モルガンが、既にこちらに向かっているのを」
その言葉と共にリビングにいたロスヴァイセは驚きを隠せず、目を見開く。
「モルガンさんが、こちらにですか」
「えぇ、あなたも知っているわよね、モルガンの事は」
その言葉を聞くと、ロスヴァイセもまた、ゆっくりと頷く。
「アーサー王伝説に出てくる伝説の魔女という事は。
その後、どのような経緯でスカウトされたのか分かりませんが、オーディン様のヴァルキリーとして、現在は所属していると」
「彼女の天才的な魔術の腕は、三大勢力のどこを探しても見つからないわ。
でも、同時に誰よりも、支配を望む女はいないわ」
「今は、オーディン様との契約で、力を制限されていますが」
「紘汰を洗脳して、その制限を解かす可能性もあるわ」
「……なるほど、確かにあり得る話ですね」
「そうならないように、警戒する必要がありますね」
ソファーに座っていたマリアは呟きながら、手に持っていた紅茶の入ったカップを口に運ぶ。
仲間であり、同僚であるはずのヴァルキリー。
しかし
「実質、私達の所の多くは問題児ばかりですからね」
「実力重視とも言えるけどね」
苦笑するロスヴァイセに対して、マリアもまた釣られて笑う。
「うぅん、まさか、これが、こんな所にあるとは」
学校からの帰り道、俺は安売りしているDVDコーナーを見て、思わず見つめてしまう。
それは、あの伝説のDVD、「フレッシュオレンジアームズ誕生!~君もつかめ!フレッシュの力~」だった。
現在では、気軽に配信サイトでも見れるようになっているが、DVD本体がこうして手に入るのは、難しい。
「どうしようかな、買おうかな。
でも、勝手に買って、ロスヴァイセさんに怒られないだろうかぁ」
そう言いながら、俺はDVDを買おうか、買わないか迷っている。
「何を迷っているんだ」
そう悩んでいる俺を話しかける声に振り向く。
そこには白髪に長いポニーテールにしたもの。口紅は青い女性がいた。
キャリアウーマンを思わせるスーツを身に纏っており、クールに仕事ができる印象を持つ女性だった。
「いやぁ、このDVDを買おうか、買わない迷っているんですよ」
「これをか?
そんなに、珍しいのか、これは?」
「まぁ、珍しいと言ったら、珍しいけど、何よりも、これが好きですから」
「好きだと?」
その言葉に女性は少し首を傾げる。
「はい、俺、今まで色々な仮面ライダーを見てきたけど、鎧武がとにかく熱いんです。
何度も挫けて、力の意味が分からずに葛藤しているけど、それでも前を向いて戦う。
そんな主人公の姿が好きなんです」
「変わった男だな」
「あはははぁ、まぁ」
思わず熱中してしまったけど、ちょっと恥ずかしいな。
「おい、紘汰、さっさと帰るぞ」
「あぁ、悪い、クリス」
そう俺が話し込んでいると、雪音がこちらに来た。
何やら、目的の物があったらしいが、恥ずかしがって、別行動していた。
そんな雪音が俺の元へ来ると、目を見開いて、女性を見ていた。
「てめぇ、いつから、ここに来ていた!」
「久しいな、クリス。
なに、アースガルズの次期当主となる男が気になったからな。
ふふっ、まぁ、面白くて、気に入ったよ」
雪音は何やら怒りを隠さない様子で女性を見つめており、そんな雪音に対して女性は笑みを浮かべながら答える。
「雪音、知り合いなのか?」
「・・・こいつはモルガン。
ヴァルキリーの中でも経歴が一番やばい奴だ。
正直、あたしはてめぇがロキと手を組んでいるんじゃないかと疑っているけどな」
そう言いながら、雪音はすぐに俺の傍に来る。
「その冗談は笑えないぞ。
ロキ如きに従うつもりはない。勿論、オーディンの奴からもその座は奪うつもりだった。
しかし、後継者がいるとは聞いていたが」
そう言うと、モルガンさんは、そのまま俺に近づくと、目を見つめる。
「黄金の果実。
情報で聞いたが、なるほど、万能故に、その使い方は難しく、そして分かりにくい。
身近にある物を創造し、作り出しても、それが自身の能力だと気づかない。
だからこそ、現実では存在せず、この鎧武という物語に憧れを抱いたからこその発言」
何やら、モルガンさんが笑みを絶やさないが
「ならば、既に決まっているな。
紘汰、私が運命の巫女になろう」
「運命の巫女?」
その言葉に雪音は首を傾げる。
「えっと、仮面ライダー鎧武で言う所の、黄金の果実を持つ始まりの男と共にいる女性だな。
他にも始まりの女とか言われているけど」
「つまり、てめぇ、まさか」
「そういう事だ、我が夫」
モルガンさんの一言に、俺と雪音は驚きを隠せなかった。
そんな中で、いち早く雪音は口を開く。
「てめぇ、久し振りに会ったと思ったら、どうやら寝言を言っているようだな」
「ふんっ、お前は相変わらず生意気だな」
「うるせぇ! いい加減にしねぇと」
そう言って、雪音はボウガンを取り出す。
それに合わせるようにモルガンもまた、どこから出したのか、黒い十字架型の槍を手に持つ。
「いや、待て待て!?
