鋼の錬金術師 遭難、事故から始まった、不幸街道間、まっしぐらで始まった人生 作:木桜 春雨
フラスコの小人と呼ばれることに不満はなかった、本当のことだからだ、だが、名乗った自分を見て女は不思議そうな顔で、そして笑ったのだ、長いし呼びにくいと、多分、他にも理由はあったのかもしれない。
だが、そのときは何故か、理由を聞くのも馬鹿らしくなった、そんな自分を観て何か思うところがあったのかもしれない。
挙げ句、自分に名前を付けた、後から聞くと、字(あざな)、源氏名(げんじな)というらしい、愛称だと知ったのは後になってのことだ。
だが、その名前で呼ばれたのは、ほんの数日だけだ、どんな名前だったのかと覚えていないというよりは忘れたかったのかもしれない。
シンの人間が女を探している、生死に関わらずと聞いたとき、昔の自分なら放っておいただろう、遺体を埋めた場所に行くと、そこには数人の男達が立ち尽くし、中には座りこんだまま、呆然としていた。
何があったのかわからない、だが、不快になるには十分だった。
シンの王、皇族は不老不死を望む者がいると噂には聞いていたが、その望みは未来永劫、叶わないと言ってやった、瞬間、奴らの顔は見物だった、言葉が出ないのだろう、哀れなものだ。
全員殺して国境近くの前線に晒し首にしただけでは収まらなかった。
掘り返した死体を再び土に埋めようとしたが、ぼろぼろになって風に舞って指の間からすり抜ける、生きていても、死んでもだ。
気がつくと誰かが側に立っていた、地面に落ちていたわずかな骨をかけらを拾いあげる姿に、思わず口にしたのは連れて行かないでくれという懇願だった。
だが、ここは生まれた地ではないからと言われた、何を言っても無駄かもしれないと思ったのは初めてだ、自分は情けない顔をしていたのかもしれない。
すると、思うところがあったのか、それならと言葉が続けられたが、何を言っているのか、よく聞き取れなかった。
昔の、ずっと昔のことだと思っていた、なのに、再び、扉が開いた。
なんてことをしてくれた。
異なる場所と世界を繋げたぞ。
とんでもないことを、やってくれた。
理由は、なんだ、ことと次第によっては。
扉の前で騒ぎ、喚き立てる言葉、怒声と罵声は最初のうちこそ、怒りに任せたものだった。
だが、次第に声は低く、小さくなっていく。
「罰を与えねばならん」
その言葉に皆は賛同すると思っていたのだろう、だが、複数の声と気配は沈黙したままだ。
「何様のつもりだ、我々は神ではない、それに罰というなら」
「受けている、とっくに」
小さな呟きだった。
先の言葉がなかった、その場にいた者達はわかっているのだ。。
リン・ヤオは金髪の男性の顔を不思議そうに見た、てっきり、自分の知り合いである青年の父親だと思ったのだ、かって、その男とうり二つの存在を知っていたが。
振り返った男の視線で別人だと分かった。
「死んだ、そう思っていたか」
答えることができなかった、腰の刀に手をかけようとした、ところが相手は笑いだした。
「どうして生きている」
男は口元に笑いを浮かべ、背を向けると歩き出した、追いかけようとしたリン・ヤオだったが、その足が進むことはなかった。
「気分が、悪いのかね」
突然、立ち止まった女に声をかけたが返事はない、俯きかけた女の顔を覗きこんだマルコーは大丈夫かねと声をかけたが、顔色を見て驚いた、明らかに具合の悪そうな顔色だ、だが、それだけではない。
違和感を感じて視線を下に落とし、足下を見た、濡れているのだ。
それも赤い液体だ、血、まさか。
女の体が、崩れるように倒れるのをマルコーは必死で抱きためた。
お父様、登場。
実写映画の内野さんがかっこよすぎて、情けないホーエンさんもいいんだけど、かっこよくて最強のお父様も好きだ。