翌日の放課後、俺はかすみや侑達と共に公園に向かっていた。なんでも、旧同好会のメンバーで話し合いをするらしい。
(同好会が揃うってことは……果林も来るのか)
朝香果林。
高校三年生。ライフデザイン学科。高いプロポーションとルックスにより、読者モデルをしている。少し冷酷とも取れる発言が多いが、その本心は相手を思っているが故のことが多い。胸元のホクロ三角形がセクシーポイント。ちなみにパンダが好き。弱点は方向音痴で、学校でも迷ってしまうほどなのだとか。
(それにしても、果林って感が良さそうだから、ハーレムがバレないか心配だな)
きっと果林が本気になって詮索すれば、俺たちの関係などすぐにバレるだろう。そうなったらマズイかもな…。
(早めに対策しなくちゃな……)
そんなことを思いながら俺はかすみ達と歩いていく。すると、同好会の皆が公園に集まっているのが見えた。
「おーい、しず子〜!皆さ〜ん!」
そう言ってかすみは、皆のところに駆けていく。
「それにしても何で皆さんが?もしかして、かすみんの動画を見て再入部する決意を!?」
そう言ってかすみは捲し立てるが、皆何も喋らない。すると、果林が出てきてこう言う。
「そのことについては、私が説明するわ」
「えっと、あなたは?」
「優木せつ菜の正体はね……」
果林は説明していく。せつ菜の正体が、生徒会長中川菜々であるということを。それを聞いたかすみは、ギョッとしたような顔で叫ぶ。
「えー!?、意地悪生徒会長がせつ菜先輩ー!?」
無理もないだろう。今まで自分達の邪魔をしていた人が、かつて仲間だったのだから。
「ていうか、何でかすみんを置いてそんな大事な話をしに行ったんですか!?部外者のお姉さんはいたのに〜!」
かすみはそう言ってプンスカ怒る。そういや俺も連絡着てないな…。
「へぇ〜、面白いこと言う子ね?」
「ひぃー!コッペパンあげるから、許してください……」
果林がそう言うとかすみは萎縮したのか、コッペパンをあげて許しを懇願する。
「あら、ありがとう。ありがたく頂いておくわね」
「学校中探してもいなかったから…、スマホにも連絡入れたんだよ?」
しずくは震えてるかすみと俺を見ながらそう言う。
(確かに連絡きてる…。マナーモードにしてたからか)
「ごめん、マナーモードだったみたいだ」
「あぁー!全然気づかなかった…」
これからは学校終わったら即通常モードにしよう。俺がそう考えてると、隣で俯いてる侑が目につく。
「どうしました、侑先輩?」
「やっぱり菜々さんが……」
どうやら菜々がせつ菜だと知ってショックを受けているようだ。
「せつ菜ちゃん……」
「侑ちゃん……」
侑を見て歩夢も、なんとも言えない表情を浮かべていた。
「せつ菜ちゃん、本当にスクールアイドルやめるつもりみたい……」
「ちゃんと話そうとしたんだけど、取り付く島もなかったんだよ〜……」
「そうなんですか……」
エマと彼方は悲しそうな顔でそう言う。
「何か問題があるの?」
果林はきょとんとした顔で、いきなりそう言う。
「あなた達の一番の目的は、もう果たしているように見えるけど。部員は5人以上いるみたいだし、生徒会も認めるって言ってるんだから、同好会は今日にでも始められるでしょ?本人が辞めるって言ってるんだし、無理に引き留める必要あるのかしら?」
一見棘のあるように見えるが、真理をついている言葉だ。しかし俺は、たまらずこう言ってしまう。
「俺は……それでも俺は、せつ菜先輩に続けてほしいです。だって、同好会でせつ菜先輩は凄く楽しそうに見えたから」
「あくまでそう見えただけでしょう?本人の気持ちも聞いてないのに?」
「う……」
それを言われたら俺は何も言えない。あくまで俺が続けてほしいと思う理由は、ただのエゴでしかないのだから。
「本当にやめたいのかな?」
