未題 - 巫女トノ猥談ヨリ着想 ソノ後 作:荒木田久仁緒
寝たら気分が良くなったから、大丈夫。
心配して引き止める霖之助さんを、そう言い張って振り切って、私は香霖堂を飛び出し、神社へ向かって飛んでいた。
歩いて帰るのは到底ムリだったし、できたとしても時間がかかりすぎるから。
だけど空中に浮いていても、やっぱりお尻に居座っている圧迫感は、とても重くて大きくて、どうしてもそこへと意識を引っ張られてしまう。うーうー唸りつつ飛行に集中し、できる限り速度を上げる。どうか知り合いやら記者やらに声をかけられたりしませんように、と祈りながら。
まだ、着かない……神社が、遠い。こんなに遠かったっけ……?
吹く風にゆらゆら揺らされ、あっちこっちへフラフラしながら、夕焼け空の中を飛び続ける。
魔理沙みたいなスピードで飛べたらな……と、普段からときどき思っていることを、今日は特に強く思って、それでも必死に飛んでいるうちに、なんとか日が沈みきるより早く、私は神社へと帰りついていた。
そっと着地し、乱暴に靴を蹴り飛ばして、壁に寄りかかるようにしながら風呂場へ向かう。
歩きなれた廊下が長い。あと少し。もうちょっと。
「あう……。はぁ、はぁ……」
悶える体をなだめつつ、服やら何やらを引っぺがすように脱ぎ捨て、洗濯籠へ入れることすらせず放り散らかしたまま、風呂場の中に転げこんだ。
「はー……あっ、ふぅ……」
ぺたんと腰を下ろすと、挿さったままのアレが床板に当たって、またも私の身をよじらせた。
……しょうこりもなくイケナイ衝動が頭をもたげるけど、流石にガマン。温泉の引き込み口を開き、浴槽にお湯を溜めながら、手桶ですくって体に、そしてお尻にかける。
孔のまわりに、じわっと熱がしみる感じがした。
「ふぁあ……」
その場所へ、少しだけ体内から突き出たアレへ、手を伸ばす。四つん這いに近い格好でお尻を突き出し、後ろ手にソレを掴んで、ゆっくりと引っ張った。
「んっ……あっ、んぅっ……」
……ちょっと、入れてる時間が長すぎただろうか。すんなり出てこない。なんか、粘膜が貼り付いて、引きずられてるみたいな……お尻がめくれて、裏返りそう……。
「はぁ……ん、あ、あっ……」
何度かお湯をかけて濡らしながら、ねじるようにして孔を湿らせ、少しずつソレを引き出す。ややあってようやく、ぬぽん、と全体が抜け、風呂場の床に転がる音がした。
「はふぅ……」
抜いてもまだ、そこを中心にお尻がじくじく熱くて、しばらくのあいだ身動きできなかった。少し呼吸を落ち着けてから、お湯で体をざっと流す。ドロッドロのベットベトだったアソコも、お尻も。……洗う指先が変に沈んで、なんだかそこに深い裂け目ができているような気がした。
やっと気だるい体を持ち上げたときには、窓から見える空はすっかり群青になっていて、風呂場の中は真っ暗だった。明かりをつけ、もうだいぶ溜まっていた湯船に身を沈める。全身がふわぁとあったまった。ようやく人心地ついた気分。
「はーぁ……」
なんていうか……本当にいろいろ、ヤバかった。
怖かった……。怖くて、恥ずかしくて、ドキドキして、気持ちよかったけど……ヤバすぎた。
やっぱり駄目だ、こんなこと。
霖之助さんの前であんなこと、しちゃいけない。いつか本当にバレて、嫌われちゃう……。
……いやいや、そうじゃないでしょ。あの人の前以外でも、どこでもダメだってば。
うっかり新聞に載るとか絶対ダメ。今日でやめよう。やっぱりエッチなことは、一人でこっそり隠れてやらなきゃ。
ごつん、と額に拳をぶつけて、その約束を頭に打ちこむ。そうしてまた溜息をついた後で、ふと違和感に気付く。
身体が、妙に温かい。
お風呂に入ってるんだから、温かいのは当たり前……だけど……。
何か違う。ええと、身体の外側じゃなくて、内側がなんか……。腰の……お尻の内側が……。
「……はぁう!?」
お、お尻の中に、お湯が入ってきてる!?
