翌日。学校へ行くため歩いていると、璃奈が喋りかけてくる。
「優樹君、金曜日はありがとう」
「お、おう……」
突然の感謝の言葉に、少し戸惑ってしまう。
「それで、土曜日に愛さんと話したんだけど……」
(あー、やっぱりか。ということは、スクールアイドルで間違い無いな)
きっとせつ菜の復活ライブを見て、心にくるものがあったのだろう。原作でそうだったのだから、間違いあるまい。
「私、愛さんと新しいこと始めたい。今はまだ言えないけど、いつか優樹君にも知ってもらいたい」
璃奈は、覚悟を決めたような真剣な眼差しを向けてくる。
「わかったよ、その日を楽しみにしてる。ただ、1つだけ言っておくけど、無理だけはするなよ?」
念を押すようにそう言っておく。璃奈は頑張り屋だから、無理しすぎたりしげ倒れたら元も子もないしな。
「うん、わかった」
その答えに満足した俺はそこで話を終え、学校へと歩みを進めるのだった。
3校時目の授業が終わって小休憩になった時、俺のスマホに通知が届く。
(なんだ?……ん?)
画面を見ると、せつ菜からのメッセージだ。内容は、昼休みに生徒会室に来てほしいというものだった。何か相談があるらしく、弁当も持ってきていいと書いてある。おそらくだが、話の内容は同好会のことだろう。
(正直面倒くさいけど、行くか……)
お昼を璃奈と食べれないのはルーティンを邪魔されたようで気分が悪いが、せっかくの彼女の頼みなのだ、仕方あるまい。5人目の彼女だけど。
昼休み。いつものように誘ってくる璃奈に泣く泣く断りを入れ、弁当を持って生徒会室へと向かう。
(璃奈には悪いことしたな……)
一人で弁当を食べるのは、なかなかつまらないだろう。前世で嫌というほど体験した俺にはわかる。
(ま、そのうち友達が出来るからいいだろ)
しずくとかすみに焼き菓子同好会。それだけいれば、俺がいなくても寂しくないだろう。これで大手を振って、他の皆んなとランチタイムが過ごせるというものだ。
そんなことを考えてると、生徒会室に着いた。俺はノックをして中に入る。
「失礼します」
生徒会室の真ん中には菜々が座っており、俺を見ると声をかけてきた。
「こんにちは優樹さん。わざわざ来てくれてありがとうございます!」
「いえ、せつ菜先輩に呼ばれたらいつでも飛んできますよ」
「ふふっ、嬉しいです。でも、今は菜々って呼んでくださいね、もしバレちゃったらまずいので」
せつ菜は嬉しそうに微笑む。その笑顔を見ただけで色々と癒される。
「それで、どうしたんですか?」
「どうしたって、何がですか?」
せつ菜はきょとんとした顔でそう返してくる。
「何がって、せつ菜先輩が呼び出したんじゃないですか」
「あ〜、そうでしたね。あの、理由はですね……」
歯切れの悪い様子で、せつ菜は言い淀んでいる。何か事件でもあったのかだろうか、俺は少し心配になる。その後せつ菜は少し悩んだ末に、頬をどことなく染めて口を開いた。
「その、優樹さんと一緒にご飯が食べたくて……」
「え、あぁ……」
予想外の答えに、思わず素の声が出てしまった。せつ菜は恥ずかしくなったのか顔を赤らめている。そんな姿も可愛いのだが……。
「でも、普通にメールで知らせてくれればいいのに……」
「そうですよね……すみません。いきなり変なことしてしまって」
せつ菜は申し訳なさそうな表情を浮かべる。そんなに悲しそうな顔をされると、俺まで罪悪感を感じてしまう。
「あーいや、そういうわけじゃなくてですね!ただちょっとびっくりしただけです。せつ…菜々先輩が何の用事かな、なんて思っただけで」
俺は慌ててフォローを入れる。するとせつ菜はほっと胸を撫で下ろしたようだった。