侑がポツリとそう言う。
「なんでそう思うの?」
「皆さんはどう思いますか?せつ菜ちゃん、やめてもいいんですか?」
「「「それは嫌だよ!」」」
しずく、彼方、エマ、3人の言葉が重なる。
「せつ菜ちゃん、すっごく素敵なスクールアイドルだし、活動休止になったのは私たちの力不足もあるから……」
「彼方ちゃん達、お姉さんなのに皆を引っ張ってあげれなかった……」
「お披露目ライブは流れてしまいましたけど……皆でステージに立ちたいと思って練習してきたんです!せつ菜さん抜きなんて、ありえません!」
3人の思いを聞いて俺は嬉しく感じる。やはり皆は、せつ菜がやめたままでいいと思っているわけじゃない。もう一度立ち上がってほしいと強く願っていることを肌で感じる。
「かすみんもそう思います!せつ菜先輩は絶対必要です。確かに厳しすぎたところもありますが……今はちょっとだけ気持ちがわかる気がするんですよ」
同好会がなくなって一番傷ついたのはかすみだろうに、彼女はそれでもせつ菜を必要だと言う。
「前の繰り返しになるのは嫌ですけど、きっとそうじゃないやり方もあるってゆう男が教えてくれました。それを防ぐためには、かすみんと全然違うせつ菜先輩がいないと、ダメだと思うんです!」
かすみは真っ直ぐな瞳で皆を見つめる。
「大きくなったね〜、かすみちゃ〜ん!」
彼方はそう言って、かすみに抱きつく。
「バカにしてませんか〜?」
「本気で褒めてるよ〜」
彼方は笑いながらそう言う。俺も改めてかすみを見ると、少し成長したような印象を受ける。
「せつ菜ちゃんは私たちに夢をくれた人だもんね。私も一緒にやりたい!」
「うん!」
歩夢の言葉に侑が力強く答える。これで全員の意見は一致した。
「でも、結局はあの子の気持ち次第よね」
「ぐぬぬ……また水を差すようなことを…」
ちょうどいいタイミングで入ってきた果林の言葉に、かすみは悔しそうに顔を歪ませる。
「確かに、果林ちゃんの言う通りだよ……」
エマの言葉を聞いて、また無言になってしまう。俺が発言するチャンスは、今しかない。
(ここで言わなかったら侑に先取りされるからな)
流石に先に手を挙げられたら、断られないだろう。
「はい!だったら、俺に意見があるんですが……」
俺は手を挙げてそう言った。
「はい、どうぞ」
「どうも……」
果林が手で俺を指す。まるで『さあ、早く言いなさい』とでも言っているかのように。
「えっと、せつ菜先輩に話をしてみたいと思います。それで説得できたら、俺たちと一緒にまた活動してもらいます」
「あなたねぇ……」
果林は呆れた様子でため息をつく。
「それであの子が戻る気はないって言ったら?」
「その時は……諦めます」
「ふぅん……だったらいいわ、頑張ってきてちょうだい」
果林はそう言って手を振る。これも彼女なりの応援なのだろう、まったく素直じゃない奴だな。
「だったら優樹くん、私も!」
侑は自分も行きたいと言ってくる。しかし、断らなければいけない。
「すいません侑先輩。同好会が崩壊した時から、もしせつ菜先輩が復活するとしたら俺が説得したいと思ってたんです。だから、今回は遠慮してくれませんか?」
俺はそう言って頭を下げる。侑がどれだけせつ菜に言いたかったことがあるのか、アニメを散々見た俺ならわかる。しかし、これだけは譲れなかった。
「そっか……そうだよね、わかった!頑張ってきてね、優樹くん!」
侑は少し悲しそうにしながらも、笑顔になって俺を応援してくれる。本当に優しい人だ。
(堕とした後は、この笑顔がいつでも見れるのか…。楽しみだな)
俺はそんなことを考えながら、皆に案を伝える。
「実は、いい作戦があるんですけど…」
翌日。時刻が4時半になろうとする頃、俺は屋上にいた。
『普通科2年。中川菜々ちゃん、優木せつ菜ちゃん。至急、屋上まで来てください』