慌てて触って確かめると、ひどく柔らかく緩んだ穴の中に、指があっさり滑りこんでしまった。締めつけてすらいない。空洞の中で、指先が泳いで、中のお湯がゆらゆら揺れてる。
うわわわわ。これはまずい。ぐっと力を入れてみても、あんまり閉じないし。
まいったなあ。やっぱりちょっと長く入れすぎてたせい?
そのうち、閉じるよね……?
……もし、このまま閉じなくなったら、どうしよう。
ふと頭をよぎったその考えに、風呂が氷水になったみたいな悪寒が走る。
嫌だ。そんなの、困る。困るなんてもんじゃない、最悪だ。
そんなことになったら、外も歩けない。霖之助さんにも、誰にも会えない。そうなった理由すら、誰にも言えない……!
どうしよう、どうしよう、一体どうしたらいいの!?
……お……落ち着け。落ち着いて。これは、そう、まだアレを抜いたばかりだからだ、きっと。
しばらく触らず、そっとしておけば、だんだんすぼまってくる。そのはずだ。
今までだって、時間が経てば元に戻った。これもそのうち、ちゃんと閉じる。大丈夫。大丈夫だ。そう信じよう。そうでないと、怖すぎる。
もし仮に、そんな事態になったとしても……恥を忍んであの薬師を頼れば、たぶん何とかしてくれる。想像しただけで死ぬほど恥ずかしい上に、大きな弱みを握られることになるけど。でも、お尻が開きっぱなしの人生よりは、遥かにマシだもの。
ああ、もう、本当にダメ。お尻で遊ぶのも控えなきゃ。
少なくとも当面、しばらくの間は。お尻がちゃんと元に戻るまでは……。
改めてごんごんと額を殴りつけて、湯船を出る。
……お尻から、入っていたお湯が流れ出してるのがわかる。うう……どうしよう。本当に大丈夫かなぁ……。
そこの状態がどうにも心配になって、私は風呂場の床に座りこみ、頭と背中を壁にもたせて、お尻を前に突き出した。
大きく足を開いたその向こうに、そっと指を伸ばす。
おそるおそる、手探りで触ったその場所は、相変わらず柔らかく拡がったままで、押し当てた指がするりと二本、三本……よ、四本も……。
「あうぅ……」
やっぱり、ダメになっちゃったのかも……私のお尻の穴……。
自分の愚かさに、涙が出そう。
……そう、そんなどうしようもない後悔に、泣きそうになってるのに。
くちゅくちゅ、とその孔から、音がした。
「……んっ……」
ぱっくり開いて、ユルユルになった私の孔が……だけど同時に、とってもふわふわと温かくて、敏感になっていて、それがとろけるほど気持ちよくて……つい私は、そこを指先でいじってしまっていた。
馬鹿。馬鹿。ほんと、救いようのない淫乱。
頭のどこかで、どうせダメになったんなら同じだよね、なんて考えてる馬鹿。
むしろ……ダメになっちゃったことに、興奮してるのかもしれない……変態。
でも……。
……ちょっとだけ……ちょっとだけだから……。
お風呂から出るまで……ちょっとだけ。出たらもう、絶対いじらないから……。
拡がったいりぐちを、指で更に押し広げるように
重ねて突っこんだ指の隙間から出る水音が、どんどん大きく、粘ついてくる。
「あぁ……ん……。きもち、い……よぉ……」
でも、もっと欲しい。
もっと奥まで……欲しい。
そう思った一秒後にはもう、床に転がしたままだったアレに手を伸ばしていた。
押し当てる、という感覚すらほとんどなく、ぬるんとそれがお尻に呑みこまれる。
「ああ……」
すごい……こんな、簡単に……入っちゃった……。
お腹の奥まで、あっつくて……じーんと重い……。
また……入れちゃった。こんなの、もうやめようって、思ったばかりなのに……。
せめて……入れるだけ。そう、動かすのはやめよう。刺激するのは、こっちだけで……。
奥まで差しこんだまま、アレから手を離す。そして、その棒でいっぱいに広げられ、ねっとり
「……ん?」
下腹部を撫で下ろした指先に、ちらりと何かが触れた。
なんだこれ?