「よかったぁ……」
心底安心したというように、せつ菜はそう呟く。そんな姿を見ていると、やっぱりせつ菜は優しい子なんだと改めて実感する。多少ブレーキが効かない所もあるけど…。
「じゃあ、弁当食べましょう? 時間ももったいないですし」
「はい、そうですね!」
俺がそう話を切り出すと、せつ菜は満面の笑みで返事をした。
「「いただきます」」
手を合わせてそう言うと、俺は弁当箱を開ける。今日の弁当は、昨日の夕飯の残り物がほとんどだ。ちなみに今日のメインは唐揚げである。
「ところで、部室の方はどうなんですか?」
俺は弁当を食べながら、せつ菜に話しかける。確か、今日が部室の使えるようになる日だったはずだが…。
「はい、もうバッチリです! あとは私たちで掃除をしたり、物を持ち込むだけです」
せつ菜はそう言って、楽しそうに話す。ってことは、今日は一日掃除で終わりそうだな。
「それは良かったです。放課後頑張りましょうね」
「はい!ありがとうございます」
せつ菜は俺にそう言って、再び箸を進めた。
(そういえばせつ菜っていつもここで食べてるのか?)
ふと疑問に思い、せつ菜に聞いてみる。
「せつ菜先輩はいつもここで弁当食ったりしてるんですか?」
「はい。生徒会室ならゆっくりできますから」
「へぇ〜。その、一人でですか…?」
「はい。そうですよ?」
「そうですか……」
(今度からたまに弁当に誘うか……)
そう思いながら箸を進めるのだった。
放課後。俺とせつ菜、そして皆は新しい部室で掃除をしていた。
「おりゃあ〜!」
「負けませんよ〜、先輩〜!」
若干騒がしいけど、皆新しい部室を綺麗にしようと頑張っている。そういう俺は、資料などをまとめた段ボールを部室まで運んでいた。
「これで、終わりっと」
俺は最後の段ボールを運び終えると、一息つく。すると横から声をかけられる。
「お疲れ様です!」
「あ、菜々せ……せつ菜先輩。先輩は何をしてたんですか?」
「余っていた椅子を貰ってました!優樹さんもお疲れでしょうし、一息ついていいですよ」
「なら、お言葉に甘えます」
俺は菜々に礼を言うと、皆が作業している場所へと向かう。
「お疲れ様で〜す」
「お疲れ様、優樹君」
「優樹君もダンボール運び、ご苦労様です」
「ゆう男お疲れ〜」
歩夢としずくとかすみが声をかけてくれる。どうやら大体の掃除は終わったようだ。
「もう掃除は終わりか?」
「まだだよ!」
「え、まだ何かあるのか?」
(掃除はあらかた終わったはずなんだが……)
「最後にコレ!」
そう言ってかすみは廊下に向かう。そして『スクールアイドル同好会』のプレートを、ドアに立て掛けた。
「ようやく復活だね!」
「それじゃあ、スクールアイドル同好会始めま〜……」
エマの言葉もあり、同好会復活をかすみが宣言しようとしたその時だった。
「やっほー!もしかして、スクールアイドル同好会の人達?」
いきなり元気な声が耳に入る。と言っても、見覚えしかない声なのだが…。
「そうですが……?」
「二人は確か……」
「情報処理学科二年、宮下愛だよ!」
「一年、天王寺璃奈……です」
(ヤバいな……ついにこの時が来たか)
二人の自己紹介を聞きながら、俺は途方に暮れていた。その理由は単純、二人にまだ同好会のことを言っていないのに来たからだ。
(3人で秘密はしないって約束したのに、結局俺が一番最初に約束を破ってしまった……)
俺はそんなことを思いつつ、この場をどう切り抜けるかを必死に考える。幸いまだ二人にはバレていないようだ。
「あ、この間の……」
「お、二人とも同好会入ってたんだ!実は愛さんも屋上ライブ見て、何かドキドキしてきちゃってさ〜」
