※この作品はR-18です。

リアデイルの大地を夫と   作:リュウコウ

4 / 4
銀月の騎馬
ギルドマスター:京太郎
サブリーダー:シャイニングセイバー
戦闘員:コーラル

学院長:マイマイ

第1王女:ルミエール
第2王女:ノワール










4 娘と学院と塔と召喚獣と

くわんくわんと鳴り響く頭を押さえ込んで、ケーナはもそもそと朝食を取っていた。

調子の悪そうな顔色だったらしく、同宿(どうやど)の客に二日酔いの薬などを貰ってしまうくらいである。

 

 

いくらスキルマスターなケーナであっても酔う時は酔っ払う(よっぱらう)。

【常時技能(パッシブスキル):毒耐性】では完全に防ぐには至らない(いたらない)からだ。

此れ(これ)はリアデイルゲーム内で、過半数(かはんすう)のプレイヤーから猛反発(もうはんぱつ)された結果でもある。

リアデイルでプレイヤーキラーがてきるのは戦争期間中だけだ。

微々たる(びびたる)であるが経験値も取れるとあっては、低レベル者たちも必死にもなる。

其の(その)結果、徒党を組んで限界突破者(げんかいとっぱしゃ)などの格上を狙うのだ。

初期に【異常状態無効(いじょうじょうたいむこう)】であったスキルは【異常状態耐性(いじょうじょうたいたいせい)】になり、最終的には【毒耐性(どうたいせい)】【麻痺耐性(まひたいせい)】【沈黙耐性(ちんもくたいせい)】など各異常状態耐性(かくいじょうじょうたいたいせい)に最終分類(バージョンアップ)された。

上位者(じょういしゃ)たちからは「何もソコまでしなくても........」という意見も出たが、大部分(だいぶぶん)を占める(しめる)低レベルプレイヤーからは歓迎(かんげい)された。

ケーナみたいな魔法重視型(まほうじゅうしがた)になると、物量で戦略戦(せんりゃくせん)に持ち込まれて何度か敗北している。

彼女は「完全無欠(かんぜんむけつ)なんてないなー」などの考えで飄々(ひょうひょう)としていたが、他(ほか)はそうは考えなかったようだ。

一時期は限界突破者や高レベルプレイヤーが結託(けったく)し、1国(いっこく)に集中して所属した。

挙げ句(あげく)、国ごと無双になった時には公式サイトを含む掲示板が随分(ずいぶん)荒れたものだ。

そんな経緯と、おそらくは現在の状況がケーナに酒が効く理由だろう。

仮想媒体(アバター)の時は確率とプログラムの構成で毒が通用するかしないかだっただろう。

アバターが生身(なまみ)となったケーナには、『お酒は20歳(はたち)から』とか『未成年』とかの精神的な思い込みが色々と【毒耐性(どくたいせい)】の効果を落としていると思われる。

他(ほか)にも、マレールに「二日酔いも酒を楽しむ上で通る道の1つ」とか言われて【毒浄化】を禁じられてしまった。

素直に其の(その)言葉に従い二日酔いを享受(きょうじゅ)するケーナの姿がある。

何故(なぜ)素直に言われたことに従うのかというと、マレールが此の(この)世界でのお母さん的ポジションにいるからだ。

 

(ううむ、私此処(ここ)に何しに来たんだっけ?そもそも塔を捜すと言ってもなー、守護者の塔と言って通じるのかな?)

 

早朝か市場へ行って、キリナ草(そう)とコルトバードの心臓を2人分買い、宿屋で夫(シャイニングセイバー)と一緒に朝食を食べながら、夫(シャイニングセイバー)に聞いてみる。

 

「ねぇ、守護者の塔って、聞いたことない?シャイニングセイバーの方(ほう)が、私より此の(この)世界詳しいでしょ」

「まあな、でも、俺も騎士団長になって3年だからな」

「あんた、京太郎さんと同じギルドに入っていたでしょ?確か、あいつの塔が此の(この)近辺(きんぺん)だと、思うんだけど?」

「う~ん、分からないな」

「そっかー」

 

私達は朝食を終えて、私はギルドへ、シャイニングセイバー(夫)は騎士団へ向かう。

途中、道で会う幾人(いくにん)かに、「水面を歩いていた嬢ちゃん(じょうちゃん)」とか言われるのは勘弁願いたいところではある。

 

(わたしゃあアメンボかっちゅーの)

 

一概(いちがい)に否定できない魔法なので仕方がないだろう。

人口が多ければ多いほど噂の伝達速度が速い。

伝言ゲーム化して、間違った情報となるのもかなり多いが......。

 

(むしろ街の中で情報を探すよりは、外へでてる人やエーリネさんたちみたいな隊商(たいしょう)として彼方(あっち)此方(こっち)に行く人が辺境(へんきょう)の話に詳しいんじゃないのかなぁ?先に馬車溜まり(たまり)まで行って聞いてみよう)

 

ギルド直前で方向転換し、馬車停泊所に向かう。

まだ出発していなかったため、エーリネの隊商は其処(そこ)にいた。

顔見知りとなった隊商の人々と挨拶(あいさつ)を交わしていると、エーリネが直ぐに出て来て開口一番(かいこういちばん)のたまった。

 

「聞きましたよケーナ殿(どの)。大河(たいが)を割ったそうですね?」

「誰だ此処(ここ)まで噂流した奴!?」

「冗談ですよ」

 

遊ばれているのがわかってガックリと膝を突く。

滂沱(ぼうだ)の涙を流してエーリネににじり寄った。

 

「ええぇりぃねぇさあぁぁん~」

「分かりました。分かりましたから、機嫌を直してください」

「ぐすっ.......」

 

恩人にそんな力任せな人物だと思われているのかと考えたら泣きたくなる。

涙を拭いてから改めて向き合う。

 

「其れ(それ)でどうしました?護衛に雇われに来たって感じではなさそうですが......」

 

スキルマスターのところはぼかし、辺境(へんきょう)の村(そう言えば彼ら(あの)村の名称を聞いてなかった.....)近辺(きんぺん)にある〝銀の塔〟を例に出し、似たような建造物の情報はないかと聞いてみる。

 

「成る程。ケーナ殿(どの)の旅の目的は其れ(それ)を捜すことなのですね?」

「まあ、最終目的は其れ(それ)でしょうかね。シャイニングセイバー(夫)には逢って装備を渡したし、今は他(ほか)に『此れ(これ)だ!』と言えるものもありませんから」

「そうですね、北のヘルシュペル国(こく)には湖(みずうみ)に浮かぶ誰も入ることのできない美しい城があるそうですが.....、其れ(それ)以外は特にないですね」

北の国ですか.....」

 

北にあった国というと、かつて白の国の北東に紫の国ヘルベール。

西に黒の国ライプラスがあって、毎月3国入り雑じっての大激戦地であった。

特に黒の国はケーナと其の(その)悪友が所属していたところなので、スキルマスター同士の大魔法の撃ち合いや戦闘技能(ウェポンスキル)での大地の陥没(かんぼつ)激しい潰し合いの場であった。

其の(その)ため周囲の地形が毎回変化するという被害が多かったのを思い出す。

ゲーム世界の大地にまでは影響が出なかったが、今、同じことになったら此の(この)王都等(など)は一瞬で廃墟を通り越してクレーターになるだろう。

流石(さすが)に限界突破者24人やスキルマスター13人に其処(そこ)までやりそうな人格破綻者(じんかくはたんしゃ)はいなかった(おかしな性格の者はいっぱいいた)と思う......。

其れ(それ)を考えると自分の力の使いどころが非常に難しいのがよく分かる。

何も考えずに力を振るえば、人など呆気(あっけ)なく死んでしまうからだ。

 

「ケーナ殿(どの)?」

「あ、はい、.......と、すみません」

「昔のことですか?差し支えかければどういった世界だったのか聞きたいところですね」

「あー、まあ戦争ばっかりの殺伐とした世界でしたね」

 

とにかく其の(その)辺りの情報を見つけたら知らせてくれるとの約束を取り付けて、エーリネと別れた。

今回はサービスだが次に情報を得られたら(えられたら)料金は頂くと言われた。

冒頭から料金の話を持ち出されなかっただけ、彼には優遇されているのだろう。

ケーナは考えながら、当初の目的地である冒険者ギルドへ向かう。

入って依頼書の壁に向かおうとしたらカウンターから受付のお姉さんに声を掛けられた。

 

「あ、ケーナさん。此方(こちら)へ来て頂けますか?」

「はい?」

 

カウンターに向かうと、賞状を小さくしたような形の金縁(きんぶち)の紙を1枚渡される。

現地語であったために、解読するのも面倒になり素直に受付のお姉さんに聞くことにした。

 

「なんですか、此れ(これ)?」

「名指しで依頼といいますか、学院から召喚状(しょうかんじょう)です。先日のポーションの件でお話があるそうですよ」

「学院って、中洲に立っている彼の(あの)学院ですか?」

「はい、彼の(あの)王立学院ですよ。期日はないようですけれど、なるべく暇な時にいらして下さい、だそうです」

 

