い男の手による屈辱的な蹂躙だ。
泣きたくなる――いや、少し違えば泣き出してしまっていただろう。
けれど、とメアリは歯を食い縛る。
泣き出せば男の嗜虐心を煽り、喜ばせるだけだ。
力での抵抗ができないメアリにできることは、せめて心を折らない事だった。
絶対にこんな男に屈服はしない。
身体を犯されても心は犯されはしない。
そうすればいつか、――男が飽きた時、気を抜いたときにでも抜け出すチャンスがあるはずだ、と。
メアリは嫌悪と恐怖で塗りつぶされそうになる心に必死で活を入れた。
「(絶対、まけないっ)――っ、んむぅっ!?」
きっ、と男を強く睨みつけようとしたメアリの、その唇がざらついた。何かで塞がれる。
目の前には男の顔。
考えるまでもない、男の唇がメアリの瑞々しいそれに重ねられていた。
「(ファースト、キスなのにっ)」
檸檬の味か、チョコレートの味がするとなにかで聞いたことがある。
実際にはひどくすえた、なんだかわからない卵が腐ったかのような匂だった。
「んんむっ!?」
瑞々しい唇が男の舌で推し割われ、メアリの口の中に舌が侵入してくる。
男の吐息と共に口の中にひどいにおいが流れ込んでくるようだった。
メアリは思い切り舌を噛んでやろうとするが、自分の舌に絡みつく舌がそれを許さない。
「んっ、んんっ、んんー!!」
抑えられた両手両脚を必死に動かそうとして抵抗するメアリ。
しかし、それも次第に弱まっていく。
「ん、ぅ、んんっ……っ」
呼吸ができない。空気が、酸素が足りない。
息継ぎを求めて男の胸を強く叩いても、か細い抵抗にしかならない。
「ん、んん……! っ、は! か、はっ、はーっ、はっ」
「へへへ、なんだあ、興奮してんのか?」
男が唇を離せば、メアリを顔を真っ赤にし呼吸を荒げ、少しでも酸素を取り込もうとする。
都合の良い解釈も甚だしい勘違いだった。苦しかったから顔が赤くなっているだけだというのに。
「よっ、へへっ、へっ」
「っ、な、にっ――い、いやっ!やだっ!やめて!」
男が自身の腰に手を伸ばし、ごそごそと布擦れの音を立てる。
なにか、とメアリが視線を向ければ男が洋袴と下着を脱ぎ捨て、屹立した性器を露わにしていた。
メアリにとって初めて見る男のそれは、ひどくグロテスクに映った。
もちろん幼い頃に父親のものだとか、そういったものをミたりだとか、文献だとか何某かで見たことはある。
だが、実際に目にするのはこれが初めてだ。
こんな形で見たくはなかった、と思う。いや、いつ見ても同じかもしれないけれど。
「へへえ」
「ひっ、い、や――っ」
益対もない事に思考を巡らせ現実逃避をしていると、男の手がショーツを掴んでずらす。
誰にも見せたこともなければ、もちろん触れさせた事もない秘密の花弁が露わになり、男の欲望しかない視線に晒される。
「っ、ぅぁあっ……!?」
男が自身の唾をまぶした手で乱暴に秘部に触れ、唾液をそこに塗りたくる。
生温い感触、秘部を触られる嫌悪感、痛み、恐怖。それらがないまぜになってメアリを襲う。
涙を零すまいとするその様が、余計に男の嗜虐心を煽っていることに、メアリは気付かない。
「あ、いや、いや、やめて、やだ……」
男の手が秘部から離れ、代わりに勃起した性器が充てがわれる。
数秒後の光景を想像したメアリは、いやいやをするように首を振る。
しかし、男が止まる訳もなく、現実は無情にその時を迎えた。
ぐ、ず。
ずずずっ、ずりゅっ……。
「や――――」
ずりゅんっ。ぶちぃっ。
「――あ!ああああっ!!」
「お、お、ほおお……ッ」
男の下腹の凶器がメアリの肉を裂き、処女膜を破り、純潔を貫く。
唾液以外のまともな潤滑が無い秘部は大きく裂けて血を流し、真っ赤に腫れ上がっている。
「ぅ、ああ、あっ」
痛みで、メアリの目に涙が溜まる。精神の恐怖や痛みは耐えられた。
