「鈴木くん、なに食べたい?」
「うーん、そうだなー……」
俺は一之瀬の近所にあるスーパーに来ていた。
今日は一之瀬が手料理を振る舞ってくれることになっており、その食材の買い出しでスーパーに足を運んでいる。
「鈴木くんの食べたいものなら何でも作るよ♡」
一之瀬の最寄り駅で合流してから、彼女は俺の左腕に抱き続けている。
外でならまだしも店内は恥ずかしいから勘弁してほしい。
「一之瀬、歩きづらくない?」
「ぜんぜんっ♡」
「あ、そう……」
無理やり剥がそうとすると泣きそうになるので、俺は一之瀬にされるがままになっている。
「それで作ってほしいもの決まった?」
「肉料理がいいかな」
せっかく一之瀬の手料理なので、がっつり食べれるものがいい。
「え、えっと……」
「ん?」
「雌豚肉なら私の提供できるよ……?」
駄目だこいつ……早く何とかしないと……。
「馬鹿なの?」
「あうっ」
軽く頭を叩いてやった。
「痛いよぉ……♡」
効果は抜群だ。……発情に対してだけど。
高校時代の頼りになった学級委員長の彼女は何処へ……。
「また私が馬鹿なことを言ったら、もっと強く叩いてね?」
「前向きに検討しておくよ」
「うんっ♡」
そのうちDVで通報されそうな気がしてきた。
被虐心を満たすのは自宅かラブホだけにしてほしい。
「それで具体的に食べたい料理ある?」
「べたで悪いけど肉じゃがで」
「肉じゃがだね! わかった!」
具体的に作る料理が決まったからか、買い物のスピードが速くなる一之瀬。
それでも俺の腕から離れない。
一之瀬は先ほどから他のお客さんに舌打ちされてるの気づいてないのだろうか。
「実は肉じゃが得意なんだっ♡」
「そうなんだ?」
「うん。お母さんからたくさん料理教わったんだけど、肉じゃがが一番褒められたんだよ」
「なら期待できそうだな」
「うん!」
一之瀬が楽しそうだからいいか。
この笑顔を曇らせるのは気が引けるからな。
***
「ここが私の家だよ」
「へ、へぇ……」
スーパーから5分ほど歩いて一之瀬のアパートに到着した。
オンボロアパートとは聞いていたが、予想以上にオンボロである。
少なくとも築30年以上は経っているだろう。
「だいぶ年季入ってるでしょ」
「……だな」
「でも2DKで家賃2万円なんだよ」
「安すぎない?」
いくらオンボロアパートとはいえ、都内で最寄駅から徒歩10分で2万円は安すぎる。
「事故物件だからね」
「……マジか?」
「うん。10年前に私の隣の部屋で殺人事件があったみたいで……」
オカルトは好きな方なので、一之瀬には悪いけど少しワクワクしてきた。
「妹さんは嫌がらなかったのか?」
「妹はオカルト好きだから」
俺と気が合いそうだな。
妹が高度育成高校を卒業したら会ってみたい。
「そっか」
「あの頃は一円でも安い賃貸探してたから……」
母親が亡くなってすぐに一之瀬はより家賃が安い物件に引っ越したと俺は聞いていた。
さすがに事故物件に引っ越しているとは思わなかったけど。
「とりあえず上がって」
「おう。お邪魔します」
「はーい」
見た目はオンボロだったが、室内は意外と綺麗だった。
一之瀬に訊ねたところ、昨年に内装をリフォームしたらしい。
間取りは2DK。広めの台所と和室が二部屋あり、居間と寝室で使い分けているようだ。
料理ができるまでくつろいで待つよう言われたので、お仏壇に線香をあげさせてもらってから腰を下ろした。
「ちょっと着替えてくるね」
一之瀬はそう言うと、寝室に消えていった。
五分ほどでルームウェアに着替え終えるとそのままエプロンを身に着け調理を開始した。
