鋼の錬金術師 遭難、事故から始まった、不幸街道間、まっしぐらで始まった人生 作:木桜 春雨
重い、体、全身が、ここ数日、体調は悪くはなかったのに、いや、少しだるいなと思う事はあった。
だが、今、はっきりわかる、これは普通ではないと、助けてと、そばにいる小柄な男を呼ぼうとした、この男の名前を口にしようとすると思考が頭が痛む。
もしかして、自分は、ここで死ぬのかと思ってしまった、普通なら不安になるだろう、でも、ここまでだと思ったら、仕方のないことだ。
そう思えば諦めもつく、だが、不意に声が出た。
自分の肩に置かれたわずかに手に力が入っていると感じ、思わず声をかけた。
返事はない、代わりに深く息を吸い込む音がした、数秒の間、マルコーは躊躇した、どうするべきか、それは医者として当然のことだったかもしれない。
「ここなら大丈夫だ」
にっこりと笑う男に、何が大丈夫なのかと聞こうとして女はやめた、これは夢だと思ったからだ、大丈夫というのは、ここなら安全ということ、生きられるということだろうか、だが、生きるというのは自由で不自由になものだ。
幸せで辛くもあるのだ、矛盾しているようだが、自分は知っている。
だから良いことも悪い事も受け入れることができるのだ。
突然、頭の中に声が響いた。
一つの体には無理がある、その声は大人なのか子供なのかわからない、なのに驚くこともなく聞いている自分が不思議だ
った。
嫌な感じがしないからだろうか、声は話し続ける、それを聞いていると疑問が沸いた。
自分の意識は消えてしまうのか、それは死ぬということなのだろうか、でも不思議と悲壮感、嫌だという反発するような気持ちが沸いてこないのが不思議だった。
そんな心の中の感情を感じ、いや、察したのかもしれない、声が驚きにも似た呟きを漏らした。
人間だから、自分と声が同時に言ったのかもしれない。
視線を落とすと側にいた男が何か言いたげな顔で自分を見ている、ああ、いけないと思ってしまった、安心させなければと。
少しばかり身を屈めるようにして、顔を近づけると女は笑いながら声をかけた。
自分は死んだと思っていた(フラスコのこびと)、だが、眠っていただけだと知ったときは驚いた。
そばには小さな子供がいた、人間ではないだろう、もしかして、自分を生き返らせたのは、そう思ってしまった。
小声で呟く子供に抱いたのは恐れだ、自分を生き返らせたのだ、もしかして、神、なのかと思ってしまった。
何故、自分をと思ってしまった、当然の疑問だろう。
仕方ないと呟く声は小さい、だが、聞こえてしまった。
誰が自分をと思ったが、はっとした、一人しかいないと。
彼女はと尋ねると子供は首を振った、人間は一度死んだら終わりだと。
真理のドアの向こうで事故が起こった、ただの事故ならよかったのだ。
だが、こちら側でも扉を開けようとする実験などは様々な場所で行われている。
正規、違法のものなら無数にだ、錬金術の発動、それらの何かが触発されて何かしらの歪みがでたのかもしれない、それで、こんなことが起きてしまったのだろうか。
子供は背を向けると言葉を投げるように告げた。
「自由に生きたらいい」
大丈夫と声と女の顔に、本当にと聞き返すマルコーは笑顔を向けられて驚いた、先ほどまで肩に置かれた手は離れているが、しっかりと立っている、ふらついていたのが嘘のようだと思ってしまった。
「花が欲しい」
まるで独り言のように女が呟いたので思わず聞き返した。
だって、花を見ると元気になるでしょう、言われてマルコーは、すぐには返事ができなかった。
そのとき、足音と気配がしてマルコーは振り返った。
振り返ると老婆と少年が立っていた、奇妙な沈黙は長くは続かなかった。
「人違いだよ、婆様」
少年の当惑したような声には不安が感じられ、マルコーが口を開きかけたとき。
「嬢や、久しぶり」
女の声に老婆は頷き、掠れる声ではいと答えた。
「もう一度、会いたいと、助けてくださり、礼も言えず」
大人が子供を助けるのは当たり前のことだと女は笑い出した。
「それにしても、よく、顔も髪の色も、昔と違って」
「い、石が、光ったのです、それで」
「いし、石、ああ」
頷く女に老婆は言葉を続けた。
賢者様に、お会いになりましたか、と。
ここ数日、コロナ、色々あって体調がぐったり、ようやくUpできましたが、次はギャグが書きたい。