「さあ、ニダヴェリーナでは味わえない甘味物だよ」
と俺はソファに座る二人にオボンに渡す、親が子供するように優しく。
二人とは親と子というよりも三世代ほど離れているけど。
出した板チョコとコーヒーにミスティオラは首をかしげる。
「ワインは?優雅に話し合う時はワインが一番だと国母様が」
「ワインを飲んだら頭が鈍る、元老院のババア共は四六時中寝てるだろう」
全く、ミスティオラめ。
ニダヴェリーナの悪しき慣習を言い放ちおって。
あのような居眠り議会のどこが優雅か。
「・・・どこにあった」
「ここ(屋敷)に落ちてた」
カイルは「ゲッ」と苦い声を出し赤い瞳で俺を見てコーヒーとチョコに指を指す。
「罰当たらんかこれ」
「安心おし、野盗共は罰を与えたから」
高貴な身なりをした野盗共は良き肥料となり荒野で花ではなく草を生やしているが・・・草。
「それじゃあそのまま聞いていてくれ」
俺はいつものように何も無い空間に手を当てダークエルフの言語で呪文を唱える。
すると手からパキパキと音を立て天井と壁まで広がった氷が広がり大陸の地図を作成していく。
透明な氷が走り輝く幻想的な光景に二人は「わあっ」とウットリとした声を放つ。
「綺麗ですね、カイル」「うん、幻想的でロマンチック」
(口調が元に戻っているぞ)
と背後の二人に言いかけるが今は口を閉じ地図の作成を行う。
ニダヴェリーナの高貴な方々はもったいぶった話をするから気に食わん。
素で話した方が話しやすいと思わないのか、別にいいけど。
「それじゃあ、ざっくばらんに説明するな。北の森林にダークエルフの郷''ニダヴェリーナ''。今俺達がいる荒野''不毛の大地''から南に人間を中心とした多種族がそれぞれコミュニティを形成している」
「ほー、そうだったんじゃな」
とミスティオラはコーヒーカップを手に持ち頷く。
『字も書けない人間の子供でも知っていることだぞ』と嫌味を言いたくなったが仕方ない。
ニダヴェリーナでは閉鎖的な空間だ、外は不浄なものと疫病が如く嫌うからな。
(だからこそ魔物と人間に連れ去られた同胞を助けようという発想は頭にないんだ、穢れたとみなすからな)
「今数が多く力を持つ人間達は盛んに奴隷狩りをしていてな、高値で売れるダークエルフを攫いにこの場所(不毛の大地)に居るわけだ」
「?何故そのような事をするんじゃ」
「楽して稼ぐ為と俺達が昨日したアレをするため」
ミスティオラは顔を赤らめ黙り込みモジモジする。
愛い反応をするなぁ、またいじめたくなってきた。
「今フルスタージャのハイエルフと裏取引をしていてな、高値でダークエルフの血を連なる者を買ってくれている」
「貴様そのようなコネをどうやってつくった」
「内緒」
言えば俺の魔術がバレるからカイルでも秘密だ。
「我々は身を寄せるためと同胞を救出する為に明日フルフタージャへ向かうぞ」
☆
「さて、どうしたものか」
優雅にワインを傾けキングベッドに寝転び思案する俺。
明日フルスタージャへ旅立つのにこの屋敷を手放すべきか残すべきか迷っている。
有り金全部持って行くし殺人の証拠が残っている、普通ならば燃やすべきだ。
しかし、これほどのものを手放すのは勿体ない。
屋敷にはアレやこれやと趣向を凝らしたものを設置していてここに来れる奴はいないだろうし。
「オリガがいればこのような些細な事に頭を抱えずに済んだんだがなぁ」
ワインを傾けると「入るぞ」と女の声がした、ミスティオラだ。
俺が返事をする前にガチャっとドアを開けるとバスローブ姿のミスティオラがこちらに目を向けず顔を赤らめ腕を組んでいた。
バスローブの隙間からは衣服らしきものは身に付けておらず髪もしっとりと濡れている。
つまりヤリにきた訳か、あの美女をもう一度楽しめるわけか、耄碌状態じゃなく・・・有難い。
「お前と、その、話をしにきた。良いか?」
「構わないよ。立つのもなんだからソファに座ろうか」
「っ!!・・・わ、わかったぁ」
俺の優しい声にミスティオラはピクッと反応し驚愕の色を浮かべると顔をますます赤らめ項垂れた。
オズオズと移動するミスティオラが獲物に見えて仕方ない。
体も若干揺れ腕を組み自分を守る姿勢、彼女にとっては一世一代の大勝負だろうが俺にとっては楽しい楽しい大人の遊戯の始まりである。
(ちょうどいい、ミスティオラで屋敷の催しを試すとしようか)
俺はベッドから立ち上がりソファへ歩みを進めた。