経緯は省くが、紆余曲折あり付き合うことになった七緒と志歩。それには特別なきっかけがあったわけではない。志歩の眼鏡に敵うだけの技量を持ち、共に音色を重ねあった時間。そしてライブハウスで共にスタッフとして関わる時間。受け身同士であるものの相性は悪くない2人は、そのまま流されるように共にいることを望み、そして結ばれた。
それ故に、数年経った今でも進展らしい進展もない。今日も2人きりでセッションをしており、お互いの音色を重ねていた。
「お疲れさまです志歩さん。これ、ドリンクです」
「ん、ありがと」
2人は店の長椅子に腰を掛け、喉の乾きを癒す。今回はかなり激しいロックだったためか、男である七緒も汗を流していた。それに加えて防音の為外の空気を遮断し、空調も限られたスタジオではどうしても熱が籠る。住居を改造した弊害が思わぬところで現れていた。
「しっかし暑いな……もう夏だからかな……」
「……………」
志歩は隣でシャツの胸元をパタパタと動かす彼を見つめていた。その視線が彼の胸元に注がれていることなど、本人が知るよしもない。
「今日40度越えるって言ってたよ」
「えっ、ホントですか」
気付かれる前にスマホで天気予報を開く彼女に、七緒が寄って画面を覗き込んだ。そんな動作ひとつで起こった風が、志歩の鼻孔を突く。彼から漂う汗の匂いは決して心地良いものではない。
「……………」
しかし、志歩は『不快に思わなかった』。特に、洗うのが疎かになるうなじや、髪の影響でどうしても蒸れてしまう頭皮は特に。この世には猫吸い、などという言葉がある。猫、というより毛の生えた動物相手に顔を埋め、その匂いを堪能するというものだ。それは当然、人間の髪でも可能である。
「(……いや、流石にそれはダメでしよ)」
下心が覗いた気がするも、志歩はそこまで盲目的ではない。しかしこの匂いによって自らの理性が徐々に削られているのは事実。しかし彼を退ける為の文言が出てこない。不快ではない匂いを「臭い」というわけにもいかず、何より彼がそれを気にして2度と近寄ってくれなくなるかもしれない。二重の意味で追い込まれつつ、志歩が至った結論は──
「……そんなに近寄ったら暑いんだけど」
「あっ、ごめんなさい」
──案外普通のものだった。しかし彼を傷つけることなく退け、理性を保つことに成功する。心の中で自分の胸を撫で下ろしつつ、演奏を再開するために立ち上がる志歩。
「……っ!」
「志歩さん!?」
その直後、視界が揺れ足元がおぼつかなくなる。それはただの立ちくらみ。いくら健康を保っていてもこれだけ暑いのでは、多少のイレギュラーは起こり得た。しかし、イレギュラーはそれだけにとどまらない。そのままバランスを崩し、同じく立ち上がった七緒の胸元へと顔を埋める。
いくら流れで付き合うとなっても、お互いに重ねた時間の中で意識のひとつもしなかったと言えば嘘になる。受け身でありウブな2人だからこそ越えられない一線が存在し、均衡を保っていた。
それは張りつめた弦のように、繊細で美しいもの。しかし、どこか張りつめ過ぎていた。一線を越えてはいけないと2人が無意識の中で感じているように。美しいものは、触れないからこそ美しいのだと。それ故に────切れるのも容易かった。
「っ……くぅ……!」
先に切れてしまったのは志歩の方だった。彼の胸元から感じる鼓動が、熱が、匂いが直に伝わってくる。シャツ1枚ではあまりにも心もとない。あまりの感覚に自分の鼓動が高まり、押さえつけるように胸元をギュッと握りしめた。
『早く離れないと』『今ならまだ戻れる』。そう思うよりも先に、彼が動いた。
「っ!」
