3学期が終わりに近づきつつある今日この頃。
これから始まるだろう騒動を予感させながら、俺達はそのまま家に帰ってきた。
帰ってきたのだが
「・・・誰、この人」
「知らねぇ」
俺とクリスは部屋の中に何時の間にか入り込んでいる女性に対して、思わず言ってしまう。
あまり手入れしていないのか、獣を思わせる金髪に背が高く、巨乳でグラマーな女性だ。
女性の周りには、大量の酒瓶が置かれており、部屋は酒の匂いで満たされている。
そして、酔っ払っているのか、気持ちよさそうに寝ながら、部屋のソファで寝ている。
知り合いではないはずなので、俺達はとりあえず、互いに首を傾げながら、その人に近づく。
「おーい、寝てないで、起きてくれませんかぁ」
未だに正体が分からない女性に対して、俺は話しかける。
「んぁ、なんだよ、まだ寝たりないのに」
「いや、ここはあなたの家じゃないんだけど」
俺はそう呆れながら言うが
「んっ」
そうすると、ようやく目が覚めたのか、俺の方を向く。
しばらくこっちを見つめると共に、手を打つ。
「お前、確かあの紘汰だよな」
「どの紘汰か分からないけど」
そう俺が言うと、にやりと笑みを浮かべ
「それじゃ、とりあえず起きてのハグと行こうぜ」
「うわっと!?」
俺が困惑している間に、女性は俺を思いっきり抱き締める。
「紘汰ってめぇ、いきなり何をしているんだ」
「何って、抱き締めているだけだが?」
女性は特に気にする事なく、俺を抱き締めている。
その間にも、彼女の柔らかな胸の感触が身体に接触しており、顔を赤くする。
「というか、てめぇ一体誰だよ!」
「私か?
私はレオーネ。
まぁ、ウルの所のワルキューレを務めているよ」
「はぁ?」
その言葉にクリスはあまり納得していないように見る。
「なんだよ、納得していない様子だな」
「当たり前だろ、こんな酒飲みがワルキューレいるなんて、聞いた事ないぞ」
確かに、実際にこんなワルキューレは見たことがない。
クリスの言葉に賛同するように言うが
「なんか、面倒だなぁ。
とりあえず紘汰。
お姉さんとデートしようぜ、デート」
「デートって、てめぇいきなり何を」
そう言おうとしたクリスは言葉を止めた。
何が起きていると思い、見ると、レオーネの姿が変わっていた。
先程までショートカットだったはずの金髪は腰まで伸びており、頭の上にはライオンを思わせる耳が生えていた。
「てめぇ、まさか」
「そんじゃ、またなぁ」
その言葉と共に、俺を抱き締めたまま、レオーネが走り出した。
マンションから勢いよく飛び出し、変身していない俺にとっては、あまりにも急なスピードで驚きを隠せなかった。
「レオーネさん、いきなり何を」
「言ったじゃないかよ、デートだよ、デート。
いやぁ、あの戦いを見てから、結構紘汰の事、気になっていたんだよなぁ」
おそらくはアースガルズで行った決闘の事を言っているんだろう。
実際にあの戦いを見ていた神々も多いから、ワルキューレであるレオーネが見ていたという事も納得できるが、なぜ、こうして一緒にいるのか。
疑問に思っている間にも路地裏に入ると、先程の獣耳が無くなり、髪も短くなる。
「今のは一体」
「あぁ、あれか。
私ってば、どうやらハーフみたいで、その内片方が神獣なんだよね。
だからなのか、その神獣の方の力を発揮できるんだよ、今みたいに」
その言葉は一体どういう事なのか、気になる部分が多いが
「それよりも、ほらデートしようぜ」
「本気だったのかよ」
「当たり前じゃないかよ、さっさと案内してくれよな」
その言葉と共に商店街を歩き始める。
色々と聞きたい事があるが、まずはこの人の目的を聞き出す事が優先だと思い、俺はデートを行う事になった。
「さっきも聞いたけど、確かウルのワルキューレだっけ?」
「そうだよ。
まぁ私よりも、どちらか言うと、さっきのクリスの方が関係は深いんだけどね」
「クリスと?」
その名前が出た事に少し驚く。
なぜ、ここでクリスの名前が出てくるか、疑問だ?
「知らなかったのか?
