「虹ヶ咲にカラオケなんてあったんだ……」
「名称は収録ブースらしいです。俺もここの存在は最近知りました」
次に俺たちがやってきたのはカラオケのような部屋だ。映像の編集などに使うためか、壁半分はホワイトバックになっている。ちなみにここを主に使うのは、2年生3人組だ。中心にはデンモクと固定されたマイクが置いてあるため、今は歩夢がそれを使って歌っている。
曲の種類は可愛い系のポップスで、歩夢は若干恥ずかしいのか声が上がっているが、それでも十分可愛く歌えてると思う。
それから数分後、歌い終わった歩夢が戻ってくる。
「全然ダメだった……」
「そんなことないって〜」
「うん」
「私も歩夢さんの歌声、大好きですよ!」
「俺もいいと思いますよ」
「そうかな……」
俺達の言葉を聞いた歩夢は、少し照れ臭そうに笑う。
「当面の課題は、リラックスして歌えるようになることですね」
「はぁ……だよねぇ」
「でも、可愛く歌えてたよ」
「そ、そう?」
(めっちゃ露骨に喜ぶな……)
侑に褒められた瞬間、明らかに嬉しそうな表情に変わる。やっぱり侑のことが好きなんだなぁ。
(でもこれって、恋愛感情じゃないよな?)
歩夢が侑に抱いてるのが恋愛感情だとしたら、色々と面倒なことになる。発情は性欲を強めることができても、洗脳することは出来ない。つまり、歩夢の心を侑から俺に変えるのは不可能だ。
(でもこの世界だとそれもおかしくないからなぁ……)
原作で女しか出てない名残か、この世界では女の子同士でも恋愛が普通に行われている。そういや噂だけど、生徒会長と副会長が付き合ってるなんてニュースもあったっけ。せつ菜に確認したら顔を赤くして食い気味で否定されたけど。
「次はどなたが歌われますか?」
「せっつーの歌が聞きたい!」
「せっつー? 私のことですか?」
「うん、あだ名!」
「そうですか……ありがとうございます!」
初めてあだ名を付けてもらったのか、せつ菜は嬉しそうな顔をしている。その気持ちわかるぞ。
俺も愛から付けて貰ったあだ名は割と気に入ってるし。愛は人前でしかあだ名で呼ばないけど…。
(付き合ってるのがバレないように、人前ではあだ名で通してるんだよな……)
いつかみんなの前でも本名で読んで欲しいが、俺も外面を気にして愛先輩って呼んでるし、どっこいどっこいだな。
「いいな〜、私は?」
「ゆうゆ!」
「じゃあ、私は?」
「あゆぴょん!」
「ぴょんは止めて〜!」
歩夢はあゆぴょんがトラウマになってるのか、涙目になりながら愛に抗議する。その様子を見てみんなも笑っている。
(順調だな)
同じ同好会の部員同士、仲を深めてて何よりだ。ハーレム作った後もこれくらい仲良しでいてほしい。
「こ、これは!」
突如デンモクを見ていたせつ菜が叫ぶ。なんだろう、突然近くで叫ぶのやめてもらえませんか?
「新しく始まったアニメのエンディングだよね」
「見てるんですか、このシリーズを!?」
「うん、子供の頃からずっと見てる」
「うぅぅ〜〜わぁ! 前のシリーズの第29話見ました!? 自分を犠牲にしてマグマに飛び込もうとするジャッカルをコスモスが抱きしめる所!」
「激アツだった」
「ですよねぇ〜!? 第47話のジャッカルが〜する所も〜で〜〜ですよね!」
(うぉ、またオタク特有の早口か……)
せつ菜は同志が見つかって相当嬉しかったのか、早口でアニメを語りながら璃奈の手を掴んでブンブンと振り回している。
「せつ菜ちゃん、アニメ好きなんだ」
「え? は、はい…。親に禁止されているので、夜中にこっそり見てるんですが……」
「お家、厳しいの?」
「まぁ、どちらかといえば……」
せつ菜の親の顔はアニメでしか見たことがないが、教育ママっぽい風貌だったような気がする。ダサい服も親が注意しないあたり、家族揃ってファッションセンスがないんだろうか。
「それで正体隠してたんだー」
「正体?」
愛はせつ菜のことをジロジロ見ながら言う。
「あー!! もしかして、生徒会長!?」
「はい……」
「そうだったんだ〜! 水臭いなぁ」
「この前はありがとう」
「あ、いえ……」
この前というのは、きっとはんぺんのことだろう。確か生徒会直属のお散歩役員になったはずだ。ただの野良猫が出世したものだな。
「愛さんもせっつーが語ってたアニメ、チェックするね!せっつーの熱い語り聞いてたら、楽しそうだなーって思ったからさ!」
「楽しいですよ!」
