「あっはっはっ!凄い凄い私達空を飛んでる!!」
「興奮し過ぎて口調元に戻ってんぞ」
「口調も元に戻るわ、だって長年の夢を叶えられたんだもの!」
と私は遥か上空からはしゃぐ。
見えない何かに抱き抱えられた浮遊感に包まれながら高速移動する私達。
鳥よりも高く馬よりも速く進む様はまるで風になったようで楽しい。
「やはり便利じゃのう、お前の術は。流石はこの世の理を司る始祖の魔術師。最強が使うに相応しい魔術じゃのう」
「いやオリガさ、オリガが最強だろ。底なしの呪力量に天候を操り魑魅魍魎を強化できる正に超人。彼女に勝てる奴はいないよ」
「強化出来ても操る事が出来なければ意味ないじゃろ、それに彼奴は堅物じゃから応用力がない」
「確かに最悪の事態を考えずに行動する癖があるからなーっと。はい、着いた」
「おぉっ、もう着いたのか。で、どこじゃここ。雲の中じゃからよく見えん」
「ニダヴェリーナの森林地帯と人間達が住む南方の国の境となっている荒野だ」
「あぁっ、糞人間が住んでいる国の境か」
すーっと軽やかに下天し剥き出しになった大地を見て私は「うへぇっ」と口を歪める。
自然豊かなニダヴェリーナから程遠い死を連想する荒野、雲の中だから気づかなかったが暗い雲が一面に広がって陰気臭い。
枯れ木も多く土もカサカサ、山も岩肌が露出していたがすぐそばには豪華絢爛な屋敷が構えていた。
ニダヴェリーナの神殿と同規模な立派な立派な造りだが木製のさすまたに投網や投げ縄と檻を乗せた馬車が一列に並んでいたため何の為に建設したのかは察しがついた。
屋敷の周りにある草原は誰がここの住人達をどうしたのかがよく分かる。
その本人が苦い顔をする私に口を開いた。
「こういう下卑た極まりない屋敷は多くある、潰しても潰しても人間共がダークエルフを盛んに狩りに来るからな」
「最近では少し強い頭の回る魔物も使っておるからのう、キリがないわい。で、悪知恵働くお主は解決策を見出しとるんじゃろう」
「そうだな狡猾で明晰な俺は前々から準備をしていたから後は実行するだけだ」
さらりと自慢する奴だが、儂は『自分で言うか?』と表情に出すがそれに反論をしたりはしなかった。
だって事実だから、前々から何回も儂に愚痴ってたし。
「お兄さま」
と会話を遮る声が聞こえた。
聞き慣れたその声に儂は安堵の声をかける。
「おぉっ、目が覚めたかミスティオラ」
ネッドに抱き抱えられたミスティオラは儂に気付かずネッドを見つめていた。
ぎゅっと服にしがみついて身を任せる様は赤子のよう・・・だがやっているのは美女。
しかもニダヴェリーナ屈指の美人が少女じみた事をしていて儂は身悶えた。
(おぁぁぁあああああああっ!超可愛い!)
シーツにくるまったミスティオラが綺麗過ぎる。
長い手足にさらりとした長い銀髪、白いシーツに隠れた豊満な胸と桃尻。
美のビーナスさながらのミスティオラに儂は邪な思いを馳せた。
このままお持ち帰りしたい!
尻を揉みしごきながらその胸に埋めたい!
口付けをしながらXXXをしまくりたい、朝まで!!
という犯罪者の如き考えが頭の中によぎりながらも理性で抑え疼く体とニやける口を押さえながら二人を見ていると儂はネッドの表情にピキッと体が固まった。
ミスティオラの熱を帯びたその視線、好意を向けられているというのにネッドはその熱を冷ますかのような冷ややかな視線を送っていた。
(あっ、やばい。ネッドが不機嫌だ。何かするぞ此奴)
止めねば-と儂がネッドに声をかける前に奴はミスティオラを抱えた手をパッと離した。
当然のようにミスティオラは尻から落ちドンっと嫌な音が聞こえた。
「きゃっ!」
うわっ、痛そう。
尻餅をつき「痛たたっ」と尻を撫でるミスティオラを見下すネッドは冷たい言葉を吐く。
「目は覚めたか?ミスティオラ」
「は、はい」
「ならば屋敷に入り何か羽織ってきなさい」
「わ、分かりました」
ミスティオラは一礼すると言われるがままに屋敷の中に入った。
その背後姿をじっと見つめるネッド、オリガソックリなその顔は曇っておりますます彼女に似ていてドギマギした。
「もしかして怒っておるか?」
おそるおそる聞く儂。
ニダヴェリーナに居られなくなった要因、ミスティオラにもしや八つ当たりをしているのか?と思っていたがネッドは首を振る。
「いや、全然。ただ危機感がない彼女にイラッとした」
そう呟くとネッドはため息を小さく吐き屋敷へ入った。