「家庭教師?」
その話題は、もうすぐ春休みに入る前の出来事だった。
「はい、アースガルズの次期当主として、まだ知識が不足しているので」
「まぁ、確かに」
俺自身、北欧神話に関しては、鎧武に触れた程度しか知らない。
そう考えれば、ロスヴァイセさんの言葉も分かる。
「何より、その、私達のメンバーで、そういうのを教えるのに適している人物は残念ながら」
「あぁ」
一応学校の教師である織斑先生達だが、それは体育と保健室。
知識の方面では、モルガンさん達が頼りになるが、教師に適しているかと、言われると疑問だ。
「とにかく、今日、確か来るはずですので。
私、迎えに行きますね」
そう言って、ロスヴァイセさんは出掛けていった。
「それにしても、家庭教師か」
これまでにない人物という事で、俺も少し疑問に思う
そんな疑問と共に俺はまた出掛ける事にした。
最近はロキからの刺客もそうだが、北欧神話以外の存在が出てくる可能性がある。
散歩しながら、感じる気配。
「どこから」
そう、周りを見渡すが、どこにも敵がいない。
「最近、刺客に怯えすぎか?」
俺がそう言った。
だが、その気配は周囲ではなく、地面からだった。
その殺気から逃れるように避け、その姿を見る。
全身を鋭い骨で覆われたハイエナの獣人と言うべき姿を持ち、両腕にも骨の意匠のパンチグローブを身に着けている怪人。
「グールか。
いきなり、地面から、本当にゾンビみたいな奴だな!」
その言葉と共に、グールはこちらに目を向けると共に、そのパンチグローブで襲い掛かる。
俺はすぐに戦国ドライバーに、オレンジロックシードを装填し、その攻撃を避ける。
「変身っ!」
【ソイヤッ!オレンジアームズ!花道・オンステージ!】
音声が鳴り響くと共に、俺の頭上からオレンジ色の鎧が出現して被さり、そして展開して鎧となる。
それと同時に右手には無双セイバーが現れる。
俺はすぐさま剣を構え、グールに向かっていくと、グールはこちらの動きに合わせて拳を振るう。
それを無双セイバーで防ぎながら、大橙丸で攻撃を仕掛けるが
「硬っ!」
その装甲は硬く、刃が通らない。
それと共にグールは俺に向かって、その拳を振り上げる。
俺はなんとかその攻撃を避けるが、風圧だけでも、その拳の威力が如何に強いのが、よく分かる。
なんとか攻撃を避ける中で
「紘汰さん!」
「甘露寺さんと、また誰!?」
そこには、赤い髪の女性であり、雰囲気はどこかロスヴァイセさんに似ている気がするが
「あなたが、噂の紘汰さんですか。
それよりも、紘汰さん。
そこにいるクローンの弱点はおそらくは、腹部です」
「腹部だって?」
その言葉に疑問に思いながらも、目の前にいる赤い髪の女性はなぜか信じられるような気がする。
「だったら、試すしかないか」
「私も、力を貸します」
その言葉と共に、俺はこの状況を打開する可能性のあるチェリーエナジーロックシードを起動させる。
同時に甘露寺さんもまた俺に手を伸ばす。
【ミックス!オレンジアームズ!花道・オンステージ!ジンバーチェリー!ハハーッ!】
音声が鳴り響くと同時に、俺はジンバーチェリーへと変身する。
それと共に甘露寺さんもまたロックシードへと変わり、そのまま無双セイバーに装填する。
無双セイバーは甘露寺さんの力を感じ取るように、刀身の長いムチの様な刀となり、軽く振るだけでも新体操のリボンのように変幻自在に形が変わる。
「これならば、行くぜ!」
それと共にジンバーチェリーの能力である高速移動で、そのままグールに斬りかかる。
だが、その攻撃に対してグールは素早い動きで回避する。
だしかし、変幻自在に変わる無双セイバーの刃はまるで意思を持っているかのように動くため、その攻撃を避けられても問題はない。
俺はそのまま無数とも言える程の連撃を放つ。
それは確実にグールを捉えていた。
厚い骨の身体で守っていた。
だけど、徐々にその守りが崩れ始める。
一撃、二撃と受け続けるうちに、骨の鎧に亀裂が生じ始めたのだ。
そうしている間に、俺の攻撃により少しずつではあるが、グールの肉体を削り取っていく。
そうしていく内にグールの動きは徐々に鈍くなり始めていく。
【イチ・ジュウ・ヒャク!甘露寺チャージ!】
「壱ノ型 初恋のわななき」
大きな踏み込みからしなる刃の一太刀で、すれ違いざまに目にもとまらない程の速さの斬撃を繰り出す。
全身を防御しており、その一撃はグールの腹部を貫く。
弱点である、腹部は見事に切り裂かれており、そこから緑色の血が吹き出す。
それにより、グールは倒れ込む。
それを見た俺はゆっくりと構えを解き、変身を解く。
「えっと、そっちの方は?」
そう、俺はロックシードを解除すると共に甘露寺さんに確認する。
「えっと、こちらの方はロスヴァイセさんの学友で」
「はい、私、ヨルズ様に仕えるワルキューレのアティです。
それと、今日から、紘汰さんの家庭教師に雇われました」
その言葉に、思わず疑問に首を傾げる。
「家庭教師って?」
「紘汰さんは、まだアースガルズの知識が不足すぎます。
なので、私が教えることになりまして……」
「ああ、うん」
まさか、この人が、例の家庭教師だとは、予想していなかった。