しかし肉体的な痛みと、それに対する生理的な反応は別だ。
心を決してら折るまいと誓えども、強い痛みの捌け口を探し涙は頬を伝う。
「ああ、気持ちぃ気持ちいいなぁああっ」
「く、ぅ、ああッあうッ、ぐぅっ」
がくん、がくん、ぐずっ、ぐりゅっ。
男が組み敷いたメアリの身体を揺さぶる。
その度に肉が裂け、出血がひどくなる。
痛みに耐え悶えるメアリの姿は男の目には快楽に悦んでいるようにでも見えているのだろう。
いや、あるいはメアリの反応などどうでもいいのだろう。
男にとって最優先なのは性欲を満たす事だ。
重要なのはメアリの美しい容姿、整った身体――肉体。
苦悶での喘ぎだろうが、快楽の喘ぎだろうが、反応があればそれでいい。
だから、勝手に動き、勝手に犯し、勝手に欲望を満たすのだ。
「お、おおおっ、出るぞ、っ出るぞっ」
「ひ、ッ……出すって、――や、やだ、やめてっ、やだあっ!」
がつん、がつん、がつん。腰を打ち付ける音と肉を裂く音を響かせ男が腰を加速させる。
組み敷かれたメアリは男の言葉で性行為の終わりとなる「それ」を理解して、ひときわ強く暴れる。
けれど、逃れられない。
逃げることはできない。
男を突き飛ばすには少女の細腕は余りにも無力で、無情だ。
「お、おおおおッッ……!!」
「あ――ッ!!あっ、やッ、――あ!熱っ、ああ、あ……~~~~ッ……!!」
ぼびゅっ、ぶびゅぅるるっ。びゅくっ、どくん、どくん。
メアリの身体の中で熱い欲望が爆ぜる。
誰にも穢された事のない花園が薄汚い欲望で醜く汚されていく。
「(あ、ああ、あっ……ひ、ひどい、こんな)」
下腹で脈打つ感触がに生々しく、少女を襲う。
悪夢を見ているようだ、とメアリは思う。
しかし胎内に感じる白濁が齎す白い熱は、紛れもなく現実のものだった。
「へ、へえ、ああ、射精した、射精した……」
ずるり。
男が性器を引き抜けば、鮮血の赤と白濁が混ざってメアリの花園から溢れだした。
処女肉を無理矢理に裂かれた出血と、男の出した精液。
濁った白と紅が、取り返しのつかない現実を現している。
「(ああ、でも)」
これで終わりなら、とメアリは思う。
男は一度射精すればそれで終わりだ、と一般的な知識としてある。
もちろん、恋人達の中には繰り返し繰り返し愛し合う者達もいるだろうことはしっている。
ただ、これは男の気紛れが起こした凶行だ。
夜更けの街、暗い路地の奥といえど巡回の市警が来る畏れだってある。
そして、大事になればなるほど、その罪は重くなる。
婦女暴行は重罪だ。
男がよほどの愚かものでなければ、満足すれば自分を解放する筈だ。
「(殺され、さえしなければ……)」
問題は男が口封じのために自分を刃物で殺害しようとする場合だが、それもないだろうとメアリは思う。
ここまでの行いから考えるにこれは計画的な犯行ではなく、獣欲に任せた突発的なものだ。
なにより、男にそこまでの度胸――胆力があるとは思えない。
自分を黙らせるのにも手に持った刃物ではなく、平手だった。
刃物で人を傷つける事だって、ある程度の勇気が要る行為だ。
男にはそれがあるように見えない。言ってしまえば、小物に感じられる人物だ。
「(いなくなったら、逃げて、どこかに駆け込んで、助けを求めてっ……)」
だから、なんとかなる。メアリはそう思って男の様子を伺う。
――メアリの「推理」は間違っていない。
男の犯行は突発的なものであることも、男に人を殺す程の勇気がないことも。
市警の巡回があることも、だ。
ただ一つ大きな間違いがある。
「へ、へへ、決めたぜぇ嬢ちゃん、……やっぱ家に連れ帰ってやる」
「っ――」
それは、男が「よほどの愚か者」だという事だ。
度犯罪に手を染めてしまえば「どこまでやっても同じ」と男は考える。
そうして、そうするだけの価値が、メアリの容姿と身体にある。
