アースガルズ。
それは、俺がいずれこの地を治める地だと言われているが
「どうも、未だに実感しないなぁ」
これから、その次期当主に相応しいかどうかの会議が行われる。
その事に緊張しながらも、俺はその会議場に足を踏み入れる。
「久し振りだな、紘汰」
「オーディンの爺ちゃん」
そこには俺を次期当主に選んだオーディンの爺ちゃんがいた。
その周りには、おそらくは他の神様だと思われる人物がおり、俺を観察するように見つめる。
「まぁ、座るが良い。
これから何をやるかは、十分に理解しているな」
「その、俺が次期当主になるとかなんだよな。
けど、未だにその」
「実感を持てないと?
当たり前だな、ただの人間がいきなりそんな事を言われても」
そう、爺ちゃん以外の神の1人が頷いていた。
「オーディン、そこはどうなんだ。
彼は確かに黄金の果実を持っているようだが、あなたの代わりにこの国を納めるとは思えないぞ」
「そうか?
紘汰の持つ黄金の果実。
それは十分な資格だと考えるが、お主はどう思う、ロキ」
そうロキに向けて言う。
これまで、何度も刺客を送り込んできたロキ。
だが、ここで怒り出す訳にはいかない。
「元々、他にも候補がいたはずだ。
そいつと勝負させるのは、どうだ?」
それは、理由をつけて、俺を止めさせるには丁度良い訳か。
「その為に、あやつを戻した訳か」
オーディンの爺さんはそう言いながらロキを見る。
「既に準備はできているぞ」
その一言と共に、俺達はどこかの海上へと転送させる。
見ると、目の前には男性がおり、退屈そうにしていた。
「ちっ、あのロキの奴に従う事になるとはな」
「えっと、あなたがヴィーザルさん?」
「おぅ、お前が紘汰か。
悪いな、こんな面倒な事に巻き込んで」
「それは別に良いですけど」
見れば、なんというか気軽に話せる人という印象がある。
そう言いながら、ヴィーザルさんは俺に向けて言う。
これから決闘を行う相手に対して言う言葉ではないかもしれない。
「いいえ、まぁ、むしろ。
俺としてはこれからの戦いに結構ワクワクしていますから」
それと共に、俺は戦国ドライバーをそのまま腰に回す。
これまで、何度も使っており、熟知している。
「それが、戦国ドライバーか。
こうして、見ると面白そうだな。
そういえば、決闘の方法は決まっていなし、なぁ、それ、俺にも作れるか」
「なっ、何を言っているヴィーザル、お前「作れますよ」なっ」
俺は瞬時に戦国ドライバーとロックシードを作り、そのまま投げる。
「決闘で、シンプルに、分かる方法としては変身解除、これ以上ないからな」
「貴様、それが罠だと」
「そんな事するか?
それに、何を焦っているんだ、ロキ様」
そう言いながら、ヴィーザルさんは尋ねるようにロキに目を向ける。
「さぁ、始めようか、紘汰」
同時にヴィーザルさんはバナナロックシードを起動さえる。
それに合わせるように、俺もまたオレンジロックシードを取り出す。
【オレンジ】【バナナ】
互いのロックシードを起動させると共に、そのまま腰にある戦国ドライバーに装填する。
それと共に俺の戦国ドライバーからは法螺貝が、ヴィーザルさんの戦国ドライバーからはラッパが鳴り響く。
これから行われる決闘を称えるような音声と共に、俺達はゆっくりと構える。
「「変身!!」」
【ソイヤッ!オレンジアームズ!花道・オンステージ!】
【カモンッ!バナナアームズ!ナイト オブ スピアー!】
その音と共に、俺の身体はこれまで何度も変身して、馴染みのある鎧武へと変身する。
同時に目の前にいるヴィーザルさんもまた、その姿を変える。
騎士を思わせる容姿に、バナナの鎧を身に纏ったその姿。
それこそが、仮面ライダー鎧武におけるもう1人の主人公であり、ライバルが変身する姿。
仮面ライダーバロンだった。
バロンへと変身したヴィーザルさんは、その手に専用武器であるバナスピアーを手に取り、構える。