そう言って、愛はニカッと笑う。それを見たせつ菜も嬉しそうに笑う。
(愛って本当にコミュ力高いよな……)
人の好きなものに興味を持つというのは、意外とハードルが高いものだ。それをサラッとできるから、愛は人望があるんだろう。
「それじゃあ、ここからはアニソン縛りで行こー! トップバッターはゆっきーね!」
「えぇっ!?」
愛にいきなり話を振られたので、俺は思わず声を上げてしまう。
「りなりーから歌上手いって聞いたし、ゆっきーの歌声聞かせてよ!」
「私も優樹君の歌聞きたい!」
「私もです!」
「わ、私も!」
「はぁ……わかりました」
周りを見ると、期待した目で俺を見つめてくる。
(ここまで期待されちゃ、しょうがないな)
「じゃあ、行きますよ?」
前世では歌の経験なんて合唱コンクールぐらいしかないが、今は音楽才能というチートを持っているから大丈夫だ。俺は覚悟を決め、マイクに口を付けるのだった。
「美味しい!」
「おばあちゃん特製のぬか漬けだよ」
「本当、おばあちゃんの味って感じだよね」
カラオケが終わって部室に戻ってきた後、俺たちはなぜかぬか漬けを食べていた。なんでも愛のおばあちゃんが作ってきたものらしい。
「ぬか漬けなんて食べる機会なかったけど、食べてみると美味しいですね。大地の味がします」
「大地の味…?」
「でしょ! ゆっきーよくわかってるじゃん!」
「叩かないでくださいよ……」
俺の言葉を聞いた愛は嬉しそうな顔をして、背中をバシバシ叩いてくる。痛くはないが、なんとも言えない気持ちになる。
「うぅ〜なんですかこの匂いは……」
ぬかの匂いに驚きながらも、練習を終えたかすみ達が戻ってくる。
「みんなも、食べるー?」
「うん、食べたーい」
「彼方ちゃんクタクタだよ……」
「今日はもう終わりだね」
「ところで、優樹さんにかすみさん。少しお話があるので、ちょっと残って貰えますか?」
「め、眼鏡のことなら何度もごめんなさいしましたよねー!?」
かすみはぬか漬けを食べながら、せつ菜に向かって叫ぶ。ていうか、結局ぬか漬け食べるんだな…。
「そうじゃなくて……」
「じゃあ、俺は一旦外で待ってますね」
「何でですか?」
せつ菜は訳がわからないような顔で聞いてくる。
「いや、だって皆さん着替えるんですし」
「ああ……」
「お待たせしました!」
10分くらい経った頃せつ菜の声が聞こえ、皆んなが部室から出ていく。口々に挨拶をしてきたので、俺もそれに返していく。
「ゆっきー、またね!」
「私は校門で待ってるから」
「いや、少し長引きそうだから、先に帰ってていいぞ」
「うん、わかった」
話が長引くだろうと思った俺は、璃奈を先に帰らせることにする。長時間待たせるのも悪いからな。
「じゃあな、後で同好会の感想聞かせてくれよ」
「もちろん!ばいばーい!」
「わかってる」
そう言って、愛と璃奈は手を振りながら帰っていく。
「それで、用事っていうのは何ですか?」
俺とかすみとせつ菜、3人しかいなくなった寂しい部室で俺は切り出す。
「それは……ソロアイドルです」
「ソロアイドルですか……」
「私たちだからできる新しい一歩です。部員一人一人がソロアイドルとしてステージに立つ、その選択肢は皆さんの頭の中にもあるはずです」
せつ菜は真剣な表情で語る。意見もバラバラだし、なりたいイメージもしたいステージも全然違う。そんなみんなだからこそ、ソロアイドルの方が輝くと考えたんだろう。
「はい…。でもそれって、簡単には決められないですよね……」
かすみの言う通り、ソロアイドルにするというのは簡単に決められない。今までの活動方針を大きく変えることになるし、その分手間もかかる。
「そうですね。その分、優樹さんや侑さんに負担をかけてしまうことになります」
「だったらもっと考えて、ゆう男や侑先輩に負担がかからないようにすればいいんじゃ……」
「私もそう思って考えましたが、ソロアイドルでしか私たちのだいすきは、精一杯表現出来ないような気がするんです」
思い詰めたような口調でせつ菜はそう言う。
「俺は……別に大丈夫ですよ」
「「え?」」
「元々、誰かがやりたいことを全力でサポートするのがマネージャーの仕事だと思ってますし、俺も色々とやってみたいことがあるんで」
「本当にいいんですか…? 作曲もあるのに……」
心配そうな声でせつ菜が聞いてくる。8人作曲なんて普通の人からしたら考えられないだろうが、特典があるので大丈夫だ。
