その日、俺は休日を堪能する為に、日曜日のお決まりの番組を見る為にリビングへと向かっていた。
幼い頃からの習慣であるが、今は家族も誰もいない事もあって、1人のはず。
だけど、
「邪魔しているぞ」
「誰?!」
リビングのソファに座っているのは、知らない爺さんがいた。
その後ろには秘書を思わせるスーツを身に纏っている銀髪の女性がいた。
「ふむ、驚かせてすまないな。
まぁ、今回は少し、頼みたい事があってな」
「頼みたい事」
本音を言うと、不法侵入しているこの爺さんをどうにか対処したい。
しかし、その後ろにいる爺さんの秘書だと思われる人物がとても可愛そうなので俺はとりあえず話だけでも聞く事にした。
「まぁ、話というのはな、お主にはアースガルズを統治して欲しい」
そう、目の前にいる爺さんがいきなり言い始めた。
「・・・あの、この人、何を言っているんですか」
状況が飲み込めない俺は、爺さんの後ろにいた銀髪の女性に話を聞く事にした。
しかし、その女性もまた、未だに状況が飲み込めていないのか、目を見開きながら、固まっていた。
「あの、オーディン様。
これは一体どういう事なんですか」
状況の理解にようやく追いついた女性はすぐに爺さんに話しかけた。
「ふむ、そうだな。
まずは、アダムについては知っているか」
「えぇ、まぁ。
それは」
アダム。
確か、全ての人類の始祖と言われている人物のはず。
名前くらいなら聞いた事があるが、それが何の関係があるんだ?
そう疑問に思っていると、爺さんは俺に手を翳す。
疑問に思う俺を余所に、胸元から何か変化が起きた事に気づく。
それは身体から何かが出てきたのを感じ、見てみると、そこにあったのは林檎だった。
「それはっ」
銀髪の女性は、その黄金の林檎を見た瞬間、驚きを隠せない様子だった。
同時に爺さんはそれを見た瞬間、核心を持ったように笑みを浮かべる。
「やはりか。
神器として、存在するとは思っていたが、長い間探した甲斐があった」
そう言って、爺さんはその林檎は再び俺の元へと戻っていく。
「お主の名は」
「紘汰だけど、さっきのは一体」
「黄金の果実です」
疑問に思った俺はすぐに爺さんに聞く。
だが、その疑問を代わりに答えたのは、銀髪の女性だった。
「黄金の果実って、確か」
「えぇ、先程のアダムが食べたとした禁断の果実です。
だけど、それが、まさか神器になっているとは。
という事はまさか」
「その通りだ。
黄金の果実を神器として持つこの者が、アースガルズを治めるべき存在なのだ」
そう言いながら、オーディンは俺に話しかける。
だが
「断る!!」
「えっ?」
「断る!!!」
「しかも、2度も言いました!!」
突然大声を出した俺に驚いた表情をする二人。
そりゃあ驚くだろうよ。いきなり来たと思ったら、世界の統治とか言われて承諾する奴はいないと思うぞ!!
「お主なぜ断るのだ!?」
「いやだって面倒くさいし、そもそも俺まだ高校生だし」
「まぁ、確かに。
いきなり、そのような事を言ったら、断るに決まっていますよね」
そう爺さんとは反対に銀髪の女性は常識的な思考をしていたようで、うんうんと納得するようにうなずいていた。
「しかし、ぶっちゃけ言うが、このまま断っても良いが、ロキとかに思いっきり命を狙われるぞ」
「えっ、マジで」
「まぁ、狙われますね」
さらっととんでもない事を言う爺さん。
そしてそれを肯定するように答える銀髪の女性。
「それにな、ここで断ったとしても、ロキの奴は、その黄金の果実を狙うからな」
「そうなんですか?」
「えぇ、そうですね。
なので、貴方には選択肢はありません」
どう考えても脅迫じゃねぇかそれ。
「まぁ、どちらにしても、すぐに向こうには行けないしな。
よし、ロスヴァイセ」
「なんでしょうか?」
そう、銀髪の女性はロスヴァイセという名前らしい。
ロスヴァイセさんは爺さんに向ける。
「お主を含めたヴァルキリー達はこれから紘汰の元で同棲生活をしながら鍛えてもらう」
「はぁ~~~っ!!!!」
爺さんの言葉にロスヴァイセさんの叫びが響き渡るのであった。
「どうして、そういう事になるんですか」
「だって、お主ら、その歳になっても、結婚相手が見つからないのであろう」
「うっ・・・まぁ・・・」
「だったら、ちょうどいいではないか」
「よくないですよっ!!!! そんな、いきなり一緒に暮らすなんて・・・あっ」
その時、ロスヴァイセはそのまま俯いた。
「とりあえずは、生活費は安心しろ。
それに、ロスヴァイセ以外にもワルキューレ達は来るからな」
「先輩達もですか?!」
俺を余所に、話がどんどん、可笑しい方向に進んでいく。
「という事で、よろしく頼むぞ。
では、後は任せたぞ。
ロスヴァイセ」
そう言って、爺さんは消えていった。
後に残された俺は、未だに固まっているロスヴァイセさんに話しかける。
「あのー、大丈夫?」
「ふぇっ?! そ、その、すいません。
ちょっと、色々とあって驚いてしまって」
「あぁ、うん。
俺もびっくりしたけどさ。
それで、何だけどさ、大丈夫ですか」
「いえ、その大丈夫です。
仕事ですから」
その目は明らかに死んでいた。
あれだ、社畜の死んだ目を思わせる。
「これは、色々と大変な事が起きそうだな」
突然の事に俺は苦笑いをするしかなかった。