鋼の錬金術師 遭難、事故から始まった、不幸街道間、まっしぐらで始まった人生 作:木桜 春雨
先生と呼ばれたティム・マルコーは振り返ると驚いた顔になった、見知らぬ男性からを声をかられたからだ。
引退した自分が再び、出戻りのような形で軍の施設内で働くようになってから数ヶ月がたつが、最初のうちは怪我人の手当や療養だけと思っていたのだ、ところが賢者の石に関しても知識を貸して欲しい、助言を求められるようになってから忙しくなってきた。
いつまで老体をこき使う気だと思ったが、お願いしますと深々と頭を下げ、懇願されては性格上、断ることができない。
勿論、見合うだけの給料を払うからと言われては尚更だ。
男は施設内では初めて見る顔だ、いや、自分が覚えていないだけかもしれない、だが、大事な話がしたい、だが、ここではと男の声が低くくなる。
その様子に診察室に行こうとマルコーは歩き出した。
診察室に入ると男は上着のポケットから何かを取り出した、それは石だ、マルコーの表情がわずかに強ばったものになった。
「どこで、これを」
マルコーは手渡された石を凝視した、賢者の石は様々な形で存在する、石という形でなく、液体でもだ、そして、これが人の命で作られたものなら、関わった人間はただではすまない。
「拾ったというんだ」
すぐには返事ができなかった、そして呆気にとられたというより、間の抜けた顔になったが、次の瞬間、我に返り、男を睨みつけた。
男はマルコーの反応にもっともだと言わんばかりの顔で頷いた、信じられないのも無理はないと言いたげに。
「ところで、おまえさんの名前を聞いてなかったな」
「ああ、そうだ、年を取ると忘れっぽくて」
男はホーエンハイムと名乗ると、はははと笑いながら、石のことを説明し始めた。
嘘をついているようには見えないんだよ、その言葉にマルコーは誰だいと訊ねた。
この石を拾ったという本人は、今どこにいるんだと訊ねたのは無理もなかった。
「ホーエンさん、遅い」
天上を見上げながら、つい先ほど見た夢を思いだそうとしたが、多分、体調のせいだろう。
やはり本調子ではないなと未佐緒は思った。
迷惑をかけてばかりだと思いながら、これから先のことを考えると正直気分が沈んでしまうのは仕方のないことなのかもしれない。
ウエストポーチの中のシガレットチョコは食べ尽くしてしまった。
日本円の札と硬貨があるが、ここで使えるように換金してあげるからとホーエンさんは言ったが、大丈夫なのだろうかと思ってしまう。
頼りなく見えるかもしれないが、ここぞというときはね、頼ってくれると嬉しいんだけどね、なんて茶目っ気たっぷりに笑いながら言っていたが、そうでなくても頼りすぎてないかと思ってしまうのだ。
「これが賢者の石だと当人は知っているのか」
「本人は水晶、ただの石だと思っている、キーホルダーにしたらいいと、紐飾りをつけてくれたんだ、器用だろう」
「くれた、というのかい」
石の価値を知っていたらあり得ないことだ、納得できない、不可解な表情のマルコーに石はイシュヴァールの山で見つけたんだよとホーエンハイムは言葉を続けた。
「それを調べに行こうと思ってね、それで先生にお願いしたいことがあってね、しはらく、私の代わりに」
ホーエンハイムの言葉にまるこーは一瞬、はあっという顔になった。
実は急な仕事で出かけなくてはならなくなってね、ホーエンハイムの言葉を未佐緒は黙ったまま聞いていた。
途中で口を挟むことは一度もなく、最後には、そうですかと頷いたが、その表情に不安を読みとったのか、大丈夫、安心したまえと彼女の肩をばんと叩いたオッサンは笑いながら、今から晩飯を食べに行こう、気分はと訊ねた。
「実は会わせたい人がいるんだ、頼りになる人でね、頼もうと思っている、信用できる人だからね」
少しの沈黙の後、もしかして、その人にと尋ねるとホーエンハイムはにっこりと笑い頷いた。
「スカー君、よかったら晩飯を一緒にどうだね、奢るよ」
マルコーから呼び出されたとき、スカーは不思議そうな顔で何故と言いたげな顔になった。
だが、二人ではない、ホーエンハイムという人物も一緒だと言われ驚いたが、顔には出さなかった。
久しぶりに続きをUp、やっとマルコーさん、書けた。