弟(元)の手によって性を転換されたオレは、今日もくそ野郎に振り回されている。
なに? どんな風に振り回されているか言えって?
言えるかそんなこと! いろいろ察しろや!

まともでない(魔法使いな)弟と、弟にコンプレックスが刺激されて鬱々苛立つ兄(姉)のお話
あるいは弟の愛が重すぎてつらい兄(姉)のお話

*義理なので血の繋がりはないです
*振り回されていても、振り回している節もありますよ~

注意:
!ご都合展開もりもりです
!『Episode.1』とあっても、次のお話が増えるかは未定なので、ご容赦願います

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【 まえがき 】

■弟に性転換させられた兄(姉)の話になります。弟×兄(姉)。お兄(姉)ちゃんはだいたい哭かされているので、いちゃいちゃらぶらぶまでは遠いような違うような…

■一途を拗らせている陵辱シーン、受けが不憫なシーンも多々ありますのでご注意を
また、弟がお兄(姉)ちゃん以外と性的に絡む描写があります。具体的に言えば女性と絡みます。しかもいとこの女性とです。一回限りのことであり、その子以外との絡みはありません

少しでもお楽しみいただければ幸いです

2022.05.11


Episode.1 くそ野郎をぶん殴りたい

 着るというよりかは着せられている、なんら目立つことのないスーツ姿で参加した大学の入学式という晴れやかなる舞台が終わったあとすぐに、オレは一際目立つ男に近づいて言った。「ちょっと話があんだけど」と。

 

 同じくスーツ姿の男は一度目を見張ると、その場にいた友人か顔見知りかに何事かを言う。「先に行ってて」と聞こえた内容から、このあとも行動をともにする予定だったのだろう。本来ならばそうしてくれた方がありがたいのだが、どうしても言いたいことがあるのだ。この機会を逃してなるものか! 渋る友人か顔見知りかを説得する間にも逃がさないと言いたげに腕を掴んでいるのがよい証拠ですわ。逃がさんぞ、本当に。

 

 憎き男の唇から「ソラちゃん、それは本当にダメだよ」と小さく漏らされるが、聞く耳は持たない。なぜなら、持つ必要がないからだ。この男の話を真面目に聞いていては、苛立ちが募るだけなのだから――。

 

 斜め下から覗く顔はあのときよりも成長し、美しさが増しているようだった。身長だって高くなったし、体格だってよくなっている。どうやら三年間という歳月は、美形をさらに端正にさせていたらしい。なんて羨ましいんだ。腹立つわ。コイツは人の神経を逆撫でさせるのが上手いらしい。

 

 返してオレはなんと女々しいことだろうか。身長は伸びないというのに、なぜか胸(・)部(・)ばかり成長しやがるしよお! 大きくなるなんてもう嫌だと、本気で泣いたのは何度めになるのかもはや解らないほどだ。いや――女の子になったのだから女々しさもなにもないはずだ。胸部だって自分で好きに出来るのだから、万々歳かも解らない。そうだよな、いい風に考えなければ気が滅入るしかないよな!

 

 気を取り直して、といっても、悔しさにギリギリと奥歯を噛みしめながら、男の観察を続けていく。埋没するであろうスーツ姿だというのに、こちらはなんと神々しいのだろうか。スーツ自体もオレの安っぽいスーツとは違って、お高そうな雰囲気があるし、着せられている感じも一切なく、きちんと着こなしている。色合いも触り心地も柔らかな茶髪は地毛であり、同じような色の瞳には絶賛オレが映り込んでいるだろう。髪も瞳も黒いただの凡人が眉を寄せている姿が。まあ、髪の長さは背中の中程まであるが。

 

 今日は入学式だから、うなじでひとつに纏めてからシュシュを飾って右肩から流しているというアレンジ髪型をしているが、それだけでしかない。シュシュは友人からの大学入学祝いであり、友人とは色違いでもある。友人といっても、彼女はこの男のいとこであるのだから世間はどうにも狭いらしい。一発ぶん殴ってくると伝えてから一度別れたのだ。なぜなら、彼女だけは――有良木(うらき)美砂子(みさこ)はオレが女の子になった経緯を知っているから。「ソラが貴也を殴れるとは思えないけど、まあ頑張りなさい」と言われましたよ。呆れながらも。

 

 ミサコもミサコで辛辣だったが、オレの標的はくそ野郎だ。この三年間はくそ野郎をぶん殴るイメージトレーニングを欠かさなかったし、緊張感が消えたら問題ないはずだ。大丈夫! とふんと気合いを入れて男を見つめ直すと、なぜか頭を撫でられた。ついでに頬も。微笑みを浮かべつつなのが理解出来ないが、行動の予測が不能なのは知っているので、理解する必要もない。

 

