エリス廃教会で情熱的な一夜を過ごした事もあって、私の性欲は少しだけ満たされていた。
だが、まだまだ足りない。私の性癖が満たされない。
もっと倒錯的に、もっと熱狂的に、もっと狂うような熱を帯びて、壊れるような感情をぶつけたい。
お昼頃にカズマくんと喋った事もあって私は色々と持て余していた。
つい色気が出たと言うか、誰かを誑かす事に楽しさを覚えてしまっていたようだ。
内心慌てて切り上げたが、あのままだと押し倒してしまっていたかもしれない。
「……私は、どっちなんだ?」
私のアイデンティティというものが揺らいでいる感覚があった。
確かに私は前世は二十五の男性だった。そして、今では十三の少女だ。
私の心の重きはどちらにあるかと言われれば、男性であった時の方が重い。
今でもかつての性癖に欲望を振り回しているのが良い例だろう。
だが、昨夜ララに性器を奉仕させた時に気付いてしまった。私は、致命的なまでに女なのだと。
そう言えば、今までオナニーをしていた時は胸だけで、女性器やクリトリスは触って来なかった。多分、怖かったんだろう。私が、いや、俺が、私と言うナニカに塗り潰されるのが。
「私は……どっちで居たいんだ?」
その答えが出ない。まるで自分と言うものを見失ったように思えてくる。
あぁ、きっと、少しずつ私は壊れているのだろう。それはきっと不死人であるせいだ。
今の私には死への怖さは無い。死んでもどうせ生き返れると言うどうしようもない確信があるから。
自分自身が大事にできない。どうせ壊れないのだから、いっそ、激しく壊れてしまえと言う衝動もある。
そして、それの裏返しのように、ソウルに酔う畜生のような自分も居る事を知っている。
「何なんだ、私は?」
自分と言うものが分からなくなっていく。私は誰だ、お前は誰なんだ。
お前は私で、俺は私で……。どうしようもなく面倒になってきた。
ダウナー気質と言うか、破滅願望と言うか、どうしようもなく壊れてしまいたいと言う諦めの感情が私の胸の中でぐるぐると逆巻いている。
それはきっとどうしようもなく穢れていて、どうしようもなく汚らしい感情なのだろう。
ぼんやりと空を見上げて意識を虚無に溶かしていく。カランと麦茶の氷が解ける音すらも置き去りにして、何も無い無意識に心を落としていく。
……心が軋むような音がした。
「おんおん?」
「……らら?」
「あぁ、近くに来たからな。顔を見たいと思って来たのだが……体調が悪いのか?」
「あぁ、いや、少し、自己嫌悪と言うか、何と言うか……、死にたくなってた」
「どういう心境なんだそれは?」
「さてね……」
何時の間にかララが私を見下ろすように前に立っていた。
私服なのか黒いタイトスーツ染みた高級な衣服だ。令嬢を隠す気あるのかこのポンコツめ。
あぁ、まただ、胸の内に隠している筈のダークソウルに私はまた意識を呑まれかけていた。
言うなれば亡者の誘いと言うべきか、ソウルだけを求めて何もかもを捨てたくなる衝動だ。
ある意味鬱の症状のようなものだ。何もかもを終わらせてしまいたくなる、そんな衝動。
近頃近くに誰かが居る事が当たり前だったからか、こうして一人になった事で再発したらしい。
「随分と酷い顔をしていたからな、心配だ……」
「大丈夫。ララが来てくれたから持ち直せたよ。ありがとう」
「ふむ? そ、それは嬉しいな……」
はにかんだララが私の隣に座った。縁側でのんびりと空を見て過ごす、そんな何でもない日常に色が増えた。
……少し、心が落ち着いた。
ふと気付けば庭の端でトレントが此方を心配そうに見ているのに気づいた。
ふふふ、私は幸せ者だな。
どうしようもなくなる前に助けてくれる誰かが近くに居てくれるんだから。
ララの白魚のような指に手を沿わせ、上から握り締める。指の間に挟み込むように指を重ねて、所謂恋人繋ぎのような握り方をする。
少し驚いた様子でララが此方を見ていたが、ふっと笑みを浮かべて握り返してくれた。
「なぁ、ララ、少し話そうか」
「ん、良いぞ。私もおんおんと話がしたくて来たからな」
「そうなのか?」
「あぁ、特に語る事は無いが、何となく、な」
「……んふふ、嬉しい」
「そうか……」
ララのはにかみ顔に笑みを返して、何処か胸が温かくなる。
