璃月港。
商業と契約の都。
子供達が走り回り、大人が呼び込みをする、活気に満ちた表通り。
……そこから一本二本入った、人通りの少ない裏路地。
「……ついて……きて……ねぇな?」
「はい兄貴……なんとか巻けたみたいです」
狭い路地を二人の男が息を切らせて蹲っていた。
後ろを振り返りながら立ち上がる彼等は汗まみれで、少しでも追手から距離を離したいのか足を引きずりながらノソノソと歩き始める。
「ねぇ、兄貴……もう真面目に働きましょうよぉ」
「うるせぇなぁ、俺は楽して稼ぎてぇんだよ」
「いや……最近全然儲かってないじゃないですか……今回だって……」
「うるせぇって言ってんだろ!」
会話の内容から察される通り、二人は真面目では無い仕事に失敗しその結果としてこの汚い裏路地を逃げてきたのだろう。
「こないだ千岩軍に捕まったのがケチの着き始めだ!」
怒鳴り続ける兄貴と言われた男は劉、気弱に更生を促しているのは強。二人はこの璃月港で情報屋……正確に言うなら、ゆすりとたかりを生業にしているならず者だ。
「あの雌豚がぁ……」
「……雌豚って……あの別嬪さんの事ですかい? たしか申鶴とか言うんでしたっけ」
「別嬪さんとか言うんじゃねぇ! 雌豚でいいんだよ!」
「また通報されますよ兄貴……それに悪いのはこっちでしょうよ」
「うるせぇ!!」
よほど腹に据えかねているのか、劉は強の言葉をかき消す様に怒鳴り散らす。
しかし強は言葉を止めず、喋り続ける。
「それにあのでかい水の蛇を追っ払ったって噂になってるの、あの人なんでしょ? 命の恩人じゃないですか……そんな人を雌豚って……」
「うるせぇ! いいから黙れ!」
言われている事がただの事実であったとしても、諭す言葉であったとしても、時として事実と優しさこそが最も人の神経を逆撫でするのだ。
後ろを歩く強を振り返り、劉は更に怒鳴り散らす。
「だいたいテメェが使えねぇからっ!? うおっ!」
「あ、兄貴! 危ない!」
そして後ろを振り返りながら歩く劉は曲がり角を曲がって突然現れた女性に反応できなかった。
「うっ! つぅぅ……いってぇなコラ!」
正面からぶつかり、弾き飛ばされたのは意外にも劉の方だ。
体格がいいわけでも無い、むしろ小柄である劉でも一応は男性に属しており、まともに女性とぶつかれば転ぶのは女性の方の筈。
つまり、相手がまともでは無いのだ。
曲がり角から現れた女性はこゆるぎ一つ見せず、劉を見下ろす。
「前見てあるけ! この……」
尻餅をついて見上げた先、冷たい瞳で彼を見下ろす女性を劉は知っていた。
男性である自分を見下ろす高身長。
鷲掴みにして歪ませたい形の整った爆乳。
思いっきり叩いて手形をつけたい大きな尻。
無様に鳴かせたくなる怜悧な美貌。
曲がり角から現れたのは艶やかな銀髪を三つ編みにして背中に流す美人。
仙人の元で修行を収めた達人であり、璃月港を救った英雄。
劉が雌豚と罵っていた申鶴だった。
「……主らは……確か……」
「てめぇは!」
劉は見下ろされるのが我慢ならないのか、すぐさま立ち上がりに申鶴食ってかかる。しかし惨めなことに立ち上がっても見下ろされたままだ。
「テメェあん時はよくも千岩軍を呼んでくれたなぁ!」
「あ、兄貴……やめましょうよ……」
対して、申鶴はジッと劉を見下ろしたまま顎に手を当てて記憶を漁っている様子だった。
一つの物事の重みが当事者間で異なることは良くあることで、劉と申鶴の間にもその重みの差というものが横たわっているのだろう。
「くそがぁぁ……」
彼等と申鶴の出会い。
それは彼女の美貌に目が眩んだ劉が正確でもない情報を無理矢理売りつけその対価として身体を要求しようとした事。
そんな出会いなのだから申鶴が思い出さない方が劉にとって都合が良い。だが自分が関わる事が他人にとって取るに足らない事だと思われている事実が気に入らないのだろう。
この世の全てが気に食わないと言わんばかりに劉が叫ぶ。
「あの後俺たちがどうなったかわかるか!? どれほど酷い目にあったか……」
「いや、詰所に連れてかれて押し売りの注意をされただけじゃ……」
「うるせぇ!! お前は黙ってろ!」
強が言う通り、劉の企てた強姦未遂事件はただの押し売りとして処理された。
様子を見ていた旅人が千岩軍を呼び、幸いにもコトに及ぶ前に二人がしょっ引かれたのだ。
「ふむ……妾のせいで……」
「そうだ! テメェのせいだ!」
この場合幸いで有ったのはどちらだったのか?