 周りからの刺さるような視線をひしひしと感じるが、背の高い美形ときて頭もよいのならモテるのは必然とも言えよう。さらには物腰が柔らかく、人当たりもよいとくれば、自然と人が集まってくるものだろう。芸能人やモデルにも引けをとらない存在が近くにいるのなら、手を伸ばしたくなるのも頷ける。この男の周りに老若男女関係なく人が多いのはそういうことだ。

 

 それを自慢するでもないのがまた腹が立つのだが、喚いても意味がないので心で罵倒して満足していた。爽やかなのは顔だけだな! と。その上、みんなコイツの中身を――義理の兄を犯し、女の子に性転換させてからは足腰を立たなくなるまでぐずぐずに抱き潰す変態絶倫くそ野郎だとは知らないのだから付き合えるのだと、自分に言い聞かせるように過ごす毎日だ。でなければやってられない。コイツとオレの能力の差はどうあっても埋められないのだから。

 

 あの日を思い返してさらに奥歯を噛みしめると、「ソラちゃん」と腰を引き寄せられた。女の子たちから睨まれるが――いやもうずっと睨まれていたわけだが、そちらに気をとられるはずもない。オレは――高場(たかば)奏良(そら)は、くそ野郎な元弟である男――桔川(きかわ)貴也(たかや)にしか用はないのだから。

 

 いやらしく腰を撫で上げる手に躯が跳ねるが、なんとか「な、なんだよ……?」と声を出した。

 

「それ以上歯を噛みしめるのはダメだよ。欠ける可能性があるんだから」

「欠けてもお前には関係ないだろっ」

「関係あるからね。ソラちゃんの髪の毛一本一本から足の先まで俺のものなんだから」

「わけの解らないことを言うなっ!」

 

 引き剥がそうとすればするほど強く抱かれ、友人か顔見知りが悲鳴を上げる。主に女の子からだが、なかには野太い声も混じっていた。さすがたらしだわなと感心する傍らでも、しっかりと暴れているオレを誉めてほしい。手をばたつかせるだけだし、すればするほどぎゅうぎゅうと胸板に押しつけられてしまうが。くそが! いい匂いをさせてるんじゃねえよ!

 

「恋人はいないんじゃなかったの!?」

「ソラちゃんがいまだに付き合ってくれないから、恋人に進んでないだけだよ。――この世でただひとり愛している人は、なんだか強情なんだよね」

 

 オレの右耳に顔を寄せて囁くようにそう言う男は完全に頬を緩ませている。おいやめろ、頬擦りをするな! 被害者のオレが付き合うわけないだろうが! あと睨みがきつくなるからマジでやめろって!

 

 やめろやめろと声を荒(あら)らげながら胸板をぐいぐい押すが、びくともしない。この胸のなかに収まるような身長差も痛かったが、一回り、いや、二回りはあるのかと思うほどの体格差も痛い。どうにもならないのだと直に伝えてくるから。湧き上がった憤りに奥歯を噛みしめると、すぐさま腰を撫で上げられてしまう。

 

「ふにゃぁんっ!?」

 

 結ばれた唇でさえも否応なしに声が出るのはそういうことだ。つまり、躯だって大きく跳ねてしまうのは、オレはこの男の手によって男を教え込まれたので、特にこの男の手には弱いという話である。――オレの全てを知り尽くした男の性的な刺激に勝てる要素はなにもないわけだ。「おっ、おみゃっ……、にゃにするんだぁっ」と噛み噛みの情けない声が漏れると同時に、元弟は嘆息を吐いた。どうやら呆れが滲んでいるようだ。おそらくは「どういうこと!?」との混乱の声に対してだろう。記憶から葬り去りたいが、オレに対してではないことが解るぐらいには長いつき合いがあると言っておこう。

 

「どうもこうも、心に決めた愛しい人がいるから気持ちには答えられないってはっきりと言っていたじゃない。その上で傍にいることを選んだのは君たちでしょう?」

「それはっ、そうだけど……っ」

 

 突っかかる女の子からオレを庇うような体勢になると、「ソラちゃんを目の敵にするなら、君たちは俺の敵だよ」と告げる。とても冷たい声で。目だって冷ややかだ。

 

 この声も目の鋭さもオレは知らないが、誰にだって裏表ぐらいのひとつやふたつはあるだろう。いままで裏の顔をオレに見せなかっただけであって。あのときのケダモノ顔はまた違うかもしれないが。

 

 女の子たちの「貴也!」「待ってぇ!」という声に振り向くこともなく、「時間の無駄が出来たけど、行こうか」と満面の笑みを浮かべながらオレの手を恭しく取ると、すぐさま導いていく。くそが! と怒りを露にしながら手を振りほどきたい衝動に駆られるが、それをすれば周りに怪訝な顔をされるだろう。とことん面倒なことになるかも解らない。一発拳を入れる為にここは我慢をしなければな。

 

 張りつけた笑顔の傍らで、きゅっと握られる手に爪を立てておくことは忘れない。オレがお前にされたことも決して忘れやしないさ。

 

 怒りに燃えた視線の先には、柔らかな笑みを浮かべたままの横顔があった。痛がりもしないのが腹立たしいわ!