なんにせよ学院であれば、マイマイに会うチャンスもあるから問題ないだろう。

学校は小学校しか行ったことのないケーナからしてみれば、違う世界の違う学校がちょっと楽しみだったりする。

中洲に渡る時には船着き場にいた人々に「今日は歩いて渡らないのか?」と不思議そうに聞かれた。

別に先日とて話題にされるために使ったわけではないので、「ええ、まあ」と適当に誤魔化しておく。

しつこい輩(やから)には努めて聞かなかった振りをし、乗り合いの帆船(はんせん)で中洲へ渡った。

なんか既に船着き場の有名人になってしまったようで、ちょっとショックである。

学院の門番に召喚状(しょうかんじょう)を見せると、門番の詰め所にあつた水晶球(すいしょうたま)に何事か話しかけてから門を開けてくれた。

誰か案内人が来るそうなので、暫く(しばらく)待っていて欲しいと言われる。

大人しく待つこと数分、校舎の方(ほう)から見覚えのある人物がパタパタと走ってきた。

 

「お、お待たせしました。召喚状(しょうかんじょう)で呼ばれて......、ってケーナお姉様」

「や、ロンティ。昨日ぶりだねー。此処(ここ)の生徒さんだったんだ?」

 

昨日とは違って、杖もなく緑のローブに身を包んだロンティは息を整えてから頭を下げた。

 

「昨日はありがとうございました。騎士団の人たちがびっくりしてましたよ、早いって」

「しょーがないデンちゃんだねえ。次も街中で見つけたら問答無用で捕獲していいのかな?」

「あ、はい。お願いします。其れ(それ)よりも召喚状(しょうかんじょう)って、何やったんですか?」

「んー、其れ(それ)を聞きに来たんだけど、とりあえず案内お願いね」

「はい、先ず(まず)は学院長室まで連れて来てと言われましたので。此方(こちら)です」

 

ロンティの先導で校舎に入る。

途中幾つか(いくつか)学院について説明をしてくれた。

先ず(まず)彼女は実践魔法科に所属していて、授業の一環として冒険者ギルドに登録していること。

他(ほか)にも回復魔法や浄化魔法を学ぶ神聖科や薬品を調合する錬金科などがあること。

魔法の素質があれば誰でも入学できること(お金は最低限、国が保証してくれるらしい)。

 

「調合?合成じゃなくて?」

「はい?薬を作る場合は、磨り潰したり(すりつぶしたり)して混ぜ合わせるの主流ですよ。もしかしてハイエルフ族では違うんですか?」

「.......ああ、なるほど、プレイヤーだけの技術はNPC(ノンプレイヤーキャラクター)から後世に伝わらなかったのね」

「.......はあ?」

 

此の(この)場合実際の現場を見ないと確かなことは分からないが、かつてのプレイヤーたちが使用していたスキルは今の世では失われているらしい。

だとすると昨日、ロンティの前で【浮遊(ふゆう)】を使った時にびっくりしていたのは、詠唱(えいしょう)を使わなかったからだろうか。

 

「ケーナお姉様、此処(ここ)が学院長室ですよ」

 

考え込んでいる内に、他(ほか)とは少し違う立派な扉の前に案内されていた。

ノックをすると「どうぞ」と女性の声がして、ロンティがドアを開けて中に入っていく。

後に続いたケーナは、大きなガラス窓を背にした重厚な机の此方(こちら)側に腰掛けた、赤いローブのエルフ女性と目が合った。

其れ(それ)が誰かと判別するより先に、いきなり眼前(がんぜん)に迫った柔らかい布地(ぬのじ)に〝ひしぃっ〟と抱きすくめられた。

 

「........あーと、マイマイ......ね」

「あーん、お久し振りぃ~、お母様(おかあさま)あぁ~~~!」

「ええええええええええええええええええっ!?!」

 

甘えた声が頭上からするのと同時に、隣からロンティの驚愕(きょうがく)が伝わってくる。

 

(背は高いし、柔らかいし、腰細っ。何で私はこんなに小さいんだろう?)

 

キャラ作成の時の弊害(へいがい)はいかんともしがたいが、元々の体が骨と皮みたいだったので、仕方がない。

手の届く所にあったマイマイの頬をつねって、無理矢理自分から引き剥がした。

 

「うううっ、お母様(おかあさま)酷いです~。200年振りの再会なのにぃ~」

「学院長が今更、人前でなにやってんのよ......。ほら、ロンティ大丈夫?」

「.......はっ」

 

目の焦点が何処(どこ)かに行ってしまったロンティの前で手を振り、彼女を正気に戻す。

幸い魂ごと飛んでは行かなかったようで、直ぐに我に返った。即、詰め寄って来たが。

 

「あああ、彼の(あの)、彼の(あの)、ケーナお姉様が学院長の母親なんですかっ!?」

「うん、そう。此れ(これ)でも200年以上、年を重ねていますから」(大嘘)

 

「わーい、お母様(おかあさま)~~~♪お父様(おとうさま)には会われましたか?」

 

背後からケーナに抱きついて、大きな子供みたいな様相(ようそう)を晒す(さらす)学院長(がくいんちょう)(犬耳(いぬみみ)尻尾(しっぽ)付き)に唖然(あぜん)として言葉もないロンティ。

流石(さすが)にどうしていいのか分からずに其の(その)ままに、ロンティに御礼をした。

 

「アルバレストさん。もう授業に戻って良いわよ」

「あ、はあ......。はい、し......失礼......します」

 

いささか現実と幻想の間に迷い込んだ感じがしないでもない雰囲気(ふんいき)のロンティが、一礼をして学院長室を退出して行った。

 

「ねえ、マイマイ?」

「はい。お母様(おかあさま)♪」

「今まで、ほったらかしにしていた私が悪いのだけれど、学生の前では抱きつくのを控えないと、示しがつかないでしょ!」

「は......はい」

「で、マイマイの質問だけれど、以心伝心(いしんでんしん)で連絡してシャイニングセイバーには、此の(この)街の案内をしてもらい、宿屋で武器を2振り渡し、其の(その)夜、イチャイチャしたわ♪私の事は置いといて、私は何のために此処(ここ)に呼ばれたのかしら?」

「キチンとしたお話があります!」

「マイマイの話の前に、貴女(あなた)は他(ほか)の守護者(しゅごしゃ)の塔を知らないかな?」

「......え....ええと。守護者の塔というのは、お母様(おかあさま)が所有する銀(ぎん)の塔みたいなのですか?」

「そうそう、それそれ。他(ほか)に同じようなものが世界に12本あるの」

 

少し思案したマイマイは首を振ると、「聞いたことがありません」と答えた。

 

「そう、分かったわ。ありがとう」

 

プレイヤーが沢山存在していた時代を知っているマイマイですら知らないということらしい。

当時サブキャラは倉庫としているだけでなく、ある程度の行動パターンを入れて連れ歩くNPC(ノンプレイヤーキャラクター)として使っていた。

アヒルの雛みたいに後をついて来るサブキャラに、戦闘経験を積ませてレベルアップさせるのが主流である。

其れ(それ)を利用して3人とも300レベルに上げておいた筈(はず)だ。

技能(スキル)や魔法には最低習得レベルというものがあるからで、バラバラにしておくよりは並べた方(ほう)が綺麗かもと思ったこだわりである。

当時レベルアップさせる途中で確か誰かの塔に寄り、召喚魔法(サモンマジック)でモンスターを呼んでもらって其れ(それ)を倒して経験値にしていた記憶がある。

しかし、其れ(それ)をマイマイは覚えていないようだ。

此れ(これ)も情報がなく確証もないので脳内から削除しておく。

後はまあ、スカルゴやカータツにも確認する必要があるということだ。

そんなことをつらつら考えるケーナが連れてこられたのは、何やら授業中な教室だった。

娘(マイマイ)は全く躊躇(ちゅうちょ)する様子もなく扉を開け、「連れて来たわよ~」と中へ入って行く。

中は幅広い机が幾つか並び、ハーブなどより強い刺激臭が漂っている。

教室では20人程度の生徒が材料を磨り潰したり混ぜ合わせたりしていた。

いきなり入って来たマイマイにはチラリと目線を向けるくらいで、作業からは目を離さない。

娘(マイマイ)が声を掛けたのは教卓に立つ随分とヨレヨレな格好をした男性教師だ。

彼は生徒に「作業を続けておけ」と命じると、マイマイを伴って(ともなって)ケーナの待つ廊下へと出て来た。

 

「おいおい。まさか来たのがこんな嬢ちゃんだとは、マジか?」

「つーか、なんで誰も彼も私を見るなり嬢ちゃんとしか言わないのかと.......」

 

ボサボサ頭に無精髭(ぶしょうひげ)の風来坊みたいな男に「こんな嬢ちゃん」と言われて溜め息(ためいき)を吐く。

ちょっとカチンと来たケーナを表情から察したのだろう、マイマイがどーどーと宥める(なだめる)。

 

「ちょっとロプス。こんなの言わないでよね、私のお母様(おかあさま)なのよ♪そして、騎士団団長のシャイニングセイバーがお父様(おとうさま)よ♪って、此れ(これ)は、結婚の時に伝えていたね」

「な......に?お父様(おとうさま)のことは、聞いていたが」

 

唐突に告げられた衝撃の事実に言葉を失う。ロプスと呼ばれた男性教師。

 

「で、此方(こちら)ロプス・ハーヴェイ。錬金科の教授で私の旦那なの」

「.........は?」

 

なんとなく特殊効果で背後に氷原を表したくなったが、なんとか自制心を働かせた。

自分の発言でくねくねしながら、「きゃ、言っちゃった」などと照れて、マイマイはハートと音符を振り撒いていた。

母親と夫は顔を見合わせて盛大な溜め息(ためいき)を吐いた。

 