勿論、劉と強の方である。
仙人の元で修行していた申鶴は只の人であり特に肉体を鍛えることもしていない男など何人集まった所で物の数ではない。どうにでもなる。
実際、人里に降りたばかりで何も知らなかった申鶴は行手を塞ぐ二人を『どうにか』しようとしていた。
「謝れ! 謝罪しろ! 損害の賠償を要求する!」
そんな事とは露とも知らない劉は唾を撒き散らしながら謝れ謝れと申鶴に叫び続ける。無論、知っていても今度は殺されかけたから謝れと始めただろう。
自分は絶対に悪くない、うまくいかないのは他人のせいだ、そのように確信し罵声を投げつける劉を兄貴と慕っていた強ですら引きつった顔で見ていた。
「…………」
「謝れ! 早く謝れってんだよ!」
路地裏で顔を真っ赤にして理不尽な要求をする劉。
無言で彼を見下ろす申鶴の回答は劉と答えた申鶴以外、この場で唯一の常識を持った人間である強にとって意外な物だった。
「妾のせいか……それはすまなかったな、許して欲しい」
申鶴の答えは謝罪だった。
浅く頭を下げ、すまないと、許してほしいと言ったのだ。
「へ…………い、いや……謝られるようなことでも無……」
「っ! い、いや許してやるわけねぇだろ!」
「兄貴……」
虚をつかれた顔をする強に対して劉がすぐさま許さないと叫ぶ。
自分が謝れと言い続けているのにいざ謝れば許さないと言う。
流石に強も呆れ顔で自分の兄貴を見つめていた。
「では、どうすれば許して貰えるのだ? 妾は璃月港に馴染みたいのだ」
「ふん! 許すなんてありえねぇな!」
「いや、俺たちが悪いんですし、やめましょうよ……」
「うるせぇ! 文句があんならお前はどっかいってろ!」
唾を飛ばし、両手を振り乱し、恩人かも知れぬ者に向かって叫び続ける。
兄と慕っていたとしても、強にとって見切りをつけるには充分な醜態だったのだろう。
「…………分かりました兄貴……申鶴さん、私が言える事でもないですが、私はあなたを許します。後は劉の兄貴とお願いしやす」
「強! テメェ何言ってやがる!」
「劉の兄貴、自分はもう兄貴には付き合いきれませんので、後はご勝手に」
そう言って強は申鶴に深々と頭を下げると、劉に背を向けて表通りの方に駆け出す。
彼はこれからまともな職業につき、更生の道を歩むことになるだろう。
しかし、それはどうでもいい事だ。
これから、このネズミの死体や投げ捨てられたゴミのたまる、据えた臭いが吹き溜まる路地裏で起こる事には、全く関係ない。
劉は舌打ちを一つし、忌々しそうに言う。
「ちっ! あの中途半端野郎が……おい申鶴! 俺は許してねぇからな!」
「わかっている。それで、結局何をすれば許してもらえるんだ?」
申鶴も冷静な顔のまま、何をすれば良いか劉に尋ねた。
「……そうだなぁ」
劉はやっと怒鳴るのをやめ、思案する様に視線を彷徨わせる。
申鶴は強がこの場を離れたことをさして気にしていない。謝罪がひとつ済んだ、その程度の事と考えていた。
しかし、申鶴にとってこそ強の存在は重い。彼は劉を苛立たせ冷静な状態では無くさせていた。
「…………」
爆発する様な怒りが過ぎ去ると、次はジッとりとした湿度の高いモノが湧いて出てくる。
それは劉が申鶴に目をつけた理由。
申鶴を見れば大抵の男が抱く物。
性欲だ。
申鶴はピッタリと肌に張り付く黒のタイツ、それに赤い紐のついた上着を羽織った格好をしている。その上着という物は、厳密には上着ではない。厳密に言えば胸と尻を隠す前掛けの事だ。
つまり胸と尻以外の部分は、殆ど裸と同じ状態なのだ。