俺もまた、大橙丸と無双セイバーを二刀流で戦えるように構え、睨み合う。
そして……。
―――決闘が始まった。
ヴィーザルさんの動きは予想通り、かなり速かった。
一気にこちらに向かって走り出すと同時に、手に持つ槍を振りかざす。
それに対して、こちらもまた動き出し、大橙丸でそれを弾く。
その威力は、バナナアームズがパワー重視という事もあるが、元々神であるヴィーザルさんの力も合わさった事で、弾く事がやっとだ。
「ほらっ、まだ、終わっていないぜぇ!!!」
その言葉と共にバナスピアーは残像を残す程のスピードの突きが俺に襲い掛かってくる。
そのまま大橙丸と無双セイバーの二刀流を持って迎え撃つ。
――ガキン!! 二つの刃がぶつかり合い火花が上がる中、俺はそのまま距離を取ろうとするが…… それよりも先にヴィーザルさんの腕が伸びて来て、俺の首を掴む。
「ぐぅ!?」
首を掴んだまま、地面に向けて投げられる。
「うわっとぉ!」
空中で一回転しながら、着地すると同時、すぐさま背後に気配を感じ取る。
振り返るとそこには既にヴィーザルさんの姿があり、槍による一撃を放ってくる。
俺は瞬時に大橙丸と無双セイバーを合わせ、ナギナタモードに切り替えながらガードし、弾き返す。
「おっとぉ!」
今度は逆にヴィーザルさんの方が距離を取った所で、お互いに背中合わせになる。
「やるじゃないか」
「そちらこそ」
互いに相手の実力を認めながらも、油断する事なく次の攻撃に備える。
…………強い。
はっきり言って、これまで戦ってきた誰よりも強い。
おそらく、まだまだ本気を出しておらず、バロンの力を楽しむように戦っている。
だが、同時に俺自身も自然と笑みを浮かべてくる。
絶対に負けられない戦いである。
だが、それとは別に目の前にいるこの人を超えてみたい。
未だに僅かな時しか会っていないが、それでも共に戦った仲間達の為にもこの勝負には勝ちたいと思う。
そんな思いを抱いていると、再びヴィーザルさんが動き出す。
「じゃあ、次はこっちから行くぞ」
そう言うなり、こちらに向かって駆け出してくる。
それと同時に、俺はパインロックシードを取り出し、起動させる。
【ソイヤッ!パインアームズ!粉砕デストロイ!】
その音声と共に、頭上にクラックが出現しそこからパイナップルを模したアーマーが降りてきて、それが俺の頭に被さる。
同時に両手に巨大な盾・パインアイアンが装着され、それを構える。
向かってきたヴィーザルさんに対して、俺もまた構えを取る。
「はぁあああっ!!」
雄叫びを上げながら、振り下ろされるバナスピアーに対し、俺はパインアイアンを構えて受け止める。
――ガン!!! 硬い金属同士がぶつかる音が響き渡る。
互いの力が拮抗する中、ヴィーザルさんが口を開く。
「良いねぇ。久々に燃えるよ」
その言葉を聞いた瞬間、何か嫌な予感を感じた俺は即座にその場から離れる。すると、その直後にヴィーザルさんの蹴りが放たれる。
――ドォン!!! 凄まじい衝撃音と共に爆発が起きる。
先程まで俺がいた場所が大きく陥没し、土煙が上がる。
今の攻撃はヤバかった。
「こっちも、本気じゃないとなぁ!!」
それは、おそらく、神としての、ヴィーザルさんの本気。
同時にバナナアームズでは出せるとは思えないようなスピードが、俺に襲い掛かる。
まるで弾丸のような速度で繰り出される槍を必死になって防ぎ、避けていく。
時折、隙を見つけて反撃に転じるが、それも簡単に避けられてしまう。
どうやら、パワーもバナナアームズ以上。
それは、つまり、今の俺の持つどのロックシードでも、勝ち目はない。
「どうした、人間。
戦いはまだまだ、これからだろう」
そう、ヴィーザルさんは、仮面越しでも分かる程の笑みを浮かべている。
「上等!」
今の手持ちで、勝てるロックシードがない?