「ゴメンナサイ、私達の教育が行き届いて(ゆきとどいて)なくて、あんなので苦労しているでしょう?」

「いや......、彼の(あの)能天気さに救われたこともあるから、一概にはどうとも言えん。しかし、マイマイからお父様(おとうさま)を紹介された時、此れ(これ)から、騎士団団長をお義父様(おとうさま)と呼ぶのだと、気が引き締まっていたが、お母様(おかあさま)は、エルフだろうとは思っていたが、まさか、ハイエルフだとは」

 

再び顔を見合わせて苦笑い(にがわらい)を同時に浮かべる2人。

 

「貴方(あなた)、良い人ね。末永く彼の(あの)娘を頼むわ、ロプスさん」

「嬢ちゃん、ではなかったな.........。ケーナ殿(どの)でいいか?流石(さすが)に義母上(ははうえ)とは気恥ずかしく、騎士団団長のことも義父上(ちちうえ)とは呼べず、今まで通り、騎士団団長殿(どの)と、呼ばせてもらっている」

「ちょっ、何を私を差し置いてがっちり握手交わしてるの!?何2人して生温かい(なまあたたかい)目で此方(こっち)見るのーっ!?」

 

自分のお陰で夫と母が仲良くなったとは知らず、歯軋り(はぎしり)して悔しがるマイマイたった。

よよよと泣き崩れ、廊下に滂沱(ぼうだ)の涙川(るいせん)を作る学院長(マイマイ)をスルーし、2人は本題に入った。

ロプスがマイマイから手渡された赤い液体瓶をケーナに差し出す。

 

「ポーションくれって依頼だったから出したんだけど、此れ(これ)はマズいのかな?」

「こんなもんに流通されたら、既存(きぞん)の調合の観点からひっくり返っちまう。表に出すのは自重してくれ」

 

やはり今の世の中とは作り方から違うようだと確信する。

先程の授業風景を見る限りでは、手持ちのスキルでは彼の(あの)ような面倒な手順を踏む必要がないからである。

 

「........マイマイ」

「はい!なんですかお母様(おかあさま)?」

 

呼ばれただけでパアッと笑顔になり、パブロフの犬みたいに駆け寄ってきた娘に呆れ返った(あきれかえった)が、疑問点を問いただす。

 

「貴女(あなた)には【ポーション作成Ⅰ(ワン)】とか教えてなかったかな?」

「え?いえ、教わってませんわ」

「彼れ(あれ)?じゃあ持ってるのはカータツかしら?」

「さあ?ぐて......カータツが作るものでそういったものは見たことがないですよ」

 

思い違いかなと考えたケーナだったが、母娘(おやこ)の会話を面白そうに聞いていたロプスにつつかれた。

 

「なあ、ケーナ殿(どの)。どうせなら1度其の(その)作り方を見せてもらえないか?」

「は?」

 

返答を待たずに教室へ戻るとドアを開けたまま「さあ」とケーナを促す(うながす)ロプス。

「いいのかなあ?」とマイマイを振り返ると、問答無用とばかりに教室へ押し込まれた。

 

「ロプスが良いって言ってるから平気よ」

 

生徒たちは出たり入ったりしている公認バカップルはまだしも、自分たちと同じくらいの女性が一緒に行動しているのに不審顔だ。

机には調合器具の他(ほか)、小瓶に入ったお茶みたいな色の液体が人数分置いてある。

どうやら授業のメインは終了したようだが、ロプスは生徒たちに出来上がった物は後で提出するように告げ、教卓へケーナを招く。

 

「此れ(これ)から少々デモンストレーションをやってもらうので、お前たち良く見ておけ」

(いやちょっと待てやロプスさん!今、市場(しじょう)に出したらマズい代物(しろもの)だとか言わなかったか?)

 

ケーナの内心の突っ込みは勿論(もちろん)聞こえていない。

非難を込めたジト目の視線を意(い)に介さず(かいさず)、授業で使った材料を教卓に並べたロプス。

先ずは教卓に引っ張り出した女性を生徒たちに紹介した。

 

「此方(こちら)は魔術師のケーナ殿(どの)。其処(そこ)の学院長の母親だ」

 

唐突にぶっちゃけた真実に其の(その)場の全員が石化した。

一拍(いっぱく)遅れて前例と同じく『ええええええーっ』と悲鳴が上がる。

其れ(それ)をサッパリと無視したロプスは手を振って生徒たちを静かにさせた。

そんな号令で静かになるほど仕込まれてる生徒の反応がケーナには驚きだ。

 

「ではどうぞ」

「いやちょっと待って、こんな材料私のレシピにはないんだけど........。此れ(これ)は何?」

「カジュの根にキリナ草(そう)の球根だが、足りないか?」

 

机に並ぶ材料と調合器具に根本的にやり方が違うと判断したケーナは、戸惑う生徒たちを見て開き直った。

アイテムボックスからキリナ草(そう)丸々3本と凍ったコルトバードの心臓を抜き出す。

そして、手元にあるものが何かを説明した後に、【ポーション作成Ⅱ(ツー)】の技能(スキル)を実行させた。

たちまち教室をどよめきが満たす。

空気中から染み出した青い点がケーナの手前に結集する。

青く回転する羽を描く様に、ケーナの手にあった材料が瞬く間に水球(すいきゅう)に吸い込まれていく。

水球(すいきゅう)は色彩(しきさい)を青から赤へ変化させながら結合する。

やがて分離した余計な水分は、赤い掌(てのひら)大(だい)の圧縮された球(きゅう)の周りでリングを作り上げる。

青と赤に光り輝くミラーボールみたいな其れ(それ)は、ひとつの命のような神秘性を放っていた。

幻想的な光景に生徒たちが溜め息(ためいき)を漏らした(もらした)瞬間「パキィィィン!」と耳につく音を残して球(きゅう)ごと砕け散った。

生徒たちとロプスは驚きの現象の連続で声も出ない。

マイマイだけは「流石(さすが)お母様(おかあさま)」と呟き(つぶやき)、1人で喜んでいる。

ケーナの手に残るのはロプスの手にあるものと同じく、赤い液体瓶がひとつだけである。

 

「以上、ハイポーションの作り方でした」

 

其れ(それ)だけ告げて、出来上がった瓶をロプスへ投げる。

危なげなく受け取った後は、両手にあるものを見比べて同じモノだと理解してから手を上げた。

 

「......ちょっと聞きたいんだが?」

「モノによる」

「瓶は何処(どこ)から出てかたんだ?」

 

悲痛なほどの沈黙が降りた。

ケーナの頬を一筋の汗が、つーっと滴り(したたり)落ちる。

彼らが知る由も(しるよしも)ないが、此れ(これ)はゲーム中でも散々物議を醸してきた(かもしてきた)問題だ。

【技術技能(クラフトスキル)】系統の作成スキルで完成する物は大半がキチンとした容器に収まっている。

内容物を使えば容器は消えるため、特に問題視はされていなかった。

だが、何処(どこ)の世界にも其の(その)辺りに突っ込むことを仕事にする者はいるのである。

お陰でプレイヤーの中にも容器は別に作る派と、此の(この)ままで問題ない派がいて、対立を続けてきた。

運営は此の(この)話に一切関知しなかったため、忘れたころに再燃する一種の討論会と化していたのは言うまでもない。

勿論(もちろん)ケーナはそんなものに一切拘らなかった(こだわらなかった)ため、今更聞かれても答えようがないのであった。

 

「そういうものだから!.......仕様なの!」

 

言うべきことだけを大(だい)にして、早足で教壇を後にする。

 

「え、あ、ちょっ、お、お母様(おかあさま)、何処(どこ)へ?」

「帰る」

「ええっ!?」

 

突然機嫌を損ね(そこね)、一言で状況を切り捨てたケーナを、目を白黒(しろくろ)させたマイマイが追う。

まだ幾つか聞きたいことがあったロプスは、義母(ぎぼ)の焦った態度を理解して小さく噴き出した。

賢人(けんじん)でも想定外のことがあるらしいと分かったためだ。

 

「まだ会ったばかりなのにぃ~」

「会いたきゃ、此方(こっち)くればいーでしょーが!」

「そんなぁ~」

 

廊下の奥へ親子の会話が聞こえなくなるまでロプスの肩は震えっぱなしだった。

 

翌日、再びギルドへ顔を出したケーナは、再度カウンターからの呼び掛けを受けて、赤毛の受付のお姉さんから召喚状(しょうかんじょう)を渡された。

 

「なんでも今度は学院の教師として迎えたいんだそうよ。凄いわね」

 

感嘆(かんたん)の思いで彼女は言ったのだろうが、ケーナの脳裏(のうり)には娘の能天気な笑顔が浮かび上がった。

 

【特殊技能(エクストラスキル):以心伝心(いしんでんしん):娘・マイマイ】

 

『此方(こちら)マイマイです。どうかしましたか、お母様(おかあさま)』

「彼の(あの)ね、マイマイ。昨日も言ったけれど、私は守護者(しゅごしゃ)の塔を探さないといけないの。忙しいの。わ・か・る・わ・よ・ね・!」

『わ......分かります』

「拠点として、永住する場所は、決まったらまた、【特殊技能(エクストラスキル):以心伝心(いしんでんしん)】を使って、連絡するから。ね、マイマイは賢いから、待てるよね♪」

『はい、お母様(おかあさま)』

 

宿屋に戻り、借りている部屋に入り、ベッドに腰掛ける。

 

「はぁ~。なんでウチの子は変なのばっかりなんだろうか?」

 

慕ってくれるのは嬉しいが、甘えん坊なのもどうかと思う。

長兄(ちょうけい)が1番問題児なのを母親(ケーナ)が知るのは、まだ先の話であった。

父親(シャイニングセイバー)は、騎士団の一環で、警備と称して、教会に顔を出しているので、問題児な事は知っている。

其の(その)夜。

同宿で仲良くなった竜人族(ドラゴイド)の学生から聞いた話によると。

 