座っていてもやることがないので、料理中の一之瀬を観察して時間を潰した。
一之瀬はシュシュで後ろ髪を縛り、可愛らしいポニーテールの髪型になっている。
「~~~♪」
俺に観察されていることに気づいていない一之瀬は鼻歌を歌いながら調理をしている。
一人暮らしになって自炊する機会は減ったと言っていたが、なかなかどうしててきぱきと料理をしている。
こんな子が毎日料理作ってくれたら幸せだろうな。
でも一之瀬はメンヘラなんだよなぁ……。
俺と親しくなってリスカをやめてくれるか淡い期待を抱いていたが、そんな思いは無惨にも打ち砕かれてしまった。
むしろ手首の傷は増えており、薬の量も増えてしまったらしい。
「そう上手くいかないか」
こればかりは気長に付き合うしかない。
俺は覚悟を決めて一之瀬と関わることにしたのだ。
「もう少しで出来るからねっ!」
「わかった」
覚悟は決めたつもりなのに。
彼女と付き合うかどうか俺は迷っている。
恐らく一之瀬は風俗嬢であることを引き目に感じて俺に告白をしないのだと思う。
仕事とはいえ彼氏以外の男に抱かれるのだ。
一之瀬の性格からして負い目に感じるのは間違いない。
なので付き合うとしたら俺から告白するしかない。
ただ俺は一之瀬が好きかどうかわからないでいる。
一之瀬を傍に置いておきたいし、絶対に手放したくない。
けれど――――一之瀬が客に抱かれることに、俺は嫌悪感を感じないのだ。
本当に一之瀬を好きなら独占欲が沸くはずだ。
なのに俺は彼女が他の男に抱かれてもそこまで嫌な気分にならない。
そもそも一之瀬を好きじゃないのか。
それとも性癖が歪みまくってしまったのか。
答えがわからない俺は一之瀬に告白できないでいるのだ。
情けない話だが、答えがはっきりするまでは、今の関係を保ちたいと思っている。
しかし、この決断が彼女をより追い詰めてしまうことになるとは、この時の俺は知る由もなかった。
***
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした」
一之瀬が作った肉じゃがは絶品だった。
ほかにも数品作ってくれたが、どれも美味しくて、俺の胃袋は彼女に完全に掴まれてしまった。
俺の食べっぷりに一之瀬も満足したようで、嬉しそうな表情をしている。
早めに昼食を済ませたので、食器洗いを終えて時刻を確認するとまだ12時過ぎだった。
今日は一之瀬の手料理を頂くことしか聞いていないので、この後の予定を伺おうとしたところ、一之瀬に押し倒されてしまった。
「鈴木くん……♡」
「まだお昼過ぎだけど」
「時間なんて関係ないよ」
「したいの?」
「したいっ♡」
官能的な表情を浮かべて答える一之瀬。
「今日は手料理食べてもらったら、ずっとエッチしたいと思ってたんだ♡」
「盛りすぎだろ」
「ごめんなさい♡」
「だからそんなエロイ部屋着に着替えたのか」
一之瀬のルームウェアは、キャミソールとタップパンツがセットになっており、可愛いレースがあしらわれている。
「うんっ♡」
「まぁいいけど」
「やったぁ。あ、でも鈴木くんに謝らないといけないことがあって」
「なんだ?」
「うちのアパートの壁が薄いって前に教えたでしょ?」
「ああ」
「だからあまり大きな声出せないの」
「だめじゃん」
一之瀬の嬌声は非常に大きい。絶頂時なんて絶叫と言っても過言ではないボリュームである。
「うん。だからね……」
何だか嫌な予感がしてきた。
「まさかずっと首を絞めてろって言うのか……?」
「そんなことされたら私が死んじゃうよ!」
「だよな」
そこまで一之瀬も馬鹿じゃなかったか。
「確かに早く首を絞められながら突かれたいけど」
