「我が夫よ、ワルキューレに関して、どこまで知っている」
その日、モルガンさんから話を切り出した。
だが、その膝にはレンが寝ている事で、あまり話が入らない。
「えっと、モルガンさんを含めた13人だとは聞いているけど」
「そうだ、アースガルズにおける種族としてでもあるヴァルキリー。
様々な国の魂が、転生した事によって誕生した存在や、純粋なヴァルキリーなど様々いる。
その中でも、私を含めた13人は、オーディンの直属の、いや今は我が夫の直属の部隊でもある。
その13人をワルキューレと呼んでいる」
そんなエリート集団だったのか。
「ロスヴァイセは普通のヴァルキリーの中でも祖国では飛び級を果たした才媛を持つ。
レンは風に関する能力で言えば、私以上の才能を持つ。
マリアとクリスも各々が天才と言っても良いだろう」
そう言いながらも、モルガンさんは目を閉じる。
「だが、ワルキューレの中でも、奴は特に異常だ。
ヴァルキリーの才能を全てを持つ。
あのブリュンヒルデに匹敵する強さを持ちながらも、アースガルズの為になる者に仕える事を生き甲斐にしている。
そういう意味では、私は気に入らないがな」
モルガンさんはそう言いながら、怒りをまるで隠そうとしなかった。
「私としては、あんたよりもマシだと思うけどな」
マリアがそう言いながら、遮る。
「ふむ、まだ認めないか」
「あんたが紘汰を利用して、世界征服を企んでいるからよ。
まったく、あの人もなぜワルキューレの一員にしたのか」
「貴様のような子供をリーダーにしたのも、疑問だがな」
「なんですって」
「やるか」
同時に険悪な雰囲気を出す2人。
「あぁ、もぅ、そういうのは良いから」
モルガンさんはレン以外のメンバーで表面上はロスヴァイセさんとは普通だが、あまり話さない。
対して、マリアと雪音とはこういう口喧嘩をする事が多い。
「少し、飲み物でも買ってきますから」
そう、俺は家から出て、近くの自動販売機に向かう事にした。
喧嘩が増える我が家の問題をどうすれば解決できるのかについて、思い悩みながら、目的の場所へと向かう。
すると何か奇妙な雰囲気の空間に包まれる。
疑問に思っていると、気配を感じ、見つめる。
そこにいたのは、蟹だった。
しかし、それはただの蟹ではなかった。
人間など、簡単に掴む事ができる程の巨大な鋏を持っており、その鋏に見合う巨大な身体を持つ蟹であった。
明らかに、その蟹が普通の蟹ではない事は一目見れば分かるが、こちらに気づいた蟹は俺の存在を見ると共に、背中にある突起物を向ける。
その突起物は俺に狙いを定めると共に、白い液体をこちらに向けて、放ってくる。
「危なっ!」
すぐに俺はその場を避ける。
同時に、その白い液体がかかった部分が溶けており、見るだけで危険な物質だと分かる。
「こういう厄介な奴ばかり来て、本当に嫌になるぜ」
未だに襲い続ける刺客に対して、呆れた声を出しながらも、俺は戦国ドライバーとオレンジロックシードを取り出す。
【オレンジ】
そして、ベルトを装着すると同時に、空から降ってきたオレンジ色の物体を掴む。
それは紛れもなく、オレンジの形をした果実だ。
それを握り締めると共に、俺は叫ぶ。
「変身!!」
【ソイヤッ! オレンジアームズ! 花道・オンステージ!】
鳴り響く戦国ドライバーからの音声と共に、俺は手に持った大橙丸と無双セイバーを手に持ち、構える。
すると、先程まで攻撃してきた蟹が再び突進してきていた。
だが、今度は避ける事なく、俺は二刀流で蟹を迎え撃つ。
「おりゃああああっ!!!」
気合の声と共に、俺は蟹に向かって走り出す。