劉の視線は、その申鶴の身体を上から下まで舐めるように見つめていく。
片手には収まらない、ツンと突き出た大きく、長い胸。
前掛けの布が正面からの視姦を防いでいるが果たして意味があるのか。申鶴の成長が予想以上だったのだろう。大きな膨らみが布を持ち上げ、先端の突起部分にかかる程度の状態になってしまっていた。
「…………」
次はその下、腹部だ。
黒いタイツは細かい凹凸にすらピッタリと張り付いている。
引き締まった腹筋も、女性の大切なところに繋がる臍の窄まりも、例外ではない。外から見ても形がわかるようになっている。
最後は男の劣情をぶつける先として適切な穴のある部位。
胸の前掛けに比べ、服の製作者も気にしたようだ。股間は厚い生地を使っていてあからさまに性器の形が浮き出ていたりはしていない。
ただ立っているだけならば。
動きやすさを考慮した黒のタイツは申鶴の身体にピッタリと張り付いているのだ。激しい運動、開脚などを繰り返せば自ずと食い込んでしまう事だろう。
胸を見て、腹を見て、股間を見て、劉の視線が止まったのは臍。より正確に言うならばその内側だ。
「ひひ」
どのような復讐を申鶴にしたいかと考えた時、怒りと性欲を同時に解消する方法を思いついたのだ。
璃月港の英雄と噂される申鶴に恥をかかせてやりたい。
この綺麗なメスを汚したい。
この超然とした女が少しづつ璃月港に馴染み、友人ができたとして、その時もし……。
腹を膨らましていたら。
それも、箸にも棒にもかからないならず者の種で胎を満たされていたら。
「俺の子供を産んだら許してやるよ」
劉は股間を膨らませながら欲望に塗れた要求突きつけ──ー
「断る」
当然のように断られた。
「子供は愛する者と作るものだ」
「妾は主の事をなんとも思っていない」
「いや、むしろ嫌いかも知れない」
「低い背丈、気持ちの悪い表情、無闇矢鱈に怒鳴り散らす理性のなさ」
「良いところが見当たらない」
「お前の様な奴との間に子供など出来ようはずがない」
濁流のように浴びせかけられる言葉に劉は押し黙る。
ソレは全て当たり前のことだ。そもそも申鶴の視点では覚えてすらいない男。
そんな男と子供を作るなど常識で考えてあり得ることではない。
俯き沈黙する劉に申鶴は再度告げた。
「それで、他にはないのか?」
「…………」
冷や水を浴びせかけられ、黙ったままであった劉は
「はぁぁぁ〜〜」
盛大にため息をついた。
「他にじゃねぇんだよなぁ、他にじゃよぉ。申鶴、お前は謝る立場なんだぜ? そこわかってんのかよ」
「すまぬ。だが子供だけはダメだ」
「はぁぁぁ……そうだなぁ」
腐っても詐欺や恐喝で生計を立てているのだ、劉も馬鹿ではない。勿論、好き勝手に怒鳴り散らしスッキリしたのもあるのだろう。
『子供を産め』なんて話が通ると思っていなかった。
劉は申鶴がどの程度の許容範囲を持っているのか、どのように拒否するのか、どのような反応を返すのか。それが確認したかったのだ。
「あー……」
そもそも申鶴が許してもらいたがっている事すら劉には訳が分からない。劉が申鶴の立場であったなら既に千岩軍に通報して有る事無い事吹き込みたんまり慰謝料を請求しているだろう。
まずは『何故』を知るために相手の情報を探る。
噂では仙人の元で修行していた野育ちの女。
都会育ちの自分とは全く違う価値観を持っているだろう。
であるならばソレを利用してごねられないか。
上手く煽って胸の一つ尻の一つでも揉めないか。
そんな風に考えていた。
