流星街とは超巨大なスラム街の名前で、一般社会によりいらないものを際限なく捨てられる、謂わば社会のゴミ箱となっている場所だ。
マチたち幻影旅団はそこと密接な関係にある。彼女たちの大半が流星街出身なのだ。
で、その流星街だが、何でも、長老クラスが主導して麻薬の栽培を行っているらしい。その麻薬は〈外の世界〉、要するに俺たちが暮らす一般社会へと流通している。
その橋渡しをしているのが、今回の暗殺騒動の依頼人──自由党総裁、すなわちサヘルタ合衆国大統領のアーロン・オースティンだ。アーロンは圧倒的な財力と軍事行動も辞さない攻撃的な思想で、独裁政権下の恐怖政治に近いことを民主主義を建前とするサヘルタ合衆国で行っている。
しかし、幸か不幸かアーロンは優秀だった。弱きを容赦なく切り捨てる効率的な政策を即断即決で実行し、経済を大いに活性化させた。自然と中流階級以上から支持が集まり、その地盤をより強固なものにしていったのだ。
そんな彼に唯一対抗できる存在だったのが、自由党No.2のデービットだ。デービットは社会権を重視していて、社会福祉制度の充実こそが長期的かつ安定的な文化の発展には必要不可欠という思想を持っていた。当然、小さな政府こそが最も効率的だという思想を持つアーロンとは事あるごとに対立していた。メディアが二人の喧嘩をおもしろおかしく報道しているのを俺も目にしたことがある。
デービットにとって不運だったのは、アーロンと流星街、そしてマフィアとの繋がりを知ってしまったことだ。
無駄に正義感の強かったデービットは、それを見過ごすことなどできるはずもなく、独自に調査を始めた。まさに虎の尾を踏んでしまったのだ。
アーロンは、デービットを消し、ついでに自分に批判的な放送を行うことが多い民放テレビ局を潰そうと考えた。そこで、麻薬取り引きで懇意にしている流星街の長老経由で、幻影旅団──マチを雇ったのだ。
あとは俺が見たとおり。デービットは殺され、民放テレビ局との癒着をでっち上げられかけた。
マチの立場としては、この依頼を失敗することはできない。流星街全体の利益のためにもアーロンには恩を売っておくべきだし、今後も今までどおり快適に仕事をやっていくには流星街と政権与党と同時に敵対するわけにはいかないのだ──幻影旅団内でも意見の対立があったみたいだが、団長の選択は「流星街とは敵対しない」というものだったそうだ。
総合病院のVIPルームで事のあらましを話し終えたマチは、多少は回復したのか、緩慢にだが、立ち上がった。
「どした?」態度がでかい割にケツはそれほどではないな、とガン見しながら尋ねた。
「喉渇いたんだよ」マチの視線は室内にあるキッチンルームへと向けられている。
すくっと立つ。「俺が取ってくるよ」
「……そうかい」マチは一瞬ためらうような表情を浮かべたが、結局はそう言ってベッドに座った。
冷蔵庫にはミネラルウォーターと酒、オレンジジュース、コーラ、ウーロン茶が入っていた──いろいろありすぎだろ。
何にするか迷ったが、無難にミネラルウォーターにした。俺用のコーラと一緒に持っていく。
「ほい」とペットボトルを差し出す。
「……ありがと」
ひかえめというか渋々というか、形容しがたい声音で礼を言ったマチは、キャップを外し、ペットボトルに口を付けた。ミネラルウォーターがマチの中へ流れ込むのに伴い、女性らしく平らな喉仏が上下する。
ペットボトルから口を離したマチが、
「なんかエロいなぁって思って」
「溜まってんのかい?」
「否定はできない」
「はっ」
マチはバカにしたように鼻で笑った。
それから、挑発するようにゆっくりと足を組み直した。本能に抗えず、マチの股ぐらを見つめてしまう。
「ヤりたいならヤればいいだろ」マチは呆れたように言った。
「いやでも結構いいパンチ入れちゃったし」
「……あんた、変わってるって言われるだろ」
「そんなでもない」具体的には二日に一回程度しか言われない。
「ふうん」まったく信じていない様子だったが、マチにこの話題を続ける気はないようだった。
