未題 - 巫女トノ猥談ヨリ着想 ソノ後 作:荒木田久仁緒
そっと湯飲みを手で持ち、口へと運ぶ。
中に入っているお茶は、私が普段飲んでるのよりは、少し上等なやつのはず。鼻腔を満たすその香りにホウと嘆息し、いくぶん幸せな気分で湯飲みを置く……のが、本来あるべき姿なのだろう。
だけど正直、今の私には味も香りもさっぱり分からなくて、その液体が滑り落ちていった喉から引っかかるような吐息を搾り出した胸の真ん中では、心臓がどきどきと大きな音を立てていた。
私が座っている椅子の前、少しだけ離れたところにある、もう一つの椅子。
そこに腰掛けた一人の男性が、静かに本を読んでいる。
霖之助さん。
この雑貨屋……古物屋? それとも骨董屋? なんて呼んだらいいかよく分からないけど、とにかくこの変な店──香霖堂の主。
魔理沙のお父さんの弟子であり、私と魔理沙の兄貴分であり、そして私の……好きな人。
いつもいいかげんに乾かした、ボサッとした銀髪。ちょっとくたびれた感じのメガネ。何を考えているのかよくわからない、時々ひどく悪い顔になる目元……だけど、その造形は結構イイ、と思う。見慣れちゃってるからそんな感想になるだけで、本当は美形と言っていいのかもしれない。聞きなれた良く通る声も。長身でスラッとしたスタイルも……。
その特別な目が向く興味の先は主に、あちこちから拾ってきて溜めこんだ、得体の知れない道具たち。それと本。
人間に対しては……私や魔理沙を含めた身近な女の子たちにも、それほど関心がないように思う。半妖だから……というのは、たぶん関係ない。菫子に言わせると、文字通りの物好き、オタク、とかいうものになるらしい。それでも彼女や私たちとは、それなりに親しくお喋りをする仲だし、咲夜みたいなお客さんと呼べる相手には、けっこう愛想よくもする。だから、人嫌いというわけではないはずだ。
だけどやっぱり、私や魔理沙が色々と宴会やら行事やらに誘ったりしてみても、この人はさっぱりなびこうとしない。置物と呼ぶのがふさわしいような、使い道のない道具に埋め尽くされたこの香霖堂で、ただただ本を読んでいる。もちろん椅子に根を張ってるなんてことはなくて、道具を探しに無縁塚まで出かけていったりもしているけれど、とにかく、誰かに付き合ってどこかに行ったり何かをしたりするということがない。
そんな彼の態度に、少しイライラするようになったのは、いつからだろう。
はっきりとはわからない。自分がイラついてるのを自覚したのは、そのイライラのせいで少し強引にアレコレ誘ってみることを、大分くりかえしてみた後のことだ。そうして、なぜそれがそんなに不満なのかを自問して……そこからもう一つの自覚に辿りついたのは、割と早かったと思う。もっとも、それを内心だけでもはっきり認められるようになるには、もう少しばかりかかったけれど。
おかしな話をするお兄さん。魔理沙が特に懐いてる変わり者。ちょっと店に上がりこませてくれたり、ちょっと服とか仕立ててくれたり、ちょっとお茶やお菓子や、時には外來の珍しい飲み物とかをご馳走してくれる……あるいは勝手に頂いてもそんなに怒らない人。そして博麗の巫女としての仕事の上では、ちょっと注意が必要な監視対象の一人。ただそれだけのはずだったのに。
……改めて並べ立ててみると、ただの、という関係ではない気もする。だけどそれらのどれもが、私が霖之助さんにその感情を抱くに至った理由とするには今ひとつ納得できないもので、だけどじゃあどうして私はこの人を……なんて何度思ったかわからないけれど、結局いまだにその答えは出ていない。ただ、いつの間にかそうなってしまっていた、という確固たる現実があるだけだ。
