ファンタジー世界でサドな女の子に見つかってマゾいじめを受けるだけのおはなし 作:霧風弦十六
・幼児化
・ハニートラップ
・洗脳
「あの、勇者様……入っても良いですか……?」
深夜。突然あなたの部屋の扉がノックされた。
声から察するに、ノックしたのは姫様のようだ。こんな夜中に一体なんの用だろうか。扉に掛かった鍵を開ければ、そこには確かに姫様の姿が。
「こんな夜中に申し訳ありません……ですが、大切な用事でしたので……」
民衆から月のよう、とも言われる彼女は大変優れた容姿の持ち主だ。白く陶器のように滑らかな肌。金細工のように煌びやかで銀細工のように落ち着いたプラチナブロンドの髪。そしてサファイアのように輝く碧眼。
そんな容姿を持っていたら、少し位は傲慢な性格になったとしてもしょうが無いだろう。だが、彼女は違った。謙虚で努力家。それでいて地位に見合っただけの高貴な振る舞いをするその姿は、理想的な王族として半ば崇拝の対象となっていた。
彼女を嫁に貰う者は、大陸一の幸せ者。そんな言葉が、嘘偽り無い真実として受け入れられる程の存在。それが姫様だ。
「勇者様、この度は大義を成していただきありがとうございました」
姫様は部屋に入るなり、頭を下げてそう言った。
大義。それはあなた成した『魔王』を討伐の事だ。意思の無い魔の存在、『魔物』を操り、生きとし生けるもの全てを駆逐しようと現れた悪の親玉。あなたは長い旅路の末に、『魔王』を倒す事に成功したのだ。
「それで、勇者様……あなたは今後の事をどうお考えですか……?」
あなたは姫様を椅子に座らせる。すると彼女はそんな問いを投げかけて来た。
そもそも、魔王を討伐したのも意図してのものではなかった。旅をする中で、何故か魔王を倒す事の出来る武器を手に入れ、何故か魔王を居場所を知る事が出来、結果として魔王を倒しただけ。
別に使命に駆られて倒した訳ではない。ただ力があり、倒す事が出来たから倒しただけなのだ。
そんな事を姫様へと伝えるあなた。その瞬間、いつも笑みを欠かさない姫様の顔に怒りとも警戒とも取れるような表情が浮かんだ気がした。だが気のせいだろう。姫様があのような表情を浮かべるはずが無い。あなたはそう思う事にした。
「では、我が国に仕えてはどうでしょう? 大義を成したあなたには、それにふさわしい地位が与えられるはずです」
実に魅力的な提案だ。だが、あなたには夢があった。この大陸の隅から隅まで旅をして、その風景を自らの目に焼付ける事だ。
魔王の登場によって困難になってしまったその夢も、今ならば叶えられる。
そもそも、世界中を旅していたのも、その夢の為だ。
「勇者様……この国に残る事は出来ないのですか……?」
上目使いでこちらを見つめた姫様が、そう問いかけてくる。
だが、あなたの心は既に決まっていた。
世界を巡る事が夢なのだ。この国には仕えられない、と。そう姫様へ伝える。
「そう、ですか……残念です……」
がっくりと肩を落とし、俯く姫様を見て、あなたは少し後悔していた。少し早まっただろうか? だが、夢を諦める事など出来ない。
夢を叶えた後でなら、国へ仕える事も。そう言おうとしてあなたは見てしまった。
感情の無い瞳であなたを見つめる姫様の姿を。
常に浮かべられていた柔らかな笑みはどこにもない。冷徹で、無感情な姫様の顔。
恐ろしい。
こんな姫様は見た事が無かった。
「ならば、仕方ありません。勇者様、あなたを私の『ペット』にします」
あなたは姫様の告げた言葉を理解する事が出来なかった。
困惑するあなたを無視して、姫様が取り出したのは赤ん坊用の玩具。振ると『ガラガラ』と音の鳴るおもちゃだ。
