暑い夏休みの最中。
その日、俺はオーディンの爺さんから手紙を受け取っていた。
「北欧の神達の会合って」
そう言いながら、俺は公園で1人トレーニングを行っていた。
普段は他のメンバーと行っていたが、その日は、爺さんから受け取った手紙の事を考えたくて、1人でいた。
それは、俺がアースガルズの次期当主として相応しい人物かどうか見定めるらしい。
未だに俺が本当に次期当主になるかどうかまだ決めていないのに。
「けど、決めなきゃいけない」
それは、一種の覚悟かもしれない。
将来がどうなるのか分からない以上、これも一つの道かもしれない。
だが、俺はそれが正しいかどうかなんて分からない。
普通の高校生がいきなり一つの国の当主になるなど、本当に可笑しな話だ。
それでも
「紘汰が神になった事と同じように、覚悟を決める必要がある」
「何を覚悟を決めるんですか?」
そう俺に話しかける人がいた。
腰まで伸びた栗色の女性だった。
雰囲気はどこかマリアに似ているような気がしたが、一体。
「あなたが、紘汰さんで、間違いないですか」
「そういうあなたは、もしかして、ワルキューレ?」
「はい、ワルキューレの1人、セレナと申します。
少し時間がかかりましたが、今、参りました」
柔らかな言葉使いと共に、そのまま俺の座るベンチの横に座る。
「盗み聞きのような真似で申し訳ございませんが、紘汰さんはそのアースガルズの次期当主という立場に何か不安があるんでしょうか」
「まぁ、ないと言ったら嘘になるかな。
まぁ、普通の高校生である俺がな」
そう言いながら、俺はゆっくりと上を見つめる。
「そうですね。
確かに、いきなりそんな立場になれば、誰だってそうなります。
けど、次期当主と言っても、おそらくはそんなすぐではありません。
おそらくは早くても50年後ぐらいでしょうね」
「その時、俺爺ちゃんじゃないか」
「どうでしょうね。
けど、あなたの人生、それがどの道を進もうと大丈夫だと思いますよ」
「何を根拠に…………」
「根拠はないです。
ただ、私達は人間ではないので、人間の感情とかはあまり理解できないかもしれません。
でも、あなたならきっと出来るはずですよ。
アースガルズを良き国にする為に頑張ってください」
その言葉に、俺はどこか笑みを浮かべる。
「そっか。
50年ぐらいか。
だったら、それぐらい長ければ、覚悟はできるかな」
ふぅっと息を吐くと同時に、立ち上がる。
同時に背後から感じる殺気。
俺達はすぐにその場を避ける。
襲い掛かった奴を見る。
「アナザー鎧武だと」
「まさか、紘汰さんの細胞から」
その言葉と共に思い出すのはケルベロスの時の戦い。
あの時には、既に俺の血を使い、クローンという訳か。
「本当に、ロキは、嫌な奴だな」
【オレンジ】
鳴り響くオレンジロ
ックシードを手にしながら、俺は目の前にいる敵に向かって走って行く。
腰に巻き付けている戦国ドライバーにオレンジロックシードにセットすると共に、法螺貝を思わせる待機音声が鳴り響く。
「変身!」
戦国ドライバーの小刀を一回押す事によって、オレンジロックシードは開かれ、同時に俺の姿は変わる。
【ソイヤッ!オレンジアームズ!花道・オンステージ!】
響き渡る音と共に、青いライドウェアに包まれる俺に上から重なるようにオレンジアームズが被さる。
何度も見て、何度も変身してきたその姿に変わると共に、俺は目の前にいるアナザー鎧武に大橙丸と無双セイバーを振り下ろす。
「よぅ、偽物野郎。
偽物同士、仲良く戦おうぜぇ!」
そう、本来の変身者ではない鎧武と、本来の鎧武から歪み、作られた怪人アナザー鎧武。
本来ならば、行われない戦いの火蓋が切って落とされる。
両手に持った武器の攻撃に対して、アナザー鎧武はその手に持つ大剣で防いでるが、そのまま大きく振り上げる。
それによって、俺は大きく吹き飛ばされるが、瞬時に無双セイバーにあるガンモードに切り替え、牽制を行う。
アナザー鎧武は再び大剣で防ぐが、そのまま真っ直ぐと走りながら、俺に斬りかかる。
「ちっ」
襲い掛かる一撃に対して、大橙丸を構え、受け流すと共に無双セイバーで流れるように斬りに行く。
しかし、アナザー鎧武の大剣を用いた剣術は思ったよりも厄介であり、その力は俺よりも上だった。
手数と素早さでは、大橙丸と無双セイバーの二刀流で戦う鎧武である俺の方が上だが、それに対してアナザー鎧武はその怪物が故の力と防御力、それに加えて大剣による攻撃範囲という点を含めて有利である。