蟹も俺の行動を見てか、鋏をこちらに向けて振り下ろす。
その体格に見合った大きさを誇る鋏は間違いなく脅威であり、まともに受ければひとたまりもない一撃だろう。
だが……。
「そんなデカいだけの鋏じゃ、簡単に避けられるぜ!」
そう言って、俺は大きく横に跳びながら、蟹の攻撃を避けつつ、そのまま蟹へと向かっていく。
だが、蟹はそれだけでは終わらなかった。
避けようとした俺の動きに合わせて、その場で回転し始めたのだ。
当然のように、大きなハサミを持ったままなので、遠心力によって威力が増している状態でこっちに迫ってくる。
このまま当たってしまえば、大ダメージは免れないだろう。
だが……。
「っ!」
鋏は突然打ち抜かれた光によって、砕け散った。
それがどこから撃たれたのか、分からないが
「このチャンスを無駄にする訳にはいかない」
あの蟹から出てくる酸は並の装甲ではすぐに溶かされてしまう。
それは、オレンジを初めとしたロックシードでは対抗する事ができない。
だからこそ、俺は、今、現状で最も強力なロックシードを手に取る。
【スイカ】
スイカロックシードを起動すると共に、戦国ドライバーに装着し、ブレードを倒す。
【ソイヤッ!スイカアームズ!大玉ビッグバン!】
その音声と共に出現したのは、他のアームズとは比べものにならない程に巨大な物質だった。
全身をすっぽりと覆うほどの巨大なスイカを模した鎧。
その姿を見た蟹はすぐさま背中にある突起物を向けて放つが、その動きは完全に見切っていた。
「遅いよ」
その言葉と共に、俺はスイカアームズを身に纏う。
【大玉モード】
スイカアームズに身に纏った事によって、蟹の酸を完全に防ぐ事ができた。
先程まで、建物を溶かしていた酸だが、スイカアームズには傷一つつかなかった。
それと共に俺はその場を回転すると共に、その姿を変える。
【ヨロイモード】
スイカ型の装甲は展開され、その巨大なスイカの鎧へと変わる。
俺を覆う鎧は、目の前にいる蟹と比べても変わらない程の大きさであり、その手には巨大な薙刀、スイカ双刃刀を手に持つ。
それと共に蟹は残った鋏を俺に向けて、振り下ろす。
手に持ったスイカ双刃刀で、対抗する。甲高い音と共にぶつかり合う鋏と刀。
その力はスイカアームズの方が強く、簡単に吹き飛ばす事ができた。
「さぁ、輪切りにしてやるぜ!」
叫び声と共に、俺は蟹に向かって、走る。
蟹の方も負けじと、背中にある突起物を向ける。
だが、それも今のスイカアームズの前では無力だ。
スイカ双刃刀からスイカ型のエネルギーを真っ直ぐと蟹に向けて放つ。
そのエネルギーに閉じ込められた蟹は身動きが取れなかった。
同時にスイカ双刃刀を回転させながら、大きく振りかぶる。
次の瞬間、蟹は真っ二つとなり爆発した。
爆風の中、変身を解くことなく、俺は周りを見渡す。
【ジャイロモード】
同時にその位置が分かると共にジャイロモードに変形し、目的の場所へと向かう。
そこに立っていたのは、一つの槍を持つ銀髪の女性だった。
黒いノースリーブのワンピースの夏服と黒いミニスカート、黒いパンティーストッキング、黒いブーツ。
そして、その手にはワルキューレを思わせる槍と盾を持っており、真っ直ぐと俺を見つめる。
「さっきの攻撃はあなたが撃ってくれたのか?」
そう尋ねる。
同時に、槍と盾を地面に置くと共に、彼女は答える。
「この度、あなたに忠誠を誓う、セルベリア・ブレスです」
そう言って、頭を下げる彼女に対して、俺は言う。
「えっと、もしかして、ワルキューレの1人なのか?」
「えぇ、その通りです、我が主」
なんというか、話しているだけでも分かるが、堅いイメージが拭えないな。