「本当に残念です。もしかすると将来敵になるかもしれない存在を無視する事は出来ません」
あなたは気づいてしまった。今のあなたは誰も倒せなかった魔王を倒した唯一の存在。その軍事的価値は計り知れない。
もし将来、あなたがこの国と敵対したら。彼女は……いや、この国はそれを考えていたのだ。そして、もしその可能性があるならば、あなたを排除しようとしていた。
「もしこの国に残っていただけるのでしたら、私があなたの楔になる事も考えましたのに……」
おそらく彼女が手にしているのは『魔道具』だろう。ふざけた外見とは裏腹に、凶悪な効果を有しているに違いない。
先手必勝。あなたは心の中で謝りながら、姫様が持つ『ガラガラ』に向かって剣を振るった。
カランカラン♥
部屋に甲高い音が鳴り響く。鐘の音とも、鈴の音とも違う独特な音。
それを聞いた瞬間、あなたは剣を取り落としてしまった。
四肢に力を込める事が出来ない。自然と両手両足を折り曲げてしまう。
「どうしたのですか、勇者様。急に赤ん坊のように手足を丸めてしまって」
カランカラン♥
どんなに力を込めようとしても、『ガラガラ』の音を聞くだけで無駄になってしまう。両手両足は折りたたんだまま体の横。
四肢が動かせないのなら魔法で。あなたはそう考え、魔力を練り上げる。こちらは問題無いようで、すぐに発動に必要な魔力が体を駆け巡った。そして、発動の為にキーワードを口にしようとした瞬間。
「魔法、ですか。ですがそちらの対策もしていますので」
口に何かを押し込まれてしまった。
舌に当たる、ぷにゅりとした柔らかい感覚。形状から察するに、それは『おしゃぶり』だろう。
このくらい! あなたはそう思い、吐き出して詠唱を行おうとする。だが、どう頑張ってもおしゃぶりを吐き出す事が出来ない。
ならば咥えたまま詠唱を。そう思い、言葉を口にしようとして愕然とする。
「ほぎゃ、おぎゃぁ!」
「はいはい、どうしました勇者様」
口から飛び出たのは赤ん坊のような泣き声。
当然、魔法など発動するはずもない。
カランカラン♥
『ガラガラ』を振られてしまえば立つどころか動く事すらままならず、『おしゃぶり』のせいで喋る事も出来ない。
「ふぎゃぁっ! ほぎゃっ、おぎゃぁあ!」
その姿は赤ん坊と何ら変わりがない。体格だけは大人の男性であるが、それはなんの慰めにもならない。
あなたの惨めな姿を見て、姫様がクスリと笑った。あなたの知っている姫様の笑顔ではない。人を見下すような、悪辣で醜悪な笑み。
「ふふふっ♥ あーんなに格好良くて強かった勇者様も、こうなったら形無しですね♥ ね、今どんな気分ですかぁ?」
その姿を見て、あなたは理解してしまった。
おそらくは、これが彼女の本性なのだ。確かに、清廉潔白なだけで国を回す事など出来るはずも無い。良い評判だけが出回る為政者など何かおかしいと思わなかったのだろうか。
つまり、そういう事なのだ。
「私が最初に振ったこの魔道具は、相手行動を赤ちゃんそのものにしちゃう魔道具なんです♥ 一回振ればあら不思議♥ 手足を折りたたんでバブバブする赤ちゃんの完成♥」
魔道具の効果を説明する姫様は、おもちゃを自慢する子供のようだった。だが、説明された効果のなんと凶悪な事か。
「ただ、あんまり効果時間が長くないのが欠点なんですよね。だから、こうしてこまめに鳴らしてあげないといけないんです」
カランカラン♥
効果が説明通りなら、あなたはどう頑張ってもこの状況から脱する事は出来ないだろう。定期的に振られるだけで、赤ん坊状態を維持されてしまう。