こちらは防御を行うには、二つの武器を同時に使う必要がある為、オレンジアームズでは力不足な点が見られる。
「だけど、アームズチェンジをする余裕はない」
向こうも、俺の力を知っており、アームズチェンジを行えない事もあってか、俺にその隙を与えないように攻撃を続けている。
一撃でも、喰らえば負ける。
その認識もあり、俺は冷静にアナザー鎧武の攻撃を避け、受け流し、チャンスを伺いながら、この状況を打開するロックシードを模索する。
この場における最適解を探し続ける中で、ふとある考えが頭に浮かぶ。……これなら行けるかもしれない。
そう思いながらも、すぐに行動に移す事は出来ず、少しだけ考える時間を作る為にわざと隙を見せる。
当然、相手はそこを狙って攻撃を仕掛けてくるのだが、それを待っていたのだ。
俺の動きに合わせるように大橙丸を振るうと同時に、大橙丸を投げ捨てる。
そして、それと同時に腰に差していた無双セイバーを抜き取り、アナザー鎧武へと向けて投げつける。
一瞬の出来事ではあったが、アナザー鎧武は反応しきれず、投げた大橙丸は奴の顔に命中した。
怯んだアナザー鎧武に向けて、無双セイバーを抜き取り、そのまま斬りつけようとする。
しかし、奴は大剣で防ごうとするのだが、その瞬間に無双セイバーから手を離す事で、大剣に絡ませる。
それによって、確かな隙が出来た。
俺はそのまま横に飛びながら、腰にある別のロックシードに手を伸ばす。
【マンゴー】
マンゴーロックシードをそのまま戦国ドライバーにセットすると共に、すぐにアームズチェンジを行う。
【ソイヤッ!マンゴアームズ・ファイト・オブ・ハンマ~!!】
響き渡る音と共に、俺の頭に被さり、ライドウェアに変化を与える。
それと同時に手にしたマンゴーパニッシャーは、アナザー鎧武を吹き飛ばす。
「くらえ!」
その言葉共に、マンゴーパニッシャーによる一撃を叩き込む。
吹き飛んだアナザー鎧武は地面を転がると、ゆっくりと立ち上がる。
どうやら、今の一撃で完全に倒す事が出来なかったようだ。
俺も同じように立ち上がりながら、ゆっくりとマンゴーパニッシャーを引きずりなあら、真っ直ぐとアナザー鎧武へと向かう。再びぶつかり合う中、今度は俺から仕掛けていく。
先程と同じようにマンゴーパニッシャーを振り下ろすが、アナザー鎧武はそれを防ぐのではなく、横に避けた。
それにより、俺の攻撃は地面に当たり、砂煙が上がる。
その煙に隠れて、アナザー鎧武は俺に向けて大剣を振り下ろす。
先程までのオレンジアームズならば、それが致命傷になるが、マンゴーアームズのその防御力ならば問題ない。
「はぁ!!」
気合を入れる声と共に、大剣を受け止める。
同時に、俺は一歩前に踏み込みながら、マンゴーパニッシャーを突き出すように構える。
突きだされたマンゴーパニッシャーに対して、アナザー鎧武はそれを受け止めるが、俺は更に押し込んだ。
「くっ!?」
驚いた表情を浮かべるアナザー鎧武であるが、俺はそのまま力を込めていくと、徐々にだが、少しずつだが押され始めた。
その事に焦ったのか、アナザー鎧武は大剣に力を入れようとした時だった。
【ソイヤッ!マンゴースカッシュ!】
そんな音声が流れてきたかと思うと、俺の全身にエネルギーが纏われ始める。
マンゴーパニッシャーに込められた力が増幅されると共に、そのままアナザー鎧武を押し込んで行く。
「ぐぅぅぅぅぅぅ!!!」
雄たけびを上げながら、必死に抵抗しようとするアナザー鎧武。
だが
「セイハアァァァァーーー!!!」
俺の叫びと共に、マンゴーパニッシャーに蓄えられていたエネルギーが爆発した。
爆発によって発生した衝撃波によって、アナザー鎧武は宙に舞い、地面に倒れ伏す。
「……よし」
俺が安堵の声を上げると共に、アナザー鎧武はそのまま消えていく。
「これが黄金の果実の所有者の実力」
「実力なのか?
俺が戦えたのはただの黄金の果実の力だけだからな」
「そうでしょうか。
あれはそれだけでは、倒せません」
「???」
その言葉に疑問に思っていると
「紘汰、何かやばい気配がしたけど」
「あっ姉さん!」
「セレナ!?」
「えっ、嘘」
それは、彼女達が姉妹だという事がよく分かる。
だけど
「普通は反対じゃない」
そう思わず呟いてしまった。