※この作品はR-18です。

千夜一夜物語外典~シェヘラザードになった藤丸立香~   作:不夜城のキャスター

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第一節 サーサーン朝ペルシアでの目覚め

鏡の前で藤丸は、茫然と立ち尽くしていた。

鏡に写った自身の姿がシェヘラザードの姿になってしまっていたからだ。

黒く艶めく髪、褐色の肌、妖艶な唇、淫靡な目つき、男を惑わす大きな乳房、くびれた腰付き。

そのどれもが、藤丸の姿が彼女の姿になっていることを証明していた。

鏡に映るその姿には17年間の間見慣れた「藤丸立香」としての自分の姿の面影など影も形もない。

 

(お、俺の姿が…シェヘラザードさんになってるのか…!?)

 

突然の出来事に、藤丸は困惑する。

何故自分の姿がシェヘラザードになっているのか。

何故自分はこんなところにいるのか。

レイシフトしてしまったのだうか。先ほどまで自分は、シェヘラザードのマイルームに招待され彼女の主催する朗読会に参加していたはずだった。しかし周辺には彼女の姿は影一つ見えない。

それとも彼女の語る物語の住民として取り込まれてしまったのだろうか。

理由はどうであれ、藤丸がなんらかの事件に巻き込まれ、その結果彼女の姿になってしまったことは疑いようのない事実である。

藤丸は今までも何度かレイシフト以外の現象が発端で意識のみ別の時代に飛ばされることがあった。

藤丸の意識だけが過去に飛ばされ、その時代に生きるシェヘラザードへと憑依してしまったのだろうか。

しかし今回のように、自身の姿が藤丸のよく知るサーヴァントへとなってしまったパターンは初めてだ。ましてや女性サーヴァントの姿である。

男としてこれまで生きてきた藤丸にとって、女性であるシェヘラザードの肉体は刺激が強すぎた。

藤丸の興味は、次第に自身の肉体へと向かっていく。

 

(やば…、足元が見えないじゃんか…)

 

藤丸は自分の足元を見ようとした。

しかし大きな乳房が視界の邪魔をして、その足元は全くと言っていいほど見えない。

 

藤丸は動揺のあまり腰が抜け、その場にペタリと倒れ込んだ。

自身の肉体に対する変化に動揺しながらも藤丸は思考を巡らせ、現状を分析しようとした。その時だった。

ふと魔が差してしまい、藤丸は鏡に映る自分に意識が集中してしまう。

 

「……………。」

 

鏡には豊満な体つきのシェヘラザードが映っていた。

鏡に映るシェヘラザードは不安そうな表情で、その先に映る自分の姿を見つめている。何かに怯えているように見えるその表情は、まるで本物のシェヘラザードのように見えた。

 

藤丸の興味は次第に彼女の顔から体の方へと向かっていく

豊満な乳房には光が当たり、褐色の肌は妖艶に艶めいていた。

乳房の大きさはどれくらいだろうか。

目分量だが頭ほどの大きさはあるだろう。

シェヘラザードの体から放たれる誘惑に負け、藤丸の内に秘めた欲望はシェヘラザードになった自身の肉体へと向かっていく。

 

(触ってみたい…!でも…)

 

しかし藤丸は、理性と本能の間で葛藤していた。

この体はシェヘラザードの体だ。

仲間である彼女の肉体をいたずらに触れるなど、そんなこと出来ない。

けれど手の届く範囲に極上の女体があるのに味合わない訳にはいかない。

内にに秘めた「男としての欲望」と「人としての倫理観」の間で、藤丸は板挟みになっていた。

 

「…少しくらいなら、いい…よな?」

 

しかし藤丸の理性は、シェヘラザードの肉体の誘惑と女性の肉体に対する興味に負けてしまう。

 

気付けば藤丸は、自身の豊満な乳房を揉みしだいていた。

指に力を込めると、シェヘラザードの華奢な指はみるみると豊満な乳房の中へと沈み込んでいく。

 

「んっ…、ふっ…う。柔らかい…」

 

男の肉体では到底感じることはないようなその感覚。

水風船のような弾力のその胸は、藤丸の指を包み込んでいく。

 

「はあ…、はあ…。んっ…。」

 

気付けば藤丸は、夢中になって自分の胸を揉んでいた。

「自分の体に乳房があり自分の手で揉みしだく」という初めての感覚。

藤丸は、誰の目にもはばかられることはなく自由にその胸を揉み続けた。

藤丸は心ゆくまで、シェヘラザードという女の肉体を愉しんでいた。

誰も、この至福の時間を邪魔することは出来ない。

この時間が永遠に続いてほしいと思っていた。

 

(この先はどうなってるんだろう…?)

 

もっと先のことを知りたい。

藤丸の欲求は更に昂り、とうとう自身の胸に付いている着衣の向こう側に向かう。藤丸が服の中に手を伸ばそうとした、その時のことだった。

 

「大丈夫ですかシェヘラザード様!突然倒れらたので驚きました。お怪我はございませんか?」

 

シェヘラザードの後ろから、一人の少女の声が聞こえてきた。

 

倒れていたところをどこかから見られていたのだろうか。

倒れ込んでいるシェヘラザードの姿を見るや否や、少女は慌てながら駆け足気味にこちらに駆け寄ってくる。

少女の手には水の入った桶と、濡れた布や薬草が携えられていた。

少女はシェヘラザードと似た装いをしており、黄金に輝く装飾品と白いターバンを頭に巻いている。

この時代の人間なのだろうか。シェヘラザードのことを知っているということは、シェヘラザードと彼女は旧知の仲なのだろう。

 

「どうしたんですかシェヘラザード様、なにやら苦しい声を上げられてきましたが、何かお体に不調があるのですか?」

 

