朝から始め丸一日かけて行われた行為により、部屋の中には濃厚な性の匂いが立ち込めていた。床には愛液や潮吹きによってできた水溜まりができており、ベッドシーツは使い物にならなくなっている。
「お゛っ…♡♡んおっ…♡♡」
送崎はベッドに力無く横たわり、快楽に蕩けた表情を浮かべている。秘部からは未だに精液が流れ出しており、その量の多さからか下腹部が大きく膨らんでいた。
緑谷は顔を近づけるとそっと唇を重ねる。
「ちゅるるっ♡♡れるっ♡♡んぢゅっ♡♡」
送崎は嬉しそうな声を上げながらそれに応え、舌を絡ませてきた。身体を震わせ秘裂から潮を吹き出しながらも、懸命に腰を振り喜びを表現しようとする。
(かわいい……)
緑谷はそんな彼女を見て、思わず笑みをこぼす。そのまま彼女の頭を撫でてやると嬉しそうにゴロゴロ喉を鳴らした。まるで猫のような仕草だ。
「えへへ……♡♡」
送崎は幸せそうに笑うと、力尽きたように眠りについた。緑谷はそんな彼女を起こさないようゆっくりと抱き締めると自分も目を閉じた。
翌朝、送崎が目覚めるとすでに緑谷の姿はなかった。シャワー室から音が聞こえるので、恐らく先に起きて入浴しているのだろう。
彼女は上体を起こすと、軽く伸びをした。そして昨晩の出来事を思い出し、顔から火が出るような思いになる。しかし、同時に幸せな気分にもなった。顔が自然とにやけてしまう。
「ふふ……」
彼女が一人でニヤついていると、浴室の方から緑谷が出てきた。どうやらシャワーを浴び終えたようだ。
「おはよ、緑谷君。」
「おはようございます、信乃さん。」
緑谷は爽やかな笑顔で挨拶を返す。
「身体は大丈夫ですか?」
「う〜ん、誰かさんのせいであちこち痛いかなぁ〜」
送崎は悪戯っぽい口調でそう言う。
「すみません……。つい夢中になってしまって……」
緑谷は昨夜のことを思い出したのか、恥ずかしそうに頭を下げた。その様子に送崎はクスリと笑いを漏らすと、彼の首に腕を回す。
「いいんだよ。すごく気持ち良かったし。ほんとにすごかったなぁ〜♡今のキミからは想像できないくらい……♡」
送崎はわざとらしく耳元で囁く。緑谷は顔を真っ赤にして俯いた。
「何度も何度も中に出してさ……♡沢山いじめてくれたよね……♡」
「もう勘弁して下さい……」
「あははっ!ごめんごめん!でも、動画くらいは撮っておくべきだったかもね。あんなに激しくされたら忘れちゃうかもだけど……♡」
「やめて下さい!本当に!」
緑谷は慌てて否定する。そんな事をすれば必然的に彼女の痴態も記録されることになるのだが、とりあえず自分が優位に立てる状況が楽しいのか送崎はケラケラ笑って揶揄ってくる。
「でもさ……、嬉しかったよ。あんなに情熱的に求めてくれるなんて思ってなかったから。」
「信乃さん……」
緑谷は元々赤かった顔をさらに赤くする。送崎はそんな彼の頬に手を当てると優しく微笑んだ。
「これからもよろしくね、出久くん♡」
「はい、こちらこそ!」
二人は見つめ合うと、どちらからともなくキスを交わす。しばらく口付けを続けた後、唇を離して見つめ合うと、どちらからともなく再びキスを始めた。
何度も、何度も。互いの愛を確かめるように熱く甘い口づけを交わし続けた。
未成年とプロヒーロー。その関係は世間的には認められないかもしれない。年の差も10歳以上ある。しかし、そんなことも気にならないほど二人は互いを愛し合っていた。
(ああ……幸せだな……)
緑谷は心の底からそう思った。彼女と過ごす日々は、きっと何物にも代え難いものになるだろう。
二人の関係はまだまだ始まったばかりである。
◆◆◆
行為を終えた後、シャワーを浴びた二人は今日が日曜日だと気づいて慌てて帰宅の準備をする羽目になった。今いるラブホテルから雄英高校の寮までは送崎の車で送ってもらうことにした。
既に日は落ちており街灯と車のライトだけが道路を照らしていた。
送崎は車を運転しながら、緑谷と談笑していた。
「ねぇ、出久君」
「なんでしょう?」
「あのさ……」
送崎は少し言い淀む。
「その、私達の関係のことなんだけど……」
「はい、分かってます。誰にも言いません。」
彼がそう言うと彼女は安心したように息をつく。
「ありがとう……。それで、お願いがあるんだけど……」
「はい、なんでも言ってください。」
緑谷の言葉に送崎は嬉しそうな表情を浮かべる。
「えっと……、その……、私のこと信乃っ呼んでくれないかな?ほら、二人きりの時だけでいいから……。ダメ……?」
「え、ええ!?」
緑谷は驚いたように声を上げる。さん付けでもかなり抵抗があったというのに、いきなり呼び捨てというのはハードルが高すぎる。
「やっぱり嫌……?」
送崎は不安そうに尋ねる。
「いえ!そんなことはないですけど……」
「じゃあ、呼んでみて。」
送崎は期待するような目で彼を見つめた。
緑谷は覚悟を決めると大きく深呼吸をし、意を決して彼女の名を呼んだ。
「……信乃。」
暗い車内でぽつりと呟かれた彼の言葉は静かに、そして確かに彼女の耳に届いた。
「……………………」
