※この作品はR-18です。

アースガルズの次期当主   作:ボルメテウスさん

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いざ、出陣

追い詰められている。

 

それが分かる程の戦いを、今、俺は繰り広げている。

 

「こいつっ本当にどうなっているんだ」

 

そう言いながら、俺は手に持った無双セイバーを振り上げながら、目の前にいるクローンに攻撃する。

 

だが、その攻撃は簡単に避けられ、そのまま右腕から幾つもの火球が放たれる。

 

オレンジアームズは、その攻撃に耐えきれず、簡単に砕け散り、その威力の大きさを語っている。

 

「紘汰さん」

 

それと共に聞こえた声から、クローンに向けて幾つもの攻撃が放たれる。

 

「ロスヴァイセさん。

 

あいつは何のクローンか、分かりますか」

 

駆けつけてくれたロスヴァイセさんにすぐに近づき、確認する。

 

「おそらくはティアマトでしょう。

 

五大龍王の1匹であり、その強さは魔王と同等だと言われています」

 

「うわぁ」

 

それは強い訳だ。

 

先程からの攻撃も全て避けられている事から考えても、これまで一番の強敵だろう。

 

「だから、紘汰さん。

 

早く逃げ「られそうにないなっ」ひゃっ」

 

【ミックス!オレンジアームズ!花道 オンステージ!ジンバーレモン!ハハーッ!】

 

変身し、ソニックアローを構えて、一気に距離を詰める。

 

そして、俺の動きに合わせてか、向こうも同じように動き出す。

 

「速い!?」

 

それに思わず驚きの声を上げると、奴はその隙を狙ってきたのか、拳を放ってくる。

 

それをどうにか避け、距離を取る為に後ろへと下がる。

 

「こいつ、俺の動きを完全に分かっている」

 

先程のオレンジアームズでもそうだが、俺の戦い方をまるで全て熟知しているような動き。

 

今まで戦った相手の中で、ここまで厄介な相手はいなかった。

 

「紘汰さん!」

 

ロスヴァイセさんの叫び声を聞きながらも、意識は完全に目の前の存在に集中する。

 

俺はすぐにソニックアローの矢を放つが、それもあっさりと避けられてしまう。

 

「くそっ、なんて速さだ」

 

しかも、俺の攻撃を避けると同時に、奴の手には巨大な炎が集まる。

 

あれはまずい。

 

直感的に感じ取った俺はすぐさま避けようとしたが、後ろにはロスヴァイセさんがいる。

 

「避けれないなら」

 

【オレンジスカッシュ】

 

それと共に俺はすぐにソニックアローを構える。

 

同時に、交互に並んだオレンジとレモンの輪切り型のエネルギーを光の矢が通過し、ティアマト・クローンの火球が激突する。

 

激しい爆発が起こり、爆風によって吹き飛ばされそうになる。

 

そして、光の矢は砕け、俺はそのまま火球に飲み込まれていく。

 

「ああああっ!!」

 

熱さに悶え苦しみながら、俺は地面を転げ回る。

 

「紘汰さんっ」

 

悲痛なロスヴァイセさんの声が聞こえる。

 

だが、それよりも早く、意識がゆっくりと途切れていく。

 

「ここは」

 

先程の強烈な痛みから目を覚ますと、そこは全てが真っ白の空間だった。

 

何もない空間に俺はゆっくりと首を傾げながら、周りを見渡す。

 

「目が覚めたんだ」

 

聞こえた声。

 

俺はゆっくりと、振り向くと、そこにいたのは1人の男性だった。

 

ややあどけなさの残った童顔で引き締まった金髪の男性。

 

きっと、芸術家がいれば、その男性に見蕩れていただろうが、それよりも

 

「なんで、木の葉一枚!!」

 

そこにいる男は、まさかの裸。

 

しかも、隠すべき場所は葉っぱ一枚しかないというとんでもない変態だった。

 

「そうかい?

 

僕の時代の時には服なんてなかったから、別に珍しくなかったよ、紘汰」

 

「いや、だからって。

 

ちょっと待て」

 

思わず驚きを隠せなかったけど、俺はそこでふと止まる。

 

なんで、目の前のこの人は、俺の名前を知っているんだ。

 

「知っているよ。

 

僕はこの黄金の果実の中から君の事をずっと見ていたから」

 

「見ていたって」

 

一体誰なんだ。

 

そう思っていると。

 

「自己紹介が遅れたね。

 

僕はアダム。

 

そうだな、君の言う所の黄金の果実の最初の所有者だね」

 

その名前は確かに聞き覚えがある。

 

しかし、まさか本人と直接会う日が来るとは思わなかった。

 

「その、アダムさんがなんで俺なんかを」

 

「いや、僕というよりも、君の方から来た感じだね」

 

「俺から」

 

その言葉と共に思い出すのはティアマト・クローンとの戦いだった。

 

あの時の戦いで、俺は確かに瀕死のダメージを受けた

 

そう考えれば、俺は今、死んでも可笑しくない状態のはずだった。

 

