フェニックス家での婚約騒動から数週間。
駒王学園での球技大会、木場の過去、そしてヴァチカンからの使者の来訪。
数々の出来事が次々と起こる一誠達。
「失礼します」
そう、ヴァチカンからの使者であるゼノヴィアとイリナとは違う誰かの声が聞こえる。
それは部長であるリアスは既に知っているのか、ドアの方を向く。
そこに立っていたのは一人の少女だった。
銀色の髪を左右で結んでおり、瞳は青みがかったグレーの少女だった。
明らかに駒王学園ではない制服を身に纏っている少女であり、その少女に一誠は首を傾げる。
「あなたが、アースガルズの使者という」
「シエル・アランソンです。
今回は、急な来訪で、申し訳ございません」
そう言いながら、シエルと名乗った少女は丁寧に挨拶する。
その美少女と言えるシエルを見ながら、思わず一誠はその胸を見てしまう。
だが、隣にいる小猫の視線を感じて、すぐに切り替える。
「あの部長、アースガルズって」
「そうね、簡単に言えば、北欧神話の方々が所属している勢力よ。
三大勢力とは違う関係で、あまり関与しないと思っていたけど」
「本来ならば、そうです。
ですが、今回の聖剣の事件に関しては別問題です。
その影に潜むコカビエル。
彼を放っておけば、再び戦争が起きる。
それを危惧したアースガルズの神々は私を派遣しました」
「一人だけで、コカビエルをなんとかできると思うの」
それは、教会での信仰心と同じ事だと考え、リアスはゆっくりと問いかける。
「一人というのは少し間違いです。
私は現地にいるあの方と合流する為に来たのです」
「あの方?」
そこで出てきたあの方という単語に、一誠は首を傾げる。
その中でゼノヴィアは目を開きながら、見つめる。
「まさか、噂の鎧武。
彼はアースガルズの使者なのか」
その言葉に一同は驚きを隠せなかった。
アーシアの一件で、協力してくれた鎧武がアースガルズの勢力の一人。
その事に対して、驚きを隠せなかった。
「そうですね。
既に多くの勢力が彼の正体を探り、その繋がりが多く知っているのならば、僅かでも話しましょう。
鎧武と呼ばれるあの方は確かにアースガルズの勢力にいる一人です」
「そんな彼が、なぜこの街に?」
それを聞いて、リアスは疑問を追求するように尋ねる。
「それは、お答えできません。
鎧武がこちらの勢力という事は答えられますが、それ以上の答えを言う権限は私にはないので」
シエルはそのまま頭を下げる。
「そう、分かったわ。
こちらから深くは聞かないわ。
それで、そちらからの要求は何かしら?
まさか、教会と同じ、不干渉かしら?」
「そうです。
それは、あなた方がコカビエルと手を組むという疑いではありません。
聖剣の力は悪魔にとっては天敵なのは間違いありません。
さらにはかつての戦争を戦い抜いたコカビエルを相手に、現在、この土地にいる悪魔側の勢力では犠牲を生むだけです」
そう、シエルは心配そうに言った言葉にリアスは驚きを隠せなかった。
「なんというか、こういうのでは心配されないと思っていたから」
「そうでしょうか。
なるべく犠牲を生みたくない。
それは、鎧武も同じ考えだからこそ、協力していると思いますが」
「まあ、そうなんだけどね。
それにしても、どうしてそこまでしてくれるのかしら?」
シエルの言葉にリアスは首を傾げていた。
「理由は私も分かりません。
まだ、彼と直接会ったことないので。
けど、ただ後悔したくないだけかと」
シエルの返答を聞きながら、リアスは内心驚いていた。
「そう、イッセーやアーシアを助けた鎧武ならば、そうかもしれないわね」
その言葉に一誠は少し嬉しく思いながらも、気になる事を尋ねた。
「そういえば、鎧武って、確か特撮番組の存在だろ?
なんで、本物がいるんだ?」
「それは、あの方がそう望んだとだけ」
それだけ言うと、シエルはそのまま立ち上がると。
「それでは、私はこれで。
緊急事態には、これで連絡してください」
その言葉と共にシエルが取り出したのはかつて藤林が使用していた同じ札だった。
「それでは、失礼します」
そうして、シエルは立ち去っていった。