鋼の錬金術師 遭難、事故から始まった、不幸街道間、まっしぐらで始まった人生 作:木桜 春雨
美女は、こんにちはと二人の男に声をかけ、マルコーに向かって先生と声をかけた。
「痛み止めを出してくれません」
いぶかしむようなマルコーにお願いと言いながらラストは隣に立つ女の背中を押しながら、声をかけた。
「ほら、横になって」
誤魔化すような笑いを返した女は少し頭痛がと呟いた、するとラストが否定するように首を振った。
怪我をしているのかい、マルコーの言葉に返事はなかった。
ラストは金貨をマルコーに渡すと、にっこりと笑い、治療費と薬代よと言いながら診察室の奥へとちらりと視線を向けた。
何故、ホムンクルスの彼女と一緒だったのかと訊ねようとしたが、薬を飲んだ彼女は、うつらうつらと眠りかけていたので目覚めてからとマルコーは考えた。
買い物をしようと思って迷っていたら声をかけられ、色々と話していたら仲良くなったという、楽しそうな彼女に困惑しながらもマルコーは説明した。
彼女はホムンクルスだと、造りもの、人造人間だと聞かされた彼女は不思議そうな顔をしながらも楽しそうに笑いながら、良い人よと。
マルコーは言葉を続けることはしなかった、この国の人間ではないから説明したところで分からない、理解できないと思ったのかもしれない。
「ところで調子はどうだね、疲れがたまっていたのかもしれないな、最近、あまり眠れていないようだが」
外で見るもの全てが珍しくて夜も、なかなか眠れないのだと答える彼女にマルコーは思わず笑ってしまった。
その日の夕方、スカーはトランクを持って病室を訪れた。
スーツケースを突き出すように女の前に押し出すと、返したからなと言って出て行った。
性格を知っていた為、驚くことはしなかったマルコーだが、彼女のほうはというと一瞬、ぽかんとした表情で、そのまま見送ったのはいうまでもない。
「先生」
返事はない、聞こえなかっただろうかと思いマルコー先生と呼んでみたが、それでも無言だ。
机に向かって書き物をしているので忙しい、仕事中だから悪いと思いながらも背後に近寄り声をかけた。
「マルコーさん」
集中していたのか机の上の書類から、ゆっくりと顔を上げたマルコーは女の顔を見上げたが、忙しいですかと聞かれて返事に一瞬、困った、ホーエンハイムに彼女のことを頼むと言われてから、彼女は殆ども自分の仕事場である診療室に籠もっているといってもいい。
退屈ではと思ったが、部屋の掃除や簡単な手伝いをする以外は本を読んだりしているのだ。
「暇なら街を見てきたらどうだね、散歩がてらでも」
マルコーの言葉に女は思案顔になった。
「だったら一緒に出かけませんか」
案内してくださいと言われて、マルコーはテーブルの上の書類を見た、急ぐものではもない、たまにはいいかと思ったののだが、出かける時になって後悔した。
ただ、街を歩いて、散歩のつもりだった、なのにどうしてとマルコーは思ってしまった。
「散歩、だと思うのだが、何故」
「おかしいですか、この服、もしかして化粧、濃すぎるとか、オバサン丸出しとか」
「いや、そういうわけでは」
もう着ないからって、ラストさんからもらったんですという言葉を聞いて、マルコーは、えっとなった。
「あっ、でもちゃんと、現金ではないけど、彼女、シーグラスや石が欲しいっていうから」
女の言葉にマルコーは思わず隣を見た。
「石、かね」
海岸で山で拾った石です、アクセサリーにするんですという説明聞きながらマルコーは、この間、会ったときのラストの顔を思い出した。
「綺麗な石ね」
そう言って、嬉しそうに笑いながら買い取らせて欲しいと言ったのだ。
ヒールの高い靴を履いて歩く時は気をつけて、あれは誰が言ったんだろう、雑誌、マンガ、テレビのインタヴューだったろうか。
友人、誰か知り合いから言われたのだろうか、思い出せないけど。
ただ、これだけはわかる、一人で歩くのは、長時間だと辛い。
いや、凄く、疲れる。
自分よりも少し頭一つ分くらい低い、小柄な相手に寄りかかるようにして、腕につかまって歩くのは正直、みっともないというか情けない。
多分、足の裏、親指にはマメができてるかもしれないと思いながら、未佐緒は、何度目かのすみませんという言葉を呟いた。
「い、いや、構わんよ」
優しい人で良かった、昔、付き合っていた相手なら呆れられて、置いてきぼりだったかもしれない、だから、付き合う相手は、なんてことを思っていると、おーいと声がした。
振り返ると金髪の男性が近づいてくる。
「ホーエンハイム君」
とマルコーが呼びかけたときだ。
突然、雨が降ってきた。
やっと更新できました、アマアマなデート話にするつもりだったけど。
それはまた、今度に。