こんな所で、暴れないで!」
俺はそう言いながら、すぐに2人を止め、店から出て行く。
「本当に、なんで、こうなるんだ」
雪音とモルガンに挟まれながら、この状況を打開する方法を思考する。
今は、俺が間に入っており、周りに人がいる事で戦わない状況を作り出せているが、もし、誰かを巻き込んだら大変だ。
「落ち着け、雪音。
ほら、何か食べようぜ」
そうしていると、何かに包まれる。
「これは」
「ロキの奴、実験のつもりか。
面倒な奴を仕込んでくる」
その言葉と共にモルガンが睨んだ先には、人型の巨大なアンキロサウルスの様な姿をした単眼の巨人がおり、その手には巨大な金棒を持っていた。
「あれはっ」
「ギガンテスのクローンか。
あいつは、本当に様々なDNAを持っているようだな」
「それよりも、早く、あいつをなんとかしないと」
俺はその言葉と共に、オレンジロックシードと戦国ドライバーを取り出す。
【オレンジ】
腰に戦国ドライバーを回し、そのままオレンジロックシードを起動させる。
「変身っ!」
【ソイヤッ! オレンジアームズ! 花道オンステージ!!】
頭上から降りてきた鎧が俺の体に装着され、同時に大橙丸と無双セイバーを構える。
「てめぇは、俺が相手だ」
「まったく、無茶をするぜ」
そう言いながら、俺はそのままギガンテスに近づき、雪音はボウガンで援護してくれる。
ギガンテスは、その巨体に見合った力と防御力を持っており、俺の攻撃も、雪音の攻撃もあまり効いていない様子だ。
「ちっ、硬いな」
「でも、弱点がない訳じゃない。
こいつだって、生き物なんだ。
なら、どこかに急所がある筈」
そうしている間に、ギガンテスは雪音に向けて金棒を振り下ろしてくる。
大橙丸と無双セイバーで、その攻撃を防いでいくが、その衝撃で俺は吹き飛ばされてしまう。
「くそぉ、なんてパワーだ!」
「おいおい、大丈夫かよ!」
「あぁ、なんとか」
そう言いながら、俺はなんとか立ち上がる。
「なるほどな、少し、手助けが必要か。
我が夫、ドングリとマツボックリのロックシードは用意できるか?」
「えっ、あぁ、なんとか」
その言葉と共に頷き、すぐに作り出す。
オレンジロックシードやバナナロックシードと比べても、ランクの低い二つのロックシードを作り出すのは、簡単だった。
「まずは、ドングリを使え」
【ドングリ】
俺はモルガンの言葉に従うように、ドングリロックシードのスイッチを入れると、ドングリの形をしたアーマーが転送される。
それを手に取ると、そのまま戦国ドライバーに差し込む。
【ソイヤッ! ドングリアームズ! ネバーギブアップ!!】
ドングリの鎧を纏った姿へと変身すると、その手にはドングリアームズの専用武器であるドンカチが装備されていた。
「さて」
その言葉と共に、手に持った槍を地面に叩く。
それと共にギガンテスがその巨大な棍棒を、こちらに振り下ろす。
「っ!」
ドンカチで、その棍棒に対抗するように、振り上げる。
明らかに大きさが違う二つの武器だったが、その勝負に勝ったのは、ドンカチだった。
「えっ?」
「相変わらず、とんでもない奴だ、モルガン」
どうやら、棍棒を破壊できたのは、モルガンが何かをしてくれたおかげらしい。
「なに、棍棒の強度を少し下げただけだ。
それよりも、そいつの弱点は既に分かるだろ」
「あぁ、そういう事か」
その言葉と共に納得すると同時に、俺は瞬時にマツボックリロックシードを起動させる。
【マツボックリ】
「ふっ」
【ソイヤッ! マツボックリアームズ! 一撃・インザシャドウ!!】
俺の姿はドングリアームズからマツボックリアームズへとアームズチェンジする。
同時に専用武器である影松を手に、ギガンテスへと近づく。
武器を無くしたギガンテスだが、その巨大な拳で攻撃を放つ。
しかし、マツボックリアームズは素早く動く事ができ、その動きについてこれない。
「はあっ!」
俺の放った突きにより、ギガンテスの体を壁走りのように、地面すれすれまで下がりながら移動し、そのまま背後を取る。
そのままギガンテスの頭に向かって、跳び上がる。
同時にその狙いは、ギガンテスが一番の特徴でもある一つ目だった。
「はあああっ!!」
【ソイヤッ!マツボックリスカッシュ!】
その音声が鳴ると同時の、影松にエネルギーが収束していく。
そして、ギガンテスの眼前でその必殺の一撃を放った。
「ぐおおおっ!?」
ギガンテスの悲鳴と共に、その体が徐々に崩れていく。
「ここまで、あっさりと」
「くくっ、そうか?
未だに作成できるロックシードは限られているが、いずれはその力は、神をも越える。
そんな我が夫と私が手を組めば」
そう言うと、モルガンさんはかなり悪い笑みを浮かべる。
「雪音、もしかしてモルガンさん、かなり悪い人?」
「お前、今頃、気づいたのか!」
雪音は俺の顔を見て、呆れた表情になる。
まぁ、確かにこの人は悪人にかもしれないが
「けど、まぁ、悪い人だけど、良い人でもありそうだな」
「お前は本当に」
雪音は再びため息をつくが、俺もそのまま変身を解く。