 

 

 ◆◆◆

 

 

 サークル勧誘の人混みを抜けた先――どこかの建物の壁を前にすれば、「ソラちゃん」と背後から抱きしめられる。「もう離さないから」という言葉とともに強く。

 

「なにがもう離さないだよっ」

「そんなに警戒しなくとも、なにもしないよ」

「さらりと嘘を言うな!」

「ああ、バレてるなら話は早いね。なら――いまから愛してあげようね」

「お前マジでふざけんなっ!」

 

 躯を捩りながら怒りを込めて言うと、元弟は「上目遣いは破壊力があるね」と暢気なことを返してくる。それがさらに怒りを爆発させたが、目の前の美しい男は朗らかな笑みを浮かべるだけだった。

 

 それならばと手のひらに拳を打ちつけながら「一発殴らせろよぉ……!」と準備に入ると、「ソラちゃんに俺は殴れないよ」などと挑発してきやがった。確かに作り物めいた美しい顔に攻撃は無理そうだが、腹に一発見舞うことぐらいなら出来るはずだ。これまでに誰かを殴ったことはないがいけるいける。イメージトレーニングを思い出せ、オレよ!

 

「てめえは覚悟だけしてろ」

「それはこちらの台詞だよ。――躯が思い出すまで愛してあげる」

「さっきから愛してあげる愛してあげるうるせえんだよ! ふっざけんなよお前ぇぇぇ! オレになにをしたのか覚えてないのか!?」

「まさか。ちゃぁんと覚えているよ」

 

 頬を撫でてくる手を払い落としながらの「愛なんてまるでなかったぞ!」という渾身の叫びに対し、愉快げに目を細める姿さえも神々しいのがイライラする。余裕綽々なのがまた気に入らない。神秘的な雰囲気がそうさせるのかなんなのか、この男のすることはいちいち目を引くようになっているのだからどうしようもない。そうだと解っていても、不公平すぎるだろうが。オレだけがこんなに感情を乱されるなんて。オレだけが何年経っても劣等感の塊だなんて。完璧すぎる元弟になにも敵わないままだなんて、そんな情けないのは嫌なんだよ。

 

 オレだって観賞用なら遠くから眺めるだけだっただろう。劣等感だってここまで大きくならなかったはずだ。しかし、オレと男の関係は元兄弟である。一度は家族になったのだ。十日ほどの誕生日の違いはあっても、なにをやってもそつなくこなすのだと理解してしまったものだから、端から出来が違うのだと自分に言い聞かせてきた。子連れ同士の再婚なのだからと。コイツには勝てないだけで、人並みには出来ているのだと。そうしなければ、惨めさに潰されていたかもしれない。

 

 高校入学前――悲劇が起きた中三の夏のあとに円満離婚をしたのでいまや家族ではなく他人同士となっているが、心の底から胸を撫で下ろしたのも確かである。これでオレと弟が比べられなくなる日が来たのだと。うん、まあ、つかず離れずを繰り返していまは事実婚状態だから、淡い日々だったわけですがね。

 

 話を戻して、この男は覚えていると言った。オレの抵抗を容易く封じ、タオルで後ろ手に縛ったあとにぐちゃぐちゃに犯したあの時間を覚えているのだと――。

 

「覚えているならなんでそんな平然としてるんだよ! 腹立つわ本当に!」

 

 恥ずかしいから忘れてほしいという気持ちと、覚えていろ一生忘れるなという湧き上がる怒りがない交ぜになる時間だった。いまもそうなのだから、時間の解決は遠いだろう。柔らかな笑みを浮かべながら「覚えている」と言える神経がオレにはさっぱり解らないが、コイツはそういう性格の悪い男なのだ。にこにこ機嫌よさげに笑いながら、頭の中ではものすごく不埒なことを考えているくそ野郎なのだ。そう、円満離婚ということで、犯されたことは母の耳には入っていない。もちろん、元父の耳にもだ。いくらなんでも話せる内容ではないからな。いや、この男と一緒になったあとの父さんの方は知らないが、オレから母さんに話す日はこないだろう。

 

「俺はソラちゃんを物理的に女の子に変えたことしか覚えてないよ。かわいいかわいい俺のソラちゃんを」

 

 機嫌良さげなにこにこ顔のままのしれっとした言葉に、怒りの炎が大きくなる。女の子に変わる前も一大事であったが、変えたあとが一番大事なことだろうが! なんでそんなに平然と言えるんだ!