あいつ、ワルキューレではあるけど、一応半分はウルの奴の血を受け継いでるんだぞ」
そういうのは、あまり聞いた事ないけど、まぁ本人が話したがらない事を無理に聞く必要はなさそうだ。
「にしても、なかなかに刺激があって、良い街じゃないか」
レオーネは辺りを見渡しながらそう呟く。
「まぁ、昔から慣れ親しんでいるからな」
「そうなのか。
にしても、本当に刺激的だな。
悪魔もそうだが、紘汰、お前を狙っている奴の気配もな」
レオーネの一言。
それを聞いた瞬間、俺はすぐに戦国ドライバーとオレンジロックシードを取り出す。
【ソイヤッ!オレンジアームズ!花道・オンステージ!】
その音声が鳴り響くと共に俺は鎧武へと変身するが、同時に襲い掛かった衝撃で、宙に吹き飛ばされる。
「っ」
「油断するなよ、まったく」
そう言いながら、レオーネが俺を抱え、すぐにその場から離れる。
空中で身動きが取れなかったが、見れば、先程まで俺がいた所には鎖が迫っていた。
同時に地上を見れば、ハンマーとトゲ付き鎖鉄球を振り回しており、その容姿から、ゾウを思わせる敵だった。
「助かった」
「良いから、良いから、油断だけはするなよ」
そう言いながら地上に降ろされると共に、俺は大橙丸と無双セイバーで構える。
見るからにパワーファイターを思わせる相手に、この二つの武器で戦えるか不安だ。
それに、今は目の前にいる敵をどうにかする方が重要だ。
ゾウの怪物が振り回すハンマーを避けつつ、攻撃の機会を探る。
一撃でも食らえば、間違いなく戦闘不能に陥る。
それ故に、慎重に戦う必要がある。
「ほら、来るぞ」
レオーネの一言と共に、ゾウがこちらに向かって走り出す。
巨体に見合わず、速い。
だが、俺だって負けてはいない。
すぐさまレオーネから離れ、ゾウを迎え撃つ。
「せい!」
すれ違いざまに大橙丸と無双セイバーを交差させ、攻撃を繰り出す。
しかし、硬い。刃は通らず、逆に攻撃を受けてしまう。
幸いにも、防御は間に合ったため、ダメージは少ないが、それでも痛手を負う。
痛みを堪えながらも、俺はレオーネと合流する。
レオーネは何かを考えるような表情を浮かべている。
その間にも、ゾウは再び俺達に向かい走り出した。
「さて、どうするか」
「まぁ、あの防御力は厄介だよな。
それに攻撃力も」
「だったら」
そのどちらかを上回れば良い。
俺はそれと共に二つのロックシードを取り出す。
【メロン】【メロンエナジー】
それは斬月が使用したロックシードであり、俺はそのまま戦国ドライバーに装填する。
【ソイヤッ!ミックス!メロンアームズ!天下御免!ジンバーメロン!ハハーッ!】
その音声と共に、メロンディフェンダーとソニックアローを手に持つ。
斬月を象徴する武器を二つ持つ鎧武。
それは、劇中では登場しなかった組み合わせであり、俺は二つの武器を構える。
ゾウはその手に持ったハンマーを再び投げるが、メロンディフェンダーで受け止め、そして、その隙に接近すると、ソニックアローで斬りつける。
やはり、堅いが、先程の攻撃よりはマシな感触があった。
「へぇ、やるじゃん」
レオーネはどこか嬉しそうな声を上げながら、俺の戦いを見守る。
正直な話、俺としては、レオーネに援護をしてもらいたい気持ちがあったが、彼女は彼女なりの考えがあるのだろう。
そんな事を考えつつも、俺は再びゾウに向かう。
ソニックアローで斬りつけ、盾で防ぎ、時には拳や蹴りを放ち、とにかく攻め続ける。
その度に傷つくが、気にしない。
やがてゾウの動きが鈍くなり、俺は一気に距離を詰めると、ソニックアローで切り裂く。
「これで終わりだ」
【メロンスカッシュ!ジンバーメロンスカッシュ!】
その音声と共に、メロンディフェンダーがメロン型のエネルギー体を形作り、ゾウを飲み込む。
そして、そこに俺の放った矢が加わり、巨大な爆発が起きる。
「はぁ……はぁ……終わったか?」
煙が立ち込める中、俺は変身を解除し、周囲を警戒する。
もしまだ生きているのであれば、また襲われかねないからだ。
だが
「いやぁ、なかなかに凄いじゃないか」
「ぐえっ!?」
警戒する俺を余所にレオーネさんが抱き締めて来る。
豊満な胸が顔に当たり、思わず変な声が出てしまった。
「おぉ、良い反応だな」
「何やってんだ、あんたは」
「まぁまぁ、良いじゃねぇかよ。
にしてもなぁ」
そう言いながら、レオーネさんの視線が気になる。
「ふふっ」
その目線は確実に欲情した獣の目であった。