あと一之瀬の同僚でオリキャラが出てきます!
八月上旬。
大学生になってから二回目の夏休みを俺は満喫していた。
冷房をガンガン効かせた部屋でバラエティやアニメを観たり、レンタルコミックを読んだり、運動不足解消のため早朝の散歩をしたりなど、時間を有意義に活用している。
さらに今年は去年と違い、一之瀬帆波というセフレ以上恋人未満の存在ができて、性生活も順調だ。
セフレとは連絡が取れなくなってしまった。恐らく彼氏でも出来て俺のことを切り捨てたのだろう。
しかし俺には一之瀬がいるのでまったく問題ない。
その一之瀬とは夏休みに入ってからは週三回のペースで会っている。
彼女は平日が休みなので、学生の俺とは都合が合わなかったが、夏休みに入り毎日が休日になったおかげで頻繁に会えるようになった。
約束通り彼女の誕生日には一緒にお酒を飲んだ。
初心者でも飲みやすそうなお酒を見繕い、ラブホで飲み明かした。
真面目な一之瀬は、かかりつけの医師にわざわざ相談して、とある条件付きで許可を取り付けたらしい。
その条件とは以下の二つだ。
・抗うつ剤と併用しない
・習慣的に飲酒をしない
そのため飲酒は週一にするよう俺と一之瀬は約束した。
お酒は美味しいが毎日飲みたいほどではないので、俺も一之瀬のペースに合わせて飲酒をしている。
ちなみに一之瀬はお酒にあまり強くなく、ハイボール一杯でほろ酔い状態になってしまう。
ほろ酔い状態になった一之瀬は、甘えっぷりが半端ない。
常時抱き着いてくるし、飲食は必ず口づけを求めてくる。
なので外食時は必ず飲酒をさせないようにしている。
『新しい下着買ったよ♡ どうかな?』
LINEの通知音が鳴ったのでメッセージを確認すると一之瀬からだった。
画面には一之瀬の下着姿が表示されている。
一之瀬とラブホで身体を重ねてからこうした如何わしい写真が送られるようになった。
目的は写メ日記に載せるので問題ないか俺にチェックしてもらいたいとのことだった。
ちなみに写メ日記とは、風俗店のホームページに掲載している風俗嬢のブログみたいなものだ。
お店に在籍している風俗嬢たちだが、彼女らはあくまで個人事業主なので、集客を集めるために日々更新をしているらしい。
一之瀬は顔出ししていないので、その分こうしたセクシーな写真を掲載している。今回のような下着姿だったり、手ブラや谷間をアピールした写真など、男の息子を刺激させるようなものばかりだ。
『たまらないな』
素直に感想を返信する。
なお、頂いた写真はすべてクラウドに保存している。
『ありがとう♡ 今日はフルで入ってるから終わるの20時半すぎると思う!』
『了解。売れっ子は大変だな』
『ありがたいことだけどね。鈴木くんは今日何するの?』
『いつも通りだよ。テレビ見たり、漫画見たりなど自宅でゴロゴロする』
『相変わらず夏休み満喫してるね! それと明日は大丈夫だよね?』
明日は一之瀬が俺に手料理を振る舞ってくれることになっている。
宅配冷凍弁当ばかり食べていることを明かしたところ、一之瀬のアパートに招かれることになったのだ。
『ああ。一之瀬の最寄り駅で待ち合わせでいいんだよな?』
『うん。そのままスーパーに寄って買い物するから』
『買うもの教えてくれれば俺が買ってくけど』
『やだ。鈴木くんと一緒に買い物したいもん♡』
『わかった。でもお金は俺が出すから』
『でも……』
『料理作ってもらうんだからそれくらいさせてくれ』
『わかった。それじゃ代金はお願いします!』
『あいよ』
『それじゃ写メ日記更新したりするからまた連絡するね♡』
『また後で』
『ばいばい♡』
彼女とのやり取りを終えた俺はエッチな写メのせいで勃起した肉棒を鎮めるため、最近お気に入りの凌辱系の動画を再生した。
俺の性癖は一之瀬の影響でかなり歪められてしまった。
動画は和姦から凌辱系のものばかり見るようになったし、本番では相手の顔を見れる正常位が好きだったのに、今では後背位でフィニッシュを迎えてばかりだ。
特に鏡越しに顔面崩壊した一之瀬を後ろから突くのがたまらない。
一之瀬も俺と同じ気持ちを抱いているようで、バックでする際は必ず鏡に顔を映るように場所を移動している。
「俺も一之瀬も変態だな」