長い沈黙が車中に流れる。緑谷は顔を真っ赤にして俯いていた。恥ずかしさで死にそうだ。送崎の方を見てみるが暗くてよく見えない。彼女は一体どんな顔をしているのだろうか。
そう思った時、信号機が赤になり停止線の手前で停車する。すぐそばにあるコンビニからの光で車の中ぎ照らされる。
送崎の顔は林檎のように赤く染まっていた。
「あっ……うぅ……」
送崎は何か言おうとしているようだったが、うまく言葉を紡げずにいた。
「なんで呼ばせた方が恥ずかしがってんですか……?」
半分呆れたように緑谷は言った。
いや、それよりも運転の方が心配だ。自分は無事に雄英に辿り着けるのかと彼は内心ヒヤヒヤしていた。
「ごめん……」
送崎は俯きながら謝った。その顔はまだ赤いままだ。
「……嬉しい。」
彼女は小さな声でそう言う。
「出久君に名前で呼ばれたの初めてだからさ……」
「そういえばそうです…ね…?」
緑谷は記憶を遡ったが、どうにも引っかかる。Puls ultraしてた時に言ったような気がするが彼はすぐに考えるのをやめた。今更思い出してもしょうがないと思ったのだ。送崎は再び黙ってしまったが、しばらくしてからまた口を開いた。
「ねえ、もう一回呼んで。」
「……信乃」
緑谷がその名を呼ぶと、送崎は満足そうに微笑んだ。
「えへへ……♡」
口をだらしなく緩ませて笑う彼女を見て、緑谷は苦笑いするしかなかった。
(可愛い人だなぁ……。)
そんな事を思っていると信号が青に変わる。車を発進させ目的地へと向かう。
「ねぇ、出久君。」
「はい?」
緑谷は彼女の方に視線を向ける。送崎はどこか悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
「私もさ、君のこと出久って呼んでもいいかな?」
「えっ……!」
緑谷は驚いて思わず声を上げた。そんな彼に対して、彼女は楽しげに口角を歪ませる。
「いいよね?」
有無を言わせない圧を感じ、緑谷は高速で首を縦に振った。肉食獣を目の前にした草食動物のような気分だった。
「やったー!これからはそう呼ぶね、出久♡」
「えっ……ちょっ……」
「えへへ、大好きだよ。出久。」
送崎は嬉しそうな笑顔を見せる。その顔を見ただけで緑谷は胸が高鳴ってしまう。
(ずるいなぁ……。)
そんな事を思いながらも、自分の頬も自然と緩んでいることに気がつく。結局のところ、自分も彼女に惚れ込んでいるということだ。
「僕もですよ。」
緑谷は短くそう言うと、窓の外を眺めた。街灯と車のライトが照らす道を、車は静かに走り抜けていった。
しばらく車を走らせていると、雄英高校の校門が見えてきた。「そろそろ着きますね。」
「うん……。」
送崎は少し寂しそうな表情を浮かべる。緑谷はその表情を見ると、なんだか落ち着かない気持ちになった。
路肩に停車させると送崎が口を開いた。
「今日はありがとね。すごく……楽しかった。」
「こちらこそありがとうございます!夢みたいな時間でした。」
緑谷の言葉を聞いて送崎は小さく笑う。
「それじゃあ、また週末ね。」
「はい!帰り道気をつけてください。」
緑谷は助手席のドアを開け外に出ようとする。
「出久」
「はい?」
名前を呼ばれて振り返ると、送崎が彼の唇を奪った。柔らかい感触が伝わる。
ぢゅるるっ♡♡ちゅぱっ♡
送崎はすぐに舌を入れてきて、激しく絡ませた。唾液が混ざり合う音が車内に響く。
「んむぅ……!?」
突然の出来事に緑谷は驚くが、すぐに応じるように舌を絡めた。互いの吐息が漏れる。二人の体温が上昇を始めた頃、ようやく唇が離れた。
「……ぷはっ♡」
送崎は艶めいた声を上げる。そして、ゆっくりと緑谷から離れると、妖艶な笑みを浮かべながら言った。
「また今度ね…♡」
そういうと彼女は車を発進させた。車が遠ざかっていく音を聞きながら、緑谷は静かにそれを眺めた。
自室へ戻った緑谷はぼんやりと彼女の事を思い出していた。ベッドで乱れる彼女の姿、声、匂い、全てが鮮明に蘇る。
(信乃……)
ふと、彼女の名を口に出してみる。しかし、誰も返事をすることはない。その事に緑谷は妙な物足りなさを感じた。名前を呼ばれた時の彼女の反応を思い出す。顔を真っ赤にして照れる姿が可愛かった。
(そういえばすごい甘えてきたな。ちょっと意外かな……なんというか……。でも、ああいう一面もあるんだなぁ。)
チームの司令塔として、凛々しい姿を見せる彼女しか知らなかったので新鮮だった。両親を失った洸汰の面倒を見て、常に悩んでいた反動だったのか。大人としての余裕に溢れた彼女が年下の自分に思いっきり甘えて来る。そのギャップがたまらなく
愛おしいと思った。
自分が彼女の支えになれればいいな、と緑谷は考えながら眠りについた。
◆◆◆
送崎は自宅へつくとすぐにシャワーを浴びた。熱い湯を浴びて汗を流すと、全身の力が抜けるような感覚を覚えた。
「はぁ……。」
彼女は浴室から出てバスタオルを手に取ると体を拭き始める。すると、ある部分が目に入った。彼女の白い肌にはいくつかの赤い跡がついていた。それは、緑谷との情事の際につけられたものだ。
(キスマーク……つけすぎじゃない?)