それで、ともかくもその心を自覚して以降は、私はあまり彼を誘わなくなった。そうすることを、なんとなく気恥ずかしく感じるようになってしまったから。代わりに、ただ用もなく香霖堂を訪れて、のんびりお茶を飲みながら、ときどき意味があるようなないような会話をしたり、本を読んでいる彼の横顔を眺めているだけ、ということが増えた。……そう、今日のように。
だけど……今日の私は、今までそうしてきたときの私とは、決定的に違う点があった。
すぐそこにいる彼に気付かれないよう、ほんの少しだけお尻を動かす。
そのごく小さな動きが、やっぱり小さくアレを動かして、そこからじんわりと温かい快感が、腰全体に、身体全体に広がっていく。
そう、よりにもよって、こんな場所で……好きな人の目の前で、私はその変態的な遊びをしているのだった。
そんなこと、絶対やっちゃダメ。
何度そう思って、踏みとどまってきただろう。
でも、何度も踏みとどまったということは、つまり何度もそれを実行したくなったということで。
きっと他のどんな場所でソレをするより、ドキドキするに違いないという予感、いやたぶん確信が、ずっと私を誘惑し続けていたわけで……結局こうしてその誘惑に抗えなくなってしまう日が来るのは、時間の問題だったのだろう。
ほんのちょっとだけだから。魔理沙とか菫子とか、お喋りが始まりそうな相手が来たら帰るから……そんな勝手な決め事をした日に限って、そのどちらも、それ以外の客もぜんぜん来なくて、それで私はもうだいぶ長いこと、この椅子の上にお尻を据え付けたままでいた。
また、お尻を動かす。
また熱が、そこを中心に波紋のように広がる。
身体を走る温かい波……でも、それは本当はもっともっと熱い波で、それを温かいと感じるのは、多分ただの錯覚だった。
その熱で波立っている身体自体が、とても熱くなってしまっているせいだ。
「んっ……」
我慢してるのに、喉が鳴る。
ギリギリ声にはなってないはず……だけど。
身体と頭が、とろけるように熱かった。
お腹の奥、アレの先端があるあたりから、どくどくと温泉のような熱い何かが身体の中に湧き出していて、私はそれに脳天まで浸けられたまま、潤んだ視界の向こうに霖之助さんの横顔を見ていた。
いったい何度、ソレが本物の、霖之助さんのアレだという妄想を、このドロドロの頭の中に浮かばせただろう。
そのたびに私の全身は、どんどんピンク色に塗りつぶされていき、その温度は上がる一方で、ついには沸騰寸前にまでなり、そうしてずっと高止まりしている。
いつもより念入りに布で覆ったアソコの中は、触ってみたわけではないけれど多分、もうお漏らしでもしたみたいな感じになっていて、きっとほんの少しスカートの上からそこを押さえただけで、そのままイッてしまうだろうと思えた。
そう……ただ、イッてはいないだけ。私の身体は、そんな状態だった。
気持ちいい。
こんないけないことをしているのに、気持ちいい。
じっと座って、ちょっとお尻を動かしているだけなのに……こんなにも気持ちいい。
好きな人のすぐそばで、こっそりいやらしいことをして、いやらしい妄想でその人を汚している、どうしようもなくヘンタイな女の子。それが今の私だった。
それがバレたら、誰からも、その好きな人からも軽蔑の目で見られて、笑われて、きっと二度とまともに口を利いてもらえない……そんなことを、ダメだとわかっているのにやってしまう、罪深い自分。どうにも救いがたい、きっと地獄行きに違いないそんな私という存在が、だというのに私自身をひどく発情させていた。
ああ……ヘンタイになるって、どうしてこんなに気持ちいいんだろう?
どうして私、こんなヘンタイになっちゃったんだろう?
こんな異常な世界に足を突っこんだりしなければ……まだ、ちょっとエッチな女の子、で済んでいたはずなのに。
あの河童のせい? 魔理沙のせい? 借りたエッチな本のせい? それともあの時の夢のせい?