何か、生えてる。
「っ!」
慌てて顔を下げ、体を曲げて、そこを見下ろす。
薄明かりの中、目をこらした先に、何かの影。
割れ目の、少し上のあたり。薄茶色の、細い細いものが、何本か。
これ、って。
どきどきどきどき。
心臓が高鳴る。
そっと、その一本を、指でつまんでみる。
ゆっくりと、慎重に、やさしく手を持ち上げると。
肌が引っ張られる、かすかな感触がした。
「……毛、だ」
生えた。
ついに私にも、毛が生えたのだ。
まだ、ちょろっと、ほんの少しだけど。でも、生えてる。……やったあ。
私は……私のカラダは、着実に、オトナに近づいてる。
そうだ、これからも、もっともっと……背だって伸びて、いろいろ膨らんで、女らしく魅力的になって。霖之助さんに似合う相手になって……一緒に歩いて、一緒に過ごして、一緒に暮らして……そして、一緒に、いっぱい、そういうことをして……そしたら……。
毛の生えたところの、少し上を撫でる。
想像する。そこが大きくなって、その中に何かが宿っていることを……いつか、きっと。ううん、絶対────
ついさっきまで、お尻の惨状に嘆いていたことなどすっかり忘れ、そんなちょっと人には言えない空想に胸をときめかせながら────同時に私は、別な意味でとても人には言えない妄想を、頭の中に巡らせていた。
────その間は、確か……できないんだよね。
そんな話を、どこかで聞いたような気がする。
霖之助さんが、求めてきても……そう、前では、できないから……だから────
入れっぱなしだったアレを、また手で掴む。
ゆっくりと、それを前後させる。ぬる、と入り口をこする感触が、お腹の奥に、頭の奥に、ぞわぞわ響く。
────だから……そのときは本当に、こんなふうに……お尻、で……。霖之助さんの、アレを受け入れて、満足してもらうの……。
ああ、でも、そうしたら……バレちゃうのかな……。そっちは初めてじゃないって……ずっと前から、エッチな遊びしてた、って……。
────簡単に、入ったね。……もしかして、前から自分でしてた?
────そんなこと……。ただ、今日のために、少し、慣らしてただけ……。
────そうか、ありがとう。動くよ、霊夢……。
……それで、信じてもらえるかなぁ……とか。
バレちゃったら、恥ずかしいけど……それはそれで、エッチな子だねっていじめられるの、興奮しちゃうかも……とか。
そんなことをチラと考えて、すぐに頭から追い出し、私はアレを動かす手の動きを速めていった。
「ふーっ、う、はぁ……。っあ、んっ、はぁ……」
じゅぽじゅぽ、ぐぽぐぽ、いやらしい音がお風呂場に響く。
膨らんだ先端の段差が、何度も孔をひっかけて、その度にそこがじんじん熱くなっていく。
「あーっ……はっあ、んんんっ……! あっ、あっ、んぁあっ……! 霖之助、さんっ……霖之助さぁんっ……!!」
お尻だけじゃない。アソコもぱっくり開いてて、そっちはいじってもいないのに溢れたお汁がトロトロ流れ落ちて、お尻をドロドロに濡らしてる。
気持ちいい。
お尻が気持ちいい。
お尻で、えっちするの、気持ちよすぎる。
手が止まらない……。こんなの、やめられるわけ、ない……。
……そうだ、私が悪いんじゃないもん……おしりが、きもちよすぎるのが、悪いんだもんっ……!
お腹の中、ぐちょぐちょになった穴の入り口から、アレの先端が当たっている場所までが、じわじわ熱くなってくる。
その熱はお腹全体、身体全体に広がっていき、頭の奥までがぶわーっと熱くなって、ふらふらぐらぐら揺れ始める。
なんだろう、これ……。
なんだっけ……?
自分の芯が、甘く融けてくみたいな、これ、この感じ、どこかで────
あっ……これ、って……
なにか、来る……
そうだ、夢の中の、あの感じ……
あれ……あのときの、あれが、来るっ……
アソコも、お豆も、触ってない、のにっ……お尻の、お腹の奥、だけでっ、あれが、来ちゃうっ、あ、おしりでっ、わたしっ、イッ────!!