「あっ……ちょっと……!」
まるでお姫様だっこのように抱き抱え、自室へと走る七緒。そのせいでより体が密着し、彼を感じてしまう。やがて部屋に到着し、志歩はベッドの上に寝かされた。当然そこは七緒の自室。七緒のベッドである。
「少し待っていてください。すぐにお水と薬を持ってきますから」
そういって立ち去る彼の顔は、どこか必死であった。
「大丈夫、なんだけどな……」
誰もいなくなった彼の部屋で1人天井を見上げる志歩。目眩も治り、正常に戻ったか……と思いきやそうでもない。先程感じた彼の存在が頭の中から離れなかった。
「……………」
シーツの中に顔を埋めて彼の臭いを全身に浴びる。強引に繋ぎ合わせようとした理性の糸は手繰り寄せる度、千切れてその手をすり抜けた。なんとか戻そうとしたのに、彼がそれを許してくれなかった。
「七緒のバカ……」
その罵倒を口にしても彼の耳に届くことはない。そんなやるせない怒りにも似た鬱憤は、体の火照りも合わさって指先を操る。たどり着いたのは自分の陰部。ズボン越しに擦っても刺激は得られず、もどかしいように腰を動かした。やがてズボンのボタンをはずしパンツ越しに擦り始める。
「んっ……はぁ……」
布越しとはいえ一気に強くなった刺激に思わず声が漏れる。吐き出された息は彼の臭いを伴って鼻孔を突き、行為をエスカレートさせていく。
実のところ、志歩にとってこれが初めてではない。七緒と付き合って長い年月が過ぎてもなお、そういう関係にはなれなかった。志歩も当然この手の知識を知ってはいる。しかし実践に移す『場所』と『機会』がどこにもなかった。
それは一概に過保護すぎる姉、雫の存在が大きい。親のいない日に意を決して呼んでみても付きまとわれ、自分がデートで出掛けるとなっても泊まることは決して許されない。ここ十何年にもわたる彼女との付き合いで彼女を拗らせるのはやめよう、というのが志歩のなかでの結論となっていた。
それ故に、志歩は自分の中に鬱憤が溜まっていき、その発散のため行為に至る。いわゆるガス抜きであるのだが……それはただの鎮静剤に過ぎない事はとうに理解していた。どれだけ体を慰めても奥底の淀みが掬える訳もなく、堆積していく。
何度も擦られる度に顔を出す肉の芽が、パンツに擦れた。ピリピリと静電気のような弱くも確かな刺激が、指が前後する度に背筋を駆け抜ける。
自分の欲望そのままに最後の壁の中へと手を滑せた。もっとも快感を得られるその場所へ向かって手を伸ばし触れる。隠れるのをやめた肉の芽がコリコリとした感触を返す度、身体中が快楽の雨に打たれた。
「はぁ……はぁ……はぁ……!」
その雨は出口を求めて下腹部へと集中していく。蓄積された快楽を引き出すため、最後の一押しにと肉の芽を摘み取ろうとして──
「志歩さん、大丈夫ですか!?」
強引にドアがノックされ、彼の声が鳴り響いた。驚きと共に現実へ引き戻された志歩は、慌ててズボンを履き直す。扉が開かれ近寄る気配。
「志歩さん、冷却シートとスポーツドリンクを持ってきました。……大丈夫ですか? 息が……」
「な、なんでもない!」
間に合いはしなかったもののシーツを被っていた為気付かれることもなかった。額に冷却シートが張られ、よく冷えたスポーツドリンクが身体中に染み渡る。とても心地いいはずだが、今はそんなことよりも下腹部に意識が集中していた。
「(もう少しで、イけそうだったのに……)」
最後のトリガーを引けなかった為に、体の中を渦巻く欲望。それはまたも淀みとなって再び沈下していくのだが、全てにおいて限界だった。その淀みを受け止めきれる自分の容量も、あと少しというところで無下にされた鬱憤も、なにもかも。