 

「男のときにも犯してっ、女の子に変えてからも抱き潰しただろうが! お前絶対ぶん殴るからなぁ! お前の所為でオレがどれだけ苦労したか解ってるのか! 女の子の日なんて大変なんだぞ!」

「怒りっぽいということは、ソラちゃんはアレの日なのかな? あれ……? でもそれだと周期が合わないなあ……」

「ふっざけんなああああ! なんでお前がオレの生理周期を知ってるんだよおおおお!」

 

 考えるように顎に手を添えながら呟かれる声に悪寒が走るが、「ほら、ねえ?」と悪びれなくふたたび頬を撫でてきた男はそのまま唇を耳に寄せて囁いてくる。

 

「――俺はソラちゃんのことならなんでも知っているから。スリーサイズも下着のサイズももちろんね。あとはそうだね――、毎週水曜日に自慰行為をしていることも知っているよ」

「なっ!? な、に言って……っ」

「膣内は掻き回していないようだけど、この細い指で陰唇(いんしん)や陰核亀頭(いんかくきとう)――クリトリスの先端部を撫でたり弄っているんだよね? かわいらしい声を出しながら」

 

 右手を掴まれて、人差し指と中指に唇が落ちてくる。ぞくりと走るなにかに気づかない振りをして、声を出した。否定する声を。「ち、がっ……」と訴える声は完全に震えていたが、快感からではないんだ。決して違う。ただ指にキスされただけだというのに、躯が反応しかけたなんて、そんなことあるわけがないんだ。

 

 再び違うと絞り出せば、目の前の男はにんまりと笑った。それはそれは意地悪そうに。

 

「違わないよね。でも俺が教えた快感と違うようだから、毎回悔しそうに泣きじゃくっているんだよね? ソラちゃんは本当にかわいいなあ」

 

 囁く低音は「中を掻き回せばもっと快感を拾えるよ?」と教えてくるが、そんなこと出来うるはずもない。というか、なんでそんなことを知っているんだよおおおお!?

 

 内心の動揺を悟られる前に「き、傷が、ついたら怖いから、しないっ」とおそるおそる言うと、「爪を切ったり、手を洗えばいい」とさらりとした言葉が返ってきた。

 

「だからっ、怖いって言ってるだろうがぁっ」

「怖くないから大丈夫」

 

 腹に回されていた手が下がると、スカートのなかへと滑り込んできた。この先に起こり得ることを察してぴくりと躯が跳ねるとともに「嫌だっ」と手を払い除けるが、「俺は躯が思い出すまで愛してあげると言ったからね」という低音が鼓膜を犯していく。たったそれだけだというのに、甘い痺れがじわりじわりと全身に広がっていった。

 

 このまま流されるのは危険だと、甘い快楽を逃がすように頭を振ると――、あろうことかそこを撫でられた。陰裂を。「ぁぅんっ……!」と甘い声を漏らせば、元弟は楽しげに喉で笑う。「かわいい」と。かわいいわけがないだろ! と怒鳴り返してやりたいが、獰猛になった男に少々弱腰になってくる。元々は一発殴ってはい終わりであって、貞操の危機に陥るなんて考えてもいなかったのだから。

 

 いつの間にか黒タイツ越しの下着のなかへと手が入り込んでおり、いいようにされていたようだ。引き抜こうとすれば、先端部を――クリトリスを強く摘ままれる。

 

「ぃ、ぁあぁっ!?」

「ソラちゃんの期待している快感を与えてあげようね」

「やっ、ぃ、ら、なぁっ……、ん、ぁっ!」

 

 応酬の最中にも何度も先端部を摘ままれ、抵抗など出来ないまま指の先を受け入れてしまうと、「まだ指先なのに吸いつきがすごいね」と囁かれた。自分がどんな状態にあるのかを教えられると、躯が熱を帯びていく。耳朶を食んだり舐めたりする唇や熱い舌の感触も伝わり、さらなる甘い痺れが奥から広がっていった。生殺し状態を維持されてしまうときつい。だがやはり、屈するわけにはいかないのだ。

 

「~~っ、っん! ぃ、や、だぁっ」

「嫌ではないはずだけど」

「ん、ぃ……、ゃっ」

 

 中を擦る指が増えると、音が大きくなったような気がする。くちゅくちゃ響く水音が。

 

「自慰行為ではここまで濡れてはいなかったよね?」

「そんな、こと、し、るかよっ」

「俺で感じてくれているのなら、これ以上の嬉しいことはないなあ」

 

 嬉々とした言葉とともにぐっと指が奥に入ると「あぅぇっ!?」と変な声が出てしまう。愉快げに「ソラちゃんのここは、俺の形を覚えているかな?」と言いながら、深くを穿つ指がさらに増えた。三本も飲み込んでいるという現状に足が震え出すのはなぜか。ゆだる頭では思考が回らず、ぐちゅぐちゅと掻き回す音と甘い声が届くだけである。

 

「ふ、ぁ、っ、あ、ぁっ! ゃ、指っ、抜けよぉっ! ――んぃ、ぅんんんっ!?」

 

 却下だと言いたげに指が中を擦る。その刺激をどうにか逃がしたくて壁に手を伸ばすと、耳朶に舌が這った。「腰を突き出すなんて、はしたいね」という言葉はくすくすと笑いながらだ。

 