……わかってる。それらは全部、ただの道標に過ぎない。すべては、それに従って足を踏み進めていった自分自身のせいなんだ。
私が、正しくて綺麗なことよりも、恥ずかしくて気持ちいいことが好きな、ダメな女の子だったせい……。
気持ちいい……。
私はどうしても、この気持ちよさに、逆らえない。
そして、もうこんなにも気持ちいいのに……これ以上さらに、もっともっと気持ちよくなりたいって、思ってる。
……イきたい。
身体が熱くて、気持ちよすぎて、苦しいくらい。
もう、イッてしまいたい。
やろうと思えば簡単なこと。ただ、ほんのちょっと手を動かすだけで、今すぐに……。
でも、ダメだ。
そんなこと……こんな場所でそれは、流石に、絶対ダメ……でも、イきたい……。
イきたい……霖之助さんの前なのに……絶対バレちゃいけないのに……。
イッてみたい……霖之助さんの目の前で、イッたら……絶対、すごく、気持ちいい……。でも、そんなの……。
……もう、帰ろう……。
そろそろ神社に帰って、そこで思い切り……ううん、今ここでトイレを借りてちょっとだけ……そう、ちょっとだけ……だから、もうちょっとだけ……。
「霊夢」
「……えっ?」
気がついたら、霖之助さんが、少し首を傾げて私を見ていた。
「どうかしたのかい?」
「えっ……別に、何も、ないけど……」
少しもつれた言葉が、それでもなんとか口から出た。
「そうかい? ならいいんだが……」
ぱたりと手に持っていた本を閉じて傍らに置き、改めて私の顔を見直す。
「どうもいつもと比べて、妙に静かな気がしてね。普段はもう少し頻繁に話しかけてきて、読書の邪魔をしてくれるのに」
「そ、そうかな……」
「それに、心なしか顔が赤くて」
……まずい。
流石に、そう思った。
熱く火照った背中に、冷たい何かが流れ落ちる。
「なんとも腰の座りが悪いというか。落ち着きがない感じがするんだが」
まずい。まずい。まずい。
ダメだ。これ以上はダメ。
今すぐ、逃げなきゃ。
どんなメチャクチャな口実でもいいから、いや口実なんてなくても、とにかく今すぐ帰るって言って、席を立って、ここから────
「……もしかすると」
そう言って、霖之助さんが立ち上がりかけた、その時。
足に、力が入ってしまった。
私も立ち上がって、そして逃げようとして……だったのかは、よくわからない。
とにかく、反射的に力の入ってしまった太股が……分厚く重ねた布を挟みつけ、その布が私のあそこを、強く圧迫していた。
あっ……と思った時には、遅かった。
熱い何かが、足の間に現れて、そこからどんどん広がっていく。
駄目だ。
止めなきゃ。止まって。
足から、力を抜かなきゃ。抜いて、我慢して、やり過ごして、なんとか……。
無理。足が、動かない。ぎゅっと合わさったまま、硬直している。ダメだ。止められない。止まらない。そんな。だめ、ダメ、ダメダメダメ絶対そんなの────!!