美しいアッシュブロンドの髪も、宝石の様な瞳も、子猫<キティ>の様なその愛らしさの全てが。
友人が羨むその美貌が今、下卑た男の欲望を惹き付けて離さない。
”まずい”。
メアリの頭の中がその言葉でいっぱいになる。
男の塒に連れ帰られ、閉じ込められてしまえば早急な助けは期待できない。
友人達や、連絡が無い事を心配した家族が通報するまでには少しの時間が掛かるだろう。
その間に男に殺される可能性は、ゼロではない。
「っ――あ、あっ」
そうなる事は恐ろしい事だ。
メアリは痛む身体に、腕に力を込めて起き上がろうとする。
「へへ、逃さねぇよぉ」
「あ、ッ」
だがその腕が男の手に掴まれ小柄なその身体が、軽々と担がれる。
「いや、ッ、やだッ、はなして、離してッ!」
「だめだねぇ、諦めて俺の女になれよ、ひひ、ひ、ひひひひッ」
そうして、抵抗も虚しく男の良いように街の闇の中に運ばれていく。
――こうしてこの日、メアリ・クラリッサ・クリスティという少女が街から姿をこつ然と消した。
……
………
…………
薄暗く、小さな明かりしか灯されていない部屋。
そこにはカビの生えた不衛生な寝台と、最低限の家具しか置かれていない。
……汚れた寝台の上、壁に背を預けて胡座を描く男の姿があった。
そのまたぐらには、アッシュブロンドを自身の肌と寝台に波打つように広げた少女が抑えつけられている。
「ん、っぐ、……ぷぁ、は、あっ、く」
「おら、しゃぶるんだよ、しゃぶれぇ」
「く……ぅ、やぁっ」
必死に顔を背けようとするメアリの頭を男が片手で抑えつける。
瑞々しい頬に性器が擦り付けられ、粘ついたカウパーが白い肌を穢す。
メアリが、男の塒に連れ込まれ――拉致されてから、既に5日が経っていた。
未だ、助けは来ない。
この5日の間、メアリは一度足りとも男の塒――
この、小さなアパートメントの一角の狭く小さい部屋の外に出ることが出来ていない。
漢によって外部との干渉が一切絶たれてる。外の情報を入手する術は一切ない。
男は何度か部屋の外に出てはいるが、ドアは厳重に施錠されている。
窓も、メアリが意識を失っている間に何かで固めたのか開く様子は無かった。
抵抗を試みるも、その度に男の暴力によって阻まれる。
時には拳が飛んでくる事もあった。
心は折れなくとも、身体は痛みに屈する。
そうなれば、後は男のなすがままだ。
身勝手に肉体を貪られ、乱暴に獣欲をぶつけられる。
全身を弄ばれ、妊娠の危険性などお構いなしに膣内に精液を注がれる。
それでも、最低限とは言え食事を与えられ、濡れた布で身体を清める事を許されているだけマシな方だろう。
食事を与えなければ死んでしまう、ということが理解できる程度には知恵のある男に感謝すべきか。
あるいは、生き延びるために粗末な食事を無理矢理口に運ばなければならない状況を呪うべきだろうか。
「お……らッ」
「んぅ、ぐぅ~~っ……!!」
頬を擦り、口に押し付けられた性器が瑞々しい唇を押し割ってメアリの口内にねじこまれる。
この5日間で覚えさせられてしまった、男の味がメアリを満たす。最悪の気分だった。
嘔吐しそうになるのを必死でこらえ、性器を舌を使って口から押し出そうとする。
「お、おお、いいぞお」
それがかえって、男に快感を与えている事にメアリは気付かない。
だが少しでも、ほんの少しでも良いから抵抗し続けなければ心が軋んでしまいそうになるのをメアリは感じていた。
暗く、狭く、息苦しい。――情報が、与えられ無い。施錠された扉と窓は外の音をあまり通してくれない。
メアリにとってなによりもそれが苦しかった。
自身の体を弄ぶ男の手には耐えられる。
苦しいし、ひどい嫌悪感を抱くし、決して気持ち良いものではないが、それだけで心は折れない。
けれど、知覚――情報は別だ。
自分一人が世界から隔離されたような、取り残されたような。
男の創り出した、狭い箱庭の中に囚われたような感覚。