だからこれも、申鶴の価値観を探るための、言うなればジャブのつもりだった。
「じゃあほれ、素っ裸になって踊れ。そしたら考えてやる」
劉は地面にしゃがみ込み、さもどうでもよさそうに俯く。
コレも演技だ。適当に命令した、という様な体で非現実的な命令を試す。
誰が強請屋に許してもらうために裸踊りなどするというのか。
物理的な暴力を持たない手弱女ではないのだ。
目の前の女、申鶴は暴力装置そのものと言っていい。
この命令も断られるだろう。
劉はそう確信していた。
地面を見つめながらこの後の展望を考える彼の耳に、衣擦れの音が滑り込んでくるまでは。
「服を脱いだぞ。この通りだ」
言われて、反射的に顔を上げた劉の目に飛び込んできたのは、シミ一つない、白くきめ細やかな肌だった。
胸も尻もタイツに抑え込まれていたのか、服を着ていた頃よりも一回り以上大きく見える。むっちりとした太ももと相まって下品に感じるほどだった。
「ふぅ……少し暑いな、汗ばんでしまう」
確かにここ最近の璃月港は夏場が続いている。申鶴自身も体温が高いのか、ムワリと汗の蒸気が周りに漂う。
申鶴はどこから取り出したのか、自身の爆乳を持ち上げ質の良さそうな布で胸の下の汗を拭った。
「むぅ……尻も気持ちが悪いな」
胸の下だけではない。尻の割れ目を開き、同じように拭う。それらのことをどうとも思っていないように、さらに傍目に未使用とわかるピッタリと閉じた肉の筋、その上の陰毛を拭って……申鶴はようやく落ち着いたのか劉に問いかけた。
「どんな踊りを踊ればいい? 妾は余り俗世の風習に詳しくない」
申鶴は解放された爆乳のせいで目の前にしゃがみ込む劉が視界に入らないのか、前屈みになり続きを促す。
ゴクリ
たまらず劉は唾を飲み込んだ。
日に焼けていない真っ白な谷間が視界いっぱいに広がる。劉の目の前に肉の果実が実っていた。
それは誰も触ったことは無いだろうし見たことのある人間もいない場所。申鶴の身体で最も柔らかい肉、新雪のように誰の手垢もついていない場所。
劉はそこにおそろおそる手を伸ばし
「……んっ」
ほんのり桜色に色付いた乳首を包み込むように持ち上げた。
「……ふ……んっ……なにをしている」
「ひ」
「…………」
「ひひっ」
「どうした?」
下から持ち上げて、離す。
ぷるんっと柔らかく弾み、元の垂れ下がった状態に戻る。
もう一度鷲掴み。今度は手を大きく開いて乳首をわざと指の隙間に。
軽く握れば指と指の間から柔らかい肉と一緒に乳首がはみ出した。
「これっ……んっ……妾のっ胸で……あそぶっ……な」
劉がそのはみ出した乳首を指と指で挟みコリコリと弄ぶ。
困惑した様子の申鶴が初めて味わう刺激に声を上ずらせながら劉を止めた。
「胸っ、はっ……乳飲み子のっ……物っ……」
しかしそれは物理的な力を伴う直接的な止め方ではなく、あまり真剣に止めている様子でも無い。
「やっ……めぇっ❤️」
何故やっているのかわからない。
だが止めなくてはならない。
しかし……
「んっ……はあっ❤️……ひぅっ❤️」
ぺちん
その訴えを受け入れたのか、申鶴の胸の頂点に芯が入り始めた頃。散々に楽しんだ劉は立ち上がり、最後にペチリと叩いて申鶴の胸を解放する。
「なぁ申鶴よぉ。子供ってどうやってできるか知ってるか?」
唐突な質問を投げかける劉は怒鳴り散らしていた時の苛立っていた顔が嘘の様に機嫌が良さそうだ。
ほんとうに楽しそうな笑顔で息を整える申鶴を見下ろす。
「……ふ……ぅ……知っている……」