ずっと立っているのも疲れるので、マチの隣に腰を下ろす。マチとの距離は五十センチくらいだろうか。触ろうと思えばすぐに触れる距離だ。
「で、あんたはこれからどうするんだい?」組んだ足に手を乗せたマチが尋ねた。
「それを答える前に確認したいんだけど、マチはアーロンの依頼をやらなくてもよくなった場合は、デービットはどうでもいいんだよね?」
「そりゃそうさ。あんなじいさんに興味はないからね」
「だよな。じゃあ十日待ってて。それまでは『相手がゾルディックを雇ってきて依頼が難航してる』とか何とか言って時間を稼いでほしい」
ゾルディックとは〈生涯中二病〉を家訓とする暗殺一家のことだ。
マチは怪訝そうな視線を寄越した。「何をするつもりだい?」
ふふふ、と芝居掛かった笑みを浮かべる。「果報は寝て待てって言うだろ? マチは心配しないでのんびり美術館でも襲ってればいい」
すると、マチは眉をひそめて、
「その使い方、誤用だよ」
と告げた。
「……」
かっこつかねぇー。
十日が経過した。
とあるホテルの一室を訪れた。呼び鈴を鳴らすとすぐにドアが開けられた。
「やってくれたね」部屋で待っていたマチは、俺の顔を見るや、そう言った。
「とりあえず中に入れてくれ。それからゆっくり話そう」
知り合いに見られるとは思わないが、ラブホテルの廊下で立ち話をする趣味はない。
マチはドアを大きく開けて、「早く入んな」と促した。その様が何となくかわいくて頭をぽんぽんする。
「やめろ」マチは俺の手を払った。
しかし、言葉ほど不機嫌そうには見えない。というのは希望的観測だろうか。
備え付けのスリッパに履き換えて室内に入る。
室内はこれといった特徴のないありきたりな雰囲気だった。ベッド、テーブル、ソファ、テレビなど一通り揃っているが、それだけだ。
ソファに身を沈め、隣の座面を手で叩くと、マチは素直にそこに座ってくれた。
「あんたのせいで流星街のクソじじいどもがブチギレてんだけど。うざいったらないよ」
「そんなの気にしなくてもいいだろ。泣く子も殺す幻影旅団様だろ?」
ばしっと太ももを叩かれた。オーラは使われていないが、結構痛い。
俺がこの十日間にやったことはこうだ。
まず卓越した〈
「このネタで社会を引っ掻き回してほしい」と依頼。
テレビ局の人間は最初はビビっていたが、億単位の金──
その日、大スクープがサヘルタ合衆国を震撼させた。
現任の大統領による組織的な麻薬売買。政権与党とマフィア、そして流星街との繋がり。
ニュースは連日、昼夜を問わず放送され、世間は大変な盛り上がりを見せた。
意外だったのはアーロンを嫌っていた貧困層の反応だ。彼らは諸手を上げて喜ぶかと思いきや、貧困層には麻薬中毒者がかなりいたらしく、今回の件で麻薬の取り締りを強化すべきという声が上がってしまったことで大層ご立腹らしい。アーロンのせいで麻薬をやりづらくなっちまったじゃねぇか、勝手に捕まってんじゃねぇよ、と。いろいろ勝手すぎる。
アーロンは逮捕され、求心力や権力の大半を失ってしまった。今後、裁判が進めば財産もほとんどが没収されるだろう。傲慢不遜な王様から一転、民衆から蔑まれる犯罪者へと華麗なる転身を果たしたわけだ。
さて、こうなると流星街としてはアーロンを利用する理由はなくなる。つまり、アーロンの依頼を受ける理由もなくなるということだ。
結果、マチは〈某民放テレビ局との癒着を理由にした自殺に見せたかけてデービットを殺せ〉という依頼をこなす必要はなくなる。しかも、俺とマチが付き合っていることは秘密にしているため、今回の騒動とマチは無関係に見える。彼女が槍玉に上がることもないのだ。
また、イザヤの〈黒幕に報復してほしい〉という依頼も達成したと評価できるはずだ。アーロンは奈落の底に向かって紐なしバンジーを敢行した(させられた)わけだしな。
とはいえ、イザヤは複雑そうな表情をしていた。政治に関わる者として、国民に対する責任めいたものに起因する罪悪感を感じていたのかもしれない。憎き政敵であっても、より高い視点で見れば戦友だったということだろうか。俺には共感できない感情だ。
シャワーを浴び終え、ベッドルームに戻ると、マチが顔をこちらに向けた。今日のマチは髪を下ろしている。
