「あっ、んっ、そこはダメ。皆が見てるよネッドォ」
「何ちゅう夢を見とんじゃ貴様は!」
木の床で熟睡するミスティオラ。
幸せな笑みを浮かべる彼女を傍目にカイルはドアノブを縄で締め付ける。
「くそッ、このような戯れ事で儂は死なんぞ。死んでたまるか」
部屋の外ではチャキンチャキンと剣の鍔を鳴らす音が殺気立っている。
昨日の捜索隊つまりネッドの信奉者達が今すぐこじ開けて来そうでカイルはビクついていた。
ネッドが「入って来たら潰します」と盛大な脅しをかけているため今は沈黙を保っていたが
「オリガ様の合図があればすぐに乗り込むぞ」
「元老院に奴の首を差し出せばネッド様の厳罰は免れよう」
「我等の主人を誑かした女を亡き者にしてくれるわ」
「家柄だけの女に天誅を」
と嫉妬に駆られた同胞達が歯軋りをして犬が唸るような声色がカイルの耳に入り戦々恐々としていた。
「ちくしょう、あの鉄仮面め。儂が死んだら化けて出てやるからな」
とカイルは剣を抜き椅子に座りギリギリと歯軋りをする。
「ったく、ニダヴェリーナの救世主たる者が情けない。アスタリアの花に当てられたからといって少女に手を、と美女か」
「んんっ、ネッドぉ。そこ、イク。妾をむちゃくちゃにんんっ」
「・・・一日で淫乱な売春婦になったか」
この殺伐した中でミスティオラは身を悶えゴロンと横になり布団のシーツに包まる。
まるで繭のような彼女にカイルはしげしげと見ると自然と頬が綻ぶ。
(これは、中々そそるのう。オリガ様並みの美貌に容姿か。こりゃネッドも堪らんわい)
今更ながら成長したミスティオラの姿を見るとエキゾチックで嗜虐心を注がれる。
心地よい寝息を立て安心しきった表情で赤子のように熟睡している様は保護欲を駆り立てるが体にかけた薄いシーツで写された豊満な胸や桃のような尻は女でもむしゃぶりたくなる。
「美女になる事は分かっていたがこれほどになるとは思わなんだ。しかし、何故こんなに大きくなったんじゃ。不思議じゃ」
まあ、ネッドが「皆目見当も付かない」と言われたら儂もう知らん。
ネッドの体液で大きくなったんじゃろ多分。
彼奴絡みなら何があってもそれほど驚きはない。
「しかし、そうか。このミスティオラと本当にやったのか」
時間が経つと同時に奇想天外な出来事を現実として受け止め始めたカイルはフウっと疲れを吐き出すかのように息を吐く。
「これでネッドとミスティオラはニダヴェリーナから追放か・・・糞みたいな習わしのために傑物が潰されるとは勿体ない。いや、オリガ様も危ういな」
気の毒になぁ。
毎日ネッド、ネッド、ネッドと絡んでいくネッドラブ勢筆頭かつ婚約者としては。
しかもそれが最愛の妹に寝とられるという鬼畜な所業。
発情して理性を失っていたとはいえ酷いの一言に尽きる。
顔を青ざめ帰って来ないネッドを涙ぐみながら健気に探し、ようやく見つけた痕跡の散らばったアスタリアの花に汗が染み込まれた土と体液の嫌な匂いに誰もがヤッタと言ったがオリガ様は首を振り信じず。
点々と続く土のシミと足跡を辿るとミスティオラの大きな喘ぎ声にネッドの暴力的な声が屋敷の中から聞こえてようやく信じた。
そして、儂を含んだ疲労困憊な捜索隊は屋敷に響く嬌声を無視して寝ていたのにオリガ様は二人が交わっている部屋の前で茫然自失してただ立ち尽くしていた。
情事が終わるまでずっと・・・幽鬼のように。
「あの様子じゃ元老院共を抑え付けるのは無理そうじゃな、オリガ様は。頭が回らぬ部分があるし女王になっても主導権を握れんじゃろう」
まあ、オリガ派の優勢が変わることはないだろう。
人望溢れるオリガ様にダークエルフは慕っておるし喚くだけの元老院に付いて行く者はいない、多少は派閥替えをする者がいようが関係はない。
(まあ、儂が身を寄せる勢力は決まっておるが)