実際、囚われているのには違いないのだけれど――何もしることができず、どこにも行くことができないという現実。
それがなにより、メアリの心を蝕んでいた。
「ん、ぅぅ、っ」
口内に押し込まれた異物を噛んでやろうか、と思わなかったことはない。
けれど、メアリの思慮深さがそれを阻む。
報復として殴られる事もあるだろう。
逃げ場が無い状況で、それをするほど短慮にはなれない。
「う、ぅ……うー……んぐ、も、ごっ……」
――結果として、窒息をしないように、少しでも酸素を求めて。
性器を押し出そうとする舌の動きと口の動きで、男に奉仕することになる。
「お、おおお、おぉぉおぉ~~……」
そうしてしまえば、後は勝手に男が盛り上がるだけだ。
メアリの頭を手で抑え、前後させ、口内に性器を擦り付ける。
必死の抵抗が性感を生む。悪循環だ。
「おおっ、うぅ、ぐぅっ、射精すぞぉっ」
「んっ……ぅぅぅ~……っ!」
ごぶゅ、どびゅるゅ。びゅるぅぅぅぅっ。
男性器の先端がぷっくりと膨れ上がり、一瞬の間を置いて堰を切ったように白濁が溢れ出す。
酷く生臭く、耐え難い味の精液がメアリの口内を満たしていく。
吐き出してしまいたい、吐いてしまいたい。
しかし未だ口内に居座る男性器がそれをメアリに許してくれない。
ごくり――ごきゅ、ご、きゅん。
だから、喉を鳴らして粘着いたそれを飲み干す事になる。
男に囚われてからのこの5日間で言えば、水よりもこちらを飲んでいる事の方が、多いかもしれなかった。
「はぁ、はぁ、ああ~~……今日も良かったぜぇ」
「く、げほ、げふ、……満足したなら、こんな事、もうやめて――家に返して」
「へっへっへ、まだ諦めてねぇのかよ」
メアリの口の中から男性器を引き抜き、男が満足そうに声を上げれば、メアリがその姿をキッと睨み付けた。
……快感に呆けてる間に逃げようとした事は、ある。鍵も部屋の隅に放り投げられたコートに入っている事を知っている。
しかし、なにせ狭い部屋だ。どれだけメアリが頑張ろうとも男より速く動く事はできないし、すぐに追い付かれる。
その時は、組み敷かれ普段よりひどく乱暴をされた。
脱出を試みるのならば、もっと確実な状況しなければいけない。
だから、メアリは僅かな可能性に賭けて男を説得する。
勿論通るとは思っていない、警戒を招くだけかもしれない。
それでも、逃げ出して――元の生活に戻ることを諦めたくはなかった。
「気丈な嬢ちゃんだなぁ」
「く、ぅっ」
男が起き上がり、メアリの腕を引っ張り小さな体を寄せる、後ろから抱く。
ごつごつして節くれ立った手が、小さな胸が指で揉みこまれ、男の思うように形を変える。
胡座をかいたう上にメアリの身体を乗せ、半勃起した性器をメアリの尻に擦り付けた。
「っ」
胸を揉まれる感触。
当初は痛いだけだった。もちろん、今も不快感はある。
しかし人間の体は適応してしまうもので、幸いか、あるいは不幸か。
メアリの身体にはそういった事に関する適性が、少しながら存在してしまった。
「は、ぁ」
胸を揉まれ続けていると、熱っぽい吐息がメアリの口から溢れる。
間違いなく、言い訳のしようもなく、性的な快感から生じたものだった。
男に弄ばれ続けた身体は、確実に「開発」されてしまっている。
「いいじゃねぇか、このまま俺の女になれよ、なぁ?」
メアリの腹に手を回し、男がぐっと華奢な体を抱く。
肌と肌が密着する感覚。胸から与えられる快感と合わさって、意識とは裏腹に身体が高揚していく。
ぴっちりと閉じられ、純潔を踏みにじられて尚未だ清楚さを感じさせる秘所は汗以外の液体で湿り気を帯びはじめていた。
「いやっ……絶対に、っ……いや……!」
「へ、へへへ、強情な女だよなぁ、けどこっちの口はどうだよぉ」
「っ!」
男の手が秘所へと伸びる。――ぬち、にちっ。確かな水音が響く。