「今日は学院長室で歓喜(かんき)の花が咲いたり、悲壮(ひそう)の雨が降った、らしいんですよ」

「へ.....へぇ、そうなんだ」

 

 

 

ケーナが王都(おうと)にやって来て10日(とうか)が経過した。

学院に寄った翌日から冒険者ギルドでの活動を開始した、の、ではあるが。

問題は掲示板に貼られている無数の依頼である。

ギルドメンバーがランク制などで分かれていないため、自分の実力に見合った依頼を自分で見極めねばならない。

できるできないで振り分ければ荒事系(あらごとけい)はケーナの専門分野だろう。

逆に植物採取などは初心者向けに残しておいて欲しいと言われた。

ケーナでもやってやれないことはないが、植物の苦しむ声が聞こえてしまう彼女には辛い選択である。

なので依頼を選別する側の受付のお姉さんに判断を委ねることにした。

 

「すみませんアルマナさん。お願いしたいことがあるのですけれど」

あらケーナさん、おはようございます。何の御用でしょうか?」

「おはようございます。其れ(それ)で、私に見繕って(みつくろって)ください!」

「はい?」

 

おそらく受付にいた係員のみならず、其の(その)場にいた冒険者たちも困惑したであろう。

すなわち「お前は何を言っているんだ?」と。

言った後でケーナ自身も何かおかしいと気付き(きづき)、周りの反応を見て慌てて訂正した。

 

「あ......ああっ!?すっ.....すみません!依頼書が読めないとか自分の強さが分からないとかじゃなくて、あんまり物を壊さないで済むようなお仕事をですね!」

 

ケーナのあまりに必死な慌てように受付のお姉さんのアルマナも自然と頬が緩む。

 

「はい、分かりましたケーナさん。慌てなくて大丈夫ですよ。ご相談には乗りますから」

「はっはい!お願いします!」

 

ケーナはアルマナの微笑み(ほほえみ)で、つい従姉妹(いとこ)を思い出してしまった。

事故に遭う(あう)前は疎遠(そえん)だったのに、入院してからは毎日のように顔を合わせて言葉を交わしていた。

実の姉のように感じていたこともあって、自分が亡くなったことで悲しみに暮れていないか心配に綯ってしまう。

此方(こっち)で出会った人には心配を掛けないように立ち回らないとと、決意をあらわにする。

其の(その)力む(りきむ)姿を見たアルマナに再び笑われてしまい、赤面することに。

カウンターでは長々(ながなが)と話すのが邪魔になってしまうというので、ケーナは小部屋に案内された。

テーブルと3人掛けのソファが2つしかない、こぢんまりといた部屋だ。

指名依頼(しめいいらい)などがある場合に使われるらしい。

 

「其れ(それ)でケーナさんは魔術師ということですから、得意なのは魔法でいいんですよね?」

 

アルマナは広辞苑(こうじえん)のような分厚い冊子(さっし)をテーブルの上に広げた。

掲示板に貼ってある依頼書はダウンサイズしたもの。

此の(この)冊子(さっし)が依頼者からの正式な書類ということだ。

 

「ご自分(ごじぶん)の1番強い魔法の威力というのは把握(はあく)していますか?」

「ええと、たぶん......、一軒家なら吹き飛ばせるかと」

「あら」

 

もちろん真っ赤な嘘である。

考えて無難な答えを述べただけだ。

正直に言ったとしても、笑い飛ばされるか実力疑われるかと思ったからだ。

実際のところ銀翼(ぎんよく)なしでも、最大威力の魔法を放てば王都の半分は焦土(しょうど)と化すだろう。

其れ(それ)くらい今の世の人たちとケーナとシャイニングセイバーの2人との間には実力の差がある。

 

「攻撃魔法以外で何か扱えますか?」

「攻撃魔法、以外、だと.........、ロックゴーレムくらいならなんとか」

 

なんとなく聞かれると本当のことを言いそうになって、よく考えて答え濁す(にごす)という方程式になりつつある。

此方(こちら)もゴーレム1体作り出せば、其処(そこ)ら辺にいる(シャイニングセイバー(夫))騎士より遥かに強いブツが出来上がるのだ。

強さを偽るのも神経を使うことを今更ながら実感したケーナである。

 

「其れ(それ)でしたら、そうですね........。此れ(これ)などはいかがでしょう?」

 

アルマナがケーナの前に提示した依頼書には『染料の捕獲』と書かれていた。

実に意味不明な文章である。

ケーナの脳内にはチューブからひねり出された絵の具を、網を持って追い掛け回す冒険者たちの姿がよぎった。

不思議そうな顔で首を傾げるケーナに、アルマナから補足説明が入る。

要は特殊な染料の材料となる魔物の捕獲である。

「其れ(それ)なら分かりやすく書いとけーっ!」と言いたくなるが、心に押し留めた(おしとどめた)。

此方(こちら)ではそう表現するのが一般的であると思ったからだ。

常時依頼を受けている冒険者には其れ(それ)で通じているのだろう、とも。

其れ(それ)から其の(その)特殊な染料を扱う商会までの道のりを教えてもらい、掲示板から剥がした依頼書を片手に其処(そこ)を訪ねてみることにした。

商会は染め物を専門にしているという小さな建物だった。

此処(ここ)は事務所でしかなく、専用の工場は川岸にあると教えてくれたのは、此処(ここ)の商会長だという小太りのオジサンである。

 

以前なら商会の依頼を専門に受けてくれる冒険者のチームがいたらしい。

しかし其の(その)チームは仕事中の怪我が元で解散してしまった。

其れ(それ)で此処(ここ)しばらく、染料の入手に困っていたとのこと。

チームでもない、たった1人の小娘から「依頼を受けに来ました」と言われても訝しげ(いぶかしげ)な顔であった。

此処(ここ)は、シャイニングセイバー(旦那)の名前を使わせてもらうかな♪

 

「あ......彼の(あの)、シャイニングセイバーの妻なんですけれど、其れ(それ)でも、私が依頼を受けることを不審にお思い(おおもい)ですか?」

「!?.......、あんたが本当に騎士団団長の嫁さんなら、此処(ここ)に呼んでみな!」

「分かりました。【特殊技能(エクストラスキル):シャイニングセイバー】」

『もしもし、ケーナか?どうしたんだ?』

「もしもし、私、ケーナ。彼の(あの)ね。今、冒険者の依頼で商会に来ているのだけれど、私1人が受けるって言ったら、不審がられたから、貴方(あなた)の名前を出したら、此処(ここ)に呼べって言うのよ!」

『分かった。今から巡回の時間だから、其の(その)商会にも寄るから、待っていてくれ♪』

「了解♪」

 