対して劉の行動を止めた申鶴の方はというと頬を染めどこか名残惜しそうですらある。何かわからない、ゾワゾワとした背筋をくすぐる感触、甘い疼き、それが消えてしまった事によく分からない寂しさの様なものを感じているのだ。
「へぇぇ……俺に教えてくれないかなぁ」
「構わない」
息を整えた申鶴は、自分の知っている事を口にする。
劉の中には期待があった。
そしてそれは、半ば確信に変わりつつある。
「人間の子供を作る方法」
彼女は実の父から疎まれていた。
それは妻を亡くした理由が申鶴にあると父が考えていた事によるもので、申鶴に罪はない。
しかし結果として、彼女は幼少の頃、人間としての教育を受ける前に魔物への生贄として捧げられてしまった。
その後なんとか生きのびた申鶴は仙人に救われ、そこで修行を受ける事になる。修行は仙人としての修行だ。孤独で仇なす者と言われた申鶴の心を抑えるための鍛錬だ。
仙人に人間としての、俗世の常識がなかったと言うこともあるだろう。
「人間の子供は愛し合う男女が同じ布団に入るとできる」
彼女は幼い頃の夢物語を、そのままにしていた。
「ひひっ……」
劉が押し殺した声で笑う。
成熟した、グラマラスな美女の持つ幼い夢。
それを白濁とした欲望で汚せる。
薄手の麻で作られたズボンはパンパンに膨れ上がっていた。
「ひひひ……よし、じゃあ申鶴踊り方を教えてやるよ。胸を張って頭の後ろで両手を組め」
「わかった」
申鶴はなんの疑問も抱かず、劉に言われた通りの体制をとる。
両手を頭の後ろで組む。それも、裸で。
身体を遮るものは何もない。
「よしよし。いいか、これはモンドの占星術師が璃月港に伝えた女が男にお願いする時の踊りなんだ。言われた通りにしろよ」
「わかった」
「まず腰を落として股を開け……違う違う、ガニ股だよ。……もっとだもっと、頭がお願いする相手より低くなるように腰を落とすんだ」
「……こうか?」
「そう、次は尻を後ろに突き出して……そうだ」
申鶴は真剣な顔で指示された通りに股を開き腰を落とした。自分を見下ろしながらニヤニヤと笑う劉の指示に思う所はないのか、申鶴は次の指示にも躊躇いなく従う。
「よしよし、次は腰を前に突き出せ。…………よーし、あとはそれを繰り返せ。そのまま腰を前後に振り続けるんだ」
「わかった」
一言返事をし彼女は言われた通りに腰を振り始めた。
申鶴という神秘的な美女に分類される女性が、ヘコヘコ、カクカク、大股開きで情けなく、浅ましく腰を振る。
その無様な姿を見られる人間がたった一人ですんだのは幸運だったのか、そもそもこんな事をさせられている事が不運なのか。
大きな胸が腰振りの反動で持ち上がり、ぱちん、たぱん、と音を立てながら暴れた。
「ほっ……ふっ……ほっ……はっ……」
「……っ……ぷ……」
薄汚い路地裏で仙人とすら間違われる超然とした空気を纏う美女が卑猥で滑稽な踊りとすら言えない動きを繰り返す。
尻を勢いよく後ろに下げ、同じ勢いで自分の普段隠されている大事な場所を男に差し出すように突き出す。その度に振り回された下品なくらい大きい乳房同士がぶつかり合い品のない破裂音をひびかせた。
「よし、じゃあ俺に続いてしゃべれよ〜『ごめんなさい』」
「ほっ……ごめっ……ふっ……なさいっ……」
「もう一回」
「ごめんっ……なさいっ」
劉は笑いを堪えながら申鶴に伝えた。
申鶴は言われた通り呼気と共に謝罪の言葉を口にする。
「くくっ……『私が全て悪かったです』」
「私がっ……全てっ……悪かったっですっ……」