 くそがと吐き出す前に顎を取られて上向かせられると、ギラついた瞳とかち合った。合ってしまった。その孕んだ熱の正体をオレはもちろん知っている。どろどろに蕩けた獣欲だということを――。それは何年も貯めに貯めた執着と性欲とがない交ぜになった証であると同時に、オレに――オレだけに向けられた、ただただひたむきなただひとつの重い思いでもある。

 

 重すぎて恐ろしすぎるが、反面、ここまでの激情を注げることが羨ましくもあった。オレはこれまでにここまで人を好きになったことがないのだから。本当に羨ましい。そうなったのにも理由があるが、大部分は元弟にあるだろう。オレに近づいてきた女の子たちは、オレに好きだと言っていても、それはこの男に近づくための打算的な言葉であって、真実紡いでいたわけではない。そうだと解ったのは視線や仕草、声音といったものからだったが、簡単に騙せるのではないのかと踏んでいたことに気分が悪くなった。

 

 だがしかし、そうだと解っていても、元弟に合わせてやるのはこれも打算である。オレを見てくれるようにという。けれどもいつだって、女の子たちは元弟しか見ようとしない。いやまあ、第三者から見ても、オレより元弟の方が優れているのだから気持ちは解らなくもなかったが、オレからすれば余計惨めになるだけだったのだ。

 

 救いがあるとすれば、この男がひとりも相手をしていないことだろうか。駆け寄った女の子たちを見ようとすらしなかったのだから。当たり障りのない話を少しだけして、オレの手を取って「さようなら」と別れていた。それでも、踏み台にされ続けていた関係で、恋愛事がよく解らなくなっているのは確かだ。手遅れになる前になんとかしなければならないが、なにをどうすればいいのか解らないのだから、もう手遅れかもしれない。

 

「ソラちゃんがほしいものはなに?」

「そ、とは、い、や、だ……っ」

「その外で指を咥(くわ)え込んでいるのは、ほかでもないソラちゃんだよ?」

「う、るさ、いっ! お前がぁっ、襲って、くるから、だろぉ……! んゃ、ぁんっ!」

 

 はーはー熱い息を吐き出しながら答えると、唇に舌が這わされていく。と同時に中を強く擦られ、背中がしなる。視界は涙に濡れて半分ほどぼやけているが、嫌になるほどの熱い視線とオレを欲する声は確かに感じていた。

 

「もう一度だけ聞くけど、ソラちゃんがほしいものはなに?」

 

 そう囁いて唇を塞ぎ、細長い――本当に綺麗な手でぐっと手首をひとつに纏める姿はまさにケダモノだった。中を擦る指も、ねっとり絡む舌も、オレを追い詰めては離さない。

 

「言う気になったよね?」

 

 いったい何分深いキスをしていたのかは解らないが、吐息が荒くなるまではしていた。舌先で繋がる糸が切れると、くそ野郎は手首から腕を離して涙を舐め取る作業に入る。

 

「オっ、オレはぁ、言わされている、だけでぇっ、はしたなくはっ、ないからなぁ」

「うん。解っているから大丈夫だよ」

 

 浅いところを擦る指が抜かれると、下着とともにタイツが膝下まで脱がされていく。さらには滑ったそこを広げられてしまうともう引き返すことなど不可能だ。春先の外気に晒されても、くちりと小さな水音を届けてくれる。「俺にはソラちゃんだけだから」と耳朶に軽い口づけをされると、意を決めた。

 

「……カヤくんの、ペニス、入れて……」

 

 この言葉を言わない限りは、弄ばれるだけだ。ほにゃりと愛想を崩した男はもう一度唇を塞ぐと、今度は「ソラちゃん大好き。ソラちゃんだけを愛してる」と言って腰を掴む。

 

 タカヤだからカヤ。ソラちゃんもカヤくんも、お互い特別な呼び名だ。ちゃんづけは腹が立つからやめろと言っているのに、やめる気配がないのだからどうしようもない。

 

「ド変態野郎が」

 

 手を出せない代わりにそう苦々しく吐き出せば、「俺に捕まったなら諦めてよ」と返ってきた。凶悪すぎる規格外のソレを宛がってから。

 

「は……っ、ぅ、ぁ、あぁっ!」

 

 悔しくて悔しくて腹立たしくてしかたがないのに、なにをしても最終的にはこうして抱かれるんだから、世話ない。きゅっと唇を噛むと、元弟は掠れた声で「ソラちゃん」と呼んだ。

 

「うるせっ、名前、呼ぶなっ」

「そう言われても、ソラちゃんはソラちゃんだしなぁ」

 

 くすくす笑いながら強く腰を打ちつける男に対し、変態変態と罵ると、「そんなことは知ってるよ」とあっけらかんと吐いた。おそらくは目元を赤らめたまま。

 

「んっ、んぅっ! カヤくんっ、カヤくんっ、や、だっ、そこ、や……っ」

 