「……それはもう少し先だな」
「うん。とにかく大きな声が出せないから……これ買っちゃった♡」
一之瀬はそう言うと、棚から大人の玩具を取り出した。
「ボールギャグ?」
「うん。これつけて今日はエッチしたいなってっ♡」
「いつ買ったんだ?」
「二週間くらい前かな。鈴木くんに写メ送るか迷ったんだけど、驚かせたくて……。ごめんね?」
「いや別にいいけど」
いきなりボールギャグを咥えた写真を送られても返信に困るだけだ。
「前までは声を押し殺してオナってたんだけど、これのおかげで気にせずできるようになったの」
「そ、そうか……」
「鈴木くん、つけてくれる?」
満面の笑みでボールギャグを渡してくる一之瀬。
俺たちもとうとう玩具を使うようになってしまったか。
「わかったよ」
「あぁ……♡」
ボールギャグを眼前に出されると一之瀬は自ら口をカパッと開き、その欲しがりないやらしいお口にかぽっと栓をするように猿轡を装着させた。
「うぐぅ……♡ おごぉ……♡」
ボールギャグで歪んだ顔を晒して悶える一之瀬。
俺は彼女の美顔が、たった一つの玩具で崩壊したことに興奮を覚えた。
***
「むぐぅっ♡ んごぉっ♡ んぼおおぉぉっ♡」
昼食を食べ終えてから身体を重ねた私たちは、そのまま官能の世界に浸っている。
薄っぺらい布団の上で性感帯を嬲ってもらい、牝穴に子種汁をたくさん注いでもらった。
そして今は、寝室に設置してある化粧台の前で、立ちバックの体勢で突き上げられていた。
「んぐあああぁ♡ ごおおおおおおぉ♡」
普段は物静かな寝室に、お尻と腰が激しくぶつかる音と、くぐもった呻き声が響き渡る。
「涎凄いな」
彼の言う通りボールギャグの隙間から涎が延々と垂れている。
いつの間にか化粧台には涎の池ができていた。
「顔を下げちゃダメだって」
「ん゛ごおおぉぉぉぉぉぉっ♡」
お尻を思いっきり叩かれた。
これはお仕置きだ。
私が顔を下げるたびに、こうして臀部に
「ふごぉっ♡ お゛ぼおぉぉっ♡」
鏡には快楽を貪る雌が映っていた。
私だ。
人としての尊厳を失い、恥ずかしながらもダラダラ涎を垂らす一之瀬帆波が映っている。
でもその恥辱感がたまらない。
彼やお客さんが美人だと評してくれた顔は玩具によって崩壊させられている。
初めて顔面拘束された自身の顔を見たが、引くどころか性的興奮が増してしまった。
「んぼおおおぉぉぉッッ♡」
ビンビンに勃起している乳首を引き千切られる勢いで抓られた。
刹那。股間から愛液が噴射したのがわかった。
「んぐぅっ♡ おぶぅっ♡ お゛お゛お゛ぉッ♡」
まるで勃起したそれがスイッチのように、乳首を嬲られると愛液が噴射してしまう。
上下のお口から放出される体液によって、化粧台は悲惨な状態になっている。
この化粧台はお母さんの遺品だ。
嫁入り道具として買い与えられた化粧台をお母さんは生前大切にしていた。
私も妹もこの化粧台でお母さんに教わってメイクを覚えた。
だから、今のアパートに引っ越す際にほとんどの家具を処分したけれど、この化粧台だけは捨てられなかった。
私はそんな大切なものを快楽のために利用している。
20年以上もお母さんの化粧姿を映していた鏡は、今では変態マゾ雌豚の交尾を映してしまっている。
なんて愚かな行為を化粧台の鏡に映しているのだろう。
そんな背徳感が私の性をより掻き立ててしまう。
「また顔下げてるぞ」
再びお尻に衝撃が走る。
痛みがすぐに快感に変換される。
この感覚に陥るのは鈴木くんに抱かれる時だけだ。
たまにお客さんに乱暴されることはあったけど、痛いだけで気持ちいいと感じたことはなかった。
でも鈴木くんは違う。