「大丈夫だよ。それに侑先輩もソロアイドルは賛成すると思いますよ。そっちの方がトキメいちゃうとか言ったりして」
「ふふっ、なんですかそれ」
「確かにゆう男の言う通りかも。かすみんも、自分のしたいライブをするのは楽しそうだなって思ってましたし」
「かすみさん……」
「とりあえず、みんなにソロアイドルのことメールで知らせましょう。話はそれからで」
「わかりました。では、早速連絡しますね」
せつ菜はスマホを取り出して操作を始める。
「ねぇゆう男、ソロアイドルって宣伝とかどうするの?」
「一応動画とか撮って、それからMV作るって感じだな。あと、他のみんなは自己紹介動画とかも撮るぞ」
「それってかすみんは何番目!?」
「何番目かぁ……」
そこまで詳しく決めてないんだけど、どうするか。
「1番、1番目にして!」
「じゃあ2番で」
「なんでさ!?」
かすみは不服そうに声を上げる。なんでそんなに順番にこだわるのだろうか。
「別に順番なんてどうでもいいだろ……」
「かすみんは1番がいいの! だって部長だし!」
「そう言われてもな…。それに部長は言ってるだけだろ」
勝手に部長部長言い続けて、本当に部長にでもなる気なのだろうか。
「じゃあ、かすみさんが1番最初に撮りますか?」
メッセージを送信し終えたのか、せつ菜が会話に混ざってくる。
「いいんですか!?」
「私はいいですよ。優樹さん達の編集がどれほどのものなのか、是非見てみたいですし」
「まぁ、せつ菜先輩が言うなら…。じゃあ、かすみは明日収録ブースに集合な」
「うん!」
「それでは話も終わったことですし、帰りましょう!」
「はい!」
かすみはよほど嬉しかったのか、元気よく返事をする。そうして俺達は部室を後にするのだった。
「んっ、ふっ……あんっ……」
「いいぞ、璃奈」
あれから家に帰ってきたあと俺は璃奈を家に連れ込み、ベッドの上で可愛がっていた。ちなみに璃奈は制服ではなく私服に着替えたあとである。
「ほら、ここがいいんだろ?」
「ん、あっ……そこ……んっ!」
バックで璃奈の弱点を重点的に攻めていくと、璃奈は体を震わせながら反応を示す。璃奈の可愛い喘ぎ声を聞いていると、釣られて俺も腰の動きが早くなってしまう。
「はぁ……ん……あんっ、すごい激しい……んっ、ゆうきくん……好き……」
「俺も好きだよ、璃奈」
「嬉しい……もっと激しくしてもいいから……」
「わかった……行くぞ」
璃奈の許可も得たことだし、思う存分璃奈の体を楽しむとしよう。俺は腰の抽送を少しずつ早めていく。
「んっ、奥まで来てる……っあ、んぅ……やぁっ……ふぅ……」
「どうした璃奈? 先っぽ固くなってるぞ?」
「ひゃっ、おっぱい一緒に触っちゃダメ……」
「だったらここを触ってやるよ」
俺は左手で胸を揉みながら右手を下腹部へと持っていき、クリトリスを刺激する。すると膣内がさらに締まっていくので、璃奈の膣奥を刺激するように肉棒を突き入れていく。
「んっ!? そこダメ……あっ……んんっ……イク、イッちゃう……んんっ!!」
ビクンッと大きく痙攣しながら、璃奈は絶頂を迎える。しかし俺はまだイッていないため、そのままピストン運動を続ける。
「やぁ……今イってるから……んっ、また……来ちゃ……ああぁっ!!」
2度目の絶頂を迎えたことで璃奈の体は敏感になっており、少し刺激を与えただけで簡単にイきそうだ。そして俺は最後に思いっきり子宮口を突き上げ、欲望を全て璃奈に吐き出していく。
「んんんっ!! はぁ……はぁ……お腹熱い……」
「いっぱい出たぞ……璃奈のおかげだ」
「優樹くんのサディスト……」
「でも、そんな俺が好きなんだろ?」
「……うん、大好き」
璃奈は顔を赤く染めながら小さく呟く。その言葉を聞いた瞬間、璃奈への愛おしさが溢れてくる。
「そういえば、同好会楽しかったか?」
「楽しかった。みんなとたくさん話せたし、仲良くなれそうだった」
「それは良かったな」
「でも少し不安……」
「不安?」
いったい何が不安なのだろう。俺が不思議に思っていると、璃奈は言葉を続ける。
「ソロアイドルが出来るか、ちょっと不安……」
「大丈夫だよ。せつ菜先輩も応援してくれるって言ってたし、きっと出来るさ」
「うん……」
そう言ってもまだ不安そうだ。自分じゃこの不安を取り除けないと思った俺は、話を変えることにする。