 肌がぶつかる音がいやらしく響く中でも、耳元に寄せられた唇からはっきりとオレを呼ぶ声が届く。いまだに消化できそうにもない劣等感を植えつけてきた男の声が。オレを必要としてくれている低音が、鼓膜をも犯していく。

 

 カヤくんなら相手を選び放題なのに、なんでオレだったんだろうかという疑問がいまだにあるが、それでも、カヤくんがオレを選んでくれるのは嬉しいことなのだ。腹が立つことはたくさんあるし、一生許したくもないことをされたわけだが――、「ソラちゃん」と柔らかく笑う姿をオレだけに見せてくれるのなら、オレを抱きしめて温もりを別け与えてくれて――ひとりではないのだと気づかせてくれるのなら、少しだけ、ほんの少しだけ、目を瞑って流されてやらないこともない。

 

 ――こうやってさ。

 

 ああもう本当に、自分の気持ちが解らないな。顔を見たくないと思っていても、嫌いにはなりきれないなんて。これ以上感情も心も乱されたくないのに、離れたくないなんて。

 

 きちんと責任はとってもらわないと、割りにあわないだろうが。

 

 与えられる快感に溺れながらも、「責任とれよ」と口が動いた気がするが、どうなんだろうか。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 目が覚めて一番の違和感――躯のだるさや動きにくさに記憶を手繰り寄せていたが、外で致した事実に躯を丸めて布団に潜った。いや、より正確に言えば、丸まりながら悶えている。外でなんて、大胆すぎて恐ろしいだろ。

 

 結局殴れなかったし、ミサコの言うことが当たりだったとは思うまい。全てはカヤくんが悪いんであって、オレは悪くないんだ。なにも悪くない。うん。

 

「面白いことになってるね」

 

 くぐもった声とともに布団ごと持ち上げられ、膝の上に座らされる。もちろん推定だが。着ているものがちらちら見えるから、向かい合わせの形のようだ。

 

「ソラちゃん真っ赤だよ」

「うるせえっ」

 

 顔にかかる布団をずらされたオレは顔を逸らした。現在進行形で座高が違うと解らされるオレとしては、少しも面白くないからだ。面白くはないが、ここは見知らぬ場所なのでそのまま大人しくしているだけである。

 

「ここって……、カヤくんの家か?」

「そうだよ」

「カヤくんはひとりで3LDKに住んでるって母さんから聞いてたんだけどさ、なんでいきなり3LDKなんだ?」

「同棲用だから」

「マジか。同棲するのか。カヤくんは積極的だな」

 

 はっはー、準備万端とかそれはすげえなと軽くからかう間に、その相手はオレではないだろうかと危険を察知してそろりと立ち上がったが、すぐさまがっしりと肩を掴まれた。そして引き戻されてしまう。強い力でもってして。

 

 また向かい合わせにされてしまってはもう、カヤくんの機嫌を窺うしかなくなってしまったではないか。左肩に顎を乗せたカヤくんは「どうして逃げるの?」と問いかけつつ耳を食んでくる。

 

「逃げ場をなくされているからだよ! 外堀から埋められるの怖いんですけどおおおお!」

「ソラちゃんはすぐに逃げるでしょう?」

「逃げたくなるようなことをするからですよ!?」

 

 お前はアホかとずり落ちた布団ごと離せ離せと暴れるオレを抱き込みつつ抑える男は、今度は言い聞かせるようにして「もう二度と離さないと決めているから」なんて囁いてくる。最後にねっとりと耳を舐めて食むのは必要ないことだろうが!

 

 やめろやと言いたげにキッと睨んでやるが、目の前の男は躯を跳ねさせても声を堪えたオレを愉快げに見下ろしているだけであり、大したダメージは受けてないようだ。くそっ、飄々としやがってよお!

 

「この少女マンガ野郎が!」

 

 オレの罵倒に対して理解が及ばないのかなんなのか、何度か瞬きを繰り返して「なにそれ、どういうこと?」と、首を傾げながら不思議そうに訪ねてくるカヤくんに意気揚々と答えてやる。

 

「少女マンガみたいな台詞をほいほい言えるから少女マンガ野郎なんだよ。言われた方は恥ずかしいだけなんだからなっ」

「確かに赤くなってるね。でも、俺はソラちゃんにしか言わないよ」

「そういうことはオレにこそやめてくれませんかね!? なんだか昔より性格が悪くなってないか!? なってるよなぁ!?」

 

 胸板をこれでもかと押すが、離れる気配は微塵もない。そればかりか、「性格が悪いなんてひどいことを言うなあ」とくすくす笑いながらがっしりと手首を掴んで指の間に舌を這わせてくるんだから、性格が悪いとしか言えなかった。

 

「おっ、お前っ、なにをするつもりだよっ」

「なにもしないよ。ソラちゃんがこれからずっと俺の傍にいてくれるのなら」

「条件が重いんですが」

「離れていた時間を埋めたいなあと思いまして」

 

 離せと腕を引くがしかし、カヤくんはものともせずに、右の中指に軽く歯を立てて吸う。上目遣いのために色気が凄まじい。悪どすぎるぞ。

 