「そして勇者様に咥えさせたのが『おしゃぶり』♥ 咥えたら最後、許可無しには絶対吐き出せない魔道具です♥ 言語機能も退化して、赤ん坊のように鳴き声を上げる事しか出来なくなるおまけ付き♥」
詰み、だった。
この状況を打開する事は出来ない。
カランカラン♥
「はい、無力化完了しました♥ 準備をお願いします♥」
姫様が声を上げる。すると扉が開き、数名のメイドが入って来た。姫様お付きのメイド達。彼女達は手際良くあなたの服を脱がせると、ベッドの上に寝かせる。
とうとうあなたは、素っ裸の大きな赤ん坊にジョブチェンジしてしまった。
「勇者さ、ま♥ あなたには王城で暮らす為の『特別な装備』を差し上げます♥」
見ればメイド達が何かを持っている。
ある者はパステルカラーのベビー服。いわゆるロンパースと呼ばれるそれは、成人男性用に大きく作られていた。
ある者はよだれかけ。本来可愛らしいキャラクターなどが描かれるであろう場所、よだれを受け止める面には『♥赤ちゃんマゾ勇者♥』と可愛らしく書かれている。
ある者はミトンの手袋。手袋、と言っても一切分岐部の無いふわふわもこもこ、手首部分には留め具まで着いている。アレを手に嵌め、留め具を締めてしまえば、指を使った細かい動作はもちろん、ミトン手袋を外す事すら出来なくなってしまうだろう。
ある者は拘束具。こちらもふわふわもこもこではあるが、それは確実にあなたの自由を奪うだろう。両手両足を折りたたんだ状態で固定する為のそれは、嵌められれば最後、今のように四肢を折りたたんだ不自由な体勢しか取れなくなる。
「さぁ、勇者様♥ 赤ん坊になる覚悟は出来ましたか? これから勇者様は、一生このお城で、私のペットの『赤ちゃんマゾ』として生きて貰いますから♥」
抗議の声を上げても、口からこぼれるのは『ほぎゃ、おぎゃぁ』という泣き声だけ。四肢は言う事を聞かず、迫り来る絶望から逃げる術などない。
「はーい、勇者さまー♥ お着替えしましょうねー♥」
「実は私ぃ、勇者様かっこいいなぁ、凄いなぁって思ってたんですよ?」
「勇者様がこの国に仕えるなら、姫様にお許しを貰ってお付きになろうかなぁ、なんて思ってたんですけどぉ♥」
「ぷっ♥ こんな恥ずかしい人のメイドなんて、死んでもごめんですよねぇ♥」
手を、足を、指を。あなたの人間的活動の全てが奪われていく。
完成したのは、手足を折りたたまれてほぎゃほぎゃばぶばぶと泣き声を上げる、大きな大きな赤ん坊。成人の体格に不釣り合いな、パステルカラーのロンパースは見るだけで嘲笑を誘い、恥ずかしい文言が書かれたよだれかけは、そんな恥ずかしい存在が一体何なのかを懇切丁寧に説明してくれる。
「ぷっ♥ はい、勇者様改め『赤ちゃんマゾ』です♥ 後で職業の所、勇者から書き換えておいてあげますね♥」
世界を救った人間に、あんまりな仕打ち。あなたは反抗の意味と羞恥を誤魔化す意味を込めて、姫様達を睨み付ける。
だがそんな行為も、成人男性が赤ん坊のような格好をして行っているとなれば、少しも恐怖を感じる事は無い。むしろ滑稽で哀れなだけだ。
「おやおやおや? 姫様、まだ反抗的なようですね♥」
「そうね、これはいけないわ♥ ねえ、もしかしてまだ自分は大人の男性だ、って思ってませんか? ふふっ、そんな思い……すぐにぶち壊してあげますね♥」
勇者……もとい赤ちゃんマゾは一生を姫様のペットとして暮らす事となる。最初こそ反抗的だった彼は、ある時を境に一切の抵抗を止め、本物の赤ん坊のようになってしまったと言う。理由は定かではない。だが、『白いお漏らし』や『触手おむつ』といった言葉が関係している……それをあなたはその身をもって知る事となるだろう。