麻子と付き合ってる時は、自分が変態だとは一度も思わなかった。
キスはもちろんセックスもしたが、一之瀬にしている暴力的なプレイは一切しなかった。
それにセックスより、いちゃついてる方が多かったくらいだ。
それが今やAVとはいえ、女が泣き叫びながら犯されているのを見て自慰する男になってしまった。
今の俺を見たら麻子は軽蔑するだろうな。
このようなAVには嫌悪感を抱いてたし、DVの報道を見るだけで自分のことのように怒っていたほどだ。
『いやぁ! やめて助けてぇぇぇぇええっ!』
女優の絶叫と同時にLINEの通知音が鳴り響いた。
一之瀬で間違いないだろう。
しかしタイミングが悪い。
こんな中途半端な状態で終わらせたくない。
あと5分で抜けるから待っててくれ。
心の中で一之瀬にお願いをして、俺は動画に没頭した。
「うげぇ……」
結局抜くまで10分ほどかかってしまった。
スマホの画面を見ると、案の定大量にLIENの通知が表示されていた。
未読メッセージ:25件
全部一之瀬からのメッセージである。
こうした俺からの返信がなく、彼女から大量のメッセージが届くのは今回で2回目だ。
前回は通知音をオフにして、昼寝をしている間に一之瀬から連絡があり、起きたら50件近いメッセージを受信していた。
ただ前回は一時間で50件だったが、今回は10分で25件。
悪化している……。
『写メ日記更新したよ♡』
『毎日更新するの大変だったけど、鈴木くんに写メ見てもらえるから楽しくなってきた♡』
『……鈴木くん?』
『おーい』
メッセージを確認すると俺に呼びかけるような内容が続いた。
『鈴木くん、なんで返信してくれないの?』
『もしかして怒らせちゃった?』
『ごめんなさい』
『許して』
『言ってくれれば直すから』
特に怒られることをしていないのに、原因もわからず謝りだす一之瀬。
『鈴木くん、やだよ……』
『無視しないで……』
恐らく泣きながらメッセージを打っているのだろう。
『ごめん。よく考えたらうざいよね』
『こんなたくさんメッセージ送っちゃって……』
『返信待ってます』
ようやく落ち着きを取り戻したようだ。
最後のメッセージを確認して安堵した俺は自慰していたとは言えず、腹痛でトイレに籠っていたと一之瀬に説明した。
彼女はその答えに納得したようで、大量のメッセージを送ったことを詫びた。
「今度からメッセージを返せないときは前もって言っておこう」
こうして俺は一之瀬の取り扱い方を学んでいくのだった。
***
「はぁ……」
またやってしまった。
鈴木くんから返信がなくて、しつこくメッセージを送ってしまった。
たった10分返信がないだけで、私の心は不安に駆られてしまう。
私とのやり取りに飽きてしまったのかな。
それとも面倒くさいと思っているかな。
もしかして他の女の子と連絡を取り合ってるのかも。
そんな不安をかき消すために、ひたすら彼にメッセージを送った。
我ながら面倒で重たい女だと思う。
でも優しい彼は私を怒ったりしない。
鈴木くんと親しくなってから、一度も彼に怒られたことがない。
私が感情的になって彼を怒鳴りつけても。
今回みたいにしつこくメッセージを送り続けても。
セックスでも同じだ。
セックス中に私が粗相をしても怒らない。
イラマチオをして彼の肉棒を嘔吐物塗れにしても。
彼はまったく怒らない。
きっとメンヘラな私を気遣ってくれているのだろう。
乱暴的なプレイも嫌がりながらも受け入れてくれている。
「まったく痕がないや」
洗面台の鏡で首元を確認する。
一昨日。彼に首を絞めてもらったけれど、私の首は綺麗なままだ。
約束通り彼はネットで首絞めプレイを調べてくれて、私を痛苦を伴う快楽に導いてくれている。
ちなみにまだ本番をしながらの首絞めはしていない。
首絞めプレイは命の危険が伴うプレイなので彼も私も慎重だ。
今は彼に首を絞められながら、オナニーをしている。
「ぅぐっ……あがっ……」
試しに自分の首を絞めてみた。
鏡に映る私の顔は、苦痛に歪む表情をしている。
だめだ。
自分で自分の首を絞めても苦しいだけだ。
「けほっ……ごほっ……」
彼に首を絞められれば、あそこが濡れるのに。
あそこがまったく疼いてこない。
「はぁ、はぁ……」
やっぱり好きな人に苦しまされるから気持ちよくなれるんだ。