「戻らないと、早く戻って」

 

「戻って、どうするんだい?」

 

「決まっているだろ、俺は皆を守らないと」

 

「その為に、殺すのかい?」

 

その一言に、俺は黙ってしまう。

 

「それは、だって、あいつらを倒さないと、俺は」

 

「そうだね。

 

君が殺されていた。

 

それを責める気もないし、仕方ない事だ。

 

だけど、同時に君は彼らの死の十字架を確かに背負っている」

 

アダムさんの言葉と共に思い浮かべるのは、これまで戦ってきた数々のクローン達の姿だった。

 

これまでは襲ってきたから、倒したという認識だったが、それは倒すしか方法はなかったのか。

 

この前の子供みたいに、救う事だってできたはずだ。

 

「でも、それでも俺は」

 

「なら、どうして君はここに来たんだい?」

 

「えっ?」

 

そんな質問をされると思っていなかった俺は戸惑った表情を浮かべると。

 

「ここに来る前に見たと思うけど、あれだけの戦いがあったんだよ。

 

なのに君はここで目覚めた。

 

つまり君は戦いに迷いが出ていた。

 

そうじゃないかい?」

 

アダムさんの言葉に、俺は答えられなかった。

 

確かに、この戦いが始まった当初は俺は戦う理由があって戦った。

 

だが、今は違う。

 

ただ、俺は自分の大切な人達を守りたいだけだ。

 

だけど、それが本当に正しいのか分からない。

 

そもそも、その守りたいという気持ちすら偽物かもしれない。

 

俺の戸惑いを見て、アダムさんは言葉を続ける。

 

「迷いを持ったままでは勝てる相手にも負けてしまう。

 

それに、迷っていたら大事な人を守れない事もある」

 

「それは分かっています。

 

だから俺は」

 

「なら、何を迷うんだい?」

 

「えっ?」

 

そう言われて、俺は再び戸惑う。

 

するとアダムさんは

 

「手の届く範囲で人々を守り、守りぬく。

 

それも大切だ。

 

だけど、忘れないでくれ。

 

その結果救えなかった命のことは決して忘れない事を」

 

そう言って、アダムさんは俺に手を差し伸べてくる。

 

俺は何も言わずにその手を取ると そのまま俺達は光に包まれた。

 

それは、これまで限界を超えれなかった一歩が踏み出せる。

 

そんな予感をさせる光だった。

 

「僕ができるのは、ここまでだ。

 

あとは、君がどうにかするんだ」

 

その言葉と共に、アダムさんはそのままゆっくりと俺とは反対の方向へと歩き出す。

 

「アダムさんは」

 

「んっ?」

 

そんなアダムさんに俺は

 

「なんで、俺にそこまでしてくれるんですか」

 

そう尋ねると、アダムさんは振り返りもせずにこう言った。

 

「子供が悩んでいるのに、助けない理由なんているのかい」

 

それは、アダムさんにとっては、まだ俺は子供だという事。

 

それは嬉しくもあり、同時に恥ずかしい事でもある。

 

未だに未熟な所が大きく、分かった瞬間でもある。

 

「アダムさん。

 

見てきて下さい。

 

俺、きっとあなたに恥じない立派な大人になりますから」

 

それはきっと変身だろう。

 

今の自分を越える為の。

 

その決意と共に、俺は手を振ってアダムさんを見送った。

 

そして、その光が収まると目の前に広がっていたのは、先程まで俺が戦っていた場所だった。

 

「紘汰さん」

 

俺が目覚めた事にロスヴァイセさんが見つめてくれた。

 

「ごめん、少し遅れた」

 

そう言いながら、俺はゆっくりと立ち上がる。

 

傷は既になかった。

 

それが誰か治療してくれたのだろう。

 

身体に、既に痛みはない。

 

ならば、歩き出せる。

 

ティアマト・クローンは、目の前で他の皆と戦っていた。

 

それを見ながら、俺はゆっくりと歩き出す。

 

「紘汰、無事だったのか。

 

下がれ、こいつは「大丈夫だ」えっ」

 

「こいつは、俺が決着をつける」

 

その言葉と共に手には、これまでは途中までしか作り出す事ができなかったカチドキロックシードがあった。

 

【カチドキ】

 

鳴り響く音。

 

その音を背に俺はゆっくりと戦国ドライバーにセットし、そのまま構える。

 

「変身」

 

【ソイヤッ!カチドキアームズ!いざ出陣!エイエイオー!】

 

戦国ドライバーから鳴り響く音と共に、俺は、その姿を大きく変える。

 

これまでのアームズとは違い、身体全体を覆うその姿は、まさに戦国武将を思わせる姿だった。

 

背中には勝利を確信させる2振りの旗を背負い、手には巨大な銃である火縄大橙DJ銃を手にしていた。

 

姿が変化した事によって、ティアマト・クローンは多少の戸惑いを見せたが、すぐに右腕を真っ直ぐと俺に向けた。

 

そこから放たれた数々の火球は、真っ直ぐと俺に向かって行く。

 