「……っっっ!!」
……あ……。
……おしり、が……。
びくびく、して……ぎゅーって……しめつけて……。
あそこが……ぶわーって、あつくて……なにか、出ちゃってる……気が、する……。
イッ……ちゃっ……た……。
霖之助さんが、見てる、目の前で……私……。
そして……
「……やっぱりね」
そんな声が、聞こえた。
バレた。
知られて、しまった。
私が、こんないやらしいことをしている、変態だって……。
……嫌われちゃう……よね……。
そんな、泣きたくなるような後悔と、イッたあとの熱い余韻の中でぐちゃぐちゃになった私の頭は、それ以上なにも考えることができず、座ったまま腕をだらんと垂らし、乱れた呼吸に体を揺らしていた。
そして、霖之助さんが椅子から立ち上がり、どこかへ歩いていって、その先から何かごそごそと音がしたあと、また戻ってきて目の前にしゃがみこみ、私の肩に手を置いて、霊夢、と声をかけるのを、ただぼんやりと聞いていた。
だけど。
「持ち上げるよ」
その言葉の直後、ふわりと体が浮いて視界が回転し、仰向けにされた視線の先に霖之助さんの顔があって。
えっ? と思った一瞬後、それがいわゆるお姫様だっこの体勢だと気付き、今度は頭が真っ白になったけれど、やっぱり何も考えられずに硬直した私は、抱きかかえられたまま店の奥へと運ばれていく。
短い廊下の先、開けてある扉をくぐった向こうの、その部屋には。
床に、布団が敷かれていた。
布団。
一つ屋根の下で。
若い男女が、一人ずつだけで。
そして、布団。
それは、つまり。
そうだ。絶対そうだ。霖之助さん、今から、私をこの布団の上で。
ああ、そんな。どうして、どうしてこんなことに────
……いや、どうしてってそんなの……。
自業自得じゃないの。
女の子が男の人の前でこんなこと、こんないやらしいことをして、そんなの襲ってくれって言ってるようなもので、霖之助さんだって男だから、目の前でそんなことをされたら、そんな気分になるのは当然で、そしたらその情欲が私に向かうのも当然で、だから今から、今から私は霖之助さんに、私のぜんぶを、ああ、でもしょうがない、しょうがないよね、受け入れなきゃ、だって私が悪いんだから────
そう覚悟を決めた私を、霖之助さんは、そっと布団の上に降ろして。
そして、優しく掛け布団をかぶせて。
「具合が悪い時は、無理しちゃいけない。少し休んでいたまえ」
そう言って、ちょっと頭を撫でてから、出て行った。
……。
うん。
わかってた。
霖之助さんが、そんなことを考えるはずがないって。
見知った女の子が、そんなヘンタイ行為を、よもや自分の目の前でしているとか……そんないかがわしいこと、想像さえしない。だから、気づくわけもないって。
もし……もしも仮に、それに気づいてたとしても。
だからってそんな、女の子の弱みにつけこんで、その身体を好き勝手にするなんて……絶対、しない。
……しない、よね?
でも……私は、霖之助さんになら、されてもいいかなって、思ったりしないでもない、けど……。
……とにかく、そんなことはなかったわけで。
だから……そう、これはただの妄想。
起こるはずのない、私の勝手な妄想だから……。
そんな都合のいい世界でなら、霖之助さんは────
────まさか霊夢が、こんなに淫らな娘だったとはね。
……そう言って悪い顔で笑った霖之助さんは、私の上に覆いかぶさってきて……そのまま服を脱がせて、私のぜんぶを……恥ずかしいところも、隅々まで、その目で見るんだ……。
────いや……見ないで……。違うの、そんなんじゃ……。
────何が違うんだい? ここをこんなにぐしょぐしょにして……こんなものまで入れているのに。
霖之助さんの匂いがする布団の中で、手を下へと伸ばし、スカートの上から股間に触れる。
ぐちゅ、と音がしそうな、湿った感触。流石に外まで染み出してはいないけど。腰全体に、またぞわぞわと熱が広がる。