スピーカーから歩夢の声が聞こえる。今頃ブツと称してお礼のコッペパンを、かすみが放送部に渡しているだろう。
(何話そうか……)
せつ菜に何を伝えればいいか考えたが、結局何も思いつかなかった。
(やっぱり、本心を伝えるしかないよな)
適当に取り繕った言葉よりも、俺自身の言葉を話そう。俺がそう考えてると、ドアが開く音が聞こえる。
「こんにちは生徒会長。いや、せつ菜先輩」
「坂下優樹さん……どうしたんですか?」
菜々は……いや、せつ菜は無表情な顔でこちらを見てくる。
「色々言いたいことはありますが、一言だけ言います。同好会に戻ってきてください」
「……」
せつ菜は黙って俯く。
「俺は、あなたが戻ってこないと寂しいんですよ。あなたがいないと、同好会って感じがしません」
俺は自分の本心を話していく。恥ずかしい話だが、背に腹はかえられない。
「そうですか……」
せつ菜は小さく呟いた後、ゆっくりと口を開く。
「どうして私なんかが必要なんですか?私はもうアイドルにはなっちゃいけない人間です。皆の夢を壊すだけでした。そんな私が戻ってきたところで、ラブライブが成功するはずが……」
「それでも俺は、せつ菜先輩がいいんです!」
「っ!?」
俺が大きな声を出すと、せつ菜はビクッとして俺を見る。その目は大きく開かれていた。
「確かに、せつ菜先輩が原因で同好会は崩壊しました。でも、それはあなただけのせいじゃない」
「違います……全部私のせいですよ。私がもっと上手くやっていれば……だから、私が責任を取ってやめます」
「それじゃあせつ菜先輩は救われないじゃないですか!確かに、あの時のあなたの行動は間違ってました。だけど、今からやり直すことだってできるはずだ!」
「無理ですよ……」
俺がそう言っても、せつ菜は諦めたようにそう言う。
「どうして……」
「私が同好会に入った時、私は『大好き』を溢れさせるようなライブがしたかったんです。その時、皆は私に期待していました。それなのに、私のせいで同好会は廃部に……」
「別に誰もそんなことで恨んでなんていませんよ。むしろ、かすみもしずくも彼方先輩もエマ先輩も、皆心配してます。戻ってきて欲しいって言ってます!」
「私は自分自身が許せないんです!」
「他の皆は許してるんですよ!?」
(なんか段々腹立ってきたな、侑が説得した時はもっと早く終わったってのに)
原作では、侑の一声二声ですぐ考えを改めた様子だった。なのに俺だと話が終わらないどころか、考えも変わってない様子だ。俺は自分と侑の差を感じて、劣等感からかイライラが生じてくる。
(こうなりゃ強行突破だ)
「だから、私はスクールアイドルを……ちゅぷっ!?」
俺は喋ろうとするせつ菜を黙らせるため、キスで口を塞ぐ。
「んっ……んむぅ……ちゅぱっ! な、何するんですか!」
せつ菜は最初は抵抗していたが、すぐに大人しくなる。俺はそれを確認して唇を離すと、せつ菜の目を見て話す。
「すいません…。それよりせつ菜先輩が同好会に戻らない理由って、同好会を壊した自分が嫌いだからなんでしょう?」
「……はい」
「気にするなとは言えません。だから、俺がせつ菜先輩のストッパーになります。あなたがもしも暴走したら、俺が止めます」
「えっ……」
せつ菜の驚いた顔を見て、俺はそのまま言葉を続ける。
「俺はあなたが好きなんです。だから、同好会にはせつ菜先輩がいて欲しい。ラブライブがどうとかは言えませんが、ただ単純に俺はせつ菜先輩が好きだから……だから、戻ってきてください」
俺はそう言い終えると、頭を下げる。我ながら、めちゃくちゃな告白だと思う。しかし、これしか思いつかなかった。
(さすがにこれはダメか……)
いくらなんでも、こんな酷い説得じゃ戻ってきてくれないだろう。俺はそう残念に思い、せつ菜の方をみる。
(え?)
