ダークエルフには男が産まれない。
女系民族と呼ばれる所以がそれである。
それは海の中では呼吸が出来ないと同じくらい常識である。
ダークエルフの血を引いたハーフエルフでも産まれにくい。ダークエルフの血が薄まり続けても呪いにかけられたが如く男子を産まない。
今この時代においては男を忌み嫌う為男を産まないなどとあやふやな理由でしか今は説明出来ない。
しかし、奇跡や突然変異という出来事は必ずある。
人間の男が存在しないダークエルフの神殿で一人の女性が何の前触れもなくダークエルフの男の子が産まれることもあるのだ。
ダークエルフの女王オリガ・ディスコルディアと劣らぬ魔力量を誇る傑物として。
☆
ダークエルフの神殿から近い森。
この森はダークエルフが信奉する神''男の巨人''の憩いの場所として知られた神聖な森に銀髪のダークエルフの少女が浮かぬ顔で歩いていた。
「はあっ」
幼い日のミスティオラ・アーテーはこの森に来てから幾度もため息を吐いた。
爽やかな風、甲高く凛々しい鳥の鳴き声、心地よい陽の光。
いつものようにアンニュイな気分を変える森でもナーバスなミスティオラの気分を変えることは困難だった。
それほど彼女の悩み事は深く複雑なものだった。
「私がダークエルフの女王なんて・・・オリガお姉様の方が相応しいのに」
とミスティオラはため息混じりに呟いた。
そうミスティオラの悩み事はダークエルフの女王継承という件である。
男の巨人を身に宿しダークエルフの女王として一族を率いる。
その重大な責務を12、13才ほどの少女に託されたのだ。
彼女の尊敬する姉である一族始まっての傑物オリガ・ディスコルディアを差し置いて。
ミスティオラに悩むなと言われてもそれは無理な話だ。
しかし彼女の最大の憂いごとはそれではなかった。
「ネッドお兄さまがオリガお姉さまと一緒になるなんて」
ミスティオラはより感情を込めて涙ながらに言った。
そして歩みを止め蹲りその場ですすり泣き始めた。
見ている者が心痛むように。
そう、彼女は女しかいないはずのダークエルフで唯一の男。異端児であるネッド・ベイセルに並々ならぬ感情を持っていた。
ミスティオラが女王継承をした翌日に二人の婚姻式が行われるのだ。
愛しき男と尊敬する姉が、よく見える貴賓席でその仲睦まじき姿を見せつける。
分別ある大人でさえ戸惑う鬼畜とも言うべき所業、ましてや子供であるミスティオラに受け入れろと言うほうが酷な話である。
☆ミスティオラ視点☆
目から出る涙が止まらない、体も切り裂かれたように辛い。
どうして私が女王なの?
どうしてオリガお姉様じゃないの?
どうして、どうしてネッドが私の物になれないの?
それを考えると手の力が入り腕に食い込む。
「ダ、ダークエルフの女王になんてなりたくない」
私はやっとのことで声を絞り出した。
小さくか細いが私の中で鐘が鳴るかのように大きく反響した。
最初は私がネッドの嫁だと最高判断機関の元老院からそのように伝えられた際は驚いた。
まるで毎夜見る夢の出来事だと、幸せな夢だと思った。
だが、時間が経つにつれて私の花嫁装束を見せられ周りから祝福され現実だと実感するにつれて舞い上がった。
男嫌いな同胞からは憐憫な目で慰められたが私は嬉しかった。
オリガお姉様に褒められた以上に嬉しかった。
だが、つい先日オリガお姉様が何故か女王の資格を剥奪され私にその資格が移った際は悲しかった。
皆の前で元老院達が宣告した際は足元に穴が開いたかのような空虚感が私を襲った。
宣告されたその後のことはよく覚えていない、昨日何を食べたか。どのように過ごしてきたのかも。
ネッドの姿を見ると涙が出て来るため多分部屋で塞ぎ込んでいたと思う。
だだ私の脳裏にあるのはネッドの隣で口元を綻ばすオリガお姉様の姿だった。
夫婦の契りを結べと命令された時に鉄仮面な表情に熱が入ったのは分かった。
冷たさと凛々しい表情に変化はなく大半は分からなかったろうが、親しい私にはよく分かった。
「妾が人のものになろうとは」
としきりにため息を吐いて呟くが人が居ないバルコニーで鼻歌を歌い、髪で隠れた目でチラチラとネッドを見つめる頻度が多くなった。
あまつさえ二人の新居になる部屋を自ら掃除しネッドの身の回りの世話を熱心にし始めた。
幸せそうなお姉様に生まれて初めて嫉妬と殺意を覚えた。
オリガお姉様に非がないのは百も承知だが悪気がないお姉様がただただ腹ただしかった。
部屋に塞ぎこむ私に食事を運びドアの外から優しく声をかけて来た際は惨めで悔しかった。
新しく女王となった際に婚姻を破棄させてやろうかと思ったが、実質里を統括する元老院の命令を撤廃することはできない。
下手したら呪いをかけられ追放となる、死しか希望がない生き地獄が待っているからだ。
打つ手なし、途方に暮れる私は少しでも気分転換する為に森へ来たが余計に辛くなった。
「消えて無くなりたいよ、兄様」
嗚咽が止まらない、ボロボロと出る涙を拭っても拭っても出てくる。
悲嘆にくれていた私の背後からガサリと葉を踏む音が聞こえると
「久々の獲物はガキ一匹か、物足りねえけど仕方ねえ!」
聞き覚えのあるしわがれたダミ声が私の耳へ届いた。
「ゴ、ゴブリっ!?きゃあっ!」
慌てて振り返る私は強い衝撃が襲い倒れこむ。
起き上がろうとしても手足に爪が食い込み強い力で押さえ込まれた。
そして目の前には三匹のゴブリンが私の顔を覗き込む。
毛のない紫色の顔は恐怖で声も出せず泣いている私に興奮しているのか嗜虐な笑みを浮かべていた。
「番犬が張り込む森でダークエルフを捕まえるなんてラッキーだな」
と左のゴブリンの言葉に正面、つまり私を馬乗りにしたゴブリンが頷く。
「まだチビだが仕方ねえ。久方ぶりのレイプは楽しもうぜ」
そして、正面のゴブリンが血のように赤い花を私の顔に近づけた。
「このアルタリアの花でお前をチンポしか考えない淫乱にしてやるぜ」
(助けて、誰か助けて!オリガ姉様、兄様、ネッド、ネッド!)
なんとかして逃げようとジタバタするミスティオラだが、か弱い女が大の男を拘束するゴブリン達の力に敵うはずもなく数秒後にはグッタリと疲れたように動かなくなった。
涙でぐしゃぐしゃになったミスティオラの顔は赤らめトロンと夢見心地な目つきとなっていた。
そして股の衣服部は透明な液が染み渡りグッショリと濡れていた。