「ここで拒否をしたら、お前は追いかけて追い詰めてくるんだろ?」

「もちろん」

 

 輝かしい笑みとともに即答を返した男に対し、「怖すぎるから少しは間を開けろよぉ!」と胸板を握り拳でバシバシ叩くが、「ほかに考える要件なんかないよ?」とくすくす笑うだけだった。しかも、痛がることもなく愉しげに笑っていやがるので、やっぱりオレの力なんて大したことはないようだ。腹が立つが、怒りに飲まれては正しい選択が出来ないので、ぐっと堪えるしかない。言っておかなければならないことを言わないとダメだろうと。

 

「変なことはしないと約束できるのなら、傍にいてやってもいいぞ」

「えぇ……、ソラちゃんの方が厳しい条件だと思うんだけどなあ……」

 

 そう苦笑混じりに返してから一転して、「一緒にいられるのに触れられないなんて、拷問を受けているに等しいよ」としょぼくれられても、譲ることが出来ないものもある。珍しい顔を見たことと譲ることはイコールではないのだ。というか、譲ったら抱き潰される未来が確定されるではないか。それこそ快楽漬け拷問みたいなものだろう。恐ろしくも甘美な、というやつだ。オレはもう付き合いたくないのですよ。あのぐっちょぐっちょの時間が再びなんて、キツイ以外の言葉が出ないのだから。

 

「黙れ変態! お前の性欲に一晩中付き合えるか!」

「へええ、一晩は付き合ってくれるんだ? 過去には三日三晩も付き合ってくれたのに、なんだか短くなってるよね」

「あれはっ! カヤくんが! 入れっぱなしで! 少しも離してくれなかったからだ!」

 

 挑発するように答えてきたが、ベッドでもソファーでも風呂場でも、好き勝手したのはカヤくんであって、一ミリであってもオレの意思は介入してないんだと伝えるべく声を荒らげると、「ソラちゃんがかわいいから止まらなかったんだよね」だとか、「本当はもっと抱きたかったんだけど」だとか悪びれなく言う。コイツはやっぱり性格が悪い。最低最悪の称号を与えてやりたいくらいだ。

 

「わけの解らないことを言う暇があるならさっさと離せ」

「嫌だけど。ああでも、ソラちゃんが条件を緩和してくれるのなら、考えてもいいかな」

 

 なぜか首筋に頬を擦り寄せ始めたカヤくんの肩を押すと、ニヤリと口端を上げてそんなことを言い出す始末だ。

 

「条件の緩和は難しいんだって。抱き潰されるのは嫌なの」

「二日に一回以上がいいなあ」

「おい、人の話を聞けよ。二日に一回以上とか殺す気かお前」

「本当なら毎日一回以上のところを譲歩してるんだよ?」

「どこら辺が譲歩なんだよ!? 辞書引いてこいや!」

「辞書ねえ」

 

 にやにやとした笑みを浮かべながら、ベッドヘッドに置かれたスマートフォンを手に取ると――って、カバーを見るにオレのスマホかなそれは! 「返せ!」と手を伸ばすと、「ソラちゃんが調べろって言ったじゃない」と屁理屈を吐き出してくる。スマホをヘッドボードに戻しながら。確かに言ったけれども、自分のスマホで調べろ。隣に並べられているのがそうなんだろ?

 

「オレのじゃなくて自分ので調べろや! で、中身見たのか?」

「さあねえ。どちらだと思う?」

 

 口端を上げたカヤくんにカッとなって突進すると、そのまま後ろへと倒れた。勢いのまま胸ぐらを掴み、「答えろ!」と睨み付けてやる。くそ野郎は愉快げに目を細めるだけだけれども。

 

「答えてほしいのなら、二日に一回以上が望みだな。これ以上の譲歩はないよ」

 

 腰に伸ばされた手が否応なしにいやらしく腰を撫で回してきており、甘い声が漏れそうになるが、なんとか堪える。いま流されてもいいことなんてないと言い聞かせて。でないと、思考が溶けそうだ。

 

「っ……、変態、やめろっ」

「ソラちゃんが答えてくれるまではやめない」

「ふざけんなっ! 答えてほしいのはオレの方だっての! だからさっさと答えろっ!」

 

 がっしりと尻肉を掴まれたあとでは声が仄かに震えているのだが、眼下の男に対抗すべく声を出す。「カヤくんっ」と、先を促すように。これも震えているが、しかたがないのだ。

 

「二日に一回以上ね」

「解ったから早くっ」

 

 早く離して答えてくれという気持ちが届いたのか、熱が籠る吐息になる前に手が離され、なんとか事なきを得た。実に危なかったと胸を撫で下ろすと、カヤくんの唇が弧を描いたと同時に肩ごとぎゅうぎゅうと抱きしめられてしまう。「ぶふっ!?」と変な声が出たのは鼻をぶったためだ。

 