無言で見つめてくるので、「どうした?」と問いかけた。
「別に。ハンツは上手いのかなって思ってただけだよ」相変わらずのそっけない態度だ。
「上手くはないんじゃないか? 童貞だし」
「あー、そう」マチは驚くこともなく平然と受け流した。「何となくそんな気はしてたよ」
俺も大概だが、マチの勘も相当ヤバいだろ。これで変化系の発も使えるんだから恐ろしい。
「あたしからいろいろしてやったほうがいいかい?」そんなことを言い出した。
「いや、いい」しかし俺は首を振った。
「……ふうん、あっそ。じゃあ好きにしな」
後ろに手を突く形でベッドに座ったマチは、それだけ言うと俺から顔を背けた。
ベッドに座り、マチの顎に指を当て、こちらを向かせる。至近距離で正面から見た彼女の顔はやはりとてもきれいだった。
染み一つない肌は、ある種の幼さすら漂わせ、つり目気味の大きな瞳は気だるげな光をたたえている。
彼女の瞳から逃げるように視線を下げると、やや小ぶりな唇が視界の中心に入り込んできた。朱く潤んでいるように見えるのは、口紅とグロスのせいだろう。
少しは意識してくれているのかもしれない。
そう思うとうれしくなる。我ながら単純な男だな、と呆れる。
「にやけるな。きもい」マチの
エロいな、と思った次の瞬間には吸い寄せられるように彼女の唇に自身のそれを重ねていた。冷静さを欠いたらまずいというのは重々承知しているが、本能が身体を急かしていた。
唇が触れた瞬間、マチは本当に小さな声で、「ん……」と洩らした。
鼓膜が性感帯になったかのような錯覚に陥った。マチの艶かしい声が脳を溶かしていくようだった。
唇を離すと、マチは舌を出して自身の唇を舐めた。
扇情的にすぎるその仕草に先ほどよりも強くキスを求める。今度は触れるだけの口付けではなく、口内を味わう深いキス。
舌を彼女の中に挿入する。柔らかく濡れた彼女の舌が俺のそれを迎えた。
しばらくディープキスを続け、そして、マチの唇を解放してやると、彼女は小バカにしたように目を細め、
「下手くそ」
吐息が鼻先に当たった。
「うるせー」
「童貞臭いぞ」
「ぐぅ……」
マチは愉快そうに笑った。
「……」
この瞬間、俺は決意した。初めは使わないつもりだったけど、もういいや。そっちがそういう態度を続けるならこちらにも考えがある。
俺の発は三つあり、そのすべてがエロに関係している。その内の一つに〈
とりあえずは、触れられただけで強烈な性的快感を覚えるようにしとけばいいか? 目分量というか、何となくの力加減だし、人に試したことはないけど、強キャラのマチなら大丈夫でしょ。たぶん。
自分を納得させて能力を発動すると、俺のオーラがマチを包み込んだ。
「!?」マチの顔に警戒の色が浮かぶ。
「大丈夫。危害を加えるつもりはないから安心して」
言葉だけでは安心できないかもしれないと思った俺は、マチの手を握ってやった。人は手を繋ぐことで安心感を覚える生き物なのだ。
「んっ」突然、マチが嬌声を上げた。
「どうした? 大丈夫か?」白々しく言い、彼女の手を握る力を強める。
「っっ!」背を反らすマチを逃がすまいと抱き寄せる。「──っっっ~~~~!!」
一拍後、マチはぐったりと弛緩し、俺の腕の中で額に汗を滲ませている。息遣いも荒く、苦しそうに見える。
「……」
かわいそうなので快感レベルを下げてやることにした。このままではセックスする前に気絶しかねないと危惧したからではない。あくまで彼女の身を心配しているだけだ。
未だ顔は赤いものの、少しして多少は落ち着きを取り戻したらしい。マチは口を開いた。「何をした?」
「教えない」
「何だよ、それ」
「何でもいいだろ。それより続き」
俺もそろそろ我慢の限界──早く脱がしたいし、揉みたいし、入れたいのだ。
「……さっきのはやめろよ」
「りょーかい」
マチはパーカーにジーンズというラフな格好をしていた。戦闘に備えているのかもしれないが、脱がしやすくて非常に助かる。
パーカーのファスナーを下ろし、脱がしてやる。次いで、タンクトップを捲り上げるようにして取り払う。比較的シンプルなデザインの赤いブラジャーが視界に飛び込んできた。
