夏休みが終わり、学校は2学期になる。
野中のおかげで武器の扱いは着実に上手くなったが、未だに不安が残る。
「別にそこまで気にする必要はあるのか」
「どんな戦いがあるか、分からないからな」
そう言いながら、雪音と共に教室で話していた。
戦いの本番は冬休みという事もあるが
「せめて、ジンバーレモンは使えるようになりたいが」
「未だに作り出す事ができないんだよね」
そんな、俺の言葉に応える声。
話に入り込んだ人物に対して、俺はすぐに振り返る。
そこには、この学園の制服を身に纏っているが、これまで見たことのない人物だ。
腰まで伸びた紫を帯びた銀色が特徴的な女性だが、こんな人いたか?
「今学期から転校してきた三宮紫穂よ。
よろしくね、紘汰くん」
そう、まるで俺の考えを読むように答えた。
「紫穂、お前、何時の間に!?」
「やっほぉ、クリスちゃん。
久し振り」
「知り合いか?」
何やら、雪音が知り合いのようだが、苦虫を噛んだ表情で見ている。
「そいつはワルキューレのメンバーの1人だが、一番弱いが、一番厄介な奴だ」
「弱いのに、厄介?」
何やら、矛盾染みた事を言っているようだが
「酷いなぁ、クリスちゃんは。
まぁ、紘汰くんを相手にして、ロスヴァイセさんよりも一歩先に行ける立場なのに、未だに緊張している女の子だから、仕方ないわよね。
紘汰くんとは「わぁー!!てめぇ!!」おっと」
何か言おうとしたが、雪音がそれを遮った。
「もぅ、私は、ただお喋りしたかっただけなのに」
「何がお喋りだ。
お前、その気になれば、簡単に脅せるだろ」
「どういう事だ?」
未だに話についていけなくて、俺は首を傾げる。
「そいつは戦闘能力は低い。
けどな、体表面を接触させることにより、人間や物体から過去や現在の情報を読み取ることができる能力を備えていて、触れば、相手の弱点を探れる」
「あぁ、なるほど。
だから、最弱だけど、厄介なのか」
なんか、面白そうだな。
「面白いって、酷いなぁ」
「そうか?」
実際に人の思考を読める能力というのは、色々と使えるからな。
それに聞けば物体からも情報を読み取れるというのも、なかなかに面白い。
「というか、紘汰。
お前、さっきから、そいつに思考を読まれているぞ」
「あっそういえば」
先程から俺の肩に触れている事も考えたら、俺の思考が読まれているのは当然だろ。
「まぁ、別に良いか」
「あら、良いの?
こういうの、嫌う人が多いのに」
「いやぁ、俺の事を読んでも、そんなに面白いのあるかなという疑問はあるけどな。
というか、楽しいのか?」
「えぇ、色々とね。
ふふっ」
俺がそう答えると、紫穂は笑みを浮かべる。
「紘汰くんに対する弱みはほとんど握れなかったけど、他のメンバーの意外な素顔は面白くて良かったわ」
「皆の事を知りたいのか?」
「えぇ、とっても」
何やら、含み笑いを言っているようだが、まぁ良いか。
「それより、授業が始まるから席に着いた方が良いんじゃないか」
「そうだった!じゃあね!」
そういうと紫穂は自分の教室に戻っていった。
それを見て、雪音は大きくため息をつく。
「はぁ~。あいつだけは敵に回したくないんだよなぁ……」
「まぁ、味方だから良いんじゃない?」
「お前なぁ」
そんな俺の言葉に雪音は再び大きくため息をつく。
そうして、そんな会話が行われた学校の帰り道。
「やっほー、雪音ちゃん、紘汰くん」
「げぇ」
入り口で待っていた紫穂は笑みを浮かべながら、待っていた。
それに対して雪音は露骨に嫌そうな顔をする。
「これから一緒に帰らない? 私も今日は暇なんだよね」
「断る」
「あら、冷たいのね」
きっぱりと断った雪音の態度に、紫穂は特に気にした様子はない。
「別に良いんじゃないか、特に困る事はないし」
「紘汰、お前なぁ」
「いやぁ、やっぱり紘汰くんは優しいねぇ」
そう言いながら、自然な流れで腕を組む。
「いや、腕は組まないよ」
「えぇ、こんな美少女と腕を組んで嬉しくないの」
「嬉しいのは嬉しいけど、ここでやると「紘汰ぁ!!!」ほら」
そこには血涙を流しているクラスメイト達がいた。
「てめぇ、雪音さんだけではなく、美少女転校生である紫穂さんにも手を出しやがって!」
「てめぇは絶対に許さねぇ!!」
何だか知らないが、殺気立っている。
「いやぁ、なんでだろうねぇ。
さっぱり分からないなぁ」
それはこの状況を楽しんでいるように見えた。
