※この作品はR-18です。

真・女神転生【カオスサマナー】≪鬼畜召喚師≫   作:F-Shinji

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プロローグ:TOKYOミレニアム

 

 

 

 

————199X年。

 

 

突如、各地に出現した『悪魔』と言う存在により、日本を始め全世界が大混乱となる。

 

その影響か、世界中にミサイルが投下され、何億もの人々が死に、全ての国が無政府状態となる。

 

最初の一発を投下したのはアメリカとの話であり、彼らは悪魔に魅入られたのか、それとも支配されたのか?

 

何にせよ『全ての国』が滅んでしまったので、人々は現実を受け止めて生き延びる事を考えるしかなかった。

 

 

 

 

————202X年。

 

 

30年以上の時が流れ、人類は悪魔の脅威に抗いながらも何とか生き抜いて来たのだが、無慈悲にも『神』の力により大洪水が起こされ、地上は完全に洗い流されてしまった。

 

しかし東京に造られていた『カテドラル』に逃れる事ができた少数の人類は生き残り、やがてそこは『TOKYOミレニアム』と呼ばれるようになった。

 

『TOKYOミレニアム』はメシア教徒で構成される『センター』と言う組織によって統治され、厳格な階級社会を作り上げるに至る。

 

組織直属の『テンプルナイト』と、『センター』に住む事が許される一級市民をピラミッドの上位として……

 

周囲の"長い年月で水が枯れた不毛の大地"に築かれた街々に住む事を強いられる者達は二級市民から始まり、更に下へ下へと格差が生じていた。

 

この『支配』と言えなくもない管理に、不服を抱かないと言えば嘘になるかも知れないが、世界崩壊の直後と比べれば雲泥の差である事から、人々は次第に辛い過去を忘れてゆき、仮初の平和に溺れていった。

 

 

 

 

————20XX年。

 

 

『TOKYOミレニアム』はセンターを中心に、幾つもの周辺の街で成り立っている。

 

どの街もセンターに空気までも管理されているのは共通であるが、その中でも特別大きな街は『三大都市』と呼ばれている。

 

 

一つ目は『ホーリータウン』エリア。

 

多くの熱心な信者を呼び込んでいる事から、飛び抜けてメシア教徒が多い都市である。

 

そのメシア教徒達は、神の加護や奇跡を信じて止まず、中央の大教会に向かって今日も跪いている。

 

反面、信者の多い市街地や教会では『ガイア教徒』のテロが常に懸念され、形だけの一般市民には良い迷惑である。

 

なお、ガイア教徒は『自由と混沌』を、メシア教徒は『法と秩序』を重んじる為、前者は後者により完全に弾圧されている。

 

 

二つ目は『ファクトリー』エリア。

 

多くの人々が生きる為に必要な、食料や資源を十二分に生産する為に存在する大都市である。

 

数多くの街は作物・物資の自給自足に四苦八苦しているが、此処では全ての生産過程が整っている。

 

よって、一般労働者はファクトリー以外の街からも大勢押し寄せており、出稼ぎの場所としても人気だ。

 

その労働は大変とは言え収入が高いだけでなく、娯楽もある程度充実しているのか、出稼ぎに来てそのまま永住してしまう者も少なくない。

 

 

三つ目は『ヴァルハラ』エリア。

 

ホーリータウン・ファクトリーと比較しても飛び抜けて人口・マッカ(金)の動きの多い巨大都市であり、貧富の差もとても激しい。

 

その為かヴァルハラ内の北西に『スラム街』と言う広大なエリアも存在し、其処に潜伏するのはガイア教徒とて容易だとされている。

 

しかし、『コロシアム』を中心とした桁違いの娯楽の多さから、人々はこぞってヴァルハラに集まり、ひとときの興奮や快楽に身を委ねる。

 

悪く表すとヴァルハラは血と暴力、更には死に最も近い都市とも言えなくもないが、それはセンターとしても複雑かもしれない。

 

また、今後四つ目の巨大都市とするのを目標に『理想郷』を表した街を建築したとの噂だが、今のところ真相は定かではない。

 

そんな巨大都市のうち……今回は『ヴァルハラ』で戦う、コロシアムの『とある戦士』に焦点が当たる。

 

 

 

 

 

 

 

 

————ヴァルハラ・コロシアム。

 

 