唾を飲み込んでからブラジャーのホックを外す。思ったよりも簡単に外れた。逸る気持ちのままにブラジャーを脱がすと、形のいい乳房が露になった。小さめの乳輪の中心では乳首がぴんと勃っている。
乳房の大きさはそれほどではないけれど──、
「おい」マチに呼びかけられた。「あんまり大きくないなって思っただろ」
「……」
無言で快感レベルを少しだけ上げ、手のひらで包み込むようにして胸を揉む。
「──っ!」マチは顔をしかめて歯を食いしばった。「~~~っはぁ」
休ませるつもりはあんまりないので、焦らすように
「はぁ、はぁ、ん、あっ、はぁ、あっ、んふぅ、はぁ……」殺し切れなかった淫靡な声が、マチの小さな口から零れ落ちている。
懸命に堪えようとする姿があまりにいじらしく、もっと困らせたいという子供じみた欲望が湧いてくる。
それに従い、ついに、勃起して硬くなった突起に触れた。その瞬間──、
「っ~~~!!」
マチは先ほどと同じように身体を反らした。
どうやらマチは達すると上半身を大きく反らす癖があるようだ。
数瞬後、ふっと脱力したように俺のほうにしなだれがかってきた。ほっそりとした肩を抱く。
マチが上目遣いに俺を見つめる──潤んだ瞳が、物欲しそうに俺の瞳を射貫いている。彼女の、温く湿っぽい吐息が、愛撫するように肌を刺激する。
「……」マチは何も言わない。ただすがるような視線を寄越すだけ。
甘美極まりない快感に飲まれ、しかしそれでもねだる言葉を口にしないところが彼女らしい。実際に関わるようになったのは、ほんの十日前からだが、的外れではないと、そう思う。
「横になってくれ」
俺が言うと、マチは小さく頷いてから素直にベッドに身体を任せた。
彼女のベルトを緩め、ジーンズを下ろす。腰を浮かせてくれたのでスムーズに脱がすことができた。靴下も手早く脱がしてしまう。
ショーツはブラジャーと同じ赤。マチの秘奥を早く見たい、とそれに手を伸ばすと、
「待て」
マチが制止した。「お前も脱げ」
よく分からないが、拒む理由はないのでさっさと白シャツを脱ぐ。インナーも脱ぎ捨てる。
マチが俺を見ていた。
「どした?」
「結構いい身体してんじゃん」
「鍛えてるからね」
死にたくないし。
ベルトを緩めてチノパンを下ろす。痛いくらいに勃起した男根が、ボクサーパンツを隆起させているのがはっきりと分かる。
靴下を脱ぎ捨て、ボクサーパンツを一気に下ろすと、男根が跳ねるように揺れた。
マチが太ももを擦り合わせた。
「これでいいだろ」
「ああ」
そして、彼女のショーツを剥ぎ取った。
整えているのだろう、彼女の秘毛は卵型をしていた。しかし、それよりも気になったのは、
「……下の毛も紫なんだな」
素朴な疑問に答えが出て、自然と呟いていた。
「いちいち言わなくていい」
「ごめんごめん」
「……」
「……」
言うべき言葉が見つからず、それはマチも同じだったのか、互いに沈黙してしまった。
無言のまま口付けをし、愛撫を始める。
俺が触れ、全身にキスをし、慈しむたびにマチは快楽に悶え、幾度も絶頂を迎えた。気づけば、彼女は声を殺さなくなっていた。アダルトビデオとは違う、吐息を震わすような小さな喘ぎ声だが、感じるままに発しているようだった。
女の泉からは愛液が止めどなく溢れ、漂う動物的な香りは情欲を際限なく強めていく。
膣口はとろとろにふやけていて、クリトリスは硬く膨張している。優しく摘まんでやると、今まで聞いた中で最も大きな声で鳴いてくれた。
凶悪な犯罪者であるのは間違いないのだけれど、いや、むしろそうであるからこそ、そんな女を支配していることに目が眩むような興奮を覚える。
甘い熱を発する秘所に指を差し入れる。
「──んっ……」瞼を閉じて苦しげな声を発した。
しかし、苦痛はないはずだ。能力の加減にも慣れてきて、今はマチにとって最も心地好い強さになっているはず。
膣壁が俺の指をぎゅうぎゅうと締めつけてくる。それに負けずに指を曲げたり、中を撫でるようにしながら行きつ戻りつさせ、時折、クリトリスも刺激してやる。
