春蘭、香風、真桜、傾が淫に堕ちてから数日後のある日、洛陽の城の一室では1人の少女が苛立ちを見せていた。
「あぁ~~っ!!もう、十常侍の奴等!無茶ばかり言ってきて!!何が『早く淫を落とせ。』よ!!何が『役立たずの董卓を奴等に差し出せ。』よ!!月はあんたらの玩具じゃないっての!!だいたい、先に淫に戦を吹っ掛けたのはあんたらでしょうが!!そのせいでどんだけ被害が出てると思ってるのよ!!」
忌々しそうに地団駄を踏みながら、苛立ちを隠そうとしない少女の名は賈駆という董卓軍の軍師であり、董卓の親友でもある。彼女は淫の……マルスの噂を聞いたときに何か言い知れない胸騒ぎを感じて警戒をしていた。
さらに淫との戦によって傷付いた将兵も無視して、豪遊をする十常侍と何も知らない、知ろうともしない今の霊帝に沸々と怒りが溜まり、こうして1人の時に爆発させている。
「(淫を探ろうにも探れないし、尚且つ敵には名だたる将や軍師もいる。何よりマルスってやつ、何者なの?支配している領土に圧政をかけている様子もない。寧ろ好かれてるみたいだし……。本当に霊帝に反旗を示す大罪人なの?)……情報が足りなすぎる。本当に悪い国なの?こうなったら霞に……ううん、危険が有りすぎる。」
1人悩む賈駆、そんな彼女を影から眺めていた少女、董卓が足早に部屋に戻ると意を決した様子で服に手を掛けた……。
翌日、マルスが1人分身を置いて淫を抜け出していた。今頃愛紗が鬼気迫る表情で探しているが、マルスは気にしてはいなかった。
「はぁ~っぁ。たまには1人で散歩するのも悪くないな……それにしても、淫もデカくなったなぁ。(初めは暇潰し、そんな程度に考えてたのが今じゃ大国の長、か。何か良くわからんなぁ。)ん?」
マルスは人の気配を感じ、その方向に向かうとそこには数人の男が1人の少女を輪姦しようとしていた。マルスはやれやれとため息を吐くと、小さな雷球を作り出して男達に放ち、男達はその雷球を受けて吹き飛んでいった。
「ふぇ……!?」
「この辺りにもまだいるのか。ある程度は片付いたと思ったんだが……おい、大丈夫か?」
「は、はい……。あの、あなたは……?」
「ん?あぁ、俺はマルス。しがない町の太守だ。今は近くを散歩してるんだが……お前は?」
「私はと……トントンです。」
トントンと名乗ったその少女にマルスは、目を細めて顔を近づける。鼻と鼻がくっつく距離まで近付かれ、一瞬ビクッとなる。
「(悪人ではないな。かといって、トントンなんて分かりやすい偽名を使う辺り何処かの……。)トントンとか言ったな。何故この辺りを歩いてる?」
「あ、そ、その……!私、淫に行きたいんです!!洛陽の生まれなのですが、淫は悪いところ、行っては駄目と言われてますが、私はこの目で淫がどんな所か、この目で見たいんです!」
「そうか……。なら、付いてこい。案内してやる。」
そう言ってマルスはトントンこと董卓を淫へと連れていくのであった……。
◆◆◆
董卓side
私は董仲穎といいます。私は友達の詠ちゃんの助けになろうと淫に向かってましたが、その途中で山賊の人達に襲われそうになったけど、そこをある人に……マルスさんに助けられ、今は詠ちゃんが頭を悩ませている淫に来ているのですが、その国の中を見て私は言葉を失いました。
皆が口を揃えて言ってるのですが、淫は絶望の国だ。入れば生き物としての権利は無くなると……。そう聞かされていました。
でも、でも……。
「すごい……!」
「どうした?」
私が驚いていると私を助けてくれた男の人は、不思議そうにこちらを振り返ってきました。
「い、いえ……!民の方が笑顔でいて、何より活気があって凄いです。洛陽では苦しんでいる人もいるので。」
「洛陽がどうかは知らんが、ここはまぁ賑わってるな……。学校に闘技場、娼館に病院、色々あるからな。あ、ちょうど飯時だな。何か食うか?」
「ふぇ?お店に入るんですか?」
「それは、まぁ飯食うからな。」
私達は近くのお店に入ると、案内された奥の席に行き、そこで料理を注文しました。私は“おむらいす”?というのを頼み、マルスさんはしょうがやき?というのを頼んでいました。
何か分からないまま待っていると、暫くして私たちの前に来たのは……黄色い何かに包まれた料理とお肉の炒め物でした。
「(どんな料理なんだろう?)あむ……!!」
食べてみると、それはとても美味しかったです。宮廷の料理とは違っていて、なんだか安心するような……それでいて温かくて、凄く美味しかった。
「これは、いったい……?これは、赤いご飯?」
「黄色いのは卵、赤いのはトマト……あー、赤茄子のタレみたいな物だ。」
「凄く美味しいです。こんなの、食べた事無いです。」
「そうか。」
凄く楽しい食事、詠ちゃんと一緒に出掛けるのは難しくなったけど時間が出来たらまた行きたいなぁ。その後は服を見たり、色々なお店を見て回ったりしてとても楽しかったけど、私は淫を見て、その価値観が変わっていきました。
もしかしたら、悪い国ではないのでは無いかと……。
そんな中、男の人が沢山入っていくお店が見えたんです。
「あそこは?」
「あそこは娼館だ。色んな人が働いてる。」
「ふえ!?しょ、しょしょ!娼館!?それってあの、あ、あわわわ……!」
「……取り合えず付いてこい。遅れたら勧誘されるぞ。」
「はわっ!!~~っ!」
私はマルスさんの手を握って、一緒に娼館を通りすぎたけど……こんな昼間からやってるなんて……あわ!あわわ!!
それにしてもこの人、何だろう……とても安心できるというか。そんな感じがしました……。
◆◆◆
トントンこと董卓と共に淫を回ったマルス。そんな彼の色んな一面を見た董卓は淫の城門の前でマルスに見送られていた。
「今日はありがとうございました。とても楽しかったです。」
「……そうか。まぁ視察が出来たんなら良かったなぁ“董卓”。」
「やっぱり、気付いてたんですね……。」
「そりゃあな。お前顔に出やすいからな。」
「へう……。ひ、ひどいです……。」
互いに笑い合う2人、しかし、マルスは言い放つ。
「次は戦場でだ。容赦はしない。」
「互いに手を取り合わないのですか……?貴方は。」
「俺はそう言う柄じゃないんだよ……。じゃあな、気を付けて帰れよ。馬車とはいえ危険だからな。」
「は、はい。」
マルスがそう言うと、董卓は悲しげに一礼して帰っていき、マルスの影には思春が控えていた。
「……追いますか?」
「いや、追わなくて良い。戦場で会うだろうさ。」
マルスの言葉に思春は頷き、その場を離れたのであった……。
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