「わかるよ!ときめいたんだよね!?」
歩夢と侑と愛はお互い面識があるためか、仲良く喋っている。
「本当に、凄かった」
「あ、ありがとうございます!」
一方璃奈は、せつ菜相手に屋上ライブの感想を言っていた。せつ菜も感想を言われて、照れながらも嬉しそうだ。
「というわけで、二人とも入部希望です!」
愛は璃奈とアイコンタクトを取り、ビシッとポーズを決めてそう言う。
「まずは、皆の名前が知りたいな〜……あれ、ゆう……ゆっきー!?」
「優樹くん……?」
愛と璃奈はみんなの方を向いたことで、俺の存在に気付いてしまったらしい。俺の顔を見た瞬間固まっていた。
「あ、あはは……こんにちわ。愛先輩、璃奈」
「う、うん。こ、こんにちは……」
俺達はぎこちない挨拶を交わす。しばらく沈黙が続いた後、愛は口を開いた。
「えっと、ゆっきーってスクールアイドル同好会に入ってる感じ?」
「はい……」
(ああ……終わった)
俺の心の中でありとあらゆる感情が渦巻く。こうなる前に二人に言っておけばよかった…。
「そうなんだ……」
「私達……知らなかった」
愛と璃奈は俺の方を向いてそう言う。その表情からは、驚きの感情が読み取れる。
(まぁ……当然の反応だろうな)
俺はそう思いながら、恐る恐る二人の反応を待つ。怒ってないといいんだが…。
「そっか〜、ゆう……ゆっきーがスクールアイドル同好会にねぇ〜」
「優樹くんが同好会に入ってるなら、もっと早く教えて欲しかった」
愛と璃奈は驚き半分、呆れ半分のような口調でそう呟く。
(あれ、そこまで怒ってない?)
どうやら二人は、俺が思ってたよりも怒っていないようだった。
「あの、お二人と優樹さんはどのような関係で?」
するとせつ菜が興味津々といった様子で、俺に質問をしてくる。どう答えるべきだろうか。馬鹿正直に両方恋人ですって答えたらまずいよな…。
「えっと、クラスメイトと友達です」
「そうですか! なら、これから一緒に活動できますね!」
「うん! 楽しみだよ!」
「私も……」
せつ菜の言葉を聞いて、愛も璃奈も嬉しそうだ。とりあえずは一安心……でいいのか?
「ところで、スクールアイドル同好会って何するの?」
「え〜っと。実は今、それを探しているところでして……」
「ん?」
愛はせつ菜の言った言葉の意味が分からなかったようで、首を傾けた。
「まずは部室に戻りませんか?そこで話を聞くってことで」
ずっと廊下で話すのもあれだと思った俺は、そう提案をする。
「わかった!それじゃあ行こっか!」
「もちろん、やりたいことはあるんですよ!」
かすみはホワイトボードを叩きながらそう叫ぶ。ボードには『ライブがやりたい!』と大きく書かれていた。
(妙なことになったな……)
部室に入ったあと、同好会の活動方針をどうやって決めるかということになり、今はかすみが指揮を取って考えているところだ。
「スクールアイドルなんですから、やっぱりライブですよね」
「結局まだやってないしね〜」
「どんなライブにしたいか、皆で意見を出し合いましょう!」
「かすみん、全国ツアーがやりたいです!」
せつ菜の言葉にかすみがそう返す。
(なんか、とんでもないこと言ってないか……)
俺は心の中でツッコミを入れる。確かにスクールアイドルの定番かもしれないが、それが出来るのは上澄み中の上澄みだけであり、いきなり全国ツアーは流石に無理だろう。
「皆と輪になって踊りたいなぁ」
「曲の間にお芝居をやるのはどうでしょう」
「昼寝タイムも欲しいな〜」
「皆の大好きを爆発させたいですね!火薬もど〜んと使って!」
「火薬はちょっと…。私はもっと可愛いのがいいなぁ」
かすみの発言を皮切りに、次々と皆がアイデアを出していく。