やがてマチはかすれた声で何事かを口にした。
頭を撫でてやると、今度は幾分か明瞭な声音で、
「入れて──」
そして、俺のペニスに一瞬だけ視線をやってから、
「ハンツが欲しくて欲しくて気が狂いそうなんだ」なぁ、意地悪しないでくれ……、とマチらしからぬ媚びたような声色で続けた。
再び唇を重ねてから、仰向けに横たわるマチの足を大きく広げ、淫穴にペニスの先端を宛がう。
「ぁ……」マチが期待に満ちた息を洩らした。
「入れるよ」
マチが、こくりと頷いたのを合図に剛直を押し込む。マチの媚蜜はかなりぬるぬるとしていて、決して小さくはない俺のペニスをすんなりと受け入れてくれた。ペニスの根元の辺りが強く締めつけられ、同時に、
「っっ~~~~!!」
マチは大きくのけ反った。オーガズムを得たのだろう。
動かずに待っていると、ややあってからマチの身体から力が抜けた。呼吸に荒さは残っているが、顔つきにはどことなく穏やかな風情がある。
寝ぼけ
「めっちゃ気持ちいい」所謂俺でなきゃ見逃しちゃう速度の即答である。
しかしマチは
「嘘じゃないよ」
嘘ではない。嘘ではないが、耐えられないということはありえない。なぜならそれが俺の能力だからだ。
二つ目の発の名は〈
不意に手を握られた。
「もう動いてもいいよ」マチの口調は先ほどよりも平常時のものに近づいていた。しかし、頬は上気させたまま、
「あんたにも──イってほしい」
「っ!」
マチの言葉が、その表情が、微かに揺れる瞳が、手のひらから伝わる熱が、肉棒を包み込む粘膜の与える快感が、渾然一体となって俺の理性を破壊した。
射精してはダメだ、という意識はある。しかし、自分を抑えることなどできそうもなかった。
何の遠慮会釈もない貪るようなピストンを開始した。
マチの、俺の手を握る力が強まる。鍛えていなければ骨を砕かれていたのではないかという激烈な力だ。
俺が腰を打ちつけるたびにマチが嬌声を上げる。そのエロティックな響きが俺をより一層駆り立てる。
動きは激しさを増していき、マチは顔を歪め、苦しげに呼吸を乱す。
男根が膣肉に圧迫される──痺れるような快感が俺を射精に導こうとする。このままマチの最奥に吐き出したいという抗いがたい衝動が、僅かに残っていた自制心を吹き飛ばす。
「──マチっ」
名を呼ぶと、彼女は声は出さずに、「きて」と朱く濡れた唇を動かした。
それが止めになった。
「ィっく──!」
込み上げる射精感を解放する。放たれた精液がマチの中を俺色に染め──、
「──んんっっっ~~~~!!」
マチが一際大きく反り返る。蜜壺は不随意的に
永遠にこの快感を味わい続けたいと願うも、夢はいつか覚めてしまうように、それはやがて終わりを迎えた。
──すぐに俺の全身にある精孔が閉じていく。ほんの刹那の後、すべての精孔が閉まり、それはすなわち完全な絶状態になってしまったということだ。
絶状態になった原因は〈制約と誓約〉だ。〈制約と誓約〉とは、念の発動や効果に一定のルールやデメリット、リスクを設定することで、念の威力を高めるものだ。
俺の〈制約と誓約〉は、俺自身の意思により設定したものではなく、生まれながらにして先天的に備わっていた。
その内容は〈セックス、アナルセックス又はオーラルセックスで射精した場合、射精終了から二十四時間の間、強制的に完全な絶状態になる〉というものだ。絶状態ではオーラ、つまりは念を使用できないため戦闘力は一気に低下する。オーラ量の多さに頼りがちな俺の場合は特にそれが顕著だ。
ただ、セックスによる射精という、俺が求めてやまない快感の制限は、俺の念を著しく強化している。だからデメリットばかりではない。
とはいえ、やはり今の状況はヤバい。
マチは人殺しに何の忌避感も抱かないA級賞金首だ。俺の戦闘力とその利用価値を認めたからこそ、こうして股を開いたわけで、こんな致命的な弱点があると分かったらどうするだろうか。簡単に切り捨てる可能性も否定できない。しかも今はオーラ使用不可で、ぶっちゃけマチよりも圧倒的に弱い。
こうならないために〈
冷や汗が滲む。
マチの念糸が俺の首を締め上げる様が目に浮かんだ。
……逃げるか?