指を、更にその下へ……お尻の間に差しこみ、布越しにアレを軽くつつく。
めりこみ、揺れたアレの先端が、私の中をかき混ぜて、お腹の奥が熱くなる。
────本当は、ずっと我慢していたんだ。君を抱くのを……。
────霖之助さん……。
────まだまだ子供だと思っていたからね。でも、こんな姿を見てしまったら……もう我慢できない。
……霖之助さんは、体が大きいから、たぶんアレも、とても大きくて……きっとこのオモチャよりもずっと……ああ、そんなの、入るかな……でも霖之助さんのなら、どれだけ大きくても、痛くても、私は……。
指先で、何度もアソコを押さえる。
お尻を動かし、アレを動かして、何度も何度も締めつける。
私の中に、霖之助さんが入っているのを想像する。
私は今、霖之助さんと繋がって、セックスしてる……。
ぐちゅぐちゅ、ぷちゅぷちゅ。
ぐねぐね、ずぷずぷ。
腰から下がぐちゃぐちゃに、どろどろに融けていく。融けて、崩れて、霖之助さんと混ざってしまう。
気持ちいい。きもちいい。キモチイイ。
アソコが、お尻が、じんじん熱い。またイきそう。もうイきそう。
私、いま、こんなに気持ちよくなっちゃってる。
……そう、霖之助さんと一緒に……気持ちよくなってる。
────ああ、気持ちいいよ、霊夢……。
私の中に、霖之助さんのアレが、何度も出し入れされて、私のナカで、霖之助さんが気持ちよくなる、そうしたら、その先には……。
────霖之助さんっ……! わたし、もうっ……! お願い、来てぇっ……!
────いいよ、イッてごらん。君がイくところを、また見たい……。僕も、出すよっ……霊夢っ……!
そう、そして、霖之助さんは、私をぎゅーっと抱きしめて、私のいちばん深いところまで、アレを、おちんちんを、押しこんで、そこから、どくどくって、精液を、霖之助さんの精液、赤ちゃんのもとを、私の大切な部屋、赤ちゃんの部屋に、いっぱい、いっぱい流しこんで、そしたら、そしたら私は、私のお腹の中に、霖之助さんとの、あ、あ、イく、イく、イくイくイくっ……!!
「~~~~っ……!!」
布団を持ち上げて、腰が跳ねる。
ぎゅーっと押さえた布の下のアソコが、お尻の穴が、びくびく痙攣してる。
イく……イッてる……まだイッてる……。
アソコの奥が熱くて、きもちい……あたまの中まで、ふわふわで……とけちゃいそう……。
ややあって、長い絶頂がようやく終わり、布団の重さに潰されるみたいに熱い息を吐きながら、その温もりの中で私は脱力した。
ああ……気持ちいい……あったかい。
霖之助さん。霖之助さん、霖之助さん……大好き……。
いつかきっと、本当に……そして……。
────愛してるよ、霊夢。
────私も……。
そんな幸せな妄想の中で、そっと優しい口付けを受け取って、霖之助さんの腕に包まれたまま……私の意識はゆっくりと、闇の底へ沈んでいった。
◆ ◆ ◆
────暗い。
真っ暗だ。
真っ暗な、天井が見える。
私は布団の中から、天井を見上げている。
……夜?
ここ、どこ?
ええと……。
ああ、そうか……ここは、香霖堂の……。私、霖之助さんの布団で寝てたんだっけ……。
……もう帰らなきゃ。でもなんか、体が重くて……布団から、出たくないなあ……。
……どこかから、声がする。
近くて、遠い……壁の向こう、部屋の外から。
霖之助さんと……誰かの声。高い、女の子の声。
起き上がり、部屋を出る。廊下の向こうに、細い光が見える。
居間へ続く戸がわずかに開いて、そこから光と、声が漏れている。
この声は……魔理沙だ。
魔理沙と霖之助さんが、何か話を……。
いや。
魔理沙の声が、おかしい。
叫んで……ううん、泣いてる?
それをなだめているような、霖之助さんの声。
何か嫌なことがあって、慰めてもらってるのかな……でも魔理沙って、そんなことする性格だっけ……?