「えっと……志歩さん。本当に具合が悪いんでしたら病院に……」
心配そうに声をかけてくる七緒。しかしそんな彼でも志歩の真意に気づくことはない。呆れるほど鈍感で、しかし紳士的な彼の優しさ。そんな彼に惚れたのだと、志歩は改めて自覚する。そして、そんな彼が一度たりともこういうことをしてくれなかったことも。
彼が強引にでも自分を奪ってくれたなら、こんなことにはならなかった。彼がその淀みを少しでも汲み取ってくれていればよかった。自分はいつだって、その準備が出来ているのに、まるでどこ吹く風のごとく流していた。
待って、待って、待って、待って、待って。美味しい餌を用意して、お膳立てだってしているのに、彼は一度も食らいついてくれない。彼は呆れるほどの草食系であった。
「もう、いい」
「えっ?」
立ち上がり、その手をとって強引につれ回す。カウンターでは退屈そうに音楽雑誌に目を通している七緒の母の姿があった。
「おや志歩ちゃん、どうしたんだいそんな必死な顔して」
「カラオケ。パーティールーム、オールで」
「オッケー。ワンオーダー制だけど注文は?」
「もう、済ませてる」
ちらりと七緒に視線を送ると、彼女も納得したように頷いた。七緒にとってそれが何を意味するのかはわかりもしない。
「そこの廊下突き当たりの部屋を使いな。どうぞ、ごゆっくり」
「ありがとうおばさん」
「わっ、ちょ、志歩さん!?」
そのまま彼の手を引き部屋へと引きずり込んだ。強引なままに長いソファへ投げ出し、扉の鍵を閉める。元々スタジオであったため、施錠するための機能は未だに残っていた。後は某感染予防として、扉をオープンにしても問題ない様に取り付けられた長い暖簾。それによって部屋は完全に隔離される。
「ちょっ、志歩さんどうしたんですか!?」
何がそうさせたかこの際どうでもいい。ただ、一言で表すなら。
「七緒が悪いんだよ」
志歩はただ、目の前の獲物に飢えていた。MVを垂れ流すテレビに照らされた志歩が、シャツとズボンを脱ぎ捨てる。冷却シートもゴミ箱に捨て去った。薄緑色のブラとパンツ、そして柔肌が七緒の目に飛び込んでくる。思わず顔を両手で覆い見ないように努める彼であるが、好奇心は抑えられぬのか指の隙間からその姿を見ていた。そのまま延びる彼女の腕は、彼のズボンへと掛けられる。
「あっ、待っ!?」
ベルトも要らない半ズボン。暑いこともあり少しだけダボついたそれは、彼の制止の声が届くよりも早くずり下ろされる。そこにはもっこりと半勃ちしたペニスが、パンツを押し上げていた。
「なんだ、七緒だって期待してるじゃん」
「いや、違、これは……」
「違うなら、なに?」
「あうっ!」
否定と拒絶ばかりの彼に対し沸き上がる怒り。靴も脱ぎ捨て、靴下越しに彼のペニスを踏みつける。といっても痛め付けるわけではなく、あくまで刺激するためものもの。逃げるように腰を動かしているが、足ほど器用に逃げられる訳もなく的確に陰茎をしごきあげていく。
「あっ、くぅ……やめ、て……!」
「やめると思ってるの?」
指先で、足裏で、グニグニと生々しい肉の感触を味わう。はじめての感覚であるものの、自分が求めていたものに他ならない。そして何より、自分を手玉にとっていた彼がこんなにもあっけなく自分に屈服している。実際のところ彼自身にそんな気など一切ないのだが、そう思わせた時点で罪に代わりない。
「固くなってる。そういうことなんでしょ」
「くっ、違……、あっ……あっ……ぐぅ……!」
必死に歯を噛み締め我慢する彼を見て、独占欲が満たされる。固くなっていく陰茎に自らも高ぶりを覚える。このままいけば彼が果てるのは時間の問題だろう。──だかそれを良しとはしなかった。彼が果てるであろう直前で足を引く。