 

~~~10分後・商会の応接室(おうせつしつ)~~~

 

 

 

「来てくれてありがとう♪」

「此れ(これ)くらい、どうってことはない♪で、此方(こちら)がお前を不審がっていた商会の事務員か?」

「そうなのよ」

「し.....シャイニングセイバー様のお嫁さん(およめさん)だとは露知らず(つゆしらず)、申し訳ございません」

「どうするケーナ。依頼を受けて来たのに、不審がられるくらいなら、騎士団にでも入るか?」

「其れ(それ)でも、良いんだけれど、スキルマスターの塔を探さないといけないの。私の塔を抜くと11本あるの」

 

商会の事務員さんは、あわあわしているが、お構い無くシャイニングセイバーと話を続ける。

 

「スキルマスターの塔か。........あっ!」

「どうしたの、シャイニングセイバー」

「銀月(ぎんげつ)の騎馬(きば)のギルドマスターの京太郎さん塔が確か、此の(この)街にあったはず」

「其の(その)塔って、どんなの♪」

「どんなのだったかな?う~ん........あっ、確か、闘牛士と闘牛が闘う円形の闘技場だったかな!」

「ん?円形の闘技場って、テレビで見たことのあるローマの円形闘技場(コロッセウム)かな?」

「其れ(それ)に、似ている」

「ありがとう、シャイニングセイバー♪なので、私じゃあダメみたいなので、帰りますね」

 

と、私とシャイニングセイバー(旦那)が、席を立ち、応接室を出ようとすると。

 

「お......お待ち下さい。ケーナ様。シャイニングセイバー様。お願いします。会長をお呼び致しますので、少々お待ち下さい」

 

暫く(しばらく)して、商会長がやってきて、「何卒(なにとぞ)宜しく(よろしく)お願い致します」と、私たち2人に深々と頭を下げたのだ。

依頼者側のあまりに切羽詰まった表情に、ケーナとシャイニングセイバーも「大丈夫かな?」と心配になってしまう。

 

「じゃあ、俺はもういいな。巡回が残っているので」

「ありがとう。シャイニングセイバー♪」

「有り難う御座います!」

 

もう1度、商会長は深々とシャイニングセイバーに頭を下げた。

 

「ケーナ様。騎士団団長のお嫁さん(およめさん)だったのですね♪」

「ええ」

「では、依頼内容を」

 

其の(その)染料の材料となる魔物が現れるのは、王都より上流の川原であるという。

商会長自ら道案内を買って出てくれた。

一般人は街壁(がいへき)に囲まれた地を出ることさえ危険だと言われる世界であるが、其れ(それ)より危険な存在に護衛されているとは誰も思わないだろう。

風で起きる葉擦れ(はこすれ)の音や川で魚か跳ねる音にびくつきながら商会長が案内してくれた先に、其れ(それ)はいた。

一見すると、湿地を好み虫を捕らえて溶かしてから養分にするというモウセンゴケによく似ていた。

全高5メートルのモウセンゴケなどは地球にないだろうが。

粘着質の液体で虫を捕らえる器官は、怪獣王と植物を融合させた異形(いぎょう)の触手のような口になっている。

其れ(それ)が長い茎(くき)をくねらせて近くを通るものを何でも捕獲しているようだ。

現にケーナたちが見ている前で、近くを悠然(ゆうぜん)と通り掛かった(とおりがかった)ライガヤンマがあっさりと捕まった。

複数の茎から伸びる口でバラバラにして噛み砕いていく。

たしかに此れ(これ)は魔物というべきものだろう。

 

「......で、普段は何の(どの)ように採取しているんですか?」

「ああ、はい。そうですね。冒険者の方々(かたがた)はいつも葉を1枚か2枚納品してくれてましたね」

 

どうやらいつもの冒険者たちは、口の注意を何かで逸らして葉っぱだけを切り落としていたようだ。

ケーナは周囲を見渡してみたが、周辺に同じ魔物の存在は確認できなかった。

 

「そうなんですか。其れ(それ)じゃあ、此の(この)魔物って此処(ここ)にいる1匹だけですか?」

「いえ、こういった川岸にはよく生息してるはずです」

「分かりました。でしたら根こそぎでも大丈夫なようですね」

「......はい?」

 

ケーナは間抜けな顔で絶句する商会長を下がらせて、川原の小石を1つ拾う。

手の中で握り込み小石に魔力を集中して魔法を発動させた。

 

【魔法技能(マジックスキル):load:石人形作成(クリエイト・ロックゴーレム)Lv.1】

 

放り投げられた(ほうりなげられた)小石が空中で停止すると、周辺の川原の石が盛り上がり小石を飲み込んで小山のような形へと変わる。

石の集合体がウネウネと躍動(やくどう)を始め、徐々に形を人の姿へ似せていく。

腕が突き出て、下半身が2本の足に分かれてちょこっと盛り上がる程度の頭が形成された。

頭部に2つの目と思われるくぼみがあるが、片方から赤い光を輝かせて此の(この)世に仮初め(かりそめ)の生を受けたロックゴーレムは産声を上げる。

 

「モ〝っ!!」

「しゃべったぁっ!?」

 

商会長がロックゴーレムを見上げて驚いていた。

どうやら普通のロックゴーレムは一言も喋らないらしい。

此の(この)辺りはリアデイルのゲームで見慣れたケーナにとって、新鮮な反応だ。

仁王立ちしてカッコイイポーズで叫ぶゴーレムというのも異様だろう。たぶん。

作成レベルは最低限としたが、其れ(それ)でも100レベル超え(ごえ)となった。

身長はモウセンゴケモドキの半分ほどしかないとはいえ、明らかに性能がオーバーキルだ。

其れ(それ)がノッシノッシと歩いて行き(あるいてゆき)、噛み付いてきたり巻き付いてきたりする触手をものともせず、がっぷりと茎の根元に組み付く。

ギュピーンと目が赤く凶悪な輝きを迸らせれば(ほとばしらせれば)、モウセンゴケモドキは川原からずるりと引き抜かれた。

 

「こんなんでよろしい、です、.......か?」

 

ケーナが自信満々に報告しようと振り返ると、商会長は目を見開いて固まっていた。

人間は自分の想定を超える事態に直面するとフリーズしてしまうものらしい。

ぺしぺしと頬を叩いて正気に戻らせ、「此の(この)ような形でいいですか?」と再度聞けば、強張った(こわばった)表情でコクコクと頷く(うなずく)商会長である。

ケーナは其の(その)ままロックゴーレムに担がせて運んでいくことにした。

だが2メートルを超える石の異形が草の化け物を担いでいれば、門を通れずに怪しい人物と認識され兵士に囲まれてしまうだろう。

其の(その)ことを商会長に指摘されたケーナは、ロックゴーレムを解除して石に戻す。

モウセンゴケモドキをアイテムボックスに入れようとも考えたが、こういったものは、あまり見せるべきではないと考えて魔法で縮小した。

そして何食わぬ顔で門を通過し、専用の工場まで運んでから縮小を解除する。

商会長から材料の魔物採って来たと聞かされた従業員たちは、此れ(これ)で仕事が再開できると喜んだ。

ケーナが袋から出したたんぽぽみたいな材料を見て「これっぽっちか」と落胆していたが、其れ(それ)が次の瞬間草のヒドラみたいな大きさになれば、我先に逃げ出したり卒倒しとりという有り様である。

 

「此れ(これ)で仕事も再開できるだろう。ありがとう!ケーナ様。シャイニングセイバー様」

「いえいえ、自分はお仕事をやり遂げただけですから」

「俺は、ケーナが無茶をしないか、見ていただけだからな!いつも通りで安心した」

「は.......ははは」

 

商会長の乾いた笑いの後、生き生きとした職人顔にお礼を言われて依頼書にサインを貰ったケーナは、物陰から此方(こちら)をオドオドと窺う(うかがう)従業員たちに手を振って最初の仕事を終えてのである。

其の(その)帰り道。

 

「じゃあ、俺は、街の巡回があるから、ケーナも気を付けて♪」

「シャイニングセイバーも、巡回頑張ってね♪」

 

 

 

次にギルドの前で待ち伏せていたアガイドに直接依頼された珍注文。

 

「実はワシは此の(この)国の宰相での」

「へー、ふーん」

「ものすっごい興味ないくらいに流しおったの......」

「そんな体育会系の宰相が何処(どこ)の世界にいますか。隠居した水戸の爺(じじい)じゃあるまいしー」

「タイイクカイケイ?ミトノジジイ?お主(おぬし)、時々妙な言葉を使うのう」

「其れ(それ)でご注文は?」

 

なんでも再開発地域をなんとかしたいが、予算がないとかでどうにもできず困っているそう。

放っておくとデンちゃんみたいなのが溜まったりして、治安にも影響するというので、「なんとかならないか?」と相談された。

 

「聞いたぞ。お主(おぬし)、騎士団団長シャイニングセイバーの妻で王立学院の学院長とスカルゴ大司祭の母親だそうじゃな。オマケに学院で古代の御技(みわざ)を使ったと聞く。他(ほか)にも色々と報告が来ておるぞ」

「特には突っ込まないけれど、政治材料にするってんなら全力で抵抗させてもらうわよ」

「其れ(それ)については大司祭から猛反発を喰らっとる最中(さいちゅう)でのう。よく出来た息子じゃのう」

「彼の(あの)子にはまだ会ってないからなあ........」

 

兎にも(とにも)角にも(かくにも)依頼を受けてどうしようかと考えた。

最初は更地にしてハイエルフ固有のスキルで森林化させてしまおうかと思った。

しかし発動準備状態にしたところで、範囲が再開発区域を遥かに超えた広範囲だったので取りやめた。

最終的に記憶の奥底から掘り起こした。入院している時にテレビで見た「村おこしで城を建てた」というニュースを参考にすることに。

廃屋(はいおく)を全部分解して出来た材木を材料に【技術技能(クラフトスキル):建築:城】を実行する。

ほぼ一瞬に近い時間で、更地になった再開発区域に高さ8メートル程度の日本式の城が建った。

遊び場を失った子供たちにはちょっと悪いことをしたとは思っているが、区画整理で古いものが淘汰(とうた)されるのは世の常だ。

仕方がない(しかたがない)と諦めてもらうしかない。

其れ(それ)に此処(ここ)がなくなれば、兵士の皆さんがデンちゃんを捕獲するのも落札になるだろうという考えもあった。

実のところ、城は2度作るハメになった。

1度目の際に『観光名所みたいにするのなら内部空洞でもいいよね』と、気軽な思いで考えなしに支柱を取っ払ったら倒壊してしまったのだ。

其の(その)時にまともな廃材を尽く(ことごとく)ダメにしてしまうミスを起こしている。

現在立っているのは材料の関係上、初期に作成した時より1回り小さくなってしまっていた。

翌日、見回りの兵士が城を発見し、王都がひっくり返る程の大騒ぎになった。

騎士や文官が派遣された調査の結果、危険性はないと判断されたようである。

其の(その)頃には野次馬や屋台が集まり、謎建物まんじゅうやら謎建物焼きやら、謎建物ミニチュアやらで何処(どこ)のエセ観光名所かという騒動に発展していた。

其の(その)後も連日大賑わいとなっているのは全くの余談である。

当の依頼人は愉快痛快(ゆかいつうかい)と大喜びで、ケーナに報酬として20銀貨を支払った。

 

其の(その)他(ほか)にも屋根の修理で垂直の壁に立ち、見物人が集まって道路が通れなくなる騒ぎを起こして兵士に怒られたり。

船が転覆して川底にバラ撒かれた荷物を回収してくれという指名依頼が来たりした。

どうやら水面に立っていたところを見ていた人かららしい。

解決方法といては転覆現場の水面に立ち、水精霊を水中に召喚して水底(みずぞこ)にある荷物を片っ端から水面に上げてもらった。

だが召喚主であるケーナも其の(その)荷物という定義が曖昧であったため、水底(みずぞこ)に沈んでいたものを全て陸(おか)に上げる結果となった。

其れ(それ)も何時(いつ)沈んだのか分からないものまでもだ。

最近、沈んだものであれば箱の状態からなんとか判明するが、中には外側も内部も腐ってなんだか分からなくなっていたもの、元は頑丈な鉄の箱であったと思われる錆びてボロボロになった残骸(ざんがい)、中には鎖でがんじがらめにされた石を抱いた白骨死体まであった。

当然兵士やら騎士やらが呼ばれ、事情聴取と称して連れて行かれそうになったが、呼ばれた騎士の中に夫である騎士団団長がいたが、アガイドから貰ったボタンを見せた。

 

「お前たち。俺の妻に何をしているんだ!後、アガイドと知り合いなのか、ケーナ?」

「だ.......団長」

「アガイドさんから、此の(この)街で依頼を受けた時に、仲良くなったの」

「お前たちの仕事は、此の(この)引き上げられた白骨死体の調査であろう」

「し.....失礼しました。団長のお嫁さんとは知らず、申し訳ございません。調査に向かいます」