彼にされないと意味がないのがよくわかった。
自分の首を絞めて気持ちよくなれれば、首絞めオナニーでもしようかと思ったけどやめよう。
どうしようもないな私。
セックスどころか、オナニーでさえ、まともじゃなくなってきている。
ふと昨晩おかずに使用した動画を思い出した。
女優さんが男優さんに徹底的に嬲られるAVだった。
ビンタされたり、髪の毛を引っ張られるのは優しいほうで、土下座を強要させられて頭を踏みつけられ、最終的に蹴飛ばされていた。
女優さんは泣きながら謝罪をしていたけれど、男優さんは容赦なく女優さんに暴力を振るっていた。
最後は紐で首を絞められながら失神していた。
そんな暴力的なAVを見て、私は女優さんを羨ましいと思ってしまった。
「……やば、そろそろ出ないと!」
気づけば家を出る時間が近づいていた。
帰ったらもう一回動画を見よう。
今晩のおかずを考えながら、私は急いで身支度を整えた。
***
時刻は午前10時。今日も予定通り勤務開始の一時間前に出勤した私はボーイさんに予約状況を確認している。
今日の予約は四人。一人二時間接客をするので、鈴木くんに説明した通り上りは20時半くらいになりそうだ。
予約状況を確認したら待機するため私専用の部屋に向かう。
ちなみに待機はお部屋待機と集団待機の二種類がある。
自分で言うのはなんだけど、私のような売上ランキングが上位の子は専用の部屋が与えられ、お客さんが来るまでそこで待機をする。
それ以外の人は、他の人と一緒に待機室で待機をする。
「あ、おはようございます」
部屋に向かう途中で先輩とすれ違ったので挨拶をしたが無視されてしまった。
先ほどの先輩に嫌われていることは知っている。
理由は待機室で他の人と一緒に私の陰口を言っているのが聞こえたことがあるからだ。
どうやら後輩のくせに専用の部屋が与えられているのが気に入らないらしい。
「はぁ……」
なら自分も専用の部屋が与えられるよう努力すればいいのに。
先ほどの先輩は写メ日記はたまにしか更新しないし、お客さんから聞いた情報だと愛想もよくないらしい。
その愚痴を吐いたお客さんは今では私のリピーターさんだけど。
「ふふふ」
高校時代の私ならそれでも仲良くしようと頑張ったんだろうなぁ……。
でも今の私には無理だ。
そんな気力はないし、自分のことで精一杯。
そもそも風俗嬢は同僚と関わろうとはしない。
ただ一人を除いて。
「結衣ちゃんじゃん。おつー」
部屋に入ろうとしたところ、背後から声をかけられた。
「エリカちゃん。おはよう」
彼女の名前はエリカちゃん。もちろん本名ではない。
年齢は20歳で、私と同い年だ。ただソープ嬢は5歳若くサバを読むのが普通なので実年齢は不明だ。
「今日も11時からなの?」
「そうだよ。エリカちゃんは?」
「あたしも。ねえ、よかったら部屋にいってもいい?」
「いいよ」
「サンキュー。準備も終えて暇してたんだよねー」
「早いね。どうぞ入って」
「お邪魔しまーす」
入室するなりソファーにくつろぐエリカちゃん。
私はすぐにお風呂にお湯をためた。その間に室内のセットを整えたり、化粧直しをするのがルーティンになっている。
「結衣ちゃんはナチュラルメイクだからすぐに終わるからいいよねー」
「それはエリカちゃんもでしょ」
エリカちゃんは美人だ。
綺麗に染められた金色の長い髪、強気を感じさせるややつり目の整った顔、モデルのようなスレンダーなボディをしており、お店でナンバーワンの美貌を誇っている。
「まぁね」
ちなみに彼女が私にメンタルクリニックを紹介してくれた同僚だ。
なのでこんな明るく振る舞っているけれど、彼女も心の病を患っている。
切り傷も私より酷いし、範囲は手首だけでおさまらず、腕にまで達している。
「結衣ちゃん、最近彼氏できたっしょ?」
「……え?」
なんで鈴木くんのことを知ってるんだろ。
彼氏ではないけど、他人から見たら彼氏に見えるような関係を持っている。
「なんで……?」
「女の勘って言いたいところだけど、スマホの待ち受け見えちゃったんだよね」
「……っ」
待ち受けは事後の私と彼の写真を設定している。
初めてプライベートセックスした記念で撮った写真だ。
嘘! やだ恥ずかしい!