ならば、作れば良い。
それが、黄金の果実の力ならば
「限界は、超えるためにある!」
その言葉と共に手を前に翳す。
手の平に収まる光は徐々に新たなロックシードを生成していく。
それは、これまで使っていたロックシードと比べたら、透明度が増しており、以前使ったレモンロックシードとよく似ている。
だが、そこから出てくるエネルギーの量はロックシードとは桁違いだった。
それこそが、ロックシードのその先にあるアイテム、エナジーロックシード。
【レモンエナジー】
そして、俺はレモネエナジーロックシードを起動させる。
それに合わせるように戦国ドライバーのバックルの左側に嵌められているフェイスプレートを外し、錠前を嵌める部分が付随しているゲネシスコアを代わりに嵌め込む。
そして、レモンエナジーロックシードを装填する。
「まさか、こんな隠し球があるとはよぉ」
「隠し球じゃない、たった今作った、とっておきだ!」
【ソイヤッ!ミックス!オレンジアームズ!花道 オンステージ!ジンバーレモン!ハハーッ!】
その音声と共に俺の頭上に現れたオレンジアームズとレモンエナジーアームズ。
二つが一つに重なる事で、新たなアームズを作り出すと共に、俺に身に纏う。
それは、まるでレモンを輪切りにしたような模様が刻み込まれている陣羽織。
それと形成された弓形武器であるソニックアロー。
この姿こそ、今の、俺の最強の姿、ジンバーレモンアームズだ。
「面白くなってきたぜ!」
ヴィーザルさんはその一言と共に、再び高速で接近する。
それに対して、瞬時にソニックアローを構え、無数の光の矢を放つ。
その一撃一撃が強力な威力を持ち、直撃すれば大きなダメージになる筈だったが、ヴィーザルさんは全て槍を回転させる事によって弾き飛ばしていた。
しかし、それで攻撃を止める事無く、俺は更に連続で矢を放ち続ける。
だが、その攻撃も全て槍を振り回すだけで弾き飛ばされる。
やがて、ヴィーザルさんの槍の一撃が襲い掛かる。
瞬時にソニックアローの両端に付いた鋭利な刃で受け止める。
互いの力がぶつかり合い、地面は大きな亀裂を刻む。
「俺の本気に、すぐに追いつくとは、お前、本当に面白いよ!」
「ヴィーザルさんだって、初めて使うバロンをここまで戦えるなんて、凄いですよ!」
戦闘を行っている最中だが、その高揚感は止まらない。
それだけ、この人は強い。
だからこそ、俺は負けられない。
「次で決着をつけようぜ、紘汰」
「えぇ」
ヴィーザルさんの一言、それは既に俺が体力の限界が近い事を察した言葉かもしれない。
それでも、いや、だからこそ、俺はここで打てる最大の一撃を放つ。
【ソイヤッ!オレンジスカッシュ・ジンバーレモンスカッシュ】
その音声が鳴り響くと共に交互に並んだオレンジとレモンの輪切り型のエネルギーをヴィーザルさんに向ける。
【カモンッ!バナナスカッシュ!】
ヴィーザルさんもまた、バナスピアーにエネルギーを溜める。
その大きさは俺が使っていた時よりも遙かに巨大であり、その輝きも増していた。
俺達の必殺技が激突する。
――ドォオオオン!! 二つの力がぶつかった瞬間、凄まじい衝撃が周囲に放たれ、その衝撃は凄まじい。
俺達は互いに吹き飛びながらも、拮抗する事は止めない。
俺達二人の力が、完全に拮抗しているのだ。
それは、まさにこの戦いに相応しいと言えるだろう。
「はあああぁぁぁ!!!」
俺はそう、ソニックアローを持ちながら、片手に無双セイバーを手に持ち、走り出す。
「なにっ!」
互いの必殺技の余波で歩く事も困難だ。
それにはヴィーザルさんは驚きを隠せないが、俺は一歩進む。
「はあぁぁぁ!!!」
やがて、走り出した俺はそのままヴィーザルさんの元に飛び込む。
そして、手に持った無双セイバーで、ヴィーザルさんを斬り上げる。
「っ、ここまでとはなっ!」
同時にヴィーザルさんの変身は解ける。
それが、勝負を決した瞬間でもあった。
「勝った、紘汰さんが、本当に」
それは困惑に近かった。
神であるはずのヴィーザルさんに勝った人間。
その状況に多くの神は驚きを隠せなかっただろう。
「あぁ、負けた負けた。
けど、面白かったぜ、紘汰」
「俺も楽しかったです、ヴィーザルさん」
そうして握手を交わす。
「どうやら、全ての勝負の結果はついたようじゃな」
それはオーディンの爺さんは笑みを浮かべた。
「それでは、ここにいる紘汰を次期当主として認める」
「えぇっと、それって、当主になる次期というのは」
「まぁ、100年後ぐらいが妥当じゃな」
「俺、それまで生きているのか」
その期間は想像以上に長かった。
「なぁに、そこは大丈夫だろ。
という事で、俺は改めて旅に出るとするか。
あぁ、それとこれは貰って良いか」
「別に良いですが」
なんというか、神というのは、本当に、自由で気ままだなぁ。