「────ッッッ~~~~~~~~……!!!!」
頭の中が、桃色に沸騰する。
お尻が、お腹が、背骨が燃えて、とろけて、したたり落ちて砂糖菓子になる。
きもちいい。きもちいい。キモチイイ、キモチイイ、キモチイイ────
あ……あ……
これ……やっぱり……すご……い……
てっぺんから、おりて、これないっ……
あっつい、ねとねとが……いつまでも、あたまの、なかで、ゆらゆら、して……
きもち、いー……
お尻に深く突きこまれた棒を、両手でしっかり押さえたまま……その棒に突かれて粉々に砕かれ、崩れて人間でいられなくなった私は、ただべちゃりと床に広がってぷるぷる揺れてる、快楽だけで出来た軟体のイキモノになっていた。
どれくらいの時間、その甘い沼に沈んでいただろう。
長いあいだ高止まりしていた快感の波が、ようやく少しだけ落ち着いてくる。
「っ、はっ、はーっ……はーっ……ひぃーっ……」
何度も大きく、深く、呼吸を繰りかえす。胸と頭に空気が入って、意識を覆っていた霧が少しずつ晴れてくる。
それでも消えない余韻の中で、ひくひく震えるお尻の穴が、今もそこを深く埋めるものに、ふんわり吸いつこうとする感じがした。
「……ん……ふ、ぅ……っ」
力がうまく入らない腕で、またちょっとだけ、それを動かしてみる。粘液に濡れた表面が、
……たった今、こんなに深く、イッたばかり、なのに……。
ホント、どうして私って、こんな……。エッチで、スケベで、淫乱で……。
……ううん、違う。違うの、これは、私のせいじゃなくて。
そう、シたいのは、私じゃ、なくて……。
────ああ……霖之助さんの、まだ、こんなに、硬い……。
────霊夢の中が気持ちよすぎて、治まらないんだ。……もう少し、いいかい?
────うん……私の体は、ぜんぶ霖之助さんのものだから……何度でも、好きなだけ、していいよ……。
……閉じたまぶたの裏で、そんな都合のいい会話をして。
それから改めて、大きく足を広げた、その中心で。
太くて長いかたまりが、再び私のお尻をえぐった。
「んぁっ……!」
全身を貫く快感に、体がのけぞり、びくびく跳ねて、燃え上がる。
ぐちゃ、ぶちゅ、といやらしい音がまた、恥ずかしい穴からあふれ出す。
それから、私は……
見事に、風邪を引いた。
◆ ◆ ◆
穏やかによく晴れた、うららかな昼下がり。
ちゃぶ台に頬杖をついて、縁側の向こうを眺めていた私の視界に、すとんと白黒の影が舞い降りた。
「よっ。どうした? ぼーっとしちゃって。まだ風邪が抜けてないのか?」
手の先でくるくる回した箒を立てかけ、するりと入ってきて正面に座る。
「んー? いや、そっちはもうぜんぜん……つか何日前だと思ってんの」
「何日も寝込んだから心配してるんだぜ。また泊まりで看病なんてさせないでくれよ?」
「うん。ありがとね」
にっかり笑って言う魔理沙に、素直にその時の感謝を伝えて、それからいつもの世間話。
何か起きたか、妖怪の動向は、里の様子は、明日の天気は、お酒の出来は……。
今日も、特に何にも変わらない。平穏な、いつもどおりの、変わらない幻想郷。
……何も変わらない、か……。
でも、本当に何もかも変わらないなんてことも、ない……よね。
そんなことを、ふと思った弾みで。
「ねえ、魔理沙ってさ、毛、生えてる?」
他愛もないお喋りのさなか唐突に、はっきり聞いてしまってから、なに言ってんだ私は、と思う。
魔理沙は、とっさに意味がわからなかったようで、首をちょっとひねってから、自分の髪を両手でつまんで、ひょいと顔の横に持ち上げる。
「カツラに見えるか? これが」
「そうじゃなくてさ。あの下の……あそこの毛、生えてるかって、聞いてんの」
「……はぁ!?」
大口から大声を出した魔理沙の顔が、なんとも言えない素っ頓狂な表情になった。なんだこれ。左右ちぐはぐで、口がかくかくして、見開いた目が微妙に泳いでて……おもしろ。
「い……いきなりなんだよ、そんな……生えてないよ、まだ。お前だって、そうだろ?」
一転ちょっと顔を赤くし、眉をひそめて、なに言ってんだお前、という顔をする。まあ、私もそう思うけど。でも。
「私は生えてるし」
流石に真正面から口にするのは恥ずかしくて、あさっての方に顔を向けながら、そう言い放ってやった。
「……はぇっ?」
そんな声がした方へ、ちらりと横目を走らせたら、ぽかんと開いた口と、ぱちくりする丸い目が見えた。
「嘘だろ」
「嘘じゃないもん。生えたの、この前」
少しの間、何かを言おうとして口をぱくぱくさせていた魔理沙が、いきなり立ち上がる。
そして、すぐ隣へと飛びこむように座ったその手で、私を床に突き倒した。
「あ!? ちょっ、なにすんの!?」
倒れた私のスカートを掴んだ魔理沙の手が、そのままそれをまくりあげ、中に頭を突っこんで……まてまてまて、こら!