「いま鼻打ったぞ、こら」

「それは悪かったね」

 

 圧迫される最中でもなんとか顔を上げて抗議すると、カヤくんは笑顔のまま鼻の頭を撫でてきた。行動から察するに、これは気づかれているのかもしれない。いや、しれないではなく、確実に解っているような顔をしていた。快楽に溺れそうになっていたことなんて、手に取るように簡単に。

 

「中身は見てないよ。ソラちゃんロック掛けてるし」

「カヤくんなら突破出来るだろ」

「ハッカーじゃないんだから無理だって」

 

 なにを言っているんだと言いたげにいやいやと片手を振ったカヤくんは、「さすがの俺も、そこまではしないよ」と小さく笑った。次いで、「嫌われたくないしね」と肩を竦める。

 

「ならなんで手に取ったんだよ!」

「条件を飲ませるためのフリだからね」

「てめえ!」

「暴れようとしても無駄だよ。言質(げんち)は取ったんだから」

 

 コイツぅうぅうぅ!!!! くそ野郎はくそ野郎のままだったわ! 何年経とうが、本質的なところは変わらないんだな!

 

 奥歯を強く噛みしめながら睨むと、くそ野郎は背中の上方から片手を離してそっとオレの手を取った。

 

 そして――。

 

「俺の手にある限りは逃がさないよ。――諦めてって言ったじゃない。早く諦めて、俺の元に堕ちておいで」

 

 手の甲に唇を落としながら、そんなことを言い放つ。蕩けたような、恍惚とした顔でなんてことのないように放たれる言葉の数々は純度の高い毒のようだった。一瞬で麻痺を起こしたのだから。聞きようによってはプロポーズに聞こえなくもないのだが、カヤくんが言うと爛れた日常への誘いになるのだから、頷くわけにはいかない。頷いたら終わりだ。これは巧妙すぎる罠なのだから。

 

「堕ちたら戻れなくなりそうだから嫌だ」

「うーん、手強いなあ」

 

 困ったように笑って、ふいと顔を逸らしたオレの髪を指で梳き始めるのはすぐだった。「まあ、一緒にいられるようだし、時間はあるか」と呟く声は嬉々としている。圧迫が減ったと思ったのに、別の問題が浮上したんですがね。なんで同棲前提で話をしているんだよ。おかしいからな?

 

「なに言ってるんだ。オレはただの一言も一緒に暮らすだなんて言ってないぞ」

「え~、なにも聞こえない」

「おいこら、さらに力を加えるな! 背骨が折れるぅっ!」

 

 肩ごと抱きしめられているので動かせる足だけジタバタ動かすがしかし、離す気配はない。「離せこらぁ!」と威嚇するが、それも効き目がないようだ。

 

「そういうかわいい顔をされると、また抱きたくなってくるなあ」

「変なことを言ってんなよ!」

 

 お前の性欲には付き合えないと言っているだろうがと叫ぶと、カヤくんは「かわいい」と唇を塞いできた。

 

「だからそういうことはやめろって言ってるだろぉ!」

「ソラちゃんが折れるまではやめない」

「それは一生やめないと同義だよな!?」

 

 さあねえとニヤニヤ笑うカヤくんはふたたび髪を撫でてきた。

 

「俺はね、ソラちゃんのことを誰よりも大事に思っているんだよ。だからこのままずっとソラちゃんと一緒に暮らしたいし、死んでも俺の傍にいてほしいとさえ思う。愛が止まらなくて自分自身でも困るぐらいだからね」

「くっ……、そっ、そこまで言うなら一緒に暮らしてやらないこともないけどなぁっ、ちゃんと大事にしてくれよ?」

「愛しているのはソラちゃんだけだから、心配しなくても大丈夫だよ」

 

 ぎゅうぎゅうに抱きしめられる中で、ふたたび蕩けきった極上の笑みを返されるが、オレはけっと短く吐き出す。こんなのはもう、拗ねるしかないだろう。いくら抵抗しても、結局は抱き潰されるのは確定路線なのだから。

 

 そもそも、ぶん殴ってやろうと決めたときからもう既(すで)に、カヤくんの計算どおりだったのだろうが――。

 

 オレの性格を解りきった男に勝てるはずはない。これはそういうことなのだ。

 

 それでも悔しいことは悔しいので、顔は逸らしたままである。オレの気の済むまでは。

 

 

 

 

 




【 あとがき 】

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
あと、2話分ほどは考えていますが、1話分は閑話扱いです。まえがきのアレ(弟がお兄(姉)ちゃん以外と性的に絡むお話)なので、需要があるのかどうなのか…。いや、なくても書いてアップしますが。
もうひとつは『Episode.1』のその後の同棲いちゃらぶ(?)なお話です
まあ、お話が増えるかどうかは、私のやる気次第なんですがね。

2022.05.11


◆ 執筆時期 ◆

執筆開始 : 2020.11.17(火) - 書き直しが入る - 執筆終了 : 2022.03.10(木)

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