三大都市筆頭・ヴァルハラの中央に位置する、巨大なドーム式の建築物。

 

日々コロシアムの戦士達がトーナメントの優勝を目指して、命を賭けて戦っている場所である。

 

トーナメントで敗退すれば高確率で死んでしまうが、もし優勝すれば一生遊んで暮らせるマッカ(金)と、何不自由なく暮らせるセンターでの市民権が与えられる。

 

当然、予選だろうと毎日莫大な金が賭けられており、スリルを求めて足を運ぶ客が後を絶たない。

 

最近は弱小だった『岡本ジム』の戦士『ホーク』が優勝しチャンピオンと成ったが、後に彼がセンターで行方不明になっていた『救世主アレフ』だったと発表されたのは、人々の記憶に新しい。

 

一方、今日はと言うと、改めて決勝トーナメントに進む為の予選……相撲で言えば幕下の優勝決定戦を行っており、それら勝った16名がようやくチャンピオンと成れる決勝トーナメントに出場する事ができる。

 

既に何回も死線を潜っていながら、決勝トーナメントでは更に強い相手に勝ち続けなければ、センターの市民権を得る事が出来ないのである。

 

そう考えると優勝した『ホーク』……いや『アレフ』は飛び抜けて強い人間だったのは間違いない。

 

何せ"あのセンター"が『救世主』と呼ぶのだから、決勝トーナメントの激闘を容易く制してしまったのも頷けた。

 

 

『レディース・アンド・ジェントルマン! イッツ・ショータイム!』

 

 

————黒服のアナウンスに、歓声が応える。

 

 

『本日、決勝トーナメントへの切符を手に入れるのは、どちらの戦士か!?

 まず紹介致しますのは、無所属のグリーン・ウルフであります!!

 あのホーク、いやアレフに決勝戦で敗れた羽田ジムのレッド・ベアーとの同期だそうですが、

 羽田氏はレッド・ベアーひとりのみを出場させた事により、即日羽田ジムを脱退!!

 あとは独学で腕に磨きをかけ、予選の決勝まで圧倒的な強さで勝ち上がってまいりました!!

 まさに予選の範疇では収まらない、決勝トーナメントの優勝候補と申して良いでしょう!!』

 

 

————アナウンスを受けて右手を挙げるグリーン・ウルフに歓声が上がる。

 

 

『対するは、山本ジム所属の期待の新生・ランスだァーー!!

 本来、リズナ・ランフビットが出場する予定だったとの事ですが……

 急遽所属した彼が出場する事となり、此処まで勝ち上がって参りました!!

 観客によっては戦い方が地味と言う声も有り、オッズはグリーン・ウルフが圧倒的に優勢ッ!

 しかし、彼はこれまで全ての戦士を一撃で屠っておりますので、決して侮れません!!

 さァ、優勝候補のグリーン・ウルフ相手に、彼の剣は通じるのでしょうか!?』

 

 

————歓声は若干控えめとなったが、ランスと呼ばれた男は、平然と腕を組んで口元を歪ませている。

 

 

『まさに注目の戦いですッ! それでは……レディー・ゴオオォォーー!!!!』

 

 

 

 

……

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……その日の夜。

 

ランスはヴァルハラ・コロシアムの近隣の高層ビルの中にあるホテルの一室で、ダブルベッドに腰掛けながらテレビを眺めていた。

 

女性を抱いた後なのでパンツ一丁の姿なのはさて置き、ミレニアム・ニュースでは今現在、自分の事を放送しているようだ。

 

 

『本日、ヴァルハラ・コロシアムで行われた予選トーナメントEブロックで、山本ジム所属の戦士ランスが優勝しました』

 

 

あの後、ランスは見事グリーン・ウルフを討ち果たし、予選トーナメントで優勝した。

 

アレフほどでは無いかもしれないが、彼も規格外の強さを持っており、優勝候補が敵といえど苦戦はしなかった。

 

ワザと押され続けて、観客にグリーン・ウルフの勝利を確信させた直後に、一太刀で倒すと言う技量すら持っていたのだ。

 

実は彼は予選でも同じような戦い方をしており、何故そうしたのかと言うと、自分のオッズを意図的に上げる為である。

 

ランスがわざわざトーナメントに出場したのも大金が必要だったからであり、正確にはリズナが膨大な借金を負っていたからだ。

 