苦しい声を上げていたという言葉を聞いて、藤丸はぎょっとした。

もしや先ほどの光景を見られていたのだろうか。

しかし彼女の言いぶりを見るに、彼女の目から乳房を揉んで荒い息を立てているようには見えていなかったと言っていいだろう。

 

気持ちの整理がついたところで、藤丸はある疑問を抱いた。

そういえば、今はどのような時代なのだろうか。

しかし直球に「今は何の時代ですか?」と聞くわけにもいかない。

歴史とは後年になって編纂され紡がれるものだ。

例えば江戸時代の人間に「今は江戸時代ですか?」と聞いたとしてもその時代を生きる彼らには通じない。藤丸が生きてきた21世紀の治世も、後世になれば大きな時代区分でひとくくりにされることだろう。

暦が以前と今で違う可能性もあるだろう。グレゴリオ暦が一般に広まったのはシェヘラザードが生まれるより以後の話だ。

 

このような時は、間接的な情報を聞き情報を集めるしかない。

藤丸はおそるおそる、この国を治めている人物がどのような人物なのかを聞いてみた。

すると少女はきょとんとした表情でシェヘラザードの姿を見た。

 

「何を言っているんですか?この国はシャフヤリール王が治めているではありませんか。シェヘラザード様もこれから向かわれるのでしょう?」

 

彼女の口から「シャフヤリール王」という名前を聞いた。

どうやらこの時代の王朝はシャフヤリールが治めているようだ。

シャフヤリール。

サーサーン朝ペルシアの王で、シェヘラザードの夫とされる人物だ。

つまり藤丸が飛ばされたこの時代はサーサーン朝ペルシアである可能性が高い。

 

「…え、えっと、あなたは…?」 

 

この時代がどの時代か分かったところで、藤丸は目の前の彼女に名前を聞いていないことを思い出した。

彼女がシェヘラザードと旧知の仲の可能性もあるので怪しまれるかもしれないが、思い切って藤丸は、彼女に名前を聞いてみることにした。

 

「私の名前…ですか?どうしたんですかシェヘラザード様。私の名はドニアザード。王の妃の貴女から見て、義理の妹ですよ。」

 

彼女の名前を聞いて、藤丸は驚いた。

ドニアザード。シェヘラザードの口からも、藤丸は何度か彼女の話を耳にしたことがある。

シェヘラザードの義理の妹にあたり、ドニアザードはシェヘラザードの夫であるシャフヤリールとは実の兄妹にあたる。千夜一夜物語を語るにあたり、彼女の存在も必要不可欠だ。

邪知暴虐な王であるシャフヤリールの恐行を止めるために、シェヘラザードは彼の妹であるドニアザードに取り入り、彼女に物語を聞かせた。

そしてそれを聞いていたシャフヤリールがシェヘラザードに興味を持ち夜伽のたびに彼女から物語を聞くことになったというのが、千夜一夜物語の概要だったはずだ。 

彼女無くして、千夜一夜物語は始まらなかったとも言ってもいいだろう。

 

 

「これからシャフヤリール王のお部屋に行かれるのですよね?」

 

彼女の口ぶりから察するに、どうやらシェヘラザードはこれからシャフヤリール王の部屋に物語を語りに行く予定のようだった。

その直前のシェヘラザードに、どうやら藤丸はなってしまったらしい。

なにやら、とても面倒くさいことになってしまったようである。

シェヘラザードの語る話や千夜一夜物語内での描写をを聞く限りでは、シャフヤリール王は邪知暴虐であり今まで数多の女性をその手で殺めてきたと聞いている。そして夜伽を共にした処女をその晩で殺すのだそうだ。

これから会いに向かう男の存在に、藤丸は身震いしていた。

数多の特異点を乗り越えて、その時代を束ねる王と出会ってきた藤丸。

 

 

藤丸が懸念していたことは、それだけではなかった。

 

(どうしよう…、俺、そんな千夜一夜物語のことについて詳しくないよ…)

 

藤丸はあまり、千夜一夜物語について詳しくない。

今まで読み聞かせのたびシェヘラザードから物語を聞かされていたものの最初から最後まで内容を覚えているのは「ランプの魔人」くらいだ。

自分にシェヘラザードの代わりが務まるのだろうか。

藤丸はあくまでマスターであり、歴史の本流を生きた彼ら彼女らを立場上使役しているに過ぎない。シェヘラザードのことを知っていると言っても、歴史上の文献や、

そんな自分が、シェヘラザードの代わりに物語を語ることが出来るのだろうか。

 

(とりあえず、シャフヤリールっていう人に会えば何か分かるのかな。)

 

シャフヤリールはこの時代の統治者である。

だとすれば、元の時代に戻る方法や聖杯を持っているかもしれない。

今までも色んな特異点を攻略してきたが、その時代を収める王は大抵の場合その時代の特異点に関する何らかの秘密を握っていたり聖杯を持っていたりするパターンが大半だった。

 

今回もそのようなパターンであってほしいと願いながらも、藤丸は慣れない大きな胸の重さや歩幅の違いに体をよろめかせながら、シャフヤリールに会いに行くべく彼のいる場所へと向かうことにした。

 

しかし、この時の藤丸は想像もしていなかった。

なんなら甘く見ていたと言ってもいいだろう。

「いつもみたいにカルデアが助けに来てくれる」

「いつもみたいに現地の王と仲良くなれるのでは」

と心のどこかで思ったいたかもしれない。

藤丸は甘く見ていた、シャフヤリール王の暴虐さを。

藤丸は想像もしていなかった。

もう二度とカルデアに帰ることは叶わないことを。

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