激痛が伴う行為もすべて快感に導かれる。
彼のチンポで突かれると、脳が蕩ける感じがして、セックスの事しか考えられなくなる。
今がまさにその状態だ。
「ん゛ぎょおおぉぉぉっ♡」
聞くに堪えない呻き声を発する私。
ここまで音量が大きいと、隣の部屋に音が聞こえてしまっているかもしれない。
でもそんなのどうでもいいや。
だってオチンポに突かれるのが気持ちよすぎるんだもん。
気持ちよくなりすぎて頭が馬鹿になっちゃう。
「おぶぅッ♡ んお゛お゛ぉぉぉっ♡」
激しく揺れている乳房を思いっきり握りつぶされた。
乳首の次はおっぱいを虐めてくれるんだ。
すでに赤く腫れあがっているけど、さらに嬲ってもらえるなんて最高過ぎる。
高校生までは煩わしいとしか思えなかったこの胸も、彼に蹂躙されるために大きく育ったんだと思うと愛おしくなる。
「一之瀬のおっぱいは最高だな」
嬉しい。
もう私のおっぱいは彼の所有物だ。
だから私の許可なくいつでもどこでも好きにしていいんだよ。
「射精《だ》すぞっ……!」
彼の肉棒が膨張したのがわかった。
私も絶頂が近づき、ペニスをより締め付ける。
ぶぴゅっ! どぴゅっ! びゅるるるるるるっ!!
「ん゛ぼおおぉぉおおぉぉっ♡」
膣内に勢いよく白濁液が注ぎ込まれる。
二発目だというのに、その勢いは一発目と変わらない。
お腹が急激に熱くなっていく。
あぁ……私は、彼に種付けされているんだ。
好きな男に種付けされるという、女として一番の幸せを私は感じている。
その幸せを延々と感じていたいのに意識が遠のいてきた。
絶頂し過ぎて心も身体も限界が来てしまったんだ。
意識を失う直前、化粧台の鏡が瞳に映った。
そこには、白目を剥き、大量の涙と涎を垂らし、知性も品性も失い、快楽に溺れた雌豚が映し出されていた。
***
「これなんてどうかな?」
夕刻時。長い長い情事を終えた俺たちは、薄ぺっらい布団で横になり、とある通販サイトを閲覧していた。
「意外と安いんだな」
「だよね。ディルドってもう少し高いかと思ったよ」
「こんな太いのあるんだな」
「凄いね。こんなの挿入されたらあそこがガバガバになっちゃう」
俺たちが閲覧しているサイトはアダルトグッズの通販サイトである。
ボールギャグだけで、性的興奮があれほど増したので、俺たちは積極的に大人の玩具をプレイに取り入れることを決めた。
「イラマチオに使えそうだな」
「やだ。鈴木くんのオチンポしか咥えたくないよ……」
「そっか。じゃあこれは却下だな」
「こっちのページの方が面白そうなのありそうじゃない?」
一之瀬がSМグッズのページをタップした。
そこには今日使用したボールギャグ以外に、アブノーマルな玩具が数多く掲載されている。
「うわぁ、これ凄い痛そう……っ♡」
一之瀬が見ているのは、パワフルなローターが付けられたニップルクリップだ。
痛みの快感を振動が増幅するのが売りなようだ。
「これ買っちゃうね」
「お、おう……」
「鈴木くんも欲しいのあったら言ってね」
「わかったよ」
お昼過ぎから身体を重ねて、夕方には次の性交のことを考えている。
被虐心が膨張し続ける一之瀬。
嗜虐心を抑えられなくなった俺。
俺も一之瀬も性に溺れてしまった。
きっとこのまま溺れ続けるんだろう。
でも、それも悪くない。
「あ、鈴木くん……」
「どうした?」
「あのね、首が疼いてきちゃった……」
「わかったよ」
一之瀬の細い首に両手を回す。
頸動脈を絞めつけるだけで、彼女を快楽地獄に堕とすことができる。
「あっ♡」
首を絞められながら、自慰をする一之瀬は、どうしようもなく無様だった。
次回は下級生が登場です!