「白熱してる」
「皆言ってること全然違うけど、すごいやる気だね」
愛の放った言葉に、皆の手と口が止まる。
(やっぱりそう見えるよな……)
愛の言う通り、皆が言っていることは全く違っていた。しかし皆の瞳はキラキラと輝いており、自分がしたいという軸がしっかりあるのが分かる。
「……で、結局どれにするの?」
「まぁ、別に急いで決める必要はないと思います。ここまでバラバラだと、意見もまとまりづらいでしょうし」
愛の問いに、俺は若干苦笑いしながらそう答える。
「それもそうだよね〜。じゃあ、普段は何やってるの?」
「えっと、私たちもつい最近戻ったばかりですので、練習内容はわからないんです。優樹君なら知ってると思うんですが……」
「私たちも自己紹介しかしてなかったから、練習はやってないよ」
「でも、きっとゆう男なら考えているはずです!」
そう言うかすみの言葉により、9色の瞳が期待の目で俺を見てくる。
(みんなの期待の目がすごい…。土日にメニュー考えていてよかったな……)
作曲メインだし目的がハーレム作りとはいえ、一応マネージャーとしての仕事もしている。同好会が復活したので、俺は今後のメニューなんかも土日に考えていた。基本的には旧同好会でやってたことを、スケールアップさせた感じだ。
「基本的には基礎練習がメインです。歌ったりダンスしたり、体力つけたり。後は個人で足りない部分を補ってもらいます」
「例えば?」
そう聞くかすみに、俺は考えていた案を喋っていく。
「歌唱力だったら校内の収録スタジオでボイストレーニング、ダンスだったら練習や筋トレ、体力作りはひたすらランニングしてもらうって感じですね。このプリントに大体載ってます」
「結構しっかりしてるんだね、早くやってみたい!」
愛は俺の話を聞いて楽しそうにし、他のみんなも興味津々といった様子だ。
「なるほど……。では、その練習をやりつつ、ライブに向けて何をするか考えるってことにしますか?」
「それでいいと思います。優樹さん、他に何かありますか?」
しずくの言葉にせつ菜が賛同し、さらに質問してくる。
「今後の話ですが、作曲の時にイメージとかを聞いたりするんで、出来るだけ考えておいてください」
「任せてください!大好きを出来るだけ表現してみせます!」
「かすみんも、可愛いをたくさんゆう男に伝えるから!」
2人は明確なアイドルイメージを持っているからか、自信ありげに俺に言ってくる。まだ他のメンバーは決まってないようだが、原作通りに進めればなんとかなるだろ。
「じゃあ今日は、基礎体力が知りたいので特訓してもらいますね」
「特訓って、歌とダンスとかですか?」
「そんな感じ。あと軟体も」
「ダンスに軟体もかぁ……」
今日の計画を口に出すと、彼方が気だるげな様子でそう言う。と言っても、いつも眠そうで気だるげだが。
「私はまだ、歌の練習がしたいな」
「だったら、グループに分かれてやりたい練習をするのはどうかな?」
「いいアイデアですね」
「私たち、全部参加してもいい!?」
突然愛が手を上げそう言い出す。せっかくだし、活動内容を詳しく知っておきたいのだろう。
「もちろんです!」
「すっごく楽しみ! ね、りなりー!」
「うん」
「じゃあこれで、本当にスクールアイドル同好会の始まりです!」
かすみの一声により、新生スクールアイドル同好会の活動がようやく始まるのだった。
「おお〜うぉおおーー!」
「もっといけそうね」
「無理無理〜〜!」
「おおお、おおおおーー」
「それが限界なの…?」
「そうみたい……」