それに対して、俺はそのまま正面に立ったまま、受け止める。

 

「紘汰っ」

 

先程まで、瀕死に追い詰めた一撃という事で、ロスヴァイセさんが叫ぶ。

 

しかし

 

「無傷だと」

 

カチドキアームズの鎧は、次々と火球に当たり、火花を散らしていく。

 

その量は凄まじく、瞬く間に、身体を覆う程の煙が周りに広がる。

 

「グルルルッ」

 

それを見ていたティアマト・クローンは荒げた声と共に俺を見つめていた。

 

やがて、煙は払われ、姿を現した俺の姿を見て、ティアマト・クローンは驚きを隠せないように後ろに下がる。

 

カチドキアームズによる防御力は凄まじい。

 

だからこそ、目の前のティアマト・クローンの攻撃では、カチドキアームズには傷一つつけられない。

 

同時に俺は火縄大橙DJ銃をゆっくりと構える。

 

火縄大橙DJ銃のDJテーブルをゆっくりと動かすと共に響き渡る音。

 

その音と共に、真っ直ぐと狙いはティアマト・クローンに向け、そのまま引き金を引く。

 

放たれたエネルギー弾は、そのままティアマト・クローンに激突し、火花を散らし、後ろに倒れる。

 

「グッガァッッ!!」

 

ティアマト・クローンはすぐに自分の身体の変化に気づく。

 

先程まで、俺の動きを全て見切り、どの攻撃も傷一つつけられなかった自身の身体。

 

それが、今、俺の攻撃を避ける事ができず、大きなダメージを受けた。

 

理性がないはずのティアマト・クローンは動揺を隠せないまま、闘争本能に従うように俺に接近する。

 

破壊力のある爪が振り下ろされ、俺に襲い掛かる。

 

しかし、俺はその攻撃を腕で簡単に受け止め、そのまま蹴り上げる。その衝撃でティアマト・クローンは大きく吹き飛ばされ、壁に衝突した。

 

「グガッ……」

 

口から血を流しながら、こちらを見るティアマト・クローン。

 

その瞳からは恐怖はある様子だった。

 

しかし、それでも止められないのは

 

「そう作られたからか」

 

既にティアマト・クローンは、その本能から逆らう事ができない。

 

クローンとして誕生し、既に自身でも押さえつける事ができない。

 

ここで見逃しても、きっとまた犠牲が生まれる。

 

俺を狙って、その度に被害が出る。

 

だからこそ

 

「ごめんな」

 

俺は、ティアマト・クローンに呟くと共に俺はオレンジロックシードをそのまま火縄大橙DJ銃にセットする。

 

【カチドキチャージ!】

 

鳴り響く音と共に銃身にオレンジ色の光が集まる。

 

それは必殺の一撃であり、真っ直ぐとティアマト・クローンに照準を合わせた。

 

「…………終わりだ」

 

俺は一言だけ告げると、そのまま引き金を力強く引いた。

 

放たれた巨大なエネルギー弾はティアマト・クローンに命中し、爆発を起こす。

 

その威力は凄まじく、爆風が周りに広がり、瓦礫が宙へと舞い上がる。

 

そして煙が完全に晴れた時、そこには身体の半分を失いながらも、まだ動くティアマト・クローンの姿があった。

 

「……」

 

その表情は絶望に染まり、何かを求めるかのように、手を伸ばす。

 

だが、その身体は徐々に崩れ落ちていく。

 

ティアマト・クローンはその肉体を崩壊させていた。

 

既に戦意がない。

 

だからこそ、俺はゆっくりとティアマト・クローンの手を握る。

 

「っ!?」

 

一瞬、何が起きたのか分からないように、戸惑う。

 

「お前の魂は見届ける。

 

だからこそ、安心しろ」

 

それが救いになるかどうかなんて、分からない。

 

それでも、最後まで恐怖で支配されたままなんてのは嫌だろう。

 

だから、俺はそれだけ言いながら、最後の塵になるまで見守る。

 

そこには、既に破壊兵器としての役目を果たせなくなり、終わりゆく命だけだった。

 

理性はない。

 

しかし、確かに魂のある、それはゆっくりと、手の先から、安らぎがあるように消えていく。これが本当に救った事になるのかは分からない。

 

ただ、最期だけは静かに逝けるようにしてやる事ができたならそれでいい。

 

「ありがとう」

 

最後にティアマト・クローンは俺を見て言った気がした。

 

気のせいかもしれない。

 

だけど、俺には何故かそんな風に聞こえて仕方がなかった。

 

手の平には、既に塵となっていたティアマト・クローン。

 

それを握り締めながら立ち上がる。

 

「紘汰さん」

 

後ろから俺を心配そうに見つめるロスヴァイセさん。

 

「俺、決めたよ。

 

アースガルズを継ぐ」

 

それがどれだけ変わるか、分からない。

 

それでも、これ以上ロキの奴を好きにさせない。

 

だからこそ、俺はこの戦いから降りない。

 

「ロキの奴、絶対に許さないっ」

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