鋼の錬金術師 遭難、事故から始まった、不幸街道間、まっしぐらで始まった人生 作:木桜 春雨
待ち合わせの時間まではて腕時計を見る、まだ余裕があるなと思い、マルコーは、ほっとした。
久しぶりの休日だが、一日だけだ、といっても不満があるわけではない、普段から仕事ばかりで長い休みなど数える程だ。
昨夜は一晩中、降り続けた雨が嘘のように今はからりと晴れている、いや、暑いぐらいだ、じんわりと吹き出す汗、顔を拭いていると、ふと視線を感じた。
すぐそばに一人の子供がいて自分を見上げているのだ。
「何か用かな」
すると子供は、いきなり自分の腕を掴み、歩き出した。
驚いたのは無理もない、だが子供は何も言わず、ずんずんと歩き続ける、このぐらいの年の子にしては足取りも早い、どこに行くのだろうと思っていた、すると、突然、子供は立ち止まった。
子供はマルコーを見上げると道の脇の街路樹を指さした。
視線を向けると木の根元にもたれ掛かるように人が座り込んでいる。
もしかして気分が悪くて動けないのだろうか。
子供の知り合い、家族だろうか、訊ねようとして視線を向ける、ところがそばにいたはずの子供の姿はない。
思わず周りを見回したが、いない、一瞬、呆けたようになってしまったが、我に返ると決心した。
約束の時間は少し遅れるかもしれない、だが、自分は医者だ、放っておけないと思った。
「大丈夫かね、気分でも悪いのかね」
膝に顔を埋めていた相手は顔を上げる、青ざめた顔色と気分がと、かすれた声にマルコーは水を持ってくるからと声をかけた。
女の言葉にマルコーは食事は食べているかいと訊ねた。
曖昧な返事に、この国の人間ではないなとマルコーは思った。
「人と待ち合わせをして、場所がわからなくて、途中で゛気分が、わかりますか」
女が口にした店は自分が行くはずの店だ。
「人、ホーエンさんという人が待ってるんです、遅れたら」
どうして、ここで、その名前が出てくるのかと思いながら。
「もしかしてホーエンハイムという名前では」
すると女が頷いた。
「一緒に店まで行こうか、いや、私も待ち合わせなんだよ、気分は大丈夫かね」
歩きながら、ふとマルコーは思った、子供のことを思い出しただけで思い出したのだ、何故、自分に声をかけたのだろうかと、それに歩いている途中、言ったのだ(医者)
以前、どこかで会っただろうか、だが、子供は変わった衣装を着ていた、外国人とわかる、アメストリス、いや、イシュヴァールではない、あれほど特徴があるなら自分の方が覚えているはずだ。
自分は今、医療用の鞄を持っているわけではない、なのに、何故だろう。
「やあ、スカー君」
診察室を訊ねてきた男を見るとマルコーは驚いた、だが、自分が見る限り、具合が悪そうにも、怪我をしている様子も見られない。
大男は診察室の中を探るような視線で見回した。
どうしたんだいと声をかけるが返事がない、そのとき。
ドアをノックすめる音と同時に、ただいま帰りましたと声が聞こえてきた、女の声だ。
ドアが開き入ってきた女に、お帰りとマルコーは声をかけようとしたが言葉が途切れだのは一人ではなかったからだ。
女の後ろから入ってきた女の姿を見て言葉を飲み込んだ。
だが、それはマルコーだけではなかった、スカーもだ。
ロングヘアの黒髪、胸元の開いた赤いドレスの美女はにっこりとした笑みを浮かべてマルコーを見た。
久しぶりの更新です、ラスト、登場です。