私は戸に近づき、隙間から光の中を────
「あ、あっ、こーりん、こーりんっ……!」
「気持ちいいかい? 魔理沙。もっとしてあげる」
────魔理沙が。
椅子の上で、霖之助さんの腰の上に、魔理沙がまたがって。
霖之助さんのアレが、魔理沙に入って。
その手が、魔理沙の腰を掴んで、激しく上下させて。
魔理沙と、霖之助さんが、セックス、していた。
そんな。
どうして。何故? 霖之助さんと、魔理沙が?
魔理沙が、あんな顔をして。自分から腰を振って、霖之助さんに抱きついて。
霖之助さんが、魔理沙を抱きしめて、魔理沙の名を呼んで、何度もキスをして。
霖之助さんの、アレが、あんなに、深く、長く、何度も、ずぶずぶって、魔理沙の、身体の奥まで。
バカな。こんなバカなこと。
いつから? ひと月? 一年? もっともっとずっと前から? 私の知らないうちに?
嘘だ。ありえない。こんなのありえない。
こんなこと、絶対に、認められない────
「魔理沙……そろそろ、出すよ」
「うんっ……出してっ……こーりんの、ぜんぶ、私にっ……」
出す?
出すっ、て。
精、液。
霖之助さんの。精液を。魔理沙の、中に。
霖之助さんが、魔理沙に、精液を、アレから、出して、魔理沙に霖之助さんが精液を注いで魔理沙が霖之助さんの
「駄目っ!!!!」
私は力いっぱい、戸を開け放ち────
────天井が、見える。
薄明るい天井。夕方の、赤っぽい部屋。
体が、何かに包まれている。
私は……布団の中にいる。
何かを激しく鳴らす音が、体の中で響いている。
私の、心臓の音。
……ゆ、め。
夢、か。
夢かぁ……。
ああ……夢。夢。夢だ。夢だった。よかった、夢で、よかったぁ……。
「霊夢? 大丈夫かい?」
「ひゃあっ!?」
部屋の戸を開けて顔を出した霖之助さんに、思わず悲鳴を上げてしまう。
「落ち着いて寝ていたと思ったけど、やっぱり医者を呼んできたほうがいいかな」
「ちっ、違うの、ちょっと、夢、そう、怖い夢を見て、それで……」
「ああ……そうか」
納得したように言って、枕元に屈みこむと、その大きな手を私の額にそっと当てた。
「……熱はないみたいだね。でも、もう少し休んでいたほうがいい。
なにか、欲しいものはあるかい?」
「あ、うん……ええと、喉、渇いたから……お水か何か……」
わかった、と言って霖之助さんは部屋を出て行き、しばらくしてコップを手に戻ってきた。
……ほのかに甘い匂いと、レモンの香り。ご丁寧に、虹みたいな色の管──ストロー、だったかな。そんなものまでつけて。いつもは透明な袋に仕舞ってあって、滅多に使わないやつを。
「なにか用があったら、遠慮せず呼んで。
なんだったら、泊まっていってもいいからね」
「うん……」
ああ……優しいなあ。
霖之助さんは、本当に優しい。
……それは、私だけに向けられる優しさだろうか。
そっと閉じられた戸の向こうに意識を向けながら、思う。
誰にでも……ってことはないと思う。
けど、何人かの親しい子たちになら……そう、特に────
「はぁ……」
ううん、大丈夫。
あれは夢。ただの悪い夢だ。
無理やり考えを中断し、体を少し起こしてストローを咥え、コップの中身をすすった。
おいしい。
思ったよりずいぶん乾いていた喉に、甘みと酸味が染み渡るよう。
ほう、と息を吐いて、また布団に頭を転がす。
手足と、まぶたが重い。体を包む、起き抜けの気だるさ。
本当に一晩、泊まっていこうかな……。
ちらりとそう思ったけど、それは無理な話だと、すぐに気づく。
だって、私のお尻には、相変わらず誰にも見せられないオモチャが挟まったままで。
「……あう」
それを意識したとたん、その暴力的な存在感が、またしても私の体を翻弄しはじめたのだから。