「やっ、やめてよ! やめろっての! 脱がせんなっ!」
「ほんとに生えてるなら見せろよ! 減るもんじゃないだろ!」
「やだ! もし減ったら困るから、見せない」
ったく、なに考えてんの、こいつ!
必死にスカートとパンツを押さえて、なおも潜りこもうとしてくる魔理沙を蹴りはがす。
「証拠を見せなきゃ、信用しないぜ!」
「別に信用しなくったっていいけど? 事実は変わらないし」
「うぐぐっ……」
私の言葉に歯噛みをし、心底くやしそうな表情を浮かべる。
ふーん、そうかぁ。
魔理沙は生えてないのかぁ。うんうん、そうだろうと思った。ふふん。
「あー!? なんだよその勝ち誇った顔は! ついこないだ看病してやった恩を忘れたのかよ!」
「それはありがたいと思ってるってば。お礼だって何度も言ったでしょ。でも、それとこれとは別ー」
「んなろっ……!」
眉を逆立てて、魔理沙はすっくと立ち上がる。
どたどた縁側へ駆け出して、立てかけてあった箒をひっつかむと、びしりと私を指さし、
「いい気になるなよ! 私だってなぁ、毛なんてすぐ生えるんだからな! 見てろよ!」
そんな捨て台詞を残して、勢いよく青空の中へすっ飛んでいった。
魔理沙は、誰かを怒らせたとき、追いかけられたときには、一目散に逃げるけれど、負けて悔しいから逃げる、ということはしない。
あれは逃げたのではなく、一時撤退。つまり、勝つ方法を探しに行ったのだ。
早くオトナになる方法。
魔法の森へ何かを求めてか。それとも、あの引きこもりの図書館だろうか。
まあ、そんな都合のいいモノ、そうそう見つかるとは思えないけど。もしあったら、とっくに誰かが見つけて広めてる。それに多分────きっとそれは今なお、外の世界で信仰を集め続けている、強固な幻想に違いないのだから。
それでも、あいつなら見つけ出すかも。そう思わされてしまうのが、魔理沙というやつなんだけど。
けど、まあ、とりあえず。
ちょびっとだけど、毛は生えた。背だって私の方が高い。胸も……えーと、魔理沙よりは、大きいはずだし。
だから、私のほうが、ずっとオトナに近い。
つまり、霖之助さんにも、近い……はず。
まだまだ、子供としてしか見られてないだろうけど。でも、すぐに大きくなる。絶対なる。ならなきゃ。
ただの妹分から、霖之助さんに似合う大人の女になって。もっともっと、心の距離を縮めて。そして、そして……体の、距離も……。
……だからっ!
どーしてすぐ頭がそっちに行くのっ!!
あー、もー……ほんとダメだ、私。
ヒマさえあれば、エッチなことばっか考えて。自分が嫌いになりそう……。
……でも。
ちゃんと、我慢はできるし。
今日で、もう一ヶ月。
そういうことを、しばらくしないって決めて、我慢できてる。お尻だって……心配してたけど、ちゃんと元に戻ったし。
そう、私は自分を律することのできる、オトナ、なのだ。
それは、自信を持っていい……はず。
だから……。
ちょっとだけ。
自分との約束をしっかり守ったごほうびに。
一回くらいなら……いいよね。
明日からは、またしばらく我慢するから。
一回だけ。絶対、一回だけだから……。
そう誓いながら私は、高く晴れた真昼の空を隠すように、障子をぴったりと閉じた。