最も、それだけが出場した理由でもないが……今テレビには、ランスに対するインタビューが行われていた様子が映っている。

 

 

『それでは、決勝トーナメントへの意気込みをお聞かせください』

 

『いや、次のトーナメントの時期にゃ他の用事が有ってな。残念だが決勝には出ないつもりだ』

 

『!? 辞退なされるつもりなのですか……?』

 

『正直、今回も割と苦戦したってのも有るからな。命を天秤にかけた結論って訳だ』

 

 

————割と決勝トーナメントへの出場権を破棄する者は多いが、その理由に実力不足を謳ったのは真っ赤な嘘である。

 

 

「んぅ……?」

 

「おっ? 起きたか? リズナ」

 

「ら、ランスさん……って! わわわ私こんな姿で————!」

 

「がはははは。今更恥ずかしがらんで良いぞ? それよりも、見てみろ。今日の事をやってるぞ?」

 

「!? あのッ……す、凄かったです……」

 

「俺様のハイパー兵器がか?」

 

「そ、そっちじゃなくてッ! 本当に、優勝してしまうなんて……それに、お金の事まで面倒を見て頂いて……」

 

「別に気に病む必要は無いぞ? リズナが俺様の女になったダケでも報酬としては十分だッ」

 

 

『再度』この世界に飛ばされたランスは、一人でヴァルハラの市街地の外れを当てもなく彷徨っていた。

 

そんな中、同じく一人で複数の悪魔と戦っていたリズナ(槍装備)を発見し、苦戦していた様なので何となく助けた。

 

その際、リズナがとても良い女だったので口説いてみると、何とランスと同じ『ルドラサウム大陸』から来た人間だった。

 

ランスは第三者の手により"承知の上で"転送して来た一方、リズナは何年か前に強制的に飛ばされて来てしまったらしい。

 

『魔法王国ゼス』の魔法学園による卒業試験で起きた事故によるものらしいが、理由はどうあれルドラサウム大陸の人間なら話は別だ。

 

最初は、お礼として市街地まで案内して貰ってから、ついでに一発させて貰えれば……程度の気持ちだったが……

 

『前回』の時の『こちら側』では、ルドラサウム大陸の人間が、ランスを含めてたったの4人しか存在しなかった。

 

それによって、リズナを傍に置いておく方が良さそうだと判断したランスは、同じくルドラサウム大陸の人間だと言う事以外は殆ど隠した上で、彼女を『俺様の女』にするべく動いた。

 

 

————リズナ・ランフビット。

 

 

この世界に飛ばされてから6年となるデビルバスター。

 

アホ毛と金色の長髪が印象深く、スタイルも抜群な美しい女性で、ヴァルハラ・エリアのデビルバスターとしての腕も優れていた。

 

デビルバスターとは悪魔を討伐するのを生業とする職業だが、ヴァルハラ・エリアは勿論、他の街での腕自慢は皆『センター』の市民権を得るべく『決勝トーナメント』での優勝を『ヴーチャル・トレーナー』での戦闘訓練やジムでの修行を中心に行いつつ目指すので、女性の身かつ一人ぼっちで行動する戦士であろうと需要は十二分に有った模様。

 

しかし、ポンコツと言うか騙されやすい性格だった様で、稼いだ金は恵んだり寄付したりして直ぐに失ってしまい、それなりに頑張って戦いつつ慎まやかに生活していたにも関わらず、何時の間にか膨大な借金を抱える『戦士の所属しないジム』のオーナーになってしまっていた。

 

やがてはデビルバスターの稼ぎでも利息すら払えなくなって首が回らなくなり、自分が『決勝トーナメント』で優勝する事で借金を全額返済するべく、やや強めの悪魔を狙って鍛錬も兼ねていたところ、運命に恵まれランスと出会ったと言う訳である。

 

それらの話を聞いたランスは、内心呆れてしまっていた。

 

彼女の性格だと、例え決勝トーナメントで優勝してセンターの市民権を得ても、メシア教徒に祭り上げられるなりして安息は訪れなかったかもしれない。

 

いくらリズナが男顔負けのデビルバスターだとは言え、その騙され易さから、自分が抱くまで処女を失っていなかったのは奇跡と言っても良かった。

 

幸い『こちら』では鍛錬をしっかりと行えば、時間は掛かれど幾らでもレベルが上がって結果が伴う事から、日々努力を重ねていて頭一つ分レベルが高かったリズナを無理に抱こうとする輩は居なかった様だ。