「な、なんで……! あっ……」
「ほら、やっぱり」
果てる寸前の物欲しそうな顔。やめたことに対する問い。自覚させて本人が求めていたことを意識させる。足裏には潤滑油代わりのカウパーがねっとりとこびりついていた。
「挿れたい?」
「いや、そんな……僕は」
そう言いつつ、彼の視線は彼女の体に釘付けだった。
「嘘ばっかり。なら、勝負しよう」
顔を一気に近づけて、無表情のまま言い放つ。寝転がる彼の上に逆向きで覆い被さる志歩。七緒の眼前にはしっとりと濡れた彼女のパンツと、隠された秘部がある。それは志歩にとっても同じこと。
「先にイかせた方が勝ち。勝った方は負けた方になんでも言うことを聞く。それでいいでしょ」
「な、なんでも……」
「うん。なんでもいい。エッチなことしたかったら叶えてあげる。嫌だっていうならやめる」
「それは……むぐぅ!?」
「ごちゃごちゃ言ってないで始めるよ」
しゃべることを止めない口を下の口で塞ぐ。一方の志歩は彼の陰茎を隠す最後の砦を取り払った。先程の行為でそそり立つ肉の棒に思わず目を奪われる。指先でなぞってみれば、ビクビクと我慢できないように反応を返してくれる。
「…………♡」
くるくると亀頭を弄りつつ皮を丁寧に剥いていく。敏感な部分に吐息を吹き掛ければ、軽く痙攣した。チロチロと鈴口で舌先を舐めてみれば、唾液とは違った粘液が志歩の味覚を刺激する。
「あっ……あっ……」
そんな中甘い声をあげる七緒。未知の快楽に溺れてしまい、攻めることすらしていない。そもそも寸止めされて、すぐの刺激に耐えられるほど彼の精神は強靭ではない。
「志歩さ……ダメ、イクッ……!」
「っ!」
勢いよく顔にぶちまけられる白濁色の粘液。粘りと強烈な臭いでそれが精液と気付くのに時間はかからなかった。そしてそれは、志歩の勝利を飾るものでもある。
「……早すぎ」
「だって、さっき寸止めされてたから……」
しかし、志歩は不機嫌だった。彼をイかせたのは事実だが、自分はなんの快楽も得られていない。せっかくお互い気持ちよくなれる案を提供していながら、相手だけが気持ちよくなるのは正直ズルい。なにより我慢してきたのは自分の方だというのに。
「じゃあ、ハンデをあげる。そっちが3回イクまでに変えるから。だからあと2回イったらそっちの負け」
「えっ、それじゃあ僕が有利なんじゃ……」
「さっきなにもしなかったのに良くいうね。じゃ、始めるよ」
射精後ということもあり萎んだペニスを手にとって溢れる精液をなめとる。その味は決して美味しくはなかったものの、自分の興奮を呼び覚ますには十分なものだった。そのまま舌を皮の中へと侵入させ、クルクルと亀頭を舐め回す。漏れ出す精液も丁寧に吸い上げては舐めとり、きれいに掃除していった。そんな過程でムクムクと大きくなっていく彼のペニス。
「へえ、イくのも早いけど固くなるのも早いんだね」
「あ、あんまりそんなこと言わないでください……気にしてるんですから」
「気にするって、なんで? そんな経験ないでしょ」
「だって、ヌいた後にもすぐ勃つとか、隠すの大変だから」
「……それ、誰でヌいてるわけ?」
「そ、それは……」
言い淀む時点で、自分以外の誰かやましい気持ちがあるのだと察知する志歩。沸き立つ怒りに任せて今度は手で彼のペニスを扱き始めた。
「あっ……あっ! 志歩さん、激しい!」
「大方、穂波とかでしょ。私と違っておっぱいもお尻も大きいし……!」
「ち、違っ、あぁっ!」
「ならお姉ちゃんでしょ! 背も高いし、優しいし色々可愛がってくれそうだし!」