時刻はちょうど午後の4時半を指すころ。俺は璃奈と愛の案内を頼まれて、軟体練習をしている外廊下まできていた。ちなみに今は、果林が彼方の背中を押している。隣ではエマが璃奈を押しているが、ほとんど動いていない。
「ところで、なんで果林先輩がここにいるんですか?」
「あら、いたら悪いかしら?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」
「ふふ、冗談よ。単純にエマに誘われただけよ」
「ダンスをやるならまずは体を柔らかくしなきゃだから、果林ちゃんに教えて貰ってよかったよ〜」
正直果林を相手にするのはかなり疲れる。結構鋭い所あるから、いつハーレムがバレるかわかんないんだよな…。
「まぁ、時間があるからいいけど…。さ、続けるわよ」
「え……」
「彼方ちゃん、壊れちゃうよ〜」
「ははは、スパルタですね……」
果林のスパルタ指導に、俺は思わず苦笑いしてしまう。すると、愛が2人に近寄っていく。
「大丈夫だよ!」
愛はそう言って手をマットに付け、足を広げていく。
「「おお……」」
数秒後180度開脚をした愛に、俺たちは感嘆の声を上げる。
「よっと! じゃあ、もう一回やってみようか!」
「わかったよ〜」
「頑張る……」
「息を大きく吸って、ゆっくり吐いて〜」
「ふぅ〜、はー」
2人が息を吐いたタイミングで、愛は背中に力を加える。すると前よりもかしかだが、確かに背中が動いた気がした。
「お…」
「あ…」
「どう? ちょっとでも出来るようになると楽しくない? 続けていけば、もっと柔らかくなっていくし」
「うん、頑張る」
決意したようにそう言うあたり、やる気が出てきたんだろう。その調子で頑張って、Y字バランスが出来るぐらいになってくれ。
「流石部室練のヒーローね」
「ヒーロー?」
「愛先輩は色々な体育会系の部活で助っ人してて、結構運動部では有名なんですよ」
「へぇ、そうなんだ」
そう言えばクラスメイトが、才色兼備な上に運動神経抜群とか友達と話してたな。もし虹ヶ咲でミスコンがあったら、上位に食い込むのは間違い無いだろう。
「そういえば彼方ちゃん、てっきり果林ちゃんも同好会入ると思ってたよ〜」
「そんなわけないでしょ、私はエマの悲しむ顔が見たくなかっただけよ」
「「へぇ〜」」
それを聞いた俺たちは、ニヤニヤ笑う。本当に素直じゃない先輩だ。
(実際こんなこと言ってるけど、同好会に興味深々だからな)
ここに来てるのも、エマの頼み以外に同好会に興味があるってのもありそうだ。
「な、何よ……」
「ありがとう、果林ちゃん!」
「別に、いいわよ……」
エマに抱きつかれて照れている果林を見てると、なんだか微笑ましくなってくる。
「じゃ、次は柔軟体操して、ランニングしましょうか」
「え、まだするの……?」
「当然よ、これから毎日やるんだもの」
「彼方ちゃん、本当に壊れちゃうよ……」
「ははは、頑張ってね彼方!」
「えー、もう行っちゃうの〜?」
「頑張ってください、彼方先輩……」
軟体を体験し終えた2人は次の場所に行きたいようだ。俺たちは彼方を励まし、次の場所まで歩いていく。
「じゃあ、次に行こうぜ。時間も少ないし」
「うん、次は何するの?」
「次は部室だな。内容は……講義だ」
「「講義?」」
璃奈と愛は、見慣れない言葉に顔を見合わせるのだった。
「おっほん、これより抗議を始めます!」
ペチンと指示棒でホワイトボードを叩きながら、勢いよくかすみはそう言う。かすみは雰囲気を作るためなのか、眼鏡をかけている。
ボードにはスクールアイドル概論と書かれているが、害と書かれた跡が残っている。字が綺麗なため、恐らくしずくが手直ししたのだろう。
「面白そう!」
「その眼鏡、どうしたの?」