彼との事後写真を待ち受けにしているなんて。
絶対気持ち悪いと思われた……。
「……い、いつ見たの?」
「さっきお店に入る前にスマホ弄ってたでしょ?」
「うん」
「その時私すぐ後ろにいたんだよね」
「そ、そうだったんだ……」
ぜんぜん気づかなかった。
彼との待ち受けを見て、にやにやしていたのが見られてたなんて……。
「あまりプライベートに突っ込むのはどうかと思ったけど、結衣ちゃんの彼氏が気になってさ……」
私とエリカちゃんはそれなりに仲良しだけれど、あくまで同僚としてだ。
プライベートで遊んだこともないし、お互いの本名も知らない。
「そっか。でも彼氏じゃないんだよ」
「そうなのっ!?」
「うん。ボーイフレンドって感じかなぁ」
さすがにセフレ以上恋人未満とは言いづらい。
「ふーん。付き合わないの?」
「それは……」
「ま、風俗で勤めてると難しいよね」
「……うん」
「ごめんね。変なこと聞いちゃって」
「ううん。……ち、ちなみにエリカちゃんは彼氏いないの?」
もしいたら恋愛相談に乗ってもらいたい。
エリカちゃんは私と同じソープ嬢かつ自傷癖持ちなので、参考になるのは間違いないはず。
「いないよ。当分作る気もないかな」
「そ、そうなんだ……」
「あたしって男を見る目ないから。だから当分は作らないつもり」
「そっか」
本人から聞いた話ではないけれど、エリカちゃんは壮絶な過去を持っているらしい。
これも同僚の人たちの雑談から仕入れた情報だ。
女がお話好きというのは、風俗嬢でも変わらないようだ。
「そろそろ自分の部屋に戻るよ」
「うん。お互い頑張ろうね」
「結衣ちゃんは頑張りすぎないようにね」
「はーい。またね」
エリカちゃんは右手を振りながら部屋を後にした。
「はぁ……」
少しだけ名残惜しく感じている。
エリカちゃんとこんなに話すのはメンタルクリニックを紹介されて以来だ。
そういえばなんで彼女は私を気にかけてくれるのだろう。
もしかしたらお店で浮いているもの同士で、気が合うと思ったのかも。
エリカちゃんも私と同じ理由で、同僚の人たちからよく陰口を叩かれている。
「あ、もうこんな時間っ……」
そろそろ一人目のお客さんが来店される。
今日も頑張らないと。
借金返済と妹の進学費用のために。
それに。
明日は鈴木くんに手料理を振る舞うことになっている。
しかも場所は私のアパート。
私の家に来てくれるということは、それなりに親密度が増した証だ。
「えへへ♡」
明日のことを考えるとつい顔がにやけてしまう。
気をつけないと。
こんな顔で接客したらお客さんに失礼だ。
「よし」
一之瀬帆波から結衣に戻す。
仕事とはいえ男に抱かれるのは結衣の方だ。
一之瀬帆波を抱いていいのは鈴木くんだけなんだから。