しかしそこには、頬を赤くしたせつ菜がいた。
「ほ、本当に戻ってきていいんですか?」
「も、もちろんです」
俺はチャンスを逃さないよう、しっかりと意見を伝える。
「また迷惑かけますよ?それに、優樹さんに好きと言ってもらえる資格なんて……」
「関係ないですよ。そもそも俺、せつ菜先輩がどんな人なのかあんまり知りませんし」
「そ、そうなんですか?」
せつ菜は少しショックを受けた表情でそう言う。
(実際趣味ぐらいしか聞いたことないしな……)
「でもだからこそ、これからたくさんあなたの大好きを知っていきたい。あなたと一緒に歩みたいんです!」
「私の、大好きを……」
せつ菜は呆然としながらそう呟くと、俺に喋りかけてくる。
「期待されるのは嫌いじゃありません…。ですが、本当にいいんですか!? 私の本当のわがままを、大好きを貫いても、いいんですか…?」
(せつ菜は本当に心配性だな……)
しかしその心配性な理由も、今回のことでそれだけ悩んだと言うことなんだろう。本当に不器用な人だな。だから今度こそ俺が支えなくては。
「はい、もちろんです!」
俺がせつ菜に言う返答は、もちろん決まっていた。
「わかっているんですか?あなたは今、自分が思っている以上にすごいことを言ったんですからね!」
そう言ってせつ菜、いや『中川菜々』は眼鏡をとって三つ編みを解き、『優木せつ菜』の姿へとなる。夕焼けが照らすその姿はあまりにも綺麗で、俺は口を閉じることができなかった。
「どうなっても知りませんよ!これは、始まりの歌です!!」
そう言ってせつ菜はステップを踏み、もう一つの二人で作った曲、『DIVE』を歌っていく。その歌声はとても大きくて激しく、屋上だと言うのに多くの人が動きを止めて、こちらを見ていた。
「はぁ、はぁ……虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、優木せつ菜でした!」
歌い終わったせつ菜がそう言うと、下からは大きな歓声と拍手が巻き起こる。
「ふぅ……うおっ!?」
俺はそれを見て一息つく。そして隣を見ると、せつ菜は俺に抱きついてきた。
「ありがとうございました優樹さん!!、大好きです!!」
「まったく、俺も……大好きですよ」
俺はそう言いながら、せつ菜を抱きしめ返す。せつ菜から汗の匂いが少し漂うが、不思議と不快感はなく、むしろ心地よかった。
「ありがと……」
「ゆう男、いつまでくっついてるのさ」
「やっぱり、せつ菜ちゃんは凄いよ!サイコーにトキメイちゃった!」
すると俺たちの近くに、同好会の皆がやってくる。
「皆さん……見ていたんですか?」
「おかえりなさい」
「でも、少し盛り上がりすぎかも……」
下を見てみると、大勢の観客が手を振っている。
「先生に見つかったら、怒られちゃいますよ」
「どうする〜、生徒会長?」
彼方は少しからかうような感じで、せつ菜にそう聞く。
「今の私は、優木せつ菜ですよ!見つかる前に、退散しましょう!」
『おー!』
そう言って皆は拳を上に挙げるが、一つ大事なことを忘れている。
「あの、その前に俺から離れてください……」
さっきの会話をしている最中も、俺はせつ菜に馬乗りにされていた。
「あっ……す、すいません!」
せつ菜は改めて俺を離すと、恥ずかしそうに謝ってきた。
「いえ、大丈夫ですけど……」
「じゃ、じゃあ退散しましょう!ついてきてください皆さん!」
「ちょっ、ちょっとせつ菜先輩!?いきなり走らないでくださいよぉ〜」
せつ菜はそう言って、俺から逃げるように走っていくのだった。
「せつ菜先輩、じゃあもう帰りますね」
「あ、ちょっと待ってください!」
時計の針が17時を指す頃、同好会の活動は既に終わっており、残っているのは俺とせつ菜だけだった。
俺が帰ろうとすると、せつ菜に呼び止められる。
「どうしたんですか?」
「その……今度、デートに行きませんか!」
せつ菜は真っ赤な顔でそう言ってくる。
「デート、ですか…」
「はい!」
「まぁ別にいいですけど、どこに行くんですか?結構時間かかるんで、あんまり遠くには……」
「そ、そんなんじゃないですよ!」
俺の言葉に、せつ菜は慌てて訂正してくる。
「じゃあ、どういう……?」
「その、お家でデートがしたいです……」
「え?」
俺が疑問の声をあげると、せつ菜は慌てた様子で話を続ける。
「その……ライトノベルとかアニメとか、一緒に見て欲しいです」
「なるほど、いいですよ。日曜日なんてどうですか?」
土曜日はかすみとデートの約束をしてある。だから今週の空きは日曜日しかない。
「はい!よろしくお願いします!」
「わかりました。じゃあ日曜日に、よろしくお願いしますね」
俺は笑顔でそう言う。
(今週は両方楽しみだな……)
これなら明日も頑張れそうだ。
「はい……こちらこそ!」
せつ菜も俺につられてか、満面の笑みを浮かべていた。
「では、また明日会いましょう」
「はい!、また明日!」
俺たちはそう言い、お互いの帰路へと歩いていくのだった。
感想、お気に入り登録、評価、アドバイス、お願いします。
今回もエロは無しです。次は絶対書きます。
ちなみにせつ菜ちゃんの説得が難しい(当社比)理由は、一応あるにはあります。
それと、今月テストがあるのでその内投稿ペースがガタ落ちします…。一週間2話とかになるかもです。
活動報告からリクエスト募集しています!
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