恋や愛とは違った、人と人とが触れ合って生じる確かな暖かさが幸せな気分にしてくれる。
「実際のところ、何処までしていいのか分からなくて」
「と、言うと?」
「ほら、ララって貴族令嬢だろう? だから、性器を弄るのはまずいかなって」
「あぁ、成程。そう言う事か。……此処だけの話なんだがな。実はもう私に膜は無いんだ」
「へ?」
私の呆け顔にララは苦笑して頬を掻いた。
「その、少しだけ自分の事を語るのだが……、私はダスティネス家の令嬢としてそれはもう愛されて生きて来たんだ。些細な傷すらも負わせない程に過保護に、正しく箱入り娘だったんだ」
「へぇ、そうだったのか」
「あぁ。次期領主としての勉強に性教育もあってな。男性であれば専門の侍女と致して覚えるらしいのだが、女性である私は概要だけしか教えて貰えなかったんだ。だから、自習をしようと女性器に触れて……、その、一人遊びにハマってしまったんだ」
「ほほぅ?」
「食いつきが良いな……。まぁ、箱入り娘だった事もあって外に出る事も出来なかったからな。その分が爆発したと言うか何と言うか……、お世話付きの目を盗んで耽ってしまう事が多々あってな。だから、ふと魔が差したんだ。いずれ殿方を迎えるこの穴は気持ちが良いのかしら、と」
「自分で膜を破いちゃったのか」
「まぁ、そうなるな。自分の身体の事だから気になってしまって……、激痛と共に血が出ていたよ。あの時だろうな、私が今の性癖になってしまったのは。その痛みがどうしようもなく甘美だったんだ。誰にも触れられないようにと守られて来た私が、こんなにも激しい痛みを覚えて苦しむ。そんな背徳感のような被虐心が芽生えてしまったんだ。それから、自分がしてしまった事を正気に返って戦慄したものだ。まぁ、それを機にこうして冒険者として外に出たんだがな」
それはまたアグレッシブな逃げ方だな。確かに冒険者になれば盗賊やゴブリンなどにレイプされて膜を失う可能性があるから、自分で破るよりも外聞は……いや、どっちもどっちではこれ。
「ふふっ、そうなんだよな。当時の私はそれで誤魔化せると思っていたんだ。まぁ、ついぞその瞬間は来なかったんだがな。冒険者として打ちのめされては負けん気で立ち上がって頑張っていたら、今の様になってしまっていたんだ」
「ふぅん、そうなんだ」
「あぁ、だから私の身体の心配をしなくても良いぞ。むしろ、壊れるくらいに弄んでくれると嬉しい」
「……そっか。分かった、ありがとう」
「いや、此方こそ、か? ふふふ、真昼間からとんでもない事を話しているな私たち」
「そうだね。いや、本当に」
そうか、遠慮しなくて良いのか。じゃあ、フィストも検討して良さそうだな。
あぁ、なんで今の私には男性器が無いんだ。この暴れ回る感情を白濁とした欲望のままに排出できればどれだけ楽だった事か。ぐるぐると逆巻く欲望の熱が腹の下の方から込み上げている。
「どうしたんだ?」
「……その、私が勇者候補だと教えただろう?」
「あぁ、転生者、だったか。確か、異世界で死んだ魂を此方に転生させ、魔王を討伐してやがて勇者と呼ばれる者、その候補者だったな。それが?」
「私は生前男性だった、と言えば?」
「…………へ?」
「昨日、ララの質問に答えてなかっただろう? どうして私の我儘を聞いてくれたんだ、って。それが答えだ。私の心は未だに男性のそれのままなんだ。だから、魅力的なララの誘いに乗ったんだ」
私の言葉にララは顔を真っ赤に染めてにやけた表情を浮かべた。口元が緩んで幸せそうに微笑みを浮かべて、照れ臭そうに碧眼を瞬いた。
「そ、そうなのか……。それは、嬉しいな。こんな私に魅力を感じてくれただなんて」
「分かってないな、ララはとても魅力的なんだぞ」
縁側でララを押し倒してキスを落とす。艶やかに揺れる果実のような唇に触れ合うだけで心地が良い。啄むようなキスをして、態と音を立てながら唇を吸ってやる。
唇から頬へキスを落として、左耳に進んで行く。耳の淵に唇を落とし、耳孔に舌を伸ばして下品な音を立てて弄ぶ。ふふふ、耳も敏感なんだなララは。しゃぶりつくすように耳を咥えたり、咥内で溝をなぞるように遊ぶ。
「んっ、ぁ、あっ、んんっ、そ、そんなとこ……」
「んふふ、可愛いよララ。もっと、蕩けて、溶けて、気持ち良くなって……」
「あぁっ、んっ、あっ、あぁ、んぅっ」