今ならマチは放心状態で俺の様子には気づいていない。筆下ろしセックスでガチのヤリ逃げをかますことになるとは思っていなかったが、死にたくはない。俺にはかわいい原作キャラとヤりまくるという野望があるのだ。こんなところで絞殺されるわけにはいかない。
すっかり萎んでしまったペニスをゆっくりと引き抜く。
すると、マチは俺に目を向けた。不思議そうに、「ん?」
と疑問の声を洩らす。
ヤ、ヤバい。気づかれた?!
「……どうしてぜつなんてしてんだい?」
「ふぇ?!」声がきれいに裏返った。「な、なな何でだろうな? 何となくじゃないか?」
俺は嘘が苦手だ。ポーカーフェイスなんてできない。
「……」マチは思案しているようだった。
重苦しい静寂がホテルの一室を満たす。
少ししてマチは正解に思い至った。「それがあんたの〈制約と誓約〉かい?」
「い、いやそういうわけじゃ──」
「じゃあ、
纏とはオーラを体表にまとう技術だ。当然、絶状態ではできない。
「今はちょっと……」
「ふうん……」マチは口角を上げた。
「あ、あのぅ、マチさん?」
「何だい?」
「どうして念糸を出しているのでしょうか?」震え声で尋ねた。
「さぁ?」マチは嗜虐的な笑みをたたえている。
「あ、あのぅ」
「今度は何さ?」
「どうして念糸で俺を縛ろうとしているのでしょうか?」
ふふ、とマチは微笑んだ。
詰んだかもしれん。
▼▼▼
マチには不満に思っていることがあった。
それは、有り体に言えば、好みの男が周りにいない、しっくり来る男に出逢えないという、ありがちな悩みだ。
マチが男に求めるものは、まず強さ。最低限、幻影旅団でやっていけるだけの強さは欲しい。
ただ、これだけならばいなくはない。というか、気心の知れた団員の男たちは全員クリアしている。
問題はもう一つの条件だった。
どいつもこいつも強すぎる……。
マチは常々そう嘆いていた。
なぜなら、マチは男に弱さも求めるからだ。一見、矛盾しているようだが、マチに言わせれば矛盾は一切ない。
マチのストライクゾーンは、〈基本的には強いけど、時折嘘偽りのない弱さをマチにだけはさらけ出して甘えてくる男〉だ。
要するに、マチは世話を焼きたい女なのだ。
マチほどの美貌があれば見つけられないこともないはずだが、彼女の性格がそれを困難なものにしていた。
気が強く、素直に自分を見せるのが苦手なマチは、「もっと甘えてほしい」などとは口が裂けても言えない。だから理想は、あくまで仕方なくという体裁を保ちながら程よい頻度で男に尽くすような関係だ。
男からすれば、いつも怒ったような顔でつまらなそうにしている、しかも圧倒的強者であるマチに向かって、あれをやってこれをやってとは言いづらい。それはマチも分かっている。だが、懇切丁寧に説明してやる気にはなれないのだ。恥ずかしいし。
結果、マチの中の〈なんか違う感〉が膨らんでいき、一箇月と持たずに別れを告げることになる。
純粋に尊敬している男ならいるが、恋愛対象としてしっくり来る男は、残念ながら現れたことはなかった。
のだが、先ほどマチの中に盛大にぶちまけた男──ハンツは、射精即強制絶という特大クラスの弱点を晒してきた。
こうなると分かっていて、それでも構わずに自身の中で果ててくれたと思うと、今までに感じたことのない高揚感を覚えた──正直、きゅんと来た。
おそらくハンツは殺されるとでも思っているのだろう。今までの掴み所のないミステリアスな強者の雰囲気は鳴りを潜め、情けなく狼狽えている。これもマチ的にはポイントが高い。
だからマチは自然と頬を緩めてしまった。自分のキャラじゃないのは自覚しているが、
ハンツはこの世の終わりのような顔をしている。が、それはマチの気分を盛り上げるだけで、おそらく彼にとっては悪手だろう。
逃がさないよ。
ハンツが入り口のドアと脱ぎ捨てた下着に視線をやったのを見逃さなかったマチは、念糸を作り、ハンツを縛り上げた。これで一安心だ。
マチはハンツに向かって口を開いた。「説明しな」
十中八九、予測は当たっているだろうが、確認はしておきたい。
「せ、説明、ですか」ハンツはたどたどしい敬語を使った。
「ああ」マチは頷き、
「絶になった理由さ。嘘はつくんじゃないよ」あたしには分かるんだからね、と釘を刺しておく。
実際、勘で大半の嘘は判別できる。
「……はい」ハンツは観念したようだった。弱々しく応えた。
ハンツが言うには、単なる射精ではなくセックス時の射精で丸一日絶状態になるらしかった。それなりにいろんな念能力者を見てきたが、こんなバカな制約と誓約は聞いたことがない。