「すまない、ケーナ。俺も団長として、調査に行かないといけないから、落ち着いたら」

 

と、シャイニングセイバーと別れ、水底(みずぞこ)の引き上げ作業は終わった。

数日もすれば厳つい冒険者たちにも『実力は計り知れないが、世間知らずで抜けている嬢ちゃん』などと認識された。

時々助言を貰ったり、雑談に交ぜてもらったりと積極的に交流を図っている。

勿論、嫌みややっかみを奴は何処(どこ)にでもいるが、其の(その)辺りは努めて気にしない方向でいた。

時折興味深い情報が交じっていたり、美味しい屋台の場所を聞けたりするので、暇な時は大抵ギルドに足を運ぶようにしている。(ま、シャイニングセイバー(旦那)がいるから、情報はあるけど)

 

そんなある日のこと。

 

「彼れ(あれ)?」

「おう、どうした嬢ちゃん?」

 

依頼板を見ていて首を傾げると顔馴染みの冒険者たちに声を掛けられた。

そうして下の方(ほう)に貼ってあった依頼書を指差して聞いてみる。

 

「此れ(これ)って此の(この)前、誰か受けてませんでした?」

 

ケーナが指した(さした)紙を、声を掛けた大柄な男性が仲間を呼んでから揃って覗き込む。

他(ほか)にも暇そうな冒険者たちに声を掛けたりして情報が飛び交う。

此の(この)空気がケーナは好きになっていた。

普段はバラバラだが、聞けば阿吽(あうん)の呼吸で会話の弾むギルドの空気は心地よいものである。

 

「ああ、此れ(これ)か。結局、失敗して違約金を払ったって話だぜ」

「見掛けねえ4人組だったんで、外から来た奴らだと思ったがな」

「金額だけで選ぶから痛い目を見たんだろうさ」

 

依頼書には『幽霊をなんとかして下さい・闘技場運営委員会・銀貨8枚』とある。

 

「うーん」

 

なんとなく面白そうだと判断したケーナは其れ(それ)を手にとった。

 

「おー、嬢ちゃん受ける気か」

「ほう、幽霊に会ったらよろしく言っといてくれ」

「ま、気を付けていけ」

「うん、ありがとう」

 

依頼書を持って、「アルマナさーん!」と受付に声を掛けるのを、厳つい男たちは微笑ましく見送った。

 

 

翌日ケーナは闘技場を訪れた。

此れ(これ)が街の中にはなく、何処(どこ)に立っているのかというと丘の上に立つ王城の更に其の(その)向こう側にあった。

1度大河を渡り(川から直接街の内外(ないがい)に出入りするのは禁止されているため)、貴族街の東の外壁門(がいへきもん)にいた衛兵に依頼書を見せて外へ。

其処(そこ)から丘を迂回してテクテク歩くこと20分程度で闘技場に到着した。

ギルドで聞いた話によると、1年に1度、闘技祭とかいう勝ち抜き戦が開かれる所だそうだ。

大陸中(たいりくぢゅう)から猛者(もさ)が集まるため、其の(その)時期だけ警備の依頼が増えたりするらしい。

他(ほか)にも騎士団の模擬戦に使われたり、学院の試験場所になったり、サーカスが来たりすると聞いている。

ゲームで彼ら(あれ)ば闘技祭と聞いてケーナも心踊らせた(こころおどらせた)だろうが、現実となった今では人同士で戦うのはあまり見たいとは思わない。

入り口の衛兵に依頼書を見せると、実に頼りなさそうな顔をされた。

まあ4人組やら5人組が失敗した依頼に、小娘が1人で来れば誰もが同じ反応をするだろえ。

中にいた責任者だという、細面(ほそおもて)のマクスという青年も似たような反応だったが、藁(わら)をも掴む気持ちだったのだろう。

「なんとかして下さい。よろしくお願い致します」と真摯(しんし)に頭を下げられた。

問題の幽霊だが、10日(とうか)くらい前から通路や舞台に不意に現れたりするらしい。

無言で後をずっとついて来たりして、気味が悪いと感じた関係者が辞めたり、無断欠勤したりと仕事に支障が出ているのだとか。

出て来る幽霊も呼ばれた老人のような姿だったり、子供のような姿だったりと統一感が全くないらしい。

ただ何の(どの)姿も薄ぼんやりといていて、其れ(それ)が皆(みな)の恐怖を誘うのだという。

そんな情報を1通り(ひととおり)貰ったケーナは、2~3日泊まり込む許可を貰って幽霊に備えることにした。

先ずは構造を把握するのに闘技場内をぐるぐると歩いてみる。

見た目はテレビで見たことのあるローマの円形闘技場(コロッセウム)に酷似している。

彼れ(あれ)を完全に白い大理石で修復した感じの建造物だ。

話によると王都が出来る前から此処(ここ)にあるそうで、誰が建てたのか一切不明だという。

 

『ヨクソレダケノ怪(あや)シイ施設(しせつ)ヲソノママ使(つか)オウトシマスネ?』

「なんか其れ(それ)だけで嫌な予感がするなー」

 

キーの疑問に同意するケーナ。

今回は対アンテッド(?)ということで、いつもの装備に赤い宝玉(火炎(かえん)の玉)が柄(つか)にハメ込まれた長剣を腰に携えている。

火炎の玉には炎凰(えんおう)が宿って(やどって)いる。

場合によっては剣から炎の鳥が現れ、敵と戦うことが可能だ。

後は索敵関連の【能動技能(アクティブスキル)】を全部立ち上げてゆっくりと通路を進む。

闘技場を運営管理する人たちは怖がって此処(ここ)には入らないらしいので、中にいるのはケーナだけだ。

今回はこんな広い施設を1人で監視するのは無理なので、【召喚魔法(サモンマジック)】で手下を次々と呼んで各所に配置していく。

召喚されたモノとケーナは意識の奥底で繋がっているので、弱くても監視カメラの役割を果たしてくれればいい。

切り替えれば脳裏に9分割(きゅうぶんかつ)された画面が表示される感覚だ。

無論常時監視している必要はない。

侵入者なのか職員なのか幽霊なのかは召喚したモノたちが判断してくれるからだ。

昼になる前にあらかた回り終えたケーナはアイテムボックスから食材を取り出し、闘技場の中央で火をおこして調理をし始めた。

燃やすのは例の城を作った時に使用に耐えられなかった廃材だ。

食材は市場で買い求めたコルトバードとか、人参と大根わ足して割ったような根菜とかである。

なんでこんな所で焼いているかというと餌(えさ)のためで、稚拙(ちせつ)な隠遁(いんとん)後を付けてきた者がいたからに他(ほか)ならない(見つけたのはキーだけど)。

幾つかの罠も仕掛けたし、ほっとけば捕まるだろうと考えていた。

そもそもケーナの場合料理をするのに火をおこす必要はない。

【料理技能(クッキングスキル)】を使えば良いだけである。

程なくして「きゃあああああっ!」という悲鳴が遠くから轟く(とどろく)。

闘技場の選手夕方入場口から馬くらいの大きさの三頭犬(ケルベロス)が、背(せ)に侵入者を乗せて尻尾をパタパタ振りながらやって来た。

ちなみに中央頭にしがみついている侵入者は、みすぼらし服を着て変装をしたデンちゃんだった。

 

「ちょっと、貴女(あなた)。此の(この)犬はなんですの?」

「ただの召喚魔法(サモンマジック)だけど?」

「召喚魔法って、術者の魔力によって、下級の魔物から上級、そして、神級。神クラスの魔物ですわよね?」

「そうだよ♪よく勉強をしているじゃない」

「もしかして、貴女(あなた)........神?」

「いや、私は、神ではなく、ハイエルフだよ」

 

ケルベロス(わんこーズ)の背から下ろされたデンちゃんは、目をキラキラさせて、私を見つめていた。

其の(その)、デンちゃんから「ぐうぅ~~」とお腹が鳴り、顔を赤らめていた。

今焼けたばかりの鳥の足を1本差し出すと、「フォークとナイフは?」と首を傾げ、どうしたものかと私の顔を見てくるので、私が見本を見せる。

すると、デンちゃんは「まぁ?」と言った顔をしながらも、私の真似をしてかぶりつく。

食べ終われば尋問タイムだ。何で此処(ここ)にいるのかと聞いたら「お姉さまをお見かけしたから」と答えが返ってきた。

流石に此処(ここ)の衛兵さんに持ち場を離れさせるわけにもいかない。

本来なら即通報モノなのだが、闘技場を管理する関係者は幽霊を恐れて入ってこないであろう。

仕方がなく仕事が終わるまでは預かることにした。

わんこーズにデンちゃんを守れと命令しようとしたら、本人がとうしてもついてくると言う。

幽霊は人に直接的な危害を加えないようだが、其れ(それ)も憶測でしかなく。

どんな危険が待っているのか皆目見当がつかない。

デンちゃんには安全なところにいてもらいたいが、1番安全なところと言えばケーナの周辺である。

面倒臭い(めんどうくさい)けれど死地に追いやりたいわけでもないので、ケーナはデンちゃんを連れていくことにした。

恐れを知らない度胸には好感が持てるけれど、其れ(それ)が無謀から出たのか勇気から出たのかは不明であるが、自分が女性であることをわかっているのだろうか?

ただでさえ今現在のコロッセウムの内部には彼女が召喚した色々な召喚獣が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)している。

ケーナの意志に反した行動はしないが、其れ(それ)でも各個(かっこ)が独自の意志を持っているのも確かだ。

何奴(どいつ)も此奴(こいつ)も戦闘力のない一般人程度をぷちっと潰すのに手間も要らない召喚獣ばかりである。

 

「其れ(それ)にしても何ですの此の(この)魔獣は......」

 

デンちゃんを優先するように命令を受け、2人の後ろを『へっへっへっ』と三重奏で追従して来るわんこーズ。

黒い体躯(たいく)に赤く爛々(らんらん)と輝く三対(さんつい)の瞳。

生温かいを通り越して時折熱い息。

後ろを振り向く度に、鋭い牙がゾロリと並んでいるのが見えるので、ビクビクしているデンちゃんに苦笑する。

1系統(いちけいとう)という分類からすると、召喚魔法(サモンマジック)がおそらくはリアデイルの魔法の中で1番種類が豊富であろう。

【召喚魔法(サモンマジック):獣】をひとつ覚えれば、単独で打ち勝った獣系のモンスターを片っ端から登録できる。

唯一の制限としては、モンスターは1種類につき、最初に倒した個体しか呼び出せない所だろう。

ケルベロスは魔界エリアで捕獲した時点で480レベルであった。

此れ(これ)に関しては1通り(ひととおり)試してあるが、ゲーム中では『攻撃しろor戻れ』しか命令できなかったのが、かなり細かい命令まで聞くようになっているので、実に便利だと実感している。

他(ほか)にも【召喚魔法(サモンマジック):竜】があるが、此れ(これ)はスキルを取得した時に出現する竜を、国と同じ色の7種類。

1~9の強度レベルから選んで喚べる。

コレクター魂(だましい)を持つ者はわざわざスキルマスターの所に通い詰め、全9種類を呼び出せるようにした人がいるらしい。

趣味人には呆れるばかりである。

竜や精霊等は召喚する時の強度レベル×術者レベル×10パーセントが召喚された対象のレベルとなる。

ケーナの場合は最低が110レベル、最大が990レベルだ。

 

 

 

一方、デンちゃんならぬ此の(この)国の第2王女は.......。

此の(この)王都に来て日が浅いのになにかと宰相や大司祭の口に上る(のぼる)ケーナという冒険者を、品定め(しなさだめ)をしているかのような、目を向けてくる。

兵士を撒く(まく)ことに関しては他(ほか)追随を許さない。

と、思っていたら水面を歩くという非常識な手段であっさりと捕まった。

其の(その)悔しさといったら、夢で其の(その)場面が延々リピートされるくらいである。

せめて自分だけでも化けの皮を剥がしてやろうと思い、彼女の跡をつけたり、素性を調べたりしてみたのだが、調べれば調べるほど分からない。

先ずハイエルフであるところ。

エルフの中でも至高の王族(ひきこもり)とか言われている純粋な一族が、なんで此のような(このような)所で冒険者などをやっているのかが意味不明だ。

噂ではハイエルフは強力な単発魔法を放つだけの後衛と言われているが、デンちゃんの見た其れ(それ)は水面を歩いたり壁を歩いたりと技巧派である。

次に彼のような(あのような)女性でも旦那いて、3人の子持ちらしい。

騎士団団長(きしだんだんちょう)が旦那で、大司祭と学院の学院長、港湾工房の名工ドワーフが彼女と旦那の子供だとか(どういう家族ですのよ)。

其れ(それ)だけ聞くと国の重要ポストの半分が身内の手に落ちていることになる。

更に冒険者ギルドで聞き込みをした結果、見た目に拘わらず(かかわらず)手練れ(てだれ)の戦士らしい。

剣で秘密兵器をぶっ飛ばされた身としては、其処(そこ)は納得した。

あとは自分の王族とかを差し置いた友人であるロンティが、異様に尊敬しているところが羨ましく(うらやましく)。