「ただのっ……生理的な、反応よっ、さわら、ないでぇ……っ」
必死に言葉で男を静止し、その腕を退けようとするがただでさえ華奢な腕に、火照った身体では適うはずもない。
男の指が秘所の周りをゆるゆると撫で回せば、むず痒いような快楽に、メアリはいやいやと首を振る。
メアリにとっては必死の抵抗だがその反応は、男の興奮を煽るだけだ。
「おら、おら、こうだろ、こうされるのが良いんだろぉ」
「っあ!あっ!」
にゅちっ――にゅるんっ。
湿り気が強くなり、淫液を分泌し初めた秘所にごつごつとした指が侵入する。
決して清潔ではない。衛生的に考えても、状況的に考えても、メアリにとって気分の良いものではない。
だが、生じる――生じてしまう快楽はそうではない。
浅い所で前後され、膣壁を擦るその感覚に脳が快楽物質を生成しメアリの頭を、心を冒していく。
「あ、は!や、あ!」
くちゅっ、くちゅ。かりっ、ぐりっ。
指が秘所を責め立て続ける、その度にメアリの嬌声上がり淫汁も溢れていく。
快楽を逃がそうと身体を捩るもメアリの身体を後ろから抱く男の手がそれを許さない。
押し侵入れた指の数を増やされれば、強まる快楽と羞恥にメアリは自分の顔を手で覆った。
「(ああ、あ、やだ、また来る、来るっ、いやっ――)」
やがて目の前が白く染まっていく。視界が、星の瞬きのようにちかちかときらめいて音が遠くなる。
自分が自分でなくなってしまうような感覚。恐ろしいのに決して不快ではないような感覚。
それらがメアリを追い立て、やがて頂点に達して――
「あ……~~~~っ、っっ……!!」
――弾ける。
ばちん、ばちん。
頭の中で火花が散って、意識と視界が白く染まるのをメアリは見た。
同時に身体から力が抜けて、自然と男に身体を預ける形になる。
「こっちは素直だなあ、え?なぁ嬢ちゃんよお」
「ぁ、ああ……は、やぁああぁ……あああ……っ」
絶頂に達した直後で弛緩し、力の入らないメアリの身体が軽々と男に持ち上げられる。
寝台うつ伏せに転がされアッシュブロンドのロングヘアが波打って広がり、その上から男がメアリに伸し掛かる。
濡れそぼり、熱を帯びた秘所に硬さを取り戻した性器が充てがわれた。
「あ、ああ、や、やめっ……」
言葉だけの抵抗。
身体は動かない。
あるいは次に与えられる快感を期待して動けないのか。
「(そんな、ことない、そんなこと――溺れて、なんて、しっかりしなさい、メアリ)」
心中で繰り返し自分を奮い立たせる言葉を紡ぐ。
何度も繰り返し、心が折れぬよう自分の心を叩く。
せめて思考を、頭の回転を止めないように――――ぐりゅ、ずぶんっ。
「あ、は――あ、あぁあ、ああっ……!」
首を反らし、白い喉元を露わにしてメアリが甘い声で鳴く。
淫汁でほぐれぬかるんだ甘膣に男の男性器が捩じ込まれていた。
寝バック。うつ伏せになった華奢な体に男の身体が完全に伸し掛かって身体が密着した状態。
「オラッ、オラッ、オラァっ」
「あ、あっ、ああ、あ!」
ぱん、ぱん、ぱん。ぐちゅっ、ぐりゅっ、ぱちゅっ。
男が腰を打ち付ける度に喜悦の色濃い悲鳴が響く。
汚れたシーツを必死で掴み快楽に耐え、声をあげまいとするが、まるで耐えられない。
しりたぶが波打ち、秘所から生じる快楽が全身に伝わっていく。
「オラァっこれが好きなんだろっ、ええっ」
「ん、ああああっ……!!}
強く打ち込まれ先端がメアリの狭く小さな膣の1番奥に押し付けられる。
ぐりぐりと、子を孕む為の器官を刺激され理性が溶けていく。
心は男を拒んでいても、「開発」された身体が男を受け入れていた。
淫汁がどろりと分泌され、視界と共に心がぼやける。
「どうしたぁ、ヨガってて言葉もでねぇ、って、かぁっ!雌猫みてぇに、鳴きやがってぇっ」
「は――ぁっ~~~~……っ! っ!」
男の言葉に、メアリはシーツを強く握って顔を伏せる。