「せつ菜先輩に借りました!……無断で」
「絶対怒られるよ!?」
「話の腰を折らない!」
しずくのツッコミも意に返すことなく、かすみは話を続ける。
「桜坂君! スクールアイドルには何が必要なのか、答えなさい!」
「え〜っと、自分の気持ちを表現すること?」
「正解!」
「あ、正解なんだ……」
意外とノリがいいな、しずくは…。
「では天王寺君、同じ質問です。答えをどうぞ」
「ファンの人と、気持ちを繋げること?」
「正解!」
「一つじゃないんだ……」
しずくも呆れてきたのか、ボソッと呟く。
「今度は宮下君!」
「あははゴメ〜ン、わかんないや」
「ピンポンピンポーン、それも正解で〜す!」
「えぇ、何で!?」
「あれれ〜しず子、わかんないんですかぁ〜?」
「ムゥ……」
かすみの言葉に、しずくは少し頬を膨らませる。可愛いなおい。
「答えは後で言うとして……ゆう男!ゆう男は何て答えるかな〜?」
「俺?……そうだな、楽しむことか?」
「楽しむこと……」
「正解〜!」
「はぁ…それで、何で全部正解なの?」
「ふっふっふ、それはですね……今の質問にははっきりした答えなんてないんです!」
「……は?」
しずくは今まで聞いたことがないような低い声を浮かべながら、かすみに呟く。
「ひぃっ!? しず子が怒った……」
「怒ってないよ? それよりどういう意味?」
しずくは笑顔で、しかし額に青筋を浮かべている。
「まあまあ落ち着こうぜ、今から説明するだろうし」
「優樹君がそう言うなら……」
「え〜っと気持ちも表現することも、ファンと気持ちをつなげるのも、楽しむことも、ファンの皆さんに喜んで貰えることなら全部正解ってことです!」
「へぇ〜……奥が深いんだね!」
愛は感動したような声色でそう言う。
「ん〜、合格!」
「それはそうと、後できちんとせつ菜先輩に怒られろよ」
「何でさ!?」
「当たり前だろ、無断で眼鏡借りたんだから」
「うぅ……」
俺は苦笑いしながら、かすみを見る。
「まぁ、一緒に謝りに行くぐらいならしてもいいぞ?」
「本当!? ゆう男大好き!」
かすみは嬉しそうな表情をしながら、抱きついてくる。それを見ていた璃奈はムスッとした顔になり、愛はニヤニヤ笑っている。
「ほら、離れろよ。次の場所行くから」
「もうちょっとだけだから!」
「あの2人、凄く仲がいい……」
「1度同好会が無くなっちゃった時に残ってたのは、あの2人だけですからね。お互いに支え合ってるだと思います」
「そうだったんだ……」
ようやくかすみが抱きつき終わり2人の方を見ると、何やら話しをしている。一体全体何を話してたんだろうか。
「2人とも何の話してたんだ?」
「何でもない……」
「ちょっとした世間話ですよ」
「そうか。じゃあ2人とも次の場所行きましょう……って、愛先輩?」
次の場所に行こうと愛の方を見ると、何やら思い詰めた顔をしている。
「どうかしましたか?」
「ん……ゆう男、どうしたの?」
「いや……なんか思い詰めてたような顔してたので、大丈夫かなって」
「大丈夫、ヘーキヘーキ! 心配かけてごめんね!」
「それならいいんですけど……」
本当はもう少し詮索したいが、本人が大丈夫と言っている以上これ以上何も言うことはできない。
「……とりあえず次に行きますか。時間も少ないですし」
「うん、行こう」
「おぉ!次はどんなところかな〜?」
私用が終わったので、これから当分は投稿頑張ります。
エロは次回へ持ち越しです…。
活動報告からリクエスト募集していますので、気軽に送ってください。
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