そんな私的な理由で街中で見かけた彼女の跡をつけて来た。

しかし闘技場に忍び込んでお腹が空いたと思ったら、いい香りに釣られたのは確かである。

まさかふらふらと誘い出された先に、巨大な3つ首犬が息を潜めているとは誰も思わないだろう。

方向転換して逃げ出そうと振り向けば、背後に佇んでいた(たたずんでいた)のが馬車程の巨大なザリガニだ。

そして彼女とご対面することになったのだ。

文句のひとつも言ってやろうと思っていたが、鶏肉ひとつに満足してしまい、其の(その)機会を逃した。

自分のちょろいところが1番悔しいと感じているデンちゃんだった。

ゴァウゥ。

わうぅ。

背後で何か恐ろしい重圧感と共に、3つ首犬と何かが言葉を交わす気配が伝わってくる。

黒い体躯(たいく)をした3つ首犬の向こう側にソレはいた。

更に巨大な、天井まで届くかという燃えるような赤い鱗(うろこ)の巨驅(きょく)。

今回は対アンデッドの対策用に火系モンスターを何匹(なんびき)か呼び出してあった。

一応ケーナがゲーム中で遭遇したことのある最大レベルのアンデッド、デュラハンが800レベルオーバーだったので、予備兵力にドラゴンを770レベル(最大990で呼び出そうとしたら他(ほか)の召喚獣との兼ね合いから無理とキーに進言された)で出現させたのがまずかったらしい。

様子を見る限りは【威圧】(敵の回避を大幅に下げる)か【気圧】(戦闘意欲を削ぐ)、【魔眼(まげん)】(気絶効果)にやられたのだろう。

流石(さすが)に顔面蒼白(がんめんそうはく)でうなされているデンちゃんを放っておく(ほうっておく)こともできない。

【技術技能(クラフトスキル)】で以前に手に入れた木を板に加工し、車輪を付けるとわんこーズに引っ張らせて野営場所まで送らせる。

結局、うろうろしているうちに夜になってしまったので、闘技場の中央で夜を明かすことにした。

其れ(それ)は其れとして此の(この)デンちゃんは此処(ここ)にいていいのだろうか?と疑問はつきない。

今まさに誘拐にあったとかで王宮が大騒ぎになっていなきゃいいなと思うケーナだった。

此処(ここ)にいるのが見付かれば、確実にケーナが誘拐犯の疑いを掛けられることだろう。

が、旦那が騎士団団長をしているので、誤解は解けるだろう。

 

「しかし、アンデッドの仕業とも思えないんだけれど.......」

 

一応最大レベルの【召喚魔法(サモンマジック):屍せる(アンデッド)人形(クリエイト)】も唱えてみたが反応がなかったため、相手がアンデッドではないと確信されただけだった。

此の(この)魔法はリアデイルのゲーム内でも、禁忌(きんき)に指定されているわけではないが極端に毛嫌いされている魔法だ。

街以外のフィールドには何処(どこ)も隠しパラメーターとして、不浄度というものが設定されている。

此の(この)数値の高低が夜間のアンデッドの発生率を示す。

此の数値が5パーセントでもあれば、アンデッドを召喚することは可能だ。

しかし、ココにはソレがない。つまりは此の(この)闘技場には不浄なるものは存在しないことになる。

召喚したモノたちの継続存在時間は最大6時間。

何があるか分からないので三頭犬(ケルベロス)だけは再度召喚し、残りは時間が過ぎたので自然に消えてしまっている。

【捜索】から【探索】なども虱潰し(しらみつぶし)に行使してみたが何も見つからない。隠し扉の1つもなし。

いかなスキルマスターと言えど此処(ここ)まで切り込む痕跡がないと、何処(どこ)からどうすればいいのか完全にお手上げ状態だ。いっそのこと穴でも掘って地下空洞でも探してみるかと道具を探しにアイテムボックスを開くと、普段は使わないから仕舞って(しまって)ある守護者の指輪が点滅していた。

慌てて引っ張り出してみると仄か(ほのか)に蒼く(あおく)瞬いて(またたいて)いる。

 

「.......って、まさか、此処(ここ)がそうなの!?」

 

思い当たったら即行動。

三頭犬(ケルベロス)にデンちゃんを頼むと、指輪を掲げて(かかげて)キーワードを唱える。

 

【乱世(らんせ)を守護する者よ!堕落(だらく)した世界を混沌(こんとん)より救済せしめ給え(たまえ)!】

 

瞬間、足元から噴水の如く(ごとく)、十字に光り輝く無数の星が現れてケーナを取り囲み、霧散(むさん)して彼女もろとも瞬き(またたき)消えた。

強い光のお陰か気絶していたお姫様が目を覚ました時には、其処(そこ)は焚き火とケルベロスが大人しく鎮座(ちんざ)しているだけだった。

 

強い光に囲まれたケーナの視界に光が戻ると、周囲の風景は一変していた。

其処(そこ)は直径50メートルの完全な半円ドーム。

足元には緑のラインでグリッドのように区切られた無機質な床。

頭上は青い空に雲を備えた(そなえた)映像。

其の(その)中空をデフォルメされたヌイグルミのような太陽がふよふよと移動している。

しいて言うならば、昔の天動説のミニチュアセットのようだ。

部屋の中央には腰までしかない大理石の柱みたいな、ホームセンターで売っている白い彫刻状の植木鉢。

敷き詰められた土には半分ほど枯れ掛けて、茶色い葉を晒す(さらす)小さな椛(もみじ)が辛うじて(かろうじて)命を繋いでいるようだ。

此れ(これ)が守護者の中核かとアタリをつけたケーナは、自身の半分ほどのMP(マジックポイント)を其れ(それ)に注ぎ込む。

みるみるうちに枯れた葉が瑞々しさを取り戻すと、中核を挟んだ対面に煙が噴出して凝り固まる(こりかたまる)と白い人型(ひとがた)が姿を現した。

右手を腹に添えて腰を折った白い人型は、煙を固定できない感じの姿をゆらゆらと淀ませ(よどませ)ながら言葉を紡ぐ。

 

『ようこそいらっしゃいマした。此処(ここ)はスキルマスターNo(ナンバー).9(ナイン)、京太郎様の管理すル守護者の塔です。お客様のお名前を伺ってモ宜しいデしょうか?』

「スキルマスターNo(ナンバー).3(スリー)、ケーナよ。貴方のマスターはどうしたの?」

『此れ(これ)はケーナ様、失礼致しマした。我が主(あるじ)は不在デございまス。いいえ、2度と此の(この)地に戻ることはないでしョう』

「なんですってっ!?どういうことなの其れ(それ)は!」

 

スキルマスターNo(ナンバー).9(ナイン)、京太郎はケーナと同様の限界突破者で竜人族(ドラゴイド)であった。

ケーナの所属していたギルドとは別で、自ら立ち上げたギルド、名は確か、銀月(ぎんげつ)の騎馬(きば)のマスターを務めていた男だ。

旦那が其処(そこ)のサブリーダーをしていた。

主(おも)に近接戦闘の完全前衛型でケーナの戦闘スタイルとはほぼ対極に位置する。

其の(その)彼は塔が活動を止めるに至ったある日「最後だから」と此処(ここ)にやって来たらしい。

そして「もうすぐ僕たちの夢も終わりが来る。今までありがとう、楽しかった。最後にスキルマスターが12人でしか集まれなかったのは寂しいことかもしれないけど、また別の舞台で出会えるかもしれない」

とだけ言って此処(ここ)を去ったそうだ。

其の(その)後は塔ごとスリープモードにあったが、斉木近くで守護者の塔の指輪の反応(ケーナのことである)があったのでメッセージだけでも伝えようと思ったらしい。

しかしMPが枯渇状態だったので、上の施設である闘技場で幽霊騒ぎを起こすのがやっとだったとか。

ケーナの方(ほう)は京太郎の最後の言葉に大体の事情を察した。

『スキルマスターが12人でしか集まれなかった』=各務(かがみ) 桂菜(けいな)の死後。

『僕たちの夢も終わりが来る』=リアデイルの終了。

 

つまり、今いる此の(この)世界は、〝リアデイルの未来〟じゃなくて〝プレイヤーの撤退したリアデイルの未来〟であって、何処(どこ)をどう探してもケーナのような長命種のプレイヤーは見つからないわけである。

が、シャイニングセイバー(旦那)には会えたから、他(ほか)の人にも会えるでしょ♪

其の(その)目の前に白い手に乗せられた守護者の指輪が差し出された。

ケーナのとは色が違う空の蒼さを持つ。

深く深く何時(いつ)までも飽きずに見ていたくなる空の蒼さ。

 

『ケーナ様、私のマスターはもういませんガ。貴女を我が守護者の塔ノマスターと認識しマス。此れ(これ)を』

 

唖然と其れ(それ)を見るケーナの手を取って、指輪を握らせる。

そして1歩下がって膝を折り、頭を下げた。

 

『マイマスター。どうぞ御命令(ごめいれい)を』

「んー、此れ(これ)と言ってお願いすることはないなあ。とりあえず上の闘技場を誰かが使っていても使わせてあげてね?」

『はイ、了解しマした。此の(この)辺りにはソレ程人が住んでいなかったように思えルのですが?』

「あー、アレから200年程経っていてねー。此の(この)直ぐ向こう側に新国の王城が出来ているのよ」

『成る程、分かりマした。とこロで、上の闘技場で子供がひとり騒いでイルようですが?』

「そう言えば置きっぱなしだったのを忘れていた。気が付いたのか........」

 

あまりのショックにすっかり意識外に追いやられていた、いや存在ごと忘れていた。

色々と生意気で小憎たらしい(こにくたらしい)が、子供のうちから言いたいことも言えないような、押さえつけるみたいな教育をする気はないし。

なんにせよ他人の子供だ。教育に関しては其れ(それ)相応の教育係(きょういくがかり)がいるのだろう。

此方(こちら)の依頼は大体終了したし、後で衛兵にでも突き出そうと意識を切り替える。とりあえず話をしているうちにある程度回復したMPの残りを核に注ぎ込むと、お暇(おいとま)することにした。

 

「そろそろ戻るわ。また今度にでも補給には来るから」

『分かりマシた、御送り致しましょウ。お気をつけて』

視界が瞬時に切り替わる。

ケーナの出現場所は闘技場のフチの部分、観客席の1番高い場所のようである。闘技場の舞台となる所を見下ろすと、思わず首を傾げてしまう程の妙な光景が広がっていた。

先ずはデンちゃん、此れ(これ)はまだいい。

わんこーズの背後で焦った表情でおろおろしている。

次に三頭犬(ケルベロス)。デンちゃんを背後に庇い、3つ首の牙を剥き出しにして唸る唸る唸る。

そして三重奏で吠える。命令を見事に遵守(じゅんしゅ)する忠犬っぷり。

最後に抜剣(ばっけん)した白い鎧姿の騎士が3人。

わんこーズを取り囲み、其の(その)卓越した剣捌き(けんさばき)を障害に対して繰り出しているが、悲しいかな掠り傷1つ付けられないでいる。

 

「なによ此れ(これ)?」

 

ケーナは観客席を下って(くだって)から其の(その)下の舞台へと軽やかに飛び下りる。

土を踏む音に気付いたデンちゃんが大慌てで駆け寄ってきた。

 

「お姉さま!彼れ(あれ)をなんとかしてくださいっ!」

「いやいや、一体全体何がどうしてこうなったのか?」

「私(わたくし)を迎えに父上の騎士が来たんですの。でもお姉さまのペットが其れ(それ)を邪魔しましたの。そして、彼の(あの)方(かた)たちが私(わたくし)に近づけないのですわ」

 

なるほど。此の(この)世界にも隠密とか其れ(それ)に似たような者はいるらしい。

アガイドが堂々と「ケーナ殿(どの)にも1人付けさせてもらっているぞ。騎士団団長(きしだんだんちょう)の嫁さんみたいだからな♪」とか申告してきたので、其れ(それ)から此処(ここ)に至ったのだろう。

でもケーナが『デンちゃんを守れ』と命令したために連れて行くことはできなかったと。

 

「三頭犬(ケルベロス)!もういいわ、止めなさい(やめなさい)!」

 

其れ(それ)を聞くや否や、わんこーズは戦闘態勢を解除してケーナな走り寄ってきた。

体を摺り(すり)寄せてくるので、首元を軽く撫でて(なでて)やる。

毛皮があっても硬いのでもふもふとはいかず、こわごわだが。

其れ(それ)と一緒に抜剣(ばつけん)したままの騎士も警戒するように近付いて来た。

わんこーズと一緒に道を空けるように脇に退いて(のいて)、デンちゃんを前に押し出してやる。

 

「すみません、ウチの子が粗相を致しまして。夜の野外は危険だから其の(その)子を守らせていただけなんですが.......」

「貴公(きこう)か、宰相殿(さいしょうどの)が言っていた冒険者で騎士団団長(きしだんだんちょう)の奥方(おくがた)というのは?」

「其の(その)ような危険な魔物を野放しにするとは何事か!?大事がなかだたから良かったものの!」

「君の行動は目に余る。すまないが騎士団詰め所まで来て頂こう」

「.....分かりました」

 

私は、騎士たちに挟まれて、騎士団詰め所に向かった。

 

 

 