「だから、違……ぅぅ!」
わからない、わからない。今こうして気持ち良くさせているのは私なのに、彼の中には『別の誰かが居る』。そんなの絶対に許さない。例え劣っていたとしても、こんな彼の姿を知っているのは私だけだ。
「七緒は、私だけの物だから……! 絶対に誰にも渡さない……!」
「し、志歩さ……あぁ!」
「だから、私の事しか考えられないようにする!」
最後に彼の反り立つペニスの先を咥え、搾り取るように吸い上げる。彼の我慢を軽く越えるバキュームは、再び射精へと導いた。
「あぁぁぁ……!」
女性にも似た声を上げて喘ぐ七緒。自分がイかせたという証明であり、自分しか知らない彼の姿。それによって自らの独占欲が満たされる。しかし今度も自らの性欲を満たしてはくれなかった。
「ちょっと、そっちばっかり気持ち良くなるとかズルいと思わないの?」
「だ、だって志歩さんのテクニックが凄いから……どこで覚えたんですか……」
「そ、それは……動画とかネットとか……」
「……………」
それを聞いてまたもムクムクと大きくなっていく七緒のペニス。そんな光景を目の当たりにして、志歩はある予感が脳裏に過る。
「ねぇ、もしかして私でヌいてる?」
「えっ!? いや、それは……!!」
あからさまに動揺し顔も赤く染める。それに何より彼のペニスがビクリと動いた。今までにない反応にある考えが思い付く。もはや確信犯だが、追い詰めるには効果的なもの。
「(そっちが惚けるなら、こっちだって)」
ブラのホックを外し、パンツを脱ぐ。逆位置だが一糸纏わぬ姿を七緒に晒す。それに加えブラもパンツもこれ見よがしにと彼の顔に被せた。さっきの行為で濡れぼそったパンツに汗で蒸れたブラ。その匂いが彼の嗅覚を刺激し、その反応は真っ先にペニスに現れた。
「ほら、これでも惚ける気?」
「うう……ごめんなさい」
「なんで謝るの」
「だって、自分の彼女にそういう妄想するのっていけないことだから……」
「……はぁ」
どこまでも奥手で紳士的なのだろうか。ここまで来ると修行僧の類いと変わらない。一番大切な存在だからこそ、汚したくない。そんな思いが彼の心にあるのだろう。そんな食い違いがここに来てようやく判明する。
「でも、私で興奮してたのは事実でしょ。だったら……」
再び腰を下ろし自らの秘部を顔に押し付ける。
「私をイかせて叶えたらいいでしょ」
「志歩さ……んっ」
「んんっ……!」
こうしてようやく彼が動き出す。ねっとりとイヤらしく舌を這わせて、滴る愛液を味わうように、気持ちいいところを探るように。志歩も当然負ける気はないので行為を再開させる。先ほどイかせた実績もあり、彼の弱いところは熟知している。状況としては志歩が有利……なはずだった。
「んっ……くっ……あぁ……」
丁寧に舐めとるその行為は、思いの外早く自分の絶頂へと導いていく。自分でも感じられない快楽。大好きな相手。待ち望んでいたもの。様々な条件が交わって、淀みの溜まった蜜壺を刺激していた。
壺の口から汲み取るのではなく、壁の薄いところを的確に突いてくるような刺激。七緒としては志歩の興奮を高める為の行為に過ぎないのだが、そんな刺激を何度も耐えられるわけもない。
「(でも、ここでイったら負ける……!)」
膣が喜んでいる感触を直に味わいながらも、負けたくない一心で七緒のペニスを攻める。負けてしまっては今までの苦労が台無しだ。この機会を逃せば、また気が遠くなるほどの時間を重ねる事になる。だからこそ、ここで勝負に勝って、本当に欲しいものを手に入れる。