声を上げないこと、男のいいようにされている顔を見られない事だけが、今メアリにできるせめてもの抵抗だった。
これなら、痛いほうがマシだと、メアリは本心からそう思う。
だというのに「そうしない」自分に嫌悪感を覚えている。
「っ、ひぃ……っ、あ……!」
奥をしゃくりあげられれば、抵抗虚しく媚声が溢れる。
ぎゅぅと握りしめたシーツは大きくシワになっていて、必死さを示しているようだった。
「おらぁ、イクぞ、イクぞ、イけぇ嬢ちゃんっ、おれの精液でイけぇっ」
「っひ、ひゃ、あ、ああ、あああ……!!」
膣内に射精される。
その言葉を聞いて、心が軋む。
裏腹に身体はこれから自分を満たす「熱」を期待する。
膣壁が男を逃がすまいと収縮して強く締め付け、どろりと濃厚な淫汁――本気汁が涎を垂らす。
「ぁ、ぁあ……あ、……!」
ぎゅぅ。メアリはシーツを握り締める。また、来る。
今度は先程よりも大きく、激しい。それが本能的に理解できた。
身体が精を、男を――オスを求めている。
心とひどくちぐはぐで、頭がおかしくなりそうだった。
いや、もうおかしくなってるのかもしれない。
――シーツに埋められたメアリの口元は、気付かず笑みを浮かべていた。
「う、おおおおっ、は、孕めぇぇぇっ……!!」
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ♥♥♥♥!!!」
ぼびゅうううぅぅっっ、びゅるるるっ、どぶっ、どびゅるぅっ、ぼびゅっ、ごびゅっ。
男がメアリにのしかかり、小さな体を圧し潰す。
膣の一番奥で熱が弾けて、多量の白濁が注ぎ込まれる。その熱が、メアリを遠い所へ導いていく。
気持ちいい。
性的快感が脳を、全身を支配する。
膣が収縮しもっと、もっとと子作り汁を求める。
男に愛される事を、屈服すること、心ではなく身体が求めている。
いやがおうでも自分が女――メスであることを理解させられてしまう。
ぬるぅ……ぼびゅっ♥
性器が引き抜かれれば、収まりきらなかった白濁が淫乱汁と混ざって溢れ出てきた。
視覚的にも、ひどく卑猥な光景で。男は女を屈服させた――支配欲と性欲が満たされる事を感じた。
「へへ、なあ、イったんだろ、ヨかったんだろ嬢ちゃんよお」
「なあ悪いこと言わねぇよ、俺のものになれよぉ」
「ここで俺とガキこさえて、セックスしまくろうぜぇ」
「勉強だとかなんだとか忘れちまってよ、へへへ……」
メアリの身体を抱き起こしてまるで恋人にするように頬や唇に口付け男がささやく。
――快楽に支配された少女の思考が、ほんの一瞬だけそれを許容しようとする。
けれど。
けれど、とメアリは離れていきそうな自分の意識を必死で繋ぎ止める。
一度瞑目して、絶頂の余韻で息も絶え絶えの中、呼吸を整えて、言葉を紡ぐ。
「――絶対に、いや」
「……私は、屈しない。なにをされても、絶対に」
「たとえ身体があなたのものになっても……この心は渡しません」
男の顔を正面から見て、メアリは強く強く決意を固める。
この先男に犯される中で身体は幾度も屈服してしまうかもしれない。
けれど心を壊される事だけは、耐えてみせる。
必ず自分の居場所に帰るのだ、と。
――それを見た男は怒りと共に、背中にぞくぞくしたものが走るのを感じる。
この高貴な女を、暴力と性欲で屈服させられればそれはどれだけ心が震える事だろう。
メアリの一挙一投足、一言が男の嗜虐心を唆った。
ある意味で、少女の決意は逆効果とも言えただろう。
「へ、へへへ、じゃあ、俺のものになるまで犯してやる、ぶち犯し続けてやる、へへへへ……!」
「あ……っ、……あああ……!!」
男の手が、メアリの体をまた這い回る。
蹂躙は続く。籠の中に囚われた少女に逃げる術はない。
いつか、心が折れるまで。
少女の身体は、汚され続けるのだ。
芯の強い子がすき。