場末の酒場に引き摺り出された借金持ちの外国人。
彼女が踊らされた、歴史も伝統もない、ゲスな男が女性を辱める為だけに考えた踊りを踊らされながら。
「よしよし、良いぞ良いぞ。その踊りはチン媚び踊りって……ぶふっ……言うんだ。しっかり覚えろよ、申鶴」
「……っ……うむっ……チン媚びっ踊りっ……だな」
「おう、他にも女が男に物を頼むやり方は沢山あるからな、璃月港では常識だぞ。後で教えてやる」
異邦人であった彼女と同様に、申鶴も璃月港ではまだまだ新参者。
頼れる相手はいないわけではないが、少なくともこの場には現れてくれなかった。
「よ〜し、腰振るのやめて次は後ろ向け後ろ! おんなじ格好でこっちにケツ向けんだよ!」
「……ふっ……ぅ……うむ」
「両手でケツ肉広げろ……そうだ、左右に広がるんだよ」
細くしなやかな白い指が肉厚な尻肉に食い込み、持ち上げ、未だ見られていない隠された箇所を曝け出す。神秘的な美女の、神秘的では無い場所、親にも見られたく無い筈の穴。
「はい、チーズっ……と……よし、今度はこっち向け」
パシャリと軽い音と共に閃光が美しい身体を照らす。
劉の手にはいつのまにか写真機があった。
たかり屋でありゆすり屋でもある劉の商売道具。
他人の見られたくない秘密を写し、記録する道具。
記録した風景を絵にして、いくらでも増やす事ができる道具
そこに、申鶴が裸で尻の穴を広げている風景が、記録された。
「片手でピースして、もう片手は……こうだよ、こう」
「こう……か?」
劉に指示された通りに申鶴がポーズを取る。
それは先ほどの下品なケツ穴とマン穴を見せるポーズに負けず劣らず問題のあるポーズだ。
片手は言われた通りにピースサイン、写真を撮る際の定番で、楽しげなポーズだ。
問題はもう片手だ。もう片手は人差し指、中指、薬指と親指で輪を作り、小指を立てていた。
申鶴がその輪を口の横で左右に振る。まるで何か、棒状のものを扱くような動き。
「そんで口はこうだ、こう……できる限り鼻の下をのばせよー」
そしてその棒の先端を咥えるように、申鶴は口をぽっかりとあけ、舌を突き出す。
その動きが何を示しているのかは明らかだ。
手で棒を扱き、先端を肉厚な唇で咥え、ぽってりとした赤い舌で舐め回す。
「れろぉ……んっヨダレが……」
「いいぞ、ヨダレは気にすんな、体はさっきと同じ、ガニ股でまんこつきだせ」
全裸でガニ股になりながら、女性器を見せつけるように腰を突き出したポーズ。
申鶴に自覚はないだろう。
その姿は男に狂った淫売……いや、チンポ狂いの便所女だ。
男に犯されるためなら何でもやる、毎日男を漁る売女。
そんなふうに見えた。
そして
「はい、ちーず」
パシャリ
実際にそうなるまで、時間はかからないだろう。
「よーし……おい申鶴、お前どこに住んでんだ? ……あぁ? 宿だと? ダメだダメだ、そんなの金がかかるだろうが。俺の家に泊まれ」
「よーし、テメェは金の使い方があらいみてぇだからよ、おれが管理してやる……とそれからよ、これは噂に聞いたんだけど」
「あんたって契約書は書けるかい?」
「仙人様の作る誓約書は絶対に破ることが出来ない誓いになるって聞いたんだけど……」
どの女の子が酷い目に遭いそうですか?
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エウルア
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ラウマ