「そういえば、少し前にネットに曲を投稿しただろ?」
「あぁ、私が編集した曲?」
「そうそれ。あれめっちゃ伸びてて、もうすぐ20万回再生されそうなんだぜ」
「凄い……」
20万再生というのは、初めて投稿した動画と思えばかなりの再生数だろう。いくら特典の力があっても、璃奈の編集力が無ければここまで伸びなかったはずだ。
「これも全部璃奈が頑張ってくれたからだ。ありがとな」
そう言いながら頭を撫でると、璃奈は気持ちよさそうに目を細める。
「うん……」
「ご飯食べてくか?」
「……食べる」
「じゃあ準備してくるから待っててくれ」
「わかった」
精液を出したらお腹も空いてきたし、そろそろ料理でもするか。俺は服を着て夜ご飯の準備を進めるのだった。
「じゃあまた明日」
「うん、おやすみなさい」
「お休み」
璃奈は玄関の扉を開け、家の中に入っていく。俺はそれを見届けてから家に戻ることにした。
(それにしても……)
今日は璃奈とのセックスが盛り上がってしまい、ご飯を食べるのが遅くなってしまった。まだしたいこともあるし、さっさと明日の準備をしなくちゃな。
(そういえば、今って原作で言うと4話だよな?)
璃奈と愛が同好会に来るのが4話だったから、間違いないはずだ。この世界に来てもう2ヶ月経つため、若干原作の記憶が薄れてきている。
(こんなことになるならメモ帳にでも書いておけばよかったな……)
だが今更後悔しても遅い。とりあえず今は、明日のために何をするか考えるとしよう。
「明日は何も予定はないはずで…。明後日は……愛がライブをするんだよな」
ライブと言っても公園で踊るだけだが。たしかソロアイドルとしてのあり方を悩んでいたところをエマに諭されて、自分のアイドル像を見つけてライブをする、と言うストーリーだったはずだ。
(エマの役割は俺が担うとして、だったら曲が必要になるな……)
原作のことを考えると早めに曲を作っておいた方がいい。
(でも原作って、どっから曲を作ったんだ?)
原作では作曲者について触れられたことすらない。いったい誰が曲を作ってたのだろうか。
「まぁ、考えてても仕方ないか」
とりあえずパソコンを立ち上げて作曲ソフトを起動する。そしてキーボードを叩きながらメロディーを奏でていく。
(あれ、どんな感じの歌詞だったっけ……)
歌詞がうろ覚えになってたが特典を使えば大丈夫だ。歌詞も曲調も、ほぼ完璧に再現することができる。本当に便利な能力だ。
(後は根気だな)
チラッと時計を見てみると、針は9時を指している。俺は急いで作曲に取り組むのだった。
「ふぅ、こんなものか」
あれから1時間ほどかけて、なんとか曲を完成させることが出来た。曲名は『サイコーハート』だ。純度100%、原作で愛が歌った曲と同じだ。
アレンジを入れることもできたが、盗作している以上それは失礼だと思い、アレンジは全く入れていない。
(もしこれでお金貰ったりしたら酷い目に合いそうだな…)
人様の曲でお金を貰うなんて、流石に強欲すぎるだろう。前世の価値観だったらしてたかもしれないが、神様が存在するのがわかってる以上、下手な真似は出来ない。
(動画サイトでも結構バズったし、まず家が金持ちだからな)
投稿した曲は収益化を申請している。これが通ればお小遣い程度になるだろう。それに実家が裕福なんだ、無理にお金を稼ぐ必要はない。
(あとは、曲を愛に渡すだけだな)
明日は練習日だが、愛は部活の助っ人で遅くなる予定だ。
(だったら、土曜日の朝練の時に渡すか)
明後日は早く家を出て、愛に曲を渡すとしよう。その後に愛の悩みでも聞けばいい。俺はそう考えパソコンを閉じる。そして、ベッドに寝転びながら物思いにふける。
「愛、か……」
今思えば、愛とは恋人同士になってから2ヶ月近く経つ。しかしここ2週間はセックスをしていない。
(忙しかったし家も遠いからな……)
最近は同好会の廃部問題や部員集めで忙しく、愛とはあまり一緒の時間が取れなかった。
(土曜日の練習が終わったら、家にでも誘うか。たまにはゆっくり一緒にいたいし)
そうすればたっぷりと愛し合うことができる。たくさん寂しがらせてた分、土曜は可愛がってあげよう。
そんなことを考えているうちに、俺の意識は徐々に微睡みの中に沈んでいくのであった。
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