 

そもそも、此処はヴァルハラ……良い女を抱く手段は、他に幾らでも用意されている。

 

……さて置き。

 

リズナ・ランフビットには、驚くべき特性と過去があった。

 

 

『魔法が効かない耐性だと……?』

 

『は、はい。ここに飛ばされる前までは、毎日の様に王子の魔法を受けていたので、いつの間にか耐性が付いてしまった様で……』

 

『王子? ゼスの王子とは誰の事だ?』

 

『ガンジー王子です』

 

『なん……だと……?』

 

『????』

 

『リズナ。お前は今何歳なんだ?』(ランスは27歳)

 

『えっ? 23ですけど……』

 

『こっちに来てから6年だと言う事か?』

 

『そうなりますね』

 

『だが、向こうだと50以上になっちまうなァ』

 

『!? そ、そうみたいですね……ランスさんの年代を考えると……王子、元気にしているのかな……?』

 

『其処は心配要らんと思うぞ? 多分、お前が知ってるガンジーと大して変わって無いだろう』

 

『そうなのですか。安心しました』

 

『ホント、直ぐに信じるんだな。いや……別に嘘を言ってる訳じゃないが……』

 

『あ、あはは……』

 

『(別の意味でも、リズナは俺の近くに置いといた方が良さそうだな……)』

 

『(嗚呼、どんどんランスさんに依存している自分が居る……それでも……)』

 

 

————魔法に対する完全な耐性。

 

 

デビルバスターとして、わりと重要なカード(情報)だった気がするが、これはランスの目的の大きな糧と言えるだろう。

 

確か『万能』と言う属性も存在していたので、検証の必要は有りそうではあるが、それがガンジーの若気の至り(魔法)による賜物だったのは驚愕だった。

 

……とは言え、此処で彼の事を思い出しても仕方ないので、話を戻すとしよう。

 

決勝トーナメントで優勝できる自信はあったが、ミレニアムに来るにあたって、ランスは無駄に目立ちたくなかった。

 

よってランスはリズナが遠慮するのを押し切ってトーナメントに出場はしたが、予選で全ての借金を返済するつもりで臨んだ。

 

前述のように意図的に手を抜いてオッズを上げ、全ての試合で初戦の全財産から始め、勝って得た儲けも次の試合に全て賭けたのである。

 

それにより、予選の決勝で得た払い戻しは、リズナの借金を全額返済できる金額に至り、予選優勝の賞金は今後の冒険などで役立つだろう。

 

尚、リズナが押し付けられていた『山本ジム』は、ランスが前の名前は気に入らないと言う理由で勝手に変えたダケなのは余談として。

 

 

————所謂、偶然助けたリズナが良い女だったので、彼女に自由を与える事にした。

 

 

ランスとしては、数多くこなしてきたクエストと同じような難易度だったに過ぎない。

 

だが、タダでさえ騙されやすかったリズナとしては、恩を極めつけに感じても不思議ではなく、ランスの女になったのも必然だった。

 

未だ彼女に自分の『正体』を明かしてはおらず、精々同じ『ルドラサウム大陸』から来た事と、飛んだ時の『年代』程度しか喋ってない……と言うか、それダケでガンジー云々の年齢等の話を信じたのだが……今の時点でも、リズナは自分に付いてくると確信している。

 

その自信からランスは口元を歪ませると、いつの間にか自分の右隣でテレビを見ていたリズナの右肩に右手を添えると言った。

 

 

「そろそろ映りそうだぞ」

 

「えっ……?」

 

 

『ランス選手。最後に一言お願いします』

 

『うむ。ウチは弟子は募集してないが、俺様の顔にピンと来たら山本ジムまで来い! ……以上だ』

 

 

「良し。後は明日以降、どうなるかだな……」

 

「は、話が見えません。ランスさんは此方に来たばかりなのに、一体どんな目的が?」

 

「この放送を観て、訪れた奴らが揃ったら話す。まァ、一人も来んかもしれんが……どっちにしろ説明してやるから安心しろ」

 

「……分かりました……で、でも……」

 

「どうした?」

 

「説明を受ける資格が私に有ると言う事は……どんな目的であれ、ランスさんの傍に居ても良いと言う事なんですよね?」

 

