女の子が少ない世界にTS転生した 作:アリス
朝目を覚ますと美少女になっていた。いわゆる朝おんという珍事に冷静に対処できたのは記憶が流れ込むことで脳が処理落ちしかけていただけなのかもしれない。令和の時代を生きていた俺の記憶は仕事から帰ってきてシャワーを浴びたところでプッツンと途切れていた。恐らく心臓麻痺的な奴で死んだのだろう。鏡を見るとロングヘアの可愛らしい顔をした少女がぼんやりとした表情で見つめ返してきた。これが今の私。春から高校生のぴちぴちのJKにしてJかっぷ女子だった。
「おはよう亜里沙。コーヒーは飲むかい?」
一階に降りると若い男性が話しかけてきた。今世の父親だ。
「おはようお父さん。まだ歯磨きしてないから後で飲むね」
急に前世の記憶が蘇って俺と私が入り混じったような状態でもいつも通りの返事ができた私は歯磨きを終えて朝食と一緒にコーヒーを受け取る。
「お母さんは?」
今世のお母さんは女性警護員で忙しいからもう仕事に行ったのかな?私の生きる世界は前世とちがって100年くらい前から女性の出生数が激減してて女性の存在がとても貴重だから厳重に保護される。でも女性が男性に囲まれたら怖いから女性警護員の出番なのだ。
「イブイブの警護。人気アイドルグループは朝から大変だねぇ。」
イブイブは女性が少ないこの世界では珍しい女性だけのアイドルグループ。どの子も1000年に1人の美ってぐらいのすごい美少女グループだ。そもそも少ない女性が襲われる事件とかが多発したから基本的にこの世界の女性は男性を毛嫌いしている。人口のほぼを占める男性にアピールする芸能人になる女性自体が少ないのだ。
簡単に言えば前世の俺がよく見ていた貞操観念逆転モノの逆転しなかったバージョンみたいな世界。男女比率が10000:1くらいになっていて女性の性欲は減衰してて男性の性欲はたぶん増大している。ほかにも法律とか制度とか歴史とか色々と前世で異なる部分があるみたいだ。
「変なプレゼントとかたくさん来るらしいね」
隠しカメラが仕込まれたテディベアに精液が混ざったチョコとか使用済みゴムとか。私が受け取ったら……前世の癖とリンクしてゾクゾクしちゃうかも。
「亜里沙がアイドルやったらイブイブの子たちよりも可愛いからもっと大変だろうなぁ」
いつもなら親の贔屓目だと流していた言葉だが、前世の雄側の目線でじぶんのことを見れるようになった私はそれがお世辞じゃない本当の言葉だとわかる。雪のように白い肌にぱっちりとした目、どこか消えてしまいそうな儚げな雰囲気に包まれたわたしは1000年に1人クラスの美少女達が5人集まっても勝てるくらい可愛らしいのだった。おまけに胸のサイズで私に勝ってる子はいないし。
「高校生になるからやってみようかな?なんてね」
今の私には将来の夢とか考えていたことがごちゃごちゃになっちゃって何をしたいのかわからない。前世では就活に失敗して新卒チケットを無駄にしながらブラック企業に就職して、同人エロゲーをやるか意味もなくボーっとするか仕事にすべてをつぶされるかの毎日だった。少なくとも今世ではもっといい生活を送りたいから勉強は頑張ろうかなとか思ったり。
「まぁ亜里沙の自由だよ。進学する高校は決めたのかい?やっぱり女子高かな?」
保護する対象は纏まっているほうが管理しやすいのか女子高は前世より大きくて1つの街みたいになっている。一度入学したら3年間は修学旅行みたいな特別な用事以外は学校街の外には行けないらしい。逆に共学に行くと前世と似たような高校だけどクラスの女子は0~5人くらいしかいないらしい。
「うーんまだ決められてないの。共学にいってみたいかも?」
昨日までは女子高に行くつもりだったけど前世の気分的に大量の女の子に囲まれて3年間同じ街で過ごすの勘弁してほしい。ブラック企業で自宅と会社の往復だけだった反動で旅行とかにもたくさん出かけたいのだ。
「共学に行くなら女子進学手続きとかあるから早めに決めるんだよ?」
お父さんはパンフレットを並べながら言った。女子高、近くの共学、滑り止めの共学、男子校。いや、なんで男子校のパンフレットあるのお父さん……。
「男子校のか?これはポストに入れられてたんだ。どうやら共学に切り替えるための試験段階で一人だけ女子生徒を受け入れるようだ。もし亜里沙が入ったら大戦争になっちゃうなぁ。」
はははと笑いながら男子校のパンフレットを渡してくる。最寄り駅から4駅いったところにある高校のようで他の高校に比べてかなり近いところにある。
「さすがに男子校に1人で入学したらお母さんに怒られちゃうよ!」
男子校のパンフレットを捨てて近くの共学のパンフレットを見る。こっちは最寄り駅から7駅だけど十分通える範囲だと思う。でもまだ全然決める気がしない。前世の記憶がよみがえったのは今朝なんだから頭が回らないよ。すこし気分転換をしたくなった私は出かけることにした。
「ちょっと散歩に行ってくるね」
靴を履きながらリビングにいるお父さんに向かって言うと
「今日はお母さんが一緒にいかないんだから危ないとこに行くんじゃないよ」
と返ってきた。ある意味この世界初日だからそんな冒険はしませんよとは言えないけど行ってきますといって家を出た。