「なるほどね。それがあんたの弱点かい」クールな顔つきで言ったが、内心では温かい気持ちが漂っていた。
「……はい」これから絞首台に上る死刑囚もかくやといったうなだれ具合だ。
「なぁ」
マチには尋ねてみたいことがあった。それはつまり、期待する答えがあるということにほかならない。
「何で射精したんだい? 適当なとこでイッたふりでもしときゃよかったじゃないか」
さぁ、どう答える? と見つめる。
「……」ハンツは逡巡し、やがて小さな声で言った。「マチがかわいくて我慢できなかった。マチと一緒にイくことしか考えられなかったんだ」
「……そうかい」
心臓がうるさい。
いったいあたしはどうちまったんだ? と不安になるほどハンツに惹かれ始めていた。しかし、かろうじてポーカーフェイスは崩していない。
ふと、お互いに素っ裸でいることに羞恥を覚えた。
とりあえず服を着ようか……。
そう思い、念糸を解除した。
▼▼▼
意外と大丈夫だった。マチの中で何があったのかは分からないが、念糸を解除してくれたのだ。
マチは俺の服を拾うと、軽く整えてから渡してきた。
「あ、ありがと、ごさいます」
「ふん」マチは不機嫌なような、照れたような不思議な表情で鼻を鳴らした。「下手な敬語はやめな。気持ち悪いよ」
「お、おう」
マチが下着に足を通すのを横目で見ながら、俺も服を着ていく。白シャツに袖を通すと、マチが俺の首に手を伸ばしてきた。すわ、蜘蛛の本領発揮か! と身をすくませたが、
「襟、立ってる」
マチはそう言ってから白シャツの襟を直してくれた。
「……ありがと」
「ふん」マチはまた鼻を鳴らしてから、そっぽを向いた。
「……」
前世を含めると童貞歴うん十年の俺も流石に察してきた。「もしかして俺に惚れ──」
「バカ言ってんじゃないよ」マチは俺の言葉をぴしゃりと遮った。「さっきまで童貞だったくせに調子に乗るな」
「でもなんか優しいし……」
俺が食い下がると、マチははっきりと分かるくらい頬を赤くし、
「彼氏に優しくしたらいけないのか?」
「……」
なんだこのかわいい生き物。
さっき出したばかりだというのに股関に熱が集まっていく。
ごくりと喉を鳴らすと、察したらしいマチが溜め息をついた。
「またヤりたいのかい?」
それから、
──本当に仕方のない男ね。
「俺たちのセックスはこれからだ!」エンド笑。
難しいことは考えずに息抜きで書こうとしたのですが、セックスシーンをしっかり書くのが予想以上に大変でかなり疲れました。たぶん、わたしには向いてないです笑
続きはネタが降ってきて気が向いたら書きます(実質エタ宣言)。
お付き合いいただき、ありがとうございました!
エロシーンについてご意見をお願いします
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もっと派手にして
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もっとあっさりにして
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地の文の比率を増やして
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地の文の比率を減らして
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喘ぎ声を派手にして
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♡を使ってほしい
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比喩表現(転義法)を増やして
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もっと具体的に分かりやすくして
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感情描写を増やして
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肉体描写を増やして
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その他(感想頂けると幸いです)