以前から彼女の事については聞いていたので、特に気にしない。
さて、このままでは逃げにくいし
「雪音、悪いけど、先に帰ってくれ」
「えっおい」
このままでは面倒なので、一旦逃げる事にする。
だからと言って、このままでは逃げにくいし
「仕方ない、やるか」
「えっ、ちょっと待って」
俺が何をしようとしたのか、思考を読んでいた紫穂は慌てた様子を見せた。
だが、そんな彼女を余所に、俺はそのまま紫穂をお姫様抱っこにして、持ち上げる。
「っ!!!」
「紘汰ぁぁぁ!!!」
そのままやばい集団になったクラスメイトから逃げるように、俺は紫穂をお姫様抱っこにしたまま走り出す。
その光景を見たクラスメート達は、さらに怒り狂うように追いかけてきた。
しかし、俺の方が速いので、どんどん引き離す。
そして、ある程度引き離したところで、俺は立ち止まる。
すると、お姫様抱っこされていた紫穂を見ると
「おい、大丈夫か?」
「えっえぇ、だっ大丈夫よ」
なぜか頬が赤くしていた。
「なんかあったのか?」
「思考を読めているのに、まったく行動が読めない」
何やらぶつぶつと呟いている。
とりあえず、もうそろそろ下ろさないと、流石に可哀想だしな。
「はい、下ろしますよ」
「あっうん」
地面に下ろすが、何故かまだ顔が赤い。
そうして、降ろすと
「っ」
何かに気づき、一瞬で険しい表情になる。
それと共に地面に手を触れる。
「紫穂?」
「紘汰くん、戦国ドライバーを出して。
少しまずいわ」
その表情は先程までからかっている時とは別人のようだった。
俺はすぐに戦国ドライバーをそのまま腰に巻き、オレンジロックシードを取り出す。
「変身!」
【ソイヤッ!オレンジアームズ!花道・オンステージ!】
鎧武となった瞬間、紫穂はゆっくりと呟く。
「右側に、攻撃が来るわっ」
聞こえた声に自然と身体は反応し、そのまま大橙丸を振り上げる。
それと共にキンッ!と鳴り響く音と共に何かが弾く。
しかし、それが何か分からず、戸惑いを隠せなかった。
「今のは」
「刺客よ。
しかも厄介な事に姿が透明になっていて、分からないわ」
その一言と共に、俺は周りを見渡す。
「どうして、分かった」
「少し違和感があったの。
何か、動物とは思えない足跡があったから、調べてみたの。
そこからあいつの思考を読む事ができて、どこから襲撃したのは分かったけど」
「次にどこで攻撃を狙っているのか、分からない訳か」
それと共に紫穂を守るように、周りを見る。
「どうすれば良い」
「敵がどこから襲うか、分かれば良いけど、読み取るには、時間が関わるわ。
だから」
「なるほど、それまで守れば良いんだろ」
そう、俺は懐から別のロックシードを取り出す。
「信じてくれるの?」
「むしろ、疑う理由はないだろ」
何よりも、信じたい。
それが、俺の本心だから。
「変わった人。
なら、それに答えないとね」
その言葉と共に、俺は取り出したロックシードを起動させる。
【クルミ】
そのままクルミロックシードを戦国ドライバーに装填する。
【ソイヤッ!クルミアームズ!ミスターナックルマン!!】
それと共にクルミボンバーを装着すると共に紫穂を守るように構える。
どこで攻撃を行えば良いのか分からないが、それでも長い間戦った経験と共に敵の攻撃から彼女を守るぐらいはできる。
そして、そのまま周りの気配を感じ取ろうとする。
僅かな殺気を感じると共に、彼女からの攻撃を守るように動く。
攻撃力はそれ程ないが、防御能力はかなりあるので、防ぐ事は出来る。
しかし、それも長く続かない。
徐々に体力が減っていき、集中力が切れそうになる。
そんな時だった。
「次、後ろから必殺の一撃を行うつもりよ」
「あぁ分かった!」
逆転を込めた一撃。
【ソイヤッ!クルミオーレ!】
戦国ドライバーを鳴らした瞬間、クルミボンバーにクルミ状のエネルギーを纏いながら、紫穂の前に立つ。
それと同時に俺は後ろから襲い掛かろうとした敵に向けて、パンチを叩き込む。
「があぁあぁぁ!!」
その敵は未だに透明なままだが、悲鳴だけが聞こえる。
すると、紫穂はクスリと笑いながら呟いた。
それはまるで自分の勝利を祝うかのように。
「いやぁ、助かったよ。
今回はマジでやばかった」
これまで正面から戦う敵ばかりだったので。
「ふふっ、それよりも気にいちゃった。
これからも、紘汰くん」
俺は首を傾げると彼女は笑みを浮かべていた。