~~~騎士団詰め所~~~

 

私たちが、騎士団詰め所について、10分後、シャイニングセイバー(夫)が駆けつけた。

 

「部下から、騎士団詰め所で保護していると言われたから、慌ててきたら、何があったんだ?」

「私は、冒険者の依頼で闘技場の調査をしに行っていて、後を付けていたデンちゃんが付いてきたので、闘技場の中心に三頭犬(わんこーズ)を見張りに付けて、調査が終わって帰ってきたら、騎士たちが三頭犬(わんこーズ)を取り囲んでいたの」

「事情は分かった。が、俺はケーナの三頭犬(わんこーズ)を知っているが、知らない者からしたら魔物と思って、此の(この)国の第2王女危険に晒した不届き者(ふとどきもの)になってしまうからな」

「ごめんなさい、貴方(あなた)」

「皆(みんな)、すまない。俺のケーナ(嫁)が迷惑をかけた。後は、俺の側(そば)に置いておくので」

 

私は、シャイニングセイバー(夫)と一緒に宿へ戻り、調査で疲れていたので、眠りについた。

 

 

翌朝、冒険者ギルドに報告をしたが、報告だけではなんともと、報酬は完全に幽霊が出ないのを確認してからということだ。

結局、3日後にキチンと冒険者ギルドから銀貨8枚は支払われたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


































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