「!? がはははは、勿論だッ! 可愛い奴め!!」

 

「きゃッ!? あッ、あぁん……っ!」

 

 

今更だが、リズナは割と早い段階でランスに抱かれてしまっている。

 

リズナの色気とランスの性欲が合わされば必然であり、今迄の会話も1ラウンド後の休憩中での一時だった。

 

そんな訳で、ランスはリズナの視線にムラムラしたのか、右肩に添えていた右手に力を入れて彼女を引き倒すと、豊満な肉体を再び堪能した。

 

 

 

 

……

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……数日後。

 

ランスはリズナを伴ってヴァルハラの南西方面の市街地に位置する『山本ジム』に戻っていた。

 

以前の『山本ジム』は、もはやジムとしての機能を失っていたが、ランスが儲けたマッカを費やしてある程度の設備を復活させた。

 

ミレニアムを冒険するにあたり、今後は山本ジムを以前の『回復道場』の様な拠点にするつもりだからだ。

 

だが……行動を本格的に開始するには頭数が足りないので、ランスは先日の『宣伝』による訪問者を待っていた。

 

あんな『マグレで勝ち抜いた』様に見せた戦い方でも弟子になりたいと言う奇特な人間も来たが、それらは全て断らせている。

 

尚、ランスは今回も『こちら側』に飛ばされた時から『ハンドヘルドコンピュータ』を装備していたが、悪魔を仲魔にするのはその後にするつもりだ。

 

 

「なかなか、来ないみたいですね……」

 

「そうだな……う~む……あの程度じゃダメだったか?」

 

 

山本ジムの事務所のデスクの椅子に腕を組んで腰掛けているランスと、テーブルを挟んで向かい合っているソファーの片側に腰掛けているリズナ。

 

この世界の事をもっと知る為として、まだまだ今まさに読んでいる新聞や事務所のテレビで暇を潰す事はできそうだが……

 

宣伝から一週間近くが経とうとしているのに、ランスが期待している者は訪れず、もしかしたら宣伝力が足りなかったのかと不安になる。

 

一応、予選トーナメントと言えど、決勝トーナメントに繋がる重要な試合だったので、ランスとしては十分だと読んではいたが……

 

 

≪ピンポーン≫

 

 

「あッ。誰か来たようです。見てきますね?」

 

「あァ。今度は当たりだと良いんだがな……」

 

 

時間の経過で若干期待が薄れ、次の策を練るべきだと考えていたのか、新聞から視線を移さずに言うランス。

 

それに対して苦笑しながらも、リズナは些細な事ながらも役に立てるのを嬉しく思いつつ、何人目かの訪問者に対応する為に動いた。

 

すると数分後……リズナは何と一人の『少女』と共に事務所に戻って来る。

 

ランスは弟子入りを望む戦士ならば門前払いする様に言っていたので、少女が事務所に通された唯一の人間だった。

 

カドのある黒い帽子と薄茶の長髪・白のジャケット……そして黒のミニスカートが特徴で、首には黒い淵のゴーグルを掛けているが、『ハンドヘルドコンピューター』の類ではなさそうだ。

 

此処を訪れた理由は『ランスのインタビューを見てピンと来たから』らしく、ランスが喋っていた条件と完全に一致している。

 

しかし、ランスは『見た事が無かった少女』が来るとは思わず、どうしたものかと黙って考えていると、リズナが自然な流れで口を開く。

 

 

「ところで、貴女の名前は何て言うのかな?」

 

「…………」

 

「(やっぱ聞いた事が無い名前か……なかなか可愛いが、無表情だし若過ぎるな……)」

 

「エールちゃんね? 年は幾つ?」

 

「…………」

 

「(だとすれば……"アイツ"が言った協力者かもしれんが、流石にそれは無いか……?)」

 

「13歳かァ。それで、一人で来たみたいだけど……親族の方はいらっしゃるの? えッ!? ら、ランスさんだけ……!?」

 

「なぬぅ~ッ!?」

 

 

150センチに満たなそうな少女(実際は146cm)に対し、リズナは171センチ(公式+1cm)有るので、膝を折って質問をする様は完全に子供に対応する"お姉さん"である。

 

そんな中、"エール"と名乗った少女は聞き捨てならない事を言ったので、ランスは思わず身を乗り出した。

 