獣の本性を表しながらもかなり理性的。獲物を確実に仕留めるために策を労するのは当然の事。彼の行為が止まってしまうほど、弱いところを集中的に攻め立てた。卑猥な音が防音加工された壁に反響する。それすら興奮を引き立てる材料に過ぎず、お互いの行為が激しくなっていく。特に志歩ははじめての感覚をもっと味わおうと、無意識に腰を動かしていた。
「ああ……もう、だめぇ!」
「(よし、これでイって……!)」
先に反応を返したのは七緒の方だった。絶頂を迎える合図を耳にして、志歩は勝利を確信する。そんな中で、無意識に動いていた腰が彼の舌を彼女の最も弱いところへ導いた。既に皮が剥けきり物欲しそうに勃起した陰核。それに触れて走る強烈な刺激で志歩の蜜壺に穴が開く。
「あっ、ダメッ! そこは、あ、ああっ、イック……!!」
「僕も、だめぇええ!!」
本能のままにお互いが汁をぶちまける。七緒の方も今までにない程の絶頂で、志歩の顔や髪、胸元を汚していった。一方の志歩も止まることの知らない潮吹きで七緒の顔やソファ、床を濡らす。しばらくの間、腰を痙攣させながら余韻に浸る2人。
「一緒に、イっちゃった……」
どこか残念そうであるものの、ようやくイくことができたことに法悦の笑みを浮かべる志歩。彼女の膣は今も物欲しそうに動いている。イヤらしく涎を垂らす艶やかしい部分に、思わず七緒は興奮を掻き立てられた。
「ちょっと、素直すぎ」
「あう、ごめんなさい……」
勃起した彼の肉棒に目を奪われるも、あえて表には出さない。お互いに向き合って、濡れてしまった彼の上着を奪い去る。
「それで、勝負の方は……」
「引き分け。その、私も悪くなかったし」
「だ、ダメですよ! それなら僕の方が3回もイっちゃったわけですし、最初はルール変更で1回使ったとしても、後1回は志歩さんの言うこと聞かなきゃ……」
「……それ、本気で言ってる?」
「はい。だから志歩さんは僕に『なんでも』──」
志歩の提案を無下にしないよう提案する七緒であるが、言葉選びを間違えた。こんな状態で『なんでも』なんて言葉を言われては我慢できるわけがない。
「やっぱり、七緒が悪いよ」
反り立つペニス。蜜を垂らす膣。覆い被さった志歩は勢いをそのままにナマで挿入した。ズプンッ! という音と共に、今度は腰を必死に振ってパンパンと軽快なリズムが刻まれていく。
「ああっ、イイっ! 七緒のが気持ちいいとこ、全部当たってぇ……!」
「あっ……あぁ! 志歩さん、んんんん!」
口も唇で塞ぎあい舌が激しく絡み合う。息も着かせぬ攻めにお互い高揚し、瞬く間に大きな感覚が駆け上がってきた。
「イって! 私の中で、私でイって、ほしい!」
「ん、ぐぅうううう!!」
「あ、あぁああああ!!」
お互いに一番気持ちいいところで絶頂を迎える。こうして2人はようやくチグハグの関係から抜け出せたのであった。
・
・
それから二人は汗だくの為七緒の家でを湯船に浸かっていた。流石の七緒も志歩も体力の限界であり、これ以上行為に移ることはないだろう。
「その、ごめん。強引すぎたよね」
そんな中志歩が俯いたまま謝罪する。いくら我慢できなかったとはいえ、女のすることではなかっただろう。それにあそこまで強引に行けばレイプも良いところだ。
「あ、いえ。僕も志歩さんの事、全然わかってあげられなかったなって」
「それ、どういうこと?」
「い、いえ! 変な意味はないですよ! ただ、僕も奥手すぎたなって。
だから、僕も次からは志歩さんをリードできる様に頑張りますから──」
言い終わる前に、水音と共に志歩が七緒に向き合う。
「じゃあ、今からその実践ね」
「え」
二人の夜は、まだまだ終わりそうにない。翌日、七緒は文字通り貪り尽くされていたそうな。