左手で右耳に触れてくにくにと耳朶を捏ねる。唾液で濡らした指先を耳孔に差し込んで抜き差ししたり、爪先でかりかりと耳朶をこそばゆくしてやる。
無論、舌での蹂躙も忘れない。右耳から左耳に顔の位置を変えて、耳孔をくちゃりと弄ぶ。
艶やかな喘ぎ声を漏らすララの甘美な声を愉しむ。あぁ、可愛いなぁ、もっと溺れさせたくなる。私の唾液でぬちゃぬちゃになった両耳に細い指を指し込んで掻き混ぜながら、唇を抉じ開けるようにして舌を犯す。
昨夜知り尽くした性感帯を態と避けるようにもどかしい愛撫をして、ララから求めるように誘導をしていく。とろんと蕩けた瞳が私を求めて見つめる。
「あは、ちゃんとおねだりしなきゃ駄目だぞララ。欲しいなら、ちゃんと、お願いしなきゃ、ね?」
「あぁ、もっと、舌で私の敏感なところを虐めてくれ。弄んで、もっと、蕩けさせてくれ……っ!」
「んふふ、良いよ。可愛いララのお願いだからね……、壊れるくらい愛してあげる」
あぁ、これが愛なのか。愛という感情なのか。いいや、これはただの肉欲だ。
愛がこんなにも情欲に満ちたものであってたまるものか。
愛がこんなにも乱れた獣欲に溺れるようなものであってたまるものか。
愛が、こんなにも、性に満ちたものであってたまるものか。
これは、ただの醜い肉欲の現れだ。ただの方便だ。こんなものが愛であってたまるものか。
「もっと、もっと欲しいんだ……。おんおんの愛を、もっと……」
ゾクゾクと背筋を込み上げる痺れた感覚に歓喜を覚える。
ララの咥内を味わうように甘美な唾液を食らい尽くし、歯茎を舐めて性感帯を虐める。耳を犯す両手の指でねちゃねちゃと耳孔を穿り、息が吐けないくらいに舌を絡ませる。
潤んだ碧眼が宝石よりも尊く綺麗に感じた。これを私の物にしたい、そんな願望が胸の内から込み上げてくる。どうしようもなく私に依存させて、何をするにも私の許可を必要とするような、どうしようもなく退廃的な壊れた感情をぶつけたい。
どれだけの時間が経っただろうか。思い返せば一瞬に感じるが、ララの頬に染まる赤面とは違った夕焼けの色を見てふとそれだけの時間が経った事を感じてしまった。
「……キスだけで半日過ごしてしまったな」
「ふふふ……、そうだな。でも、それも良いんじゃないか。おんおんの愛をこれでもかと感じられたからな。私は満足だぞ。不思議な気分だ。痛みでは感じられない、もっと暖かな幸せな感情を感じられたからな」
「………っ」
「おや、照れているのか?」
「うっさい。ぐちゃぐちゃのとろとろ顔晒してた癖に真面目な顔をするな、ばか」
「ふふふ」
頬の熱さを隠すためにララの豊満な胸元に顔を埋める。くそぅ、柔らかくて気持ちが良い。
先程の愛撫で汗をかいたのか少ししっとりしていたが、逆にそのララの匂いが鼻孔に入り込んで興奮を誘う。ずっと嗅いでられる匂いだ。
とくんとくんとララの鼓動が触れている事で感じられる。少し早く感じるのは、ララも興奮しているからだろうか。そうだったら、嬉しいな……。
「今に見てろ、壊れるくらいの快楽でその澄まし顔をねちゃねちゃのどろどろにしてやるからな」
「期待してるよ。私はおんおんだったら何をされても受け入れられるからな」
「……くそぅ、無敵かよお前……」
「なんか可愛らしく思えて来たな。随分と可愛らしいご主人様だな?」
抱き締められてより深く胸に沈められてしまった。嫌じゃないのが本当に腹が立つ。
決めた。男性器を生やす何かしらの手段を探してやる。絶対にララをこの手で孕ませて、何もかもを私のものにしてやるからな……。
……膨らんだ腹を愛しそうに撫でる光景が思い浮かんでしまった。
ちくしょうめ、これだからドMは……。取り敢えず金属製の首輪と鎖を買ってこよう。廃教会をこっそりと改修して地下室を作って調教部屋を作ってやるからな……。
まぁ、今日は勘弁してやる。準備を整えたらそれはもうぐちゃどろに顔を歪ませてやるからな……。
サブタイトルに内容の概要乗せ……
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る。(キャラ+番号+内容)
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ない。(キャラと番号のみ)