無駄に頭の回転が速くなった彼が真っ先に考えたのは『生き別れの妹』だが、続いて彼女が漏らした発言に更に衝撃を受ける羽目と成った。

 

 

「…………」

 

「しッ、しかも彼は……お爺さんですって!?」

 

「!? ちょっと待たんかーッ! 何で俺様に孫が居るんだ!? まだ27なんだぞッ!?」

 

「…………」

 

「えっ? し、証拠が有る……?」

 

「ふんッ。冗談も休み休み言え————」

 

 

————ランスに孫が居た。

 

しかし、年齢的に辻褄が合わないので、ランスの行動はあくまで"お爺さん"と言われた事に対する抗議のみで留まった。

 

対して、"エール"はテクテクと彼の方へと歩み寄ると、ボロボロになったポラロイドカメラの"写真"を机に置いて見せる。

 

……満足そうに笑っているランスを中心に、周囲に5名の美女達を侍らせている"六本木"の酒場での一枚だった。

 

ランス本人が映っているので、彼は当然その写真には見覚えがあり、"エール"がその中の美女一人を指差した事で、その女性が少女の祖母だと判明。

 

だとしたら、祖母を抱いたランスとの子供が"エール"の親となるので、結果的にランスは椅子から転げ落ちそうに成る程驚く羽目となった。

 

その衝撃の事実に対し……同じく年齢的に有り得ないと思っていたリズナは、ただ困惑するばかり。

 

"エール"としても、偶然テレビで視界に入った男性が"写真に写っている祖父"の容姿と酷似していたと思ったら、本当に祖父本人でした!

 

……と言う、奇想天外な現実に直面しているので、性分なのか表情は大して変化していないが、ランスを真っ直ぐと見つめる彼女の大きな瞳は、それなりに不安そうに泳いでいた。

 

ランスとしても、13歳の少女がヴァルハラで一人で生きてゆくのが、いかに大変そうかは容易に察せる。

 

よって、追い返すと言う選択肢など取れる筈もなく、今が良い機会だと感じたランスは、デスクの椅子に腰掛けているのをそのまま、リズナに飲み物を用意させてから2人を左右のソファーに座らせると、『長くなるぞ』と前置きしてから、先ずは過去の『東京』での戦いについて語る事にした。

 

世界制覇……"魔人ケイブリス"の討伐直前に、創造神『ルドラサウム』によって飛ばされてしまった事から始まった、僅か三週間程度の出来事であったが……

 

"悪魔召喚"や"悪魔合体"に加え、大破壊・大洪水・セックス等々……余りにもインパクトが有り過ぎて、ランスの記憶には鮮明に残っていた。

 

ランスが『再び東京に現れた理由』の方が極めて重要なのだが、其方は後回しにする様だ。

 

 

「…………」

 

「えっ? "母と年の離れた父"と"若くして自分を産んだ母"は既に病死してるけど、母は娼婦として自宅を使ってた事も有ったから、その辺の話も大丈夫……?」

 

「!? だとしたら、生まれてたのは息子の方か……ッてか、そんな事までイチイチ話さんわッ!」

 

 

 

 




■あとがき■
本作のTOKYOミレニアムは原作と違って多くの街を別に持つなど、色々とパワーアップしています。
前作を読んだ事が無い方に捕捉しますと、本作のランスは『鬼畜王ランス』のシィル生存の幸福エンドを迎えた後、それから数年経った後と言った設定です。
ランスが自らの意思でミレニアムに来ている理由が分かるのは、『真・女神転生』版の修正・投稿を終えてからなので、かなり先になってしまいます。


■リズナ・ランフビット■
23歳。
鬼畜王ランスには登場していないので、ランスと彼女は初対面。
ミレニアムに飛ばされてしまったのはアベルトの罠ではなく、魔法試験による不慮の事故。
騙されやすい性格は健在だが、ランスに対してはしっかりとした愛情を持っている。
悪魔が極端に減っていたミレニアムの人々の中では飛び抜けて強かったので、処女のままだった。


■エール■
13歳。
容姿はレンジャータイプ。
ランスが『東京』で冒険していた時に抱いた女性の中で、偶然妊娠した祖母から生まれた"息子"を父親とする少女。
長田君みたいな友達がおらず生活環境も厳しかったので、原作よりも少し感情に乏しい。
当然、例のアレが絡んでいるので、ランスとの出会いは必然である。
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