彼女は苦笑いしながら、鏡の前で自分の身体を見つめる。首筋や鎖骨、胸元、腹部、太ももなど、あらゆる場所につけられている。
「こんなに……たくさん……。」
彼女は緑谷に抱きしめられた時のことを思い出した。優しく、それでいて力強く自分を包み込んでくれたあの温もり。彼は何度も自分を求めてくれた。
「出久……」
緑谷の名前を呟く。先ほどまでの行為が脳裏によぎった。
『信乃……』
「あっ……♡♡」
緑谷の声が頭の中で再生される。彼の優しい声、力強い腕、激しい鼓動、その全てを鮮明に覚えていた。
彼に会いたい。その想いが強くなっていく。もっと触れ合いたい。もっともっと、深く交わりたい。
(会いたい……。)
送崎は強くそう思った。
(私って……結構重い女なのかも……。)
そんな事を考えながらも、緑谷への想いはさらに高まっていく。
「はやく週末にならないかな……。」
思わず口から言葉が漏れた。アラサーにもなって、高校生のような恋をしていることに、送崎は自分で呆れてしまう。それでも、この気持ちを抑えることはできない。それほどまでに、緑谷という存在が大きくなっていた。
「おかえり、信乃。」
2階からピクシーボブこと土川流子が降りてきて声を駆けてきた。
「ただいまー。ごめんね。洸汰の面倒見てくれてありがと。」
「ううん、全然大丈夫だよ!洸汰も楽しそうだったし!」
「そっか、なら良かった。洸汰はもう寝た?」
「うん、ぐっすり。」
今は夜の10時を過ぎようとしていた。5歳の子供ならとっくに眠っている時間だ。
ピクシーボブには昔の友人と会ってくると嘘をついていたので、申し訳ない気持ちになる。
送崎は寝巻きに着替えると、軽く雑談した後、寝室へと向かった。電気を消し、ベッドに横になるとスマホを取り出して緑谷の連絡先にメッセージを送る。
【今日はありがとう!また週末ね】
短い文章だが、これでいいだろう。送信ボタンを押して、送崎は目を閉じた。
(今度は家に誘ってみようかな……。洸汰も出久に会いたがってるし丁度いいかもね。)
送崎はそんなことを考えながら眠りについた。
「なぁ緑谷!聞いてくれよ!」
「どうしたの峰田君?」
一年A組の教室では緑谷、飯田、轟の三人が会話をしていた。そこに峰田が割り込む形で話し始める。
「昨日さ、オイラと上鳴でカラオケ行ったんだけどよぉ。帰り道でカップルがキスしてたんだぜ!?しかもすっげえ音立てながら!オイラへの当てつけか!?」
「ほぅ、公共の場でそういう事をするのは良くないな。」
「そうか?俺は別に気にしないけどな。」
「お前はそうかもしれねえけどなぁ……。」
峰田が轟に対してそう言うと、隣にいた緑谷の方を見た。
「緑谷も思うよな!?」
「え!?」
突然話を振られ驚く緑谷だったが、少し考えてから言った。
「い、いやぁ……僕はあんまりわからないかな…」
内心焦りながら答える。あの時、背後に気配を感じていたが、あれがクラスメイトだとは思わなかったのだ。顔を見られなかっただけまだマシかと思った。
「なんだぁ〜。つまんねぇなぁ。」
「む、緑谷君は恋愛に興味がないのか?」
「興味はあると思うけど……。そ、そういえば今朝オールマイトが…」
このままではまずいと思ったのか、緑谷は必死で話題を逸らす。
あまり